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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年10月1日火曜日

新着論文(Ngeo#Oct2013)

Nature Geoscience
October 2013, Volume 6 No 10 pp801-890

Editorial
Déjà vu on climate change
気候変化のデジャブ
最新の地球温暖化に関する報告書は人間活動が地球の気候を変えつつあることに関して自信を増した。しかし、2007年の第4次報告書と違って、それほどのインパクトはなさそうである。

Correspondence
Magma balloons or bombs?
マグマの風船?それとも爆弾?
Thomas Shea, Julia Hammer & Emily First

Reply to 'Magma balloons or bombs?'
「マグマの風船?それとも爆弾?」に対する返答
Melissa D. Rotella, Colin J. N. Wilson, Simon J. Barker & Ian C. Wright

In the press
Deep blue planet
深い青い惑星
Emily Lakdawalla
ホットジュピターを人間の目で見たらどのような色をしているのだろう?HD 189733bはコバルト・ブルーをしているらしい。

Research Highlights
El Niño and nitrous oxide
エルニーニョと一酸化二窒素
Glob. Biogeochem. Cycles http://doi.org/nsf (2013)
土壌から排出される窒素酸化物は温室効果ガスの一種であるが、同時に成層圏オゾンも破壊する物質である。1975年〜2008年にかけての土壌からの窒素酸化物の排出量の季節性や年々変動をモデリングしたところ、ラニーニャのときに比べてエルニーニョのときに排出量が減少していることが分かった。熱帯域の土壌水分量や北半球の温度などと良い相関が確認された。

Primordial mix
原初の混合
Earth Planet. Sci. Lett. 377–378, 324–335 (2013)
地球形成の初期にはマントル対流によって物質はよく混ぜられたと思われるが、その混合についてはよく分かっていない。グリーンランドの岩石の地球化学分析から、34-33億年前によく混ざったことが示唆。

Wonky to the core
コアに対して不安定に
J.Geophys. Res. http://doi.org/nsh (2013)
土星の衛星の一つ、エンセラダスの表層は地質学的に活発であり、コアは岩石的、マントルは氷的であると考えられている(さらに内部に海がある可能性も)。数値モデルから、エンセラダスのコアがいびつな形をしている可能性が示唆。いびつなコアがあると潮汐加熱にも影響し、エンセラダスの南部に内部海が存在できる可能性が生じ、何故南部の方が地質学的に活発なのかの説明になるかもしれない。

Interglacial monsoon
間氷期のモンスーン
J. Clim. http://doi.org /nsg (2013)
MIS13(500ka)には現在の間氷期よりも寒かった(冬は1〜2℃低かった)ことが知られているが、モデルシミュレーションから、当時東アジアモンスーンが強かった可能性が示唆。特に太平洋の東西の温度の傾きとそれに伴う大気循環が変化していたことが原因と思われる。古環境記録とも整合的であるという。

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Research
News and Views
Without phosphate limits
リン酸制限なしに
Matthew Pasek
Adcock et al.の解説記事。
リン酸は生物地球化学の発展において重要な元素である。火星のリン酸鉱物は地球のそれよりも溶解しやすく、すなわち初期火星の水に満ちた環境において栄養塩の役割を負っていた可能性があることが実験から示唆。

A fresh look at Arctic ice sheets
北極の氷床の新たな見方
Julie Brigham-Grette
Niessen et al.の解説記事。
最終氷期にはユーラシア大陸を覆っていた氷床の端はLaptev海に位置していた。地震波のデータから、最終氷期には別の氷床がもっと東に位置する東シベリア海を中心に繰り返しできていたことが示唆。

Ernst Maier-Reimer: The discovery of silence
Ernst Maier-Reimer:沈黙の発見者
Klaus Hasselmann
Ernst Maier-Reimerの死を悼む記事。
>関連した記事
The MPI-M mourns the passing of Ernst Maier-Reimer

Methylmercury manufacture
メチル水銀の生産
Daniel Cossa
Blum et al.の解説記事。
神経毒の一種であるメチル水銀は海洋の食物網において蓄積しやすく、海産物を汚染している。北太平洋で獲られた魚の水銀の同位体記録から、低酸素の亜表層水からほとんどの水銀がもたらされていることが示唆。

Magma for 50,000 years
5万年間のマグマ
W. Roger Buck
Desissa et al.の解説記事。

Review
Three decades of global methane sources and sinks
全球のメタンの放出源・吸収源の30年間
Stefanie Kirschke et al.
 メタンは重要な温室効果ガスの一種であり、産業革命以降の温暖化の20%を担うと考えられている。大気中のメタンはヒドロキシラジカルと反応しオゾンを生成するため、大気の酸化力を低下させる。2000年代初期には大気中のメタン濃度が安定化したが、2006年以降は上昇に転じるなど、その詳しいメカニズムはよく分かっていない。
 分析とモデルシミュレーションを用いて1980〜2010年のメタンの収支計算を行ったところ、2000年代初期のメタン濃度の安定化はおそらく微生物・化石燃料燃焼起源の排出の減少〜安定化によって説明ができることが示唆される。さらに2006年以降の増加はそれらの増加が原因と思われる(その量比は依然として不明なままである)。

Letters
Readily available phosphate from minerals in early aqueous environments on Mars
火星の初期の水環境の鉱物からの容易に利用可能なリン酸
C. T. Adcock, E. M. Hausrath & P. M. Forster
リン酸は生命にとって必須の栄養塩である。しかしながらリン酸鉱物は溶解度が低いことから、地球上での生命の自然発生はリン酸に枯渇した環境をうまく克服することが条件となる。火星で普遍的に見られるリン酸鉱物の溶解実験から、火星の初期にはリン酸が容易に利用可能であったことが示唆。

Similar spatial patterns of climate responses to aerosol and greenhouse gas changes
エアロゾルの温室効果ガスの変化に対する気候応答の似た空間パターン
Shang-Ping Xie, Bo Lu & Baoqiang Xiang
 人為起源のエアロゾルは空間的に不均質であるが、一方の温室効果ガスは全球規模でよく混ざっている。特にエアロゾルに対する気候の応答の予測は不確実性が大きい。
 CMIP5の気候シミュレーション結果から、温室効果ガスとエアロゾルによる地域的な応答が類似していることが分かった。陸上でも海でも大きなスケールでの空間分布は類似している。

Diverse calving patterns linked to glacier geometry
氷河の幾何学に関係した多様な氷山分離パターン
J. N. Bassis & S. Jacobs
数値実験から、氷山分離イベントが氷河の幾何学によって支配されていることが示唆され、グリーンランドと南極が氷山分離に伴う後退に対して特に脆弱である可能性が示唆。

Air–sea temperature decoupling in western Europe during the last interglacial–glacial transition
最終間氷期-最終氷期への変遷におけるヨーロッパ西部の大気海洋の温度の不一致
María Fernanda Sánchez Goñi, Edouard Bard, Amaelle Landais, Linda Rossignol & Francesco d’Errico
 最終間氷期から最終氷期への変遷期(MIA5a/4 transition; 80-70ka)の北半球氷床の成長を支えたメカニズムについてはよく分かっていない。
 イベリア半島沖の海洋堆積物中の花粉・微化石分析から、当時の気温と海水温を推定。気温と海水温の傾きが変化したことによって、水蒸気のソースが変化した可能性が示唆。ヨーロッパ西部を起源とする水蒸気がグリーンランドやヨーロッパ北部、北極圏の氷床成長を助けた可能性がある。

Repeated Pleistocene glaciation of the East Siberian continental margin
繰り返された東シベリアの大陸縁辺の更新世の氷河化
Frank Niessen, Jong Kuk Hong, Anne Hegewald, Jens Matthiessen, Rüdiger Stein, Hyoungjun Kim, Sookwan Kim, Laura Jensen, Wilfried Jokat, Seung-Il Nam & Sung-Ho Kang
更新世の氷期には北極圏の氷床は西ヨーロッパには存在したものの、東シベリアには達していないと考えられていた。Beringian margin(東シベリアの大陸棚)の1,000m深の海底に最終氷期に1,000mを超す氷床が載っていた可能性が地震波探査から示唆。おそらく氷床か棚氷が存在したと思われる。アルベドを初めとして海洋循環や大気循環にも影響したと思われる。

Subduction-zone earthquake complexity related to frictional anisotropy in antigorite
アンチゴライトの摩擦的異方性に関係した沈み込み帯の地震の複雑さ
Marcello Campione & Gian Carlo Capitani

Hydrologic control of forearc strength and seismicity in the Costa Rican subduction zone
コスタリカの沈み込み帯における水による前弧の強度と地震のコントロール
Pascal Audet & Susan Y. Schwartz

Eruption cyclicity at silicic volcanoes potentially caused by magmatic gas waves
おそらくマグマガスの波によって引き起こされている珪質的火山の噴火の周期性
Chloé Michaut, Yanick Ricard, David Bercovici & R. Steve J. Sparks

A mantle magma reservoir beneath an incipient mid-ocean ridge in Afar, Ethiopia
エチオピア・アファールの初期海洋底拡大軸の下のマントル・マグマ貯蔵庫
M. Desissa, N. E. Johnson, K. A. Whaler, S. Hautot, S. Fisseha & G. J. K. Dawes

Fine-scale segmentation of the crustal magma reservoir beneath the East Pacific Rise
東太平洋海膨の下の地殻マグマ貯蔵庫の細かい規模の分裂
Suzanne M. Carbotte, Milena Marjanović, Helene Carton, John C. Mutter, Juan Pablo Canales, Mladen R. Nedimović, Shuoshuo Han & Michael R. Perfit

Hadean mantle melting recorded by southwest Greenland chromitite 186Os signatures
グリーンランド南西部のクロム鉄鉱岩の186オスミウムの履歴に記録された冥王代のマントル融解
Judith A. Coggon, Ambre Luguet, Geoffrey M. Nowell & Peter W. U. Appel

Carbon storage at defect sites in mantle mineral analogues
Jun Wu & Peter R. Buseck

Articles
Methylmercury production below the mixed layer in the North Pacific Ocean
北太平洋の混合層の下のメチル水銀生産
Joel D. Blum, Brian N. Popp, Jeffrey C. Drazen, C. Anela Choy & Marcus W. Johnson
北太平洋の魚の水銀同位体の調査から、混合層の下に住む微生物によるメチル水銀生産が環境中の水銀汚染に大きく寄与していることが明らかに。
>Nature姉妹紙 ハイライト
外洋の水銀源

Independent variations of CH4 emissions and isotopic composition over the past 160,000 years
過去16万年間のメタンの排出と同位体比の独立した変動
Lars Möller, Todd Sowers, Michael Bock, Renato Spahni, Melanie Behrens, Jochen Schmitt, Heinrich Miller & Hubertus Fischer
氷期-間氷期サイクルでは大気中のメタンをはじめとする種々の温室効果ガスの濃度が大きく変動したことが知られている。メタンには様々な吸収源と放出源が存在するため、その原因はいまだに議論が続いている。VostokとDMLのアイスコア中の過去16万年間のメタン濃度とメタン中の炭素同位体を復元。δ13CH4はメタン濃度よりもCO2濃度と同じような変動を示していることが示された。CO2によるコントロールがメタンを排出する湿地などの気候に影響していることが原因と思われる。