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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
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2012年9月21日金曜日

新着論文(Nature#7416)

Nature
Volume 489 Number 7416 pp335-466 (20 Sep 2012)

EDITORIALS
Extreme weather
極端な気象
様々な企業が将来温暖化によって起きる(既に起きつつある)と考えられている異常気象(洪水、熱波、海岸浸食など)に注目しているが、異常気象を地球温暖化に結びつける前に、よりよいモデルの開発が必要とされている。個々の諸過程を正しく理解することで、気候モデルの確実性を増し、自信をつける必要がある。
 気候モデルは1年単位の気象予測に使用するのではなく、既に起きた異常気象の原因解明にこそ使うべき?しかしながら原因究明がそもそも可能か、誰にとって得があるのか、という問題も。

Return to sender
送り主への返送
研究に使用する動物の空輸の停止命令が生物医療研究に切迫した脅威をもたらしている。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Stellar duo tests Einstein’s theory
デュオの星がアインシュタインの理論を試す
Astrophys J. 757, L21 (2012)
徐々に軌道が縮小しつつある2つの白色矮星のペアはアインシュタインの一般相対性理論の正しさを支持する振る舞いをしている。非常に近接した軌道を周回する2つの星は重力波の放出によって徐々にエネルギーを失い、年間0.26ミリ秒で軌道が縮小すると予測されている。13ヶ月に渡る観測から、理論的な予想と同等の早さで軌道が縮小していることが分かった。

Memory boost with sleep
記憶は睡眠によって加速される
Nature Neurosci. http://dx.doi. org/10.1038/nn.3203 (2012)
睡眠によって最近起きた出来事を再現することで記憶がより定着することがマウスの実験から明らかになった。音で異なるレーンを走るよう訓練されたマウスが眠っている時に音を鳴らすと、海馬のニューロンに反応が見られ、特に記憶野で訓練を再現しているような兆候が見られたという。
※コメント
睡眠中に訓練を再現はしているけど、それで訓練の成果は確かに上がった(記憶定着した)のか??先日京大の研究チームが寝る子ほど海馬の発達が良いという研究成果を発表したというニュースをテレビで見ました。

Glowing is rare on the sea floor
海底では生体発光は稀
J. Exp. Biol. 215, 3335–3343; 3344–3353 (2012)
海底に生息している生物は同じく海底に生息している自由に泳げる生物に比べて生体発光をしないらしい。バハマの500-1,000m深に生息している生物をドレッジによって採取し調べたところ、およそ4倍の割合で後者が発光したという。
また他の研究では、同じくバハマの500-700m深に生息する生物を採取し暗闇で観測を行ったところ、海水によって減衰した太陽光や生体発光に近い波長帯をうまく目で感知している甲殻類がいることが分かった。ただし動作はうまく感知できないらしい。

Volcanic signs in Martian clays
火星の粘土鉱物に火山活動の兆候が
Nature Geosci. http://dx.doi. org/10.1038/ngeo1572 (2012)
火星の表面の粘土鉱物は火星の気候がかつて温暖・湿潤だったというよりはむしろ火山活動の結果かもしれない。粘土鉱物は水の存在下で火成岩が変質することでも生じるが、水に富んだマグマが固結することによっても生じる。フレンチ・ポリネシアの陸上にある溶岩は火星の鉱物と似たスペクトルを持つという。従って火星は必ずしも湿潤だった訳でなく、単に火山が多かっただけかもしれない。

Tagging molecules with fluorine
蛍光物質で分子をタグづける
Science 337, 1322–1325 (2012)
不活発な炭素-水素結合を蛍光する手法が開発された。マンガン・ポルフィリン(manganese porphyrin)を触媒に用いることで実現したらしい。あらゆる生体高分子を画像化することができるようになるかもしれない。

One million years of rubbing rocks
百万年間研磨された石
Geology 40, 851–854 (2012)
地球で最も乾燥した地域の一つ、アタカマ砂漠では妙に表面が滑らかな巨礫が確認されていたが、これは地震がきっかけとなって石同士が研磨された結果かもしれない。M5規模の地震は4ヶ月に一回は起きており、過去130万年間の間に40,000-70,000時間はそうした研磨を受けていた可能性があるという。

FEATURES
Burn out
焼き尽す
Michelle Nijhuis
アメリカ西部の森林は森林火災・気候変動・昆虫の大量発生による脅威にさらされている。生態系が激変しつつある。また大規模な森林火災の発生件数は年々増加傾向にある。

COMMENT
Plant perennials to save Africa's soils
アフリカの土壌を守るための多年生の植物栽培
「多年生の作物を栽培することがアフリカの土壌の健康を保護し、食料生産を増加させる」と、Jerry D. Glover, John P. Reganold, Cindy M. Cox.は言う。

BRIEF COMMUNICATIONS ARISING
Intensified Arabian Sea tropical storms
Bin Wang, Shibin Xu & Liguang Wu

Evan et al. reply
Amato T. Evan, James P. Kossin, Chul ‘Eddy’ Chung & V. Ramanathan
「アラビア海における嵐の頻度が増加したのは人為起源のブラックカーボンや硫化物などのエアロゾルの増加が原因」と発表した論文(Evanet al., Nature Vol. 479, pp. 94–97; 2011)に対するコメントとそれに対する応答。

NEWS & VIEWS
Searching for the cosmic dawn
銀河の夜明けを探る
Daniel Stark
ハッブル宇宙望遠鏡と「宇宙のレンズ」、つまり重力レンズ効果を組み合わせて、ビッグバン後5億年にさかのぼると考えられる銀河の、大きく拡大された姿が明らかにされた。この知見によって、銀河形成の初期段階を垣間見ることができる。

Insects converge on resistance
毒耐性に見られる昆虫の収斂進化
Noah K. Whiteman & Kailen A. Mooney
3億年にわたって分岐し続けた昆虫種が、植物のカルデノリド毒素に対する耐性をもたらす同一の単一アミノ酸置換を進化させてきていることは、収斂進化のめざましい例の1つである。

ARTICLES
A magnified young galaxy from about 500 million years after the Big Bang
ビッグバンの約5億年後の拡大された若い銀河
Wei Zheng et al.
ビッグバン後、約5億年が経過したときの初期宇宙の銀河はその暗さからこれまで十分に観測がなされてこなかったが、そうした暗い銀河は初期宇宙にはふんだんに存在し、重力によって拡大されており、星間物質を再イオン化した放射源として支配的であった可能性がある。

Oceanic nitrogen reservoir regulated by plankton diversity and ocean circulation
プランクトンの多様性と海洋循環によって調整されている海洋の窒素リザーバー
Thomas Weber & Curtis Deutsch
海洋性植物プランクトンの平均的な窒素:リン比(16N:1P)は、平均的な海水の栄養塩含有量(14.3N:1P)に近い値となっている。この状態は海洋の窒素収支に対する生物学的制御によって生じると考えられている。脱窒細菌によって生物が利用可能な窒素が除去されてしまうと、他の生物の生育にも重要な硝酸塩を作る(窒素固定)ような植物プランクトン(diazotrophic phytoplankton)が卓越する。プラントンの窒素・リン比を一定とし、海洋循環を組み込んだモデルから、このフィードバック過程が観測の2倍以上に相当する硝酸塩欠乏を引き起こすことが示された。見落としている現象のうち決定的なものは、最近種ごとに大きく異なることが示された個々の植物プランクトンごとのN:P需要である。そうした違いをモデルに組み込むと、海洋の窒素含量は増加し、プランクトンの平均的なN:P比を超える可能性すらある。それはこれまであり得ないと考えられてきたことで、浅い海洋循環によって妨げられている。従って、「プランクトンの多様性」とそれを繋ぐ「海洋循環」が海洋における固定された窒素の利用効率を決定していることを示している。

Afternoon rain more likely over drier soils
午後の雨は乾いた土壌の上に降りやすい
Christopher M. Taylor, Richard A. M. de Jeu, Françoise Guichard, Phil P. Harris & Wouter A. Dorigo
陸においては植生による被覆や土壌水分量が放射エネルギーの分配に影響を与えている。乾燥していると、土壌の水分不足が蒸発を抑制し、大気下部を暖め、乾燥化させる。従って土壌水分量と大気下層の対流や気温・湿度との間にはフィードバック過程が存在する。しかしながら、土壌水分量が世界各地における大気の対流にどのような影響を及ぼしているかは観測の不足とモデルにおける不確実性の問題からよく分かっていない。観測記録の分析から、午後の雨は周囲よりも乾燥した地域にこそ降りやすいことが分かった。半・乾燥化したような地域にこそ特徴が顕著に見られるという。多くの気候モデルで見られるような、湿った土壌ほど雨を降らせやすいという正のフィードバック過程は研究対象地域では見られなかった。従って、この知見が「なぜ総観規模のモデルで干ばつが現実よりも多く再現されてしまうのか」の一つの説明になるかもしれない。