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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2013年10月31日木曜日

新着論文(Nature#7473)

Nature
Volume 502 Number 7473 pp593-716 (31 October 2013)

EDITORIALS
All together now
今や全て一緒に
HFCsをモントリオール議定書が排出を規制する人為起源大気物質に含めるという提案は、国際コミュニティーが気候変化に対処しようとしているかどうかのシンプルなテストとなる。
>関連した記事(Science#6151 "News of the Week")
New Curbs on Greenhouse Gases
温室効果ガスに関する新たな束縛

G20は1987年に採択されたモントリオール議定書に基づいて、温室効果の一種である、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)の排出削減を行うことに同意した。HFCsはフロンガスの代替物質として近年排出量が増加しつつあり、オゾン層を破壊する化学物質である。
>関連した記事(Nature#7466 "SEVEN DAYS")
Gas phase-down
ガスの段階的縮小

9/6に、G20がモントリオール議定書のもとHFCsの排出削減に同意することを決定した。バンコクにおいて10月に開かれる会議にて条約の修正がさらに議論されることとなっている。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Illicit gold rush in Peruvian Amazon
ペルー・アマゾンにおける不法なゴールド・ラッシュ
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1318271110 (2013)
人工衛星観測と現地調査から、ペルーのアマゾン熱帯雨林の金の採掘量は1999年から2012年にかけて400%増加し、それが森林破壊の主要因となっていることが示された。2008年に金の価格が上昇すると森林の破壊量も3倍以上になっていた。

Hunting leads to a leap in lizards
狩りがトカゲの飛躍的な増加に繋がる
Proc. R. Soc. B 280, 20132297 (2013)
オーストラリアの砂漠における調査において、トカゲの一種(sand monitor lizards; Varanus gouldii)の個体数が、狩りが盛んなところと盛んでないところとで比較したところ、前者の方が大きいことが示された。先住民族アボリジニーが狩りのために小規模の野焼きをすることが彼らの好む生息地となり、個体数の増加が狩られる数を上回っていることが原因と思われる。

Meandering winds precede heat spells
暑い時期に先立って風が曲がりくねる
Nature Geosci. http://doi.org/ pnt (2013)
NCARの研究者らは、12,000年間の大気循環シミュレーションから、アメリカの熱波の発生の15-20日前に偏西風が曲がりくねっていることを見つけた。このことは、中緯度の大気力学をモニタリングすることによって、より正確に気象現象の長期予測をすることができる可能性があることを意味している。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Air-movement pattern portends US heatwaves
空気の動きのパターンがアメリカの熱波の前触れとなる
Richard A. Lovett
>話題の論文
Probability of US heat waves affected by a subseasonal planetary wave pattern
準季節的な惑星波のパターンによって影響されるアメリカの熱波の発生確率
Haiyan Teng, Grant Branstator, Hailan Wang, Gerald A. Meehl & Warren M. Washington

Why Martian craters are flat
なぜ火星のクレーターは平らなのか
Icarus http://doi.org/pd2 (2013)
 火星のクレーターは不思議なほどに平らであるが、一つの可能性は堆積物で覆われていることである。しかしながら衛星観測からはクレーター内部は岩石に富み、さらに鉱物組成も堆積物のそれとは異なることが示唆されており、矛盾していた。
 Cal Tecの研究者らは隕石衝突によって、火星の地殻が破壊され、深部からマグマが噴き出し、クレーターの底を覆ったのではないかという仮説を提出した。

Human ancestor had small thumbs
人類の祖先は小さい親指を持っていた
Am. J. Phys. Anthropol. 152, 393–406 (2013)
アウストラロピテクス・アファレンシスAustralopithecus afarensis)の指の化石の分析から、従来考えられていたよりも、親指の長さが短かったことが示された。割合的にはゴリラのものに近いらしい。石器をうまく作れるほどには正確にものを握ることができなかったことを示唆している。
※有名な’ルーシー’もアファレンシスらしい。

SEVEN DAYS
※今回は省略

NEWS IN FOCUS
Black holes shrink but endure
ブラックホールは縮むが持ちこたえる
Ron Cowen

Lightning network tested out in Guinea
ギニアにおいて雷ネットワークの試験がスタート
Jeff Tollefson
アフリカで雷を用いて嵐を予報する低コストの計画が、レーダーに基づいた気象サービスに取って代わるかもしれない。

Astronomers revisit dwarf stars’ promise
天文学者は矮星の約束を再考する
Eugenie Samuel Reich
ケプラー宇宙望遠鏡のデータは、小さく、温度の低い星の周りにも生命存在が可能な星がある可能性を物語っている。

Farmers dig into soil quality
農耕従事者は土壌の質を熱心に調べる
Quirin Schiermeier
肥料を土壌に最適化することで、アフリカの農業生産を加速することが可能になるかもしれない。

FEATURE
Astronomy: Southern star
天文学:南の星
Linda Nordling
アフリカ南部に建設される予定の巨大望遠鏡は期待に答えるだろうか?

COMMENT
Environment: Waste production must peak this century
廃棄物の量は今世紀にピークを迎えるに違いない
「劇的な行動なしには、人口増加と都市化がゴミ削減の努力に勝る」と、Daniel Hoornweg、Perinaz Bhada-Tata、Chris Kennedyらは警告する。
>Nature ハイライト
もの言うごみ:廃棄物ピークの見通しは早急な対策を促している

Climate change: Melting glaciers bring energy uncertainty
気候変化:融解する氷河がエネルギーの不確かさをもたらす
「ヒマラヤの氷の融解が水力発電に与える影響について、国家同士が一緒になってその理解に努めなければならない」と、Javaid R. Laghariは言う。
※ヒマラヤの山岳氷河は従来考えられていたよりも急速には融解していないというのが共通理解だったと思います。
>関連した記事(Nature#7412 "News & Views")
Himalayan glaciers in the balance
ヒマラヤ氷河は均衡している
J. Graham Cogley
人工衛星によって高度を測定した観測結果からは、ヒマラヤの氷河はゆっくりとしか後退していないが、質量収支を計算する他の手法についての疑問を投げかけている。
>関連した論文
Rising river flows throughout the twenty-first century in two Himalayan glacierized watersheds
2つのヒマラヤ氷河水系における21世紀を通して上昇する河川流量
W. W. Immerzeel, F. Pellicciotti & M. F. P. Bierkens
Nature Geoscience (Sep 2013) "Articles"
ヒマラヤ氷河は後退しつつあり、質量が失われつつある。気候モデルのアンサンブルから、ヒマラヤ山脈の対照的な2つの水系において、少なくとも2050年までは、氷河は後退しても流量は増加する傾向にあることが示された。
>関連した論文
The State and Fate of Himalayan Glaciers
ヒマラヤ氷河の状態と運命
T. Bolch, A. Kulkarni, A. Kääb, C. Huggel, F. Paul, J. G. Cogley, H. Frey, J. S. Kargel, K. Fujita, M. Scheel, S. Bajracharya,and M. Stoffel
Science (20 April 2012) "Reviews"
ヒマラヤの山岳氷河は他の氷河と同じく後退しつつあるが、カラコルム氷河のように安定しているものもある。地域差が大きく予測は困難だが、総流量に劇的な変化が起こる可能性は低いように思われる。しかし、ゆくゆくは後退し、河川流量の季節差を増大させ、灌漑・水力発電に影響し、災害の引き金となるだろう。

CORRESPONDENCE
Anthropocene: keep the guard up
人類の時代:兜の緒を締める
Tim Caro
Chris Thomasは先日、「気候の温暖化による生物の種数の減少は増加と均衡するはずだ」と述べているが、生物の豊かさは必ずしも数だけでなく、生態系機能としても計られるべきである。

Anthropocene: action makes sense
人類の時代:行動は理にかなっている
Daniel Simberloff & Piero Genovesi
Chris Thomasは先日、「固有種と外来種の混合によって、予期せぬ恩恵が生態系にもたらされる可能性もある」と述べているが、外来種が生態系と経済に与える影響は数十年経ってから顕在化する可能性もあり、過小評価すべきではない。

>話題の記事(Nature#7469 "World View")
The Anthropocene could raise biological diversity
人類の時代は生物多様性を上げるかもしれない
Chris Thomas

IPCC: Climate panel is ripe for examination
IPCC:気候パネルは調査をするのに機が熟している
Mike Hulme & Martin Mahony
IPCCは気候変化の評価に関する世界最高の権威であるものの、その内情は外側には開けていない。IPCCという組織そのものを外部から学術的に研究・検証すべきである。

City trees: Urban greening needs better data
都市の木:都市の緑化はよりよいデータを必要としている
Diane E. Pataki

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Ecology: Drivers of decoupling in drylands
生態学:乾燥地域での分離の駆動力
David A. Wardle
Delgado-Baquerizo et al.の解説記事。
乾燥化が進むとともに土壌中の炭素・窒素・リン循環が変化することが明らかに。いかにして気候変化が土壌の豊かさ・生態系サービスに影響するかに新たな知見が得られた。

Water management: The data gap
水管理:データのギャップ
Blanca Jiménez Cisneros
世界の排水の生産量・処理・利用に関するデータは不足している。こうした状況を打開することで、政策決定者がこの貴重な資源をよりうまく管理する手助けとなるかもしれない。

Marine biology: Coral animals combat stress with sulphur
海洋生物学:動物であるサンゴは硫黄を使ってストレスに対処する
Graham Jones
Raina et al.の解説記事。
サンゴに共生する褐虫藻は光合成とともに硫黄を含んだ物質(DMSPやDMS)を放出するが、その物質は海水温のコントロールに関係している。サンゴもまた同じ物質を生成していることが明らかに。

LETTERS
A uniform metal distribution in the intergalactic medium of the Perseus cluster of galaxies
ペルセウス銀河団の銀河間における均質な金属の分布
Norbert Werner, Ondrej Urban, Aurora Simionescu & Steven W. Allen
ペルセウス銀河団の銀河間ガス中の金属が均質に分布していることは、それが銀河団の形成後と言うよりは、形成前にすでに(おそらく100億年以上前に)金属が濃集していたことを示唆している。
>Nature ハイライト
銀河間に早期に出現した金属

Gradual demise of a thin southern Laurentide ice sheet recorded by Mississippi drainage
ミシシッピ川に記録された厚いローレンタイド氷床南部のゆっくりとした衰退
Andrew D. Wickert, Jerry X. Mitrovica, Carlie Williams & Robert S. Anderson
 最終氷期(LGM; ~21 ka)には北米大陸に巨大な氷床(ローレンタイド氷床)が存在し、全球の海水準はおおよそ130m低下していた。しかしながら、北米氷床の正確な分布は未だ明らかにはなっていない。
 メキシコ湾のミシシッピ川河口域で採取された堆積物コア中の浮遊性有孔虫のδ18Oと氷床・地殻モデルとを組み合わせることによって、最終退氷期の融水の量や氷床分布を推定。
 14.65 - 14.31 kaのMWP-1aには急速に海水準が5.4m上昇したことが知られているが、そのうちローレンタイド氷床南部からミシシッピ川を経由して海へともたらされた融水の量は、δ18Oから推定すると、海水準換算でわずか0.66 ± 0.07m程度であったと推定される。しかしモデルから推定すると、1.6 - 3.6倍も大きな海水準上昇が予測され食い違った。北米氷床の総量(LGMの海水準低下)までうまく再現するにはモデルの結果がもっとも良い推定であると思われる。

Decoupling of soil nutrient cycles as a function of aridity in global drylands
全球の乾燥地域における乾燥度によって変化する土壌の栄養塩循環の分離
Manuel Delgado-Baquerizo et al.
世界各地の224の乾燥地域から得られた土壌サンプルから、乾燥度が土壌の有機炭素量・全窒素量に負に影響する一方で、無機リンの濃度には正に影響することが明らかに。気候変化に伴う乾燥化の増大によって乾燥地域の炭素・窒素・リン循環が分離されることを示唆しており、乾燥地の生態系サービスに悪影響が生じることを示している。
>Nature ハイライト
乾燥は乾燥生態系の栄養バランスを脅かす

DMSP biosynthesis by an animal and its role in coral thermal stress response
動物によるDMSPの生体合成とサンゴの熱ストレス応答における役割
Jean-Baptiste Raina, Dianne M. Tapiolas, Sylvain Forêt, Adrian Lutz, David Abrego, Janja Ceh, François O. Seneca, Peta L. Clode, David G. Bourne, Bette L. Willis & Cherie A. Motti
硫黄循環において重要なDMSP(dimethylsulphoniopropionate; DMSの前駆物質)の生成はこれまで藻類や植物の一部のみしか可能でないと考えられてきたが、動物であるサンゴの幼生もまた共生褐虫藻とともに生成に寄与していることが明らかに。熱ストレスを受けた幼生ほどDMSPを生成することが分かり、最近特定されたDMSPの生体合成に関与する遺伝子の相同分子種も検出された。全球的にサンゴの被覆度は現象傾向にあるが、このDMSP生産によって温暖化による熱ストレスを一部軽減することができると思われる。
>Nature ハイライト
動物であるサンゴも行うDMSP生合成