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1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2013年4月12日金曜日

新着論文(Science#6129)

Science
VOL 340, ISSUE 6129, PAGES 109-236 (12 APRIL 2013)

Special Issue 'Australopithecus sediba'
特集 'アウストラロピテクス・セディバ'

Editors' Choice
Where’s Warming?
どこが温暖化している?
Geophys. Res. Lett. 10.1002/grl.50382 (2013).
地表温度は1975年頃から2000年頃にかけて急速に温暖化したが、ここ10年間は顕著には温暖化していない。問題は「温暖化が停止したかどうか」ではなく、「どこへ過剰の熱が吸収されたか」にある。1958年から2009年にかけての海水温の観測記録を解析したところ、表層よりも700mよりも深い部分での温暖化が顕著に起きていることが示された。従って、最近の温暖化は我々の知らないところで進行しているということになる。
>問題の論文

Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。

News of the Week
Next Up for NASA: Exoplanets And Neutron Stars
NASAの次の一手:系外惑星と中性子星
NASAは2017年の打ち上げを目指す次のミッションとして「系外惑星を探査する人工衛星(Transiting Exoplanet Survey Satellite; TESS)」と「中性子星の発するX線を観測するための国際宇宙ステーションに備え付けられる機器(Neutron Star Interior Composition Explorer; NICER)」の2つを採用すると4/5に公表した。

Klamath Dams Should Go, Interior Dept. Says
Klamathダムはどこかにやるべきだと内務省は言う
1918年〜1962年にかけてKlamath川に沿って建設された老朽化した4つのダムは水温や藻類の濃度に大きな影響を及ぼし、サケの遡上を妨げることから、撤去するようアメリカ内務省は忠告した。

Dengue More Prevalent Than Thought
従来考えられていたよりも感染拡大しているデング熱
蚊が媒介し、’骨を壊す熱(breakbone fever)’の異名を持つデング熱(dengue)に対するワクチンは今のところ存在しない。テング熱をもたらす蚊の分布や人口増加率などを考慮した新たなモデル試算から、WHOの試算よりもはるかに多い、3億9千万件という数字が得られた。

Game of Habitable Zones
生命存在可能な領域の遊び
ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)という物語の中では「夏が数年間、冬が数十年間にわたって続く」という設定になっているが、Johns Hopkins大の天文学者によると、そうした極端な季節は中心星が2つある連星系であれば可能であるという。1年間が700日で、2つの太陽が互いを100日ごとに公転するような軌道だという。

News & Analysis
A Human Smile and Funny Walk for Australopithecus sediba
アウストラロピテクス・セディバに対する人類の笑みと面白い歩行
Ann Gibbons
我々ホモサピエンスと似た特徴を有する種族の詳細について。

Two-Billion-Dollar Cosmic Ray Detector Sees Signs of Something
200億ドルの銀河宇宙線検出器が何かの兆候を見る
Adrian Cho
物理学者は以前報告されていた宇宙から飛来する過剰の反物質がダークマターに由来する可能性を指摘している。

News Focus
From Cosmic Dawn to Milkomeda, and Beyond
宇宙の夜明けから天の川銀河とアンドロメダ銀河の衝突、そしてその先
Robert Irion
ハーバード大の理論物理学者Avi Loebの考えが宇宙の過去と未来をめぐり、そして彼は若者に大胆であれ、と勧める。

The Mystery of Our Moon's Gravitational Bumps Solved?
我々の月の重力的なデコボコの謎は解決したのだろうか?
Richard A. Kerr
月の重力場に見られるデコボコな構造は、月が何億年もの間繰り返された隕石衝突に対して、わずかに調整をした結果である、とある研究グループは報告している。

Pesky Perchlorates All Over Mars
火星全体に存在するやっかいな過塩素酸塩
Richard A. Kerr
5年前、Phoenixは火星の極に過塩素酸塩が存在することを発見していたが、さらにキュリオシティーは赤道付近のGaleクレーターにも発見した。つまり火星の土壌は全球的に過塩素酸塩を含むことを暗示している。さらに有機物無くしてキュリオシティーの質量分析の結果を説明できないことが示された。有機物は古代の火星にいた生命の痕跡?それとも無機的に合成された?

More Support for an Ocean in Enceladus
エンセラダスに海があることのさらなる証拠
Richard A. Kerr
『土星の衛星の一つ、エンセラダスの氷の外殻の内部には深い海があり、南極の殻の割れ目から液体の水が吹き出していると考えるとカッシーニによる観測結果を説明できる』と研究者は主張している。

Snapshots From the Meeting
会合からのスナップショット
Richard A. Kerr
>Hot time on the ol’ Mars? 
古代の火成の熱い時代?
キュリオシティーは火星にて’生命を構成する’有機物の痕跡を見つけたが、それは生命がいなくても生成されるものである。また地球に最近落ちた火星を起源とするTissent隕石を高温で熱した時に発生する揮発性物質に類似したものが、キュリオシティーの現場実験でも確認されている。しかしそれもまた有機物からも生成されるが、火星の岩石と水とが高温で反応したと考える方が可能性が高いらしい。

>A messenger from Mercury?
水星から来たメッセンジャー?
不思議な隕石がアフリカ北西部で見つかった。水星の表面の特性と似た点はあるものの、形成年代も水星にしては古すぎるし、化学組成の中には水星には似ても似つかない特徴も見られている。水星のものであったら…という期待は高いが、疑問を呈する科学者は多い。

Letters
Drawbacks to Natural Gas
天然ガスの欠点
Sara Souther
エネルギー依存型の社会を維持するために天然ガスの使用が’クリーン’だとしてもてはやされているものの、天然ガスは確かに石油や石炭よりも燃やした時にはよりクリーンだが、生産から消費までの一連の流れの中で発生する炭素の量(carbon footprint)は従来法よりも多い。さらに近年急増するシェールガス生産も近隣の淡水汚染を引き起こしており、アメリカ・ワイオミング州などでは飲料用の井戸水に毒性のある、発がん性の物質が検出されている。

China's Nuclear Power Goals Surge Ahead
中国の原子力目標が急上昇する
X. Jin Yang, Donghui Zhang, Mi Xu, and Jinying Li
チェルノブイリや福島の原発事故の後、原発から離脱する国が続出したが、中国は世界でもっとも原子力エネルギーを推進している。2000年当時2.1GWだった発電量は2020年までに少なくとも70GWに増強される計画となっている。現在17基が稼働しているが、29基が建設中である。さらに2030年には200GW、2050年には400GWになる計画だが、その中には様々なタイプの原発が含まれ、共通した安全基準作成などの課題が残されている。原発は多いにCO2排出削減に寄与し国内のエネルギー需要をより安定にするものの、過度に原発に依存することは危険である。

TECHNICAL COMMENT ABSTRACTS
Comment on “Apatite 4He/3He and (U-Th)/He Evidence for an Ancient Grand Canyon”
”アパタイトの4He/3Heと(U-Th)/Heによる古代のグランドキャニオンの証拠”に対するコメント
Ivo Lucchitta
Flowers & Farley (2012, Science)はグランドキャニオンの形成年代が70Maと古かったことを化学分析から示唆しているが、下流の堆積物の岩相などは17-5Ma頃の形成を示唆している。

Comment on “Apatite 4He/3He and (U-Th)/He Evidence for an Ancient Grand Canyon”
”アパタイトの4He/3Heと(U-Th)/Heによる古代のグランドキャニオンの証拠”に対するコメント
Karl E. Karlstrom, John Lee, Shari Kelley, Ryan Crow, Richard A. Young, Ivo Lucchitta, L. Sue Beard, Rebecca Dorsey, Jason W. Ricketts, William R. Dickinson, Laura Crossey
冷却モデル(cooling model)と地質学データは5-6Ma頃に形成されたことを示唆している。

Response to Comments on “Apatite 4He/3He and (U-Th)/He Evidence for an Ancient Grand Canyon”
”アパタイトの4He/3Heと(U-Th)/Heによる古代のグランドキャニオンの証拠”に対するコメントへの返答
R. M. Flowers and K. A. Farley
2つの研究機関での測定は6つの試料に対する29の一致した結果をもたらした。繰り返すが、グランドキャニオンは非常に古い時代に形成されたことは揺るがない。

Policy Forum
Latin America's Nitrogen Challenge
ラテンアメリカの窒素の課題
A. T. Austin, M. M. C. Bustamante, G. B. Nardoto, S. K. Mitre, T. Pérez, J. P. H. B. Ometto, N. L. Ascarrunz, M. C. Forti, K. Longo, M. E. Gavito, A. Enrich-Prast, and L. A. Martinelli
窒素循環に対する人間活動の影響は、生態系と人間の健康を同時に保護するような持続可能な解決策を必要としている。

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Research
Review
Deep Homology of Arthropod Central Complex and Vertebrate Basal Ganglia
Nicholas J. Strausfeld and Frank Hirth

Reports
Evidence for Two Distinct Populations of Type Ia Supernovae
Type Ia超新星爆発の際立った2つの集団の証拠
Xiaofeng Wang, Lifan Wang, Alexei V. Filippenko, Tianmeng Zhang, and Xulin Zhao

Speleothems Reveal 500,000-Year History of Siberian Permafrost
石筍がシベリアの永久凍土の50万年間の歴史を明らかにする
A. Vaks, O. S. Gutareva, S. F. M. Breitenbach, E. Avirmed, A. J. Mason, A. L. Thomas, A. V. Osinzev, A. M. Kononov, and G. M. Henderson
北半球高緯度の永久凍土には大気中の炭素量の2倍にも及ぶ莫大な炭素が眠っている。温暖化に対する永久凍土の感度については観測期間を超えてはよく分かっていない。シベリアの洞窟から採取された石筍を年代決定したところ、石筍の成長は間氷期のみに限られていた。現在の間氷期と性質が似たMIS11の間氷期には、最北に位置する洞窟の石筍の成長は確認されず、現在よりは温暖だったが、永久凍土を融かすほどには暖かくなかったことも示唆している。

A Long-Lived Relativistic Electron Storage Ring Embedded in Earth’s Outer Van Allen Belt
D. N. Baker, S. G. Kanekal, V. C. Hoxie, M. G. Henderson, X. Li, H. E. Spence, S. R. Elkington, R. H. W. Friedel, J. Goldstein, M. K. Hudson, G. D. Reeves, R. M. Thorne, C. A. Kletzing, and S. G. Claudepierre