GCA
☆Volume 94, Pages 1-290, 1 October 2012
Incorporation of magnesium into fish otoliths: Determining contribution from water and diet
S.H. Woodcock, A.R. Munro, D.A. Crook, B.M. Gillanders
マグネシウムが淡水に生息する魚(小型のニベ類; silver perch; Bidyanus bidyanus)の耳石(アラゴナイトでできている)にどのように取り込まれ、また環境記録として適しているかを調査。30日間Mg濃度を変化させた海水中で飼育実験を行い、餌も26Mgを5段階に濃度調整したものを与え、耳石に海水と餌のどちらのMgが取り込まれているかを調べた。実験後にNd-Yag-UVレーザーを用いたスポット分析でICPMSを用いて気化させ、Mgの質量分析。餌のMg同位体に応じて耳石のMg同位体も変化したが、それほど大きな寄与ではなく、水のMgが8割取り込まれていると考えられる。しかしながら水のMg濃度の変化に対しても耳石の濃度変化は見られず、Mg濃度は生理学的に制御されており、信頼できる環境記録にはならないことを示している。
Sources and input mechanisms of hafnium and neodymium in surface waters of the Atlantic sector of the Southern Ocean
Torben Stichel, Martin Frank, Jörg Rickli, Ed C. Hathorne, Brian A. Haley, Catherine Jeandel, Catherine Pradoux
ネオジウムとハフニウムの放射性元素は海洋循環のトレーサーとして非常に重要なツールの一つである。南大洋の大西洋セクター(ドレーク海峡・ウェッデル海)の表層水のそれぞれの同位体と濃度を測定。濃度はほとんど同じだが、ケープタウン近くでNd濃度が上昇し、南米大陸の風化起源のものが入ってきていると考えられる。またSTFやPFの近くでNdとHfの濃度が低下し、陸源物質が運ばれてこないことと、生物源オパールに沈着したスカベンジングが効果的に機能して除去されていることが原因として考えられる。Nd同位体はだいたい均質で、ケープタウン近くでアグルハス海流によって運ばれた水塊との混合も見られる。Hf同位体もだいたい同じような値を示す。南大洋のNd同位体は感度が良く、風化起源の水塊トレーサーとして使えるかも。
Rare earth element association with foraminifera
Natalie L. Roberts, Alexander M. Piotrowski, Henry Elderfield, Timothy I. Eglinton, Michael W. Lomas
深海底に堆積後の有孔虫の殻に沈着するネオジウム同位体は海水の供給源や流れる方向を復元できるツールとして古海洋学において広く用いられている。しかしながら殻におけるレアアースの分布や酸化還元状態に対する動態などはよく分かっていない。大西洋におけるプランクトン網・沈降粒子トラップ・堆積物コアから得られた様々な浮遊性有孔虫の殻のネオジウム同位体を測定。水柱中でいつ・どのようにしてネオジウムが殻に沈着するのかを調査。2割は生物源でカルサイ結晶格子中に取り込まれているが、残りの8割は水塊中を沈降しながら何度も交換を繰り返し、平衡に達した状態で金属酸化物や有機物に取り込まれている。つまり、沈降中の再溶融によって海水とのネオジウム同位体の交換をしていることになる。堆積物と海水の境界におけるレアアース濃度が最も高く(約10倍)、レアアースが底層水のレアアースの同位体を記録していると考えられる。吸着か複雑なイオンの形で殻の内部に取り込まれている?間隙水中では酸素濃度に応じて還元状態に敏感なイオンほど変化してしまう。それほど敏感でないイオン(例えば3価のレアアース)もある程度は変化してしまう。ネオジウム同位体については底層水の同位体を保存していると考えられる。底層の環境によってはネオジウム同位体が保存されないものが存在するため、ダウンコア記録(深部に保存されている化石の浮遊性有孔虫殻)を解釈する前に、コアサイトを精査することが必要である。
☆Volume 93, Pages 1-314, 15 September 2012
Strontium isotope fractionation of planktic foraminifera and inorganic calcite
Florian Böhm, Anton Eisenhauer, Jianwu Tang, Martin Dietzel, Andre Krabbenhöft, Basak Kisakürek, Christian Horn
沈殿実験によって水とカルサイトのSr同位体の同位体分別を調査。沈殿速度に大きく依存することが分かった。またカリブ海の完新世に相当するコアトップの堆積物から採取された2種類の浮遊性有孔虫(G. ruberとG.sacclifer)の殻のSr同位体はそれぞれ大きく異なる値を示し、サンゴと同じ程度に早いカルサイトの沈殿速度による同位体分別が原因と考えられる。
☆Volume 92, Pages 1-344, 1 September 2012
特になし
☆Volume 91, Pages 1-322, 15 August 2012
特になし
☆Volume 90, Pages 1-322, 1 August 2012
What can paired measurements of Th isotope activity and particle concentration tell us about particle cycling in the ocean?
Olivier Marchal, Phoebe J. Lam
GEOTRACES計画の下で採取された様々な海域における沈降粒子の濃度とThの同位体との関係を調査。水柱における溶存態のものや大小の粒子における濃度をモデリングし、観測と最少二乗法で擦り合わせ。鉛直方向のサンプリングが密に行われているものほど相対的な誤差が小さくなる。海水中の沈降粒子を研究する際には228Th、2230Th、234Thすべての同位体を測定するだけでなく、228Raや濾過した粒子も併せて測定することを推奨する。