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2013年10月15日火曜日

耳石の微量元素・同位体変動は何に使えるか(Campana, 1999, MEPS_後半)

長くなったので、2つに分割します。
前半部分の論文概説(メモ)はこちら

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応用例(1)〜資源量決定〜
・耳石の微量元素変動から魚の棲息地の違いを明らかにするには以下の2つの仮定が必要
ア)耳石の形成後、再吸収などによって耳石の元素組成が変化しないこと
イ)環境中の物理的・化学的要因によって耳石の元素組成が決定されること
そういった観点からは、Sr・Ba・Mn・Fe・Pb(おそらくLi・Mg・Cu・Niも?)が水塊の組成・温度の影響を受けやすく、適した元素である。一方で生理学プロセスに影響を受けやすいNa・K・S・P・Clは2番目の仮定が満たされず、環境復元としては適していない。

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応用例(2)〜回遊履歴〜
・魚の回遊履歴を調べる上で力を発揮するのは、環境中の元素/Ca比が大きく変化する場合であり、特に河川⇄海の回遊で顕著。中でもSr/Ca比は鋭敏に反応する。

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応用例(3)〜年齢決定〜
・耳石のSr/Ca変動の環状構造(日輪・年輪など)は「温度の季節・年々変動」「回遊パターン」「分布」「性的な成熟度」「成長速度」「生理学的要因」などによって規定されると思われ、多くの研究で変動があることが報告されている。

・成長縞とSr/Ca変動とが一致しないものもある。

・耳石の元素濃度・同位体にサイクルが見られるものがあるものの、年齢決定のツールとしては目に見える縞のほうを採用した方が確実かもしれない。

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応用例(4)〜環境復元〜
・耳石のδ18Oは水のδ18Oと同位体平衡にあり、温度計として使える。
異なる耳石のδ18Oを比較する際には、水のδ18Oが一定であれば、温度の差異について言及することが可能。ただしその際には絶対値は決定できないことに注意しなければならない。

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応用例(5)〜汚染〜
・汚染に関連した元素は石灰化に関連した他の組織に比べ、耳石にはあまり取り込まれないため、汚染の間接指標としては耳石はあまり適していない。

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応用例(6)〜生理学プロセスの指標〜
δ13C
・もっとも生理学プロセスを明瞭に反映するものはδ13Cである。

・耳石のδ13Cのピークや山なりになった部分は性的な成熟を反映している。

・食事やDICのδ13Cも耳石のδ13Cに影響するものの、代謝速度の影響もまた大きいため、明瞭なシグナルとして見えるかもしれない。例えば年齢とともに代謝が衰えるため、一般にδ13Cは年齢とともに重くなる傾向がある。

Sr/Ca
・ウナギについてはレプトセファルス幼生からガラスウナギへと変態する際に耳石のSr/Caに明瞭な変化が生じることが報告されているものの、一般には確認されておらず、ウナギにのみ例外的に生じている可能性が高い。

・ストレスや生殖活動もまたSr/Caへの影響が報告されているが、予め分かっていない限り、個々のピークの原因をそれらに求めることは難しいと思われる。

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応用例(7)〜化学物質を利用したマーキング〜
・耳石にマークを付けるための方法として、以下の2つがある。どちらもうまくいくことが示されている。
ア)染料または蛍光塗料を利用し、視覚的にマーキングを行う方法
 塩酸オキシテトラサイクリン、アリザリン・レッド、オルセイン、アセタゾラミドなど
イ)高濃度試薬や同位体を用いて化学的なマーキングを行う方法
ストロンチウムやカルシウムなどの同位体が一般に使われている。

・耳石の形成後、マークが外れるという報告はなく、耳石の安定性をさらに支持する。

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今後の展望(※1999年当時)
・Sr同位体は陸の近くでは威力を発揮するかも?
※現に、河川内のSr同位体変動を利用することで孵化地域の解析に有力であることが示されている。例えば、Amano et al (2013, Aquatic Biology)など。

・U同位体は塩分の指標になる?
※どういう使われ方かはよく分かりませんが、河川水・海水の同位体比の差を利用するということでしょうか?

・Pb同位体は汚染源の特定に使える?
※サンゴ骨格などでは既に報告あり。Inoue et al. (2006, Environmental Pollution)など。