Proceedings of the National Academy of Sciences
☆19 March 2013; Vol. 110, No. 12
Opinion
Climate change as an intergenerational problem
世代をまたぐ問題としての気候変化
Carl Wunsch, Raymond W. Schmitt, and D. James Baker
Review
A post-Kyoto partner: Considering the stratospheric ozone regime as a tool to manage nitrous oxide
ポスト京都議定書のパートナー:一酸化二窒素を管理するツールとしての成層圏オゾンレジームを考慮する
David Kanter, Denise L. Mauzerall, A. R. Ravishankara, John S. Daniel, Robert W. Portmann, Peter M. Grabiel, William R. Moomaw, and James N. Galloway
一酸化二窒素(N2O)は成層圏のオゾンを破壊するだけでなく、温室効果ガスとして温暖化にも寄与する。しかしその排出は1997年の京都議定書によってのみ規制されているに過ぎない。主にオゾンへの影響に焦点を当て、N2Oの放出源や排出規制をめぐる問題をレビュー。
☆26 March 2013; Vol. 110, No. 13
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
New Trans-Arctic shipping routes navigable by midcentury (OPEN ACCESS)
今世紀中頃に通行可能な新たな北極横断航路
Laurence C. Smith and Scott R. Stephenson
近年の北極の海氷の急速な後退の観測事実や、それが今後も継続しそうだという見通しから、大西洋-太平洋をより早く繋ぐ航路としての北極横断航路への期待が高まっている。7つの気候モデルを用いて特に夏の海氷の範囲を予測したところ、今世紀中頃には、普通の船でも通行が可能になり、さらに氷に強い船であれば北極を横断することも可能であること、新たに北西航路(グリーンランド西部を通り、ベーリング海峡に抜ける)までも拓ける可能性があることが示された。
Link between the double-Intertropical Convergence Zone problem and cloud biases over the Southern Ocean
2つの熱帯収束帯問題と南大洋をめぐる雲のバイアスとの関係
Yen-Ting Hwang and Dargan M. W. Frierson
2つのITCZ問題(南半球に現れる北半球のITCZに似た降水帯)は全球気候モデル研究における大問題である。モデル研究や人工衛星を用いた地球のエネルギー収支を使い、その原因を検証したところ、南半球が得る熱を大きく見積もっているモデルほどバイアスが大きいことが示された(より低気圧側に引き寄せられる)。特に南大洋の雲の再現の違いが、モデル間の違いを最もよく説明することが分かった。
Sustainability Science
Shale gas development impacts on surface water quality in Pennsylvania (OPEN ACCESS)
ペンシルバニア州におけるシェールガスの発展が表層水の水質に与える影響
Sheila M. Olmstead, Lucija A. Muehlenbachs, Jhih-Shyang Shih, Ziyan Chu, and Alan J. Krupnick
シェールガスの採掘は地域的な地下水汚染を引き起こすとの報告がある。証拠は不足しているにもかかわらず、地下水汚染の可能性があることがアメリカにおけるシェールガス採掘の規制にも影響している。どの程度の採掘が環境に影響するかを下流の懸濁物質量と塩素イオン濃度から評価した。
Environmental Sciences
Orbital-scale climate forcing of grassland burning in southern Africa
アフリカ南部の草原火災の軌道スケールの気候フォーシング
Anne-Laure Daniau, Maria Fernanda Sánchez Goñi, Philippe Martinez, Dunia H. Urrego, Viviane Bout-Roumazeilles, Stéphanie Desprat, and Jennifer R. Marlon
草原やサバンナは全球の植生の4分の1を覆っているに過ぎないが、その火災によって放出されるCO2量は火災由来の半分を占める。ナミビア沖の堆積物コアを用いて過去170kaの森林火災の履歴を調べたところ、6回の火災の周期が確認された。ITCZの南北シフトに一致しており、歳差運動のフォーシングがその原因と考えられる。従来の考えに反して、温暖・乾燥時よりも寒冷・湿潤時に火災の頻度が増していたことが示された。
※気候が変わり植生が変わったから、燃えやすさに影響した?また河川を通して運搬される過程の変化が堆積物の解釈に影響しないのか?湿潤→増水→より運搬される、など。
☆2 April 2013; Vol. 110, No. 14
Commentaries
Climate extremes and the role of dynamics
気候の異常と動力学の役割
T. N. Palmer
Earth, Atmospheric, and Planetary Sciences
Quasiresonant amplification of planetary waves and recent Northern Hemisphere weather extremes (OPEN ACCESS)
Vladimir Petoukhov, Stefan Rahmstorf, Stefan Petri, and Hans Joachim Schellnhuber
近年北半球は異常な気候をたびたび経験している(2003年夏のヨーロッパの熱波、2010年のロシアの熱波とインダス川の洪水、2011年のアメリカの熱波など)。北半球における中程度の高度の大気循環がより大きな振幅をもつようになったことが原因であることを提案する。
Northern Hemisphere summer monsoon intensified by mega-El Niño/southern oscillation and Atlantic multidecadal oscillation (OPEN ACCESS)
メガ・エルニーニョ・南方振動と大西洋数十年振動によって強化される北半球の夏モンスーン
Bin Wang, Jian Liu, Hyung-Jin Kim, Peter J. Webster, So-Young Yim, and Baoqiang Xiang
北半球の夏モンスーン(NHSM; アジア、アフリカ西部、北米)全体の数十年変動を評価したところ、1970年代後半からの0.4℃の温暖化において、NHSM全体に同期した降水・循環場の数十年変動が見られた。また驚くことに、ハドレー循環およびウォーカー循環も強化していたことが示された(1℃の温暖化で降水が9.5%増加)。強化の主な原因はメガENSO、AMO、両半球の温暖化の差であると考えられる。
Proterozoic ocean redox and biogeochemical stasis
原生代の海の酸化還元状態と生物地球化学的な停滞
Christopher T. Reinhard, Noah J. Planavsky, Leslie J. Robbins, Camille A. Partin, Benjamin C. Gill, Stefan V. Lalonde, Andrey Bekker, Kurt O. Konhauser, and Timothy W. Lyons
原生代に大気中のO2濃度が爆発的に増加したが、その原因についてはよく制約できていない。クロムとモリブデンを用いて海底堆積物の酸化還元状態を復元し、メカニズムを考察。
Environmental Sciences
Projected Atlantic hurricane surge threat from rising temperatures
上昇する温度による予想される大西洋ハリケーン増加の脅威
Aslak Grinsted, John C. Moore, and Svetlana Jevrejeva