Science
VOL 340, ISSUE 6128, PAGES 1-108 (5 APRIL 2013)
EDITORIAL:
Climate Change Conversations
気候変化の会話
Bassam Z. Shakhashiri and Jerry A. Bell
気候変化が何によって起きており、どういった出来事に繋がるかを科学者が説明することが必要とされており、逆に気候変化はすべての人に影響を与えるので、皆がそれを理解しなければならない。科学市民(scientist-citizen)になる必要がある。
【以下は引用文】
Communicating the science of climate change provides one example where the scientific community must do more. Climate change affects everyone, so everyone should understand why the climate is changing and what it means for them, their children, and generations to follow.
“Isn't it the responsibility of scientists, if you believe that you have found something that can affect the environment, isn't it your responsibility to do something about it, enough so that action actually takes place?...If not us, who? If not now, when?”
F. Sherwood Rowland
Editors' Choice
Cicada Cycles
蝉のサイクル
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 110, 10.1073/ pnas.1220060110 (2013).
北米には17年周期、13年周期で一斉に土から地上に上がり、繁殖活動をする北方、南方のセミがいる。そうしたライフサイクルがどういった進化の過程で獲得されたのかはよく分かっていない。DNA分析から新たな説明が得られた。
Vortex Complexity
渦の複雑さ
Nat. Geosci. 10.1038/ngeo1764 (2013).
ESAのVenus Expressは2006年4月以降金星を周回しており、金星大気を観測している。可視・赤外領域の観測から、従来考えられていたよりも南極の渦が複雑であることが分かった。
Marsh Basin Dynamics
湿原の動力学
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 10.1073/ pnas.1219600110 (2013).
沿岸部の塩湿原は温帯や高緯度域に広がっており、豊かな生態系を育んでいる。しかしもともと壊れやすく、場所が場所であるために、人間活動や気候変化の影響に脆弱であると考えられている。Marsh basinとSalt Marshの間に関係があることが見いだされ、さらにそれが Marsh basinの拡大・縮小に寄与することが観測・モデリングから示された。
Unlocking Sulfur’s Secrets
硫黄の謎を解き明かす
J. Geophys. Res. 118, 10.1002/jgrd.50183; Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 110, 10.1073/pnas.1218851110 (2013).
堆積物やエアロゾルなどに記録される硫黄同位体は過去の生物活動や大気化学を推定するのに広く使われているが、その同位体分別を引き起こす過程を説明することが解釈には必要不可欠である。大気化学反応による質量非依存同位体分別(MIF)のメカニズム、およびなぜ始生代のMIFが微生物による硫酸還元反応で隠されなかったかの説明の紹介。
News of the Week
ESA Eyes Forest-Measuring Space Mission
ESAが森林を観測する宇宙ミッションを見る
ESAは先月、全球の森林のバイオマスを観測する衛星(Biomass)の打ち上げを決定した。上空から森林の質量、高さ、構造などを観測することができる。さらに土地利用の変化や森林破壊・回復などによるCO2量の変化も計算することができる。
THEY SAID IT
彼らは言った
“It was becoming clear that there were people in NASA who would be much happier if the ‘sideshow’ would exit.”
「NASAにも'余興'が去ることに対して喜んでいる人間がいることが次第に分かってきた」
気候学者であり気候変動に対する活動家でもあるJames Hansenがニューヨーク・タイムスに送ったメール。彼はNASAを引退することを発表した。
Antarctic Blue Whales Tracked by Their Songs
歌で追跡される南極のシロナガスクジラ
オーストラリアの研究チームはシロナガスクジラの歌を使って彼らを追跡することに成功した。60kmほど離れていても検知できるらしい。さらに2頭に対してタグを付けることにも成功している。計画の最終目標はシロナガスクジラの個体数と分布を推定することだという。
Sorting Through the Bits and Pieces of Plate Tectonics
プレートテクトニクスの欠片を種類分けする
地球深部の最新の地震波画像から、北米大陸西部の山脈の起源をめぐる考えが大きく変わりつつある。
News & Analysis
How to Build a Dream-Reading Machine
夢を読む装置の作り方
Emily Underwood
MRIスキャンで脳の活動を読むことで、睡眠中の人の夢の画像を予想することに成功した。
News Focus
The Deep Earth Machine Is Coming Together
地球深部マシンが一つになる
Richard A. Kerr
その深度は謎に満ちているが、地球深部と表層とを繋ぐ新たな場所が次第に明らかになりつつある。
Policy Forum
What If Extinction Is Not Forever?
絶滅が永遠になくなったらどうなる?
Jacob S. Sherkow and Henry T. Greely
技術の進歩によって絶滅した種を蘇らせることができるようになったとしても、評価すべき倫理的、法的、社会的問題がある。
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Research
Perspectives
Dynamics of Coral Reef Recovery
サンゴ礁復活の動力学
Beth Polidoro and Kent Carpenter
人間活動による負荷が最低限に抑えられた場合、サンゴは白化現象からより回復できるようになる。Gilmour et al.の解説記事。
Modeling the Solar Dynamo
太陽のダイナモをモデリングする
Paul Charbonneau and Piotr K. Smolarkiewicz
数値シュミレーションによって、太陽の磁場活動の周期性に隠れたダイナモ・プロセスに対する我々の考えが変わりつつある。
Reports
An Integral View of Fast Shocks Around Supernova 1006
超新星爆発1006の周辺の高速衝撃波の全体像
Sladjana Nikolić, Glenn van de Ven, Kevin Heng, Daniel Kupko, Bernd Husemann, John C. Raymond, John P. Hughes, and Jesús Falcón-Barroso
Europe-Wide Dampening of Population Cycles in Keystone Herbivores
ヨーロッパ全土にわたるキーストーン種である草食動物の個体数変動の弱化
Thomas Cornulier et al.
ヨーロッパに生息する小型の草食動物のサイクルが1980年代以降崩壊していることは、生態系機能が失われているのではないかという関心を呼んでいる。それが環境変化が原因なのか、内的サイクルが原因なのかはよく分かっていない。ハタネズミの個体数の長期観測記録から、サイクルそのものは残っているが、特に冬の個体数の低下が著しく、結果としてサイクルが減衰傾向にあることが示された。気候の変化が原因と考えられ、将来も減衰は進行し、食物網全体に影響を与えると考えられる。
Detection and Learning of Floral Electric Fields by Bumblebees
ミツバチによる花の電場の感知と記憶
Dominic Clarke, Heather Whitney, Gregory Sutton, and Daniel Robert
ミツバチは個々の花に特有の電場を使って、花を見分け、蜜の在処を記憶している。
Recovery of an Isolated Coral Reef System Following Severe Disturbance
ひどい擾乱のあとの隔離されたサンゴ礁システムの回復
James P. Gilmour, Luke D. Smith, Andrew J. Heyward, Andrew H. Baird, and Morgan S. Pratchett
白化現象などの大きな擾乱ののち、サンゴ礁が回復する際には周囲のダメージを負っていないサンゴからの幼生が流れ着くことが重要であると考えられている。そのため距離や海流の点で隔離されたサンゴ礁は擾乱に対してより脆弱であると考えられる。西オーストラリアのサンゴ礁の調査から、1998年の大規模な白化現象の後、6年間は他から流れ着いた幼生がほとんど存在しなかったものの、12年でサンゴ被覆が9 - 44%増加していたことが分かった。すなわち、白化現象で生き残った現場のサンゴが初期段階のサンゴ被覆の回復に寄与していたこと、そしてその後に生殖活動が盛んになったことを物語っている。従って、この結果から、隔離されたサンゴ礁は大きな環境擾乱からも復活できることが分かった。
Archaeal (Per)Chlorate Reduction at High Temperature: An Interplay of Biotic and Abiotic Reactions
古細菌による高温での塩素酸の還元:生物・非生物反応の相互作用
Martin G. Liebensteiner, Martijn W. H. Pinkse, Peter J. Schaap, Alfons J. M. Stams, and Bart P. Lomans
高熱性古細菌による過塩素酸の還元は、塩素酸イオンを利用する酵素が初期に進化したことを物語っている。