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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年11月25日日曜日

新着論文(Science#6110)

Science
VOL 338, ISSUE 6110, PAGES 1001-1116 (23 NOVEMBER 2012)

EDITORIAL
Combating Hunger
飢餓を失くす
M. S. Swaminathan
イギリス政府は、次のブラジル・オリンピックまでに栄養失調で苦しむ2,500万人の子供に対して援助を行うことを決定した。

Editors' Choice
The Two Faces of the Moon
月の二面性
Nat. Geosci. 5, 775 (2012).
地球からは見えない月の裏側は玄武岩でできた平原が少ない(左側にはある)。その原因は月の形成時のジャイアント・インパクトにあると考えられており、この考えは地殻の厚さや放射性元素の分布などからも支持されている。かぐやの観測記録の解析から、天体衝突の際にマントル上部と地殻が表面にえぐり出されることで生じると考えられる「カルシウムに欠乏した輝石」が、月の衝突海盆(南極エイトケン海盆:South Pole - Aitken basinと雨の海:Imbrium basin)に広く分布していることが分かった。また月の裏側の左側の嵐の大洋(Procellarum basin)にも同様の鉱物が広く分布していることも分かった。大規模な衝突によって月の非対称性を説明できるかもしれない。

A One-Two Punch
ワン・ツー・パンチ
J. Anim. Ecol. 10.1111/ j.1365-2656.2012.02034.x (2012).
気候変動によって生物の生息域は生物それぞれが適応してきたであろう環境に応じて変化することが予想される。温暖化が進行することで一つの生物だけが変化するのではなく、生態系の相互作用の結果として作用すると考えられる。地中海に生息する2種類の熱帯魚のキュウセン(wrasse)について面白い相互作用の例が得られた。(※理解できず)

News of the Week
Research, Restoration Get Share Of Record BP Oil Spill Fine
研究と保全が記録に残るBPの石油流出罰金の分け前を得る
2010年にメキシコ湾で起きたDeepwater Horizon石油流出事故の損害賠償で石油の巨大企業BPが40億ドルを支払うことを決定したことで、環境を回復するための研究は潤うことになる。その金の半分はアメリカ政府の研究基金へ、残りのうちの3億5千万ドルはNational Academy of Sciencesがゆく30年間将来の石油流出の危険性を減じる研究や環境モニタリングを改善する研究に利用される。しかし支払いはこれだけに留まらず、さらに250億ドルの罰金が市民へと支払われる予定だという。

Millions of Dollars For Extraterrestrial Hunt
地球外生命体探しのための数百万ドルのお金
資金が不足していたことで危機に立たされていた、地球外の知的生命体を探査しているSETI Institute in Mountain ViewはFranklin Antonioによる350万ドルの献金を受けた。その資金は地球外の文明からのシグナルを探査する望遠鏡の感度を改善するために利用される。

Cap-and-Trade for California
カリフォルニアに対するCap-and-Trade
カリフォルニアはアメリカとしては最初のCap-and-Tradeシステムを開始した。このシステムによってカリフォルニアのCO2排出の85%が規制される。

Einstein’s Brain Reveals Genius
アインシュタインの脳が天才を明らかにする
1955年にアインシュタインが死んだとき、病理学者のThomas Harveyはアインシュタインの脳を様々な角度から撮影し、写真を保管していた。それらの写真と他の85人の脳とを比較したところ、アインシュタインの脳が特殊であることが分かった。サイズは平均的であるものの、特殊なひねりや折りたたみが見つかった。脳の左側は普通の人と比べて大きく、計画性・意識集中・我慢強さなどを司る部位に相当するという。
より詳細な記事(英語)

Double Whammy for Threatened Salamander
危機に瀕したトカゲに対する2つの災難
現在絶滅の危機に瀕しているCalifornia tiger salamanderはbarred tiger salamanderと異種交配することができる。餌を制限した飼育実験から、交配種の方がオリジナル種よりも生きられることが示された。原因の一つは餌のサイズにあるかもしれない。殺虫剤によってトカゲの餌となる無脊椎動物などが死滅すると、体長が小さいオリジナル種は大きい餌を食べることができず、飢餓してしまった可能性がある。

News & Analysis
As Open Access Explodes, How to Tell the Good From the Bad and the Ugly?
オープンアクセスが急増するが、どうやって良いもの、悪いもの、醜いものを見分ける?
Martin Enserink
先月のミーティングにて、科学基金、出版社、司書、科学雑誌の編集者などがオープンアクセスの科学雑誌の2つの基準について話し合った。しかし明確な答えには至らなかった。

News Focus
Making Sense of a Senseless Act
思慮を欠いた行動に理由をつける
Mara Hvistendahl
アジアの研究が人々を自殺へと駆り立てる要因について長く信じられてきた考えを覆しつつある。

Korea Tackles a Mushrooming Problem
韓国はマッシュルーム問題に取り組む
Dennis Normile
「急速な社会経済の変化」「高齢者増加による負担」「文化的な影響」のすべてが韓国における自殺の急増に寄与しているかもしれない。

Letters
Climate Change–Induced Salinity Threatens Health
気候変動が原因の塩分が健康を脅かす
Paolo Vineis and Aneire Khan
気候変動によって沿岸部の海水準上昇や高潮などが増加しつつあり、それが低所得国の沿岸や河川の河口付近の塩害・飲料水への塩分の混入などを招き、大勢の人々の健康を脅かしている。バングラデシュではベンガル湾からの海水の流入によって飲料水中の塩分濃度は雨期に4 ppt、乾季に13 pptとなっており、アメリカの環境保護機関やWHOが定める健康基準値を上回っている(それぞれ0.02ppt、0.2ppt)。長期間の塩分の摂取は血圧の上昇や他の病気を招く。そうした沿岸部の塩分濃度の上昇が中国・カリフォルニア・オランダ・オーストラリア・ブラジルなどで既に報告されている。雨水採集や太陽光を利用した蒸留などの対策を性急に講じる必要がある。

Journals: Increase Revisions, Not Rejections
科学雑誌:リジェクトではなく、リビジョンを増やせ
Flows of Research manuscripts among scientific journals reveal hidden submission patterns (2012, science)”の中で、「一度リジェクトされて他の雑誌に出した論文ほどその後引用される回数が一度でアクセプトされた論文よりも多い」ことが示された。「リジェクトされることで論文の質が高まる」ということだが、リジェクトすることは科学雑誌に対しては利益とならない。リジェクトではなくリビジョンすることでも論文の質を上げることは十分可能である。

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Research
Perspectives
Carbon Storage with Benefits
利益を伴う炭素貯留
Saran P. Sohi
Biochar(木炭に似た物質)は農業だけでなく気候変動の緩和の両方に恩恵を与える可能性がある。

Imaging the Deep Earth
地球深部を画像化する
German A. Prieto
地震波のデータの解析手法を改善することで、地球深部の詳細な画像化が可能に。

The Origin of the Moon
月の起源
Alex N. Halliday
モデルシミュレーションによって、どのようにして月と地球が形成されたかに関する新たな像が浮かび上がった。

Research Article
Making the Moon from a Fast-Spinning Earth: A Giant Impact Followed by Resonant Despinning
早く回転する地球から月を作る:ジャイアント・インパクトに次ぐ共鳴による回転速度低下
Matija Ćuk and Sarah T. Stewart
月と地球が同じ起源であるとすると、それぞれの同位体組成は同じでなければならない。しかしモデル研究ではジャイアント・インパクト後の月の同位体組成は変化してしまうことが知られている。従来のモデルでは月が形成される際に角運動量が現在と同じことを仮定しているが、新たに初期に地球が現在よりも早く回転していたことをモデルに組み込んだところ、うまく地球のマントル組成を持つ月形成円盤が出来上がった。その後、太陽と月の軌道共鳴(orbital resonance)によって地球-月システムの角運動量が減少し、現在の状態に変化したことが示唆される。
[シミュレーションの動画]
http://www.youtube.com/watch?v=H2aNTLWgYwo
http://www.youtube.com/watch?v=3JNNKQrfXzk&feature=related

Reports
Forming a Moon with an Earth-like Composition via a Giant Impact
ジャイアント・インパクトを介して地球上の組成の月を作る
Robin M. Canup
ジャイアント・インパクト仮説に基づいた従来の研究では、月の素となった物質は大半が衝突した天体が起源であると推定されていた。しかし酸素同位体に関しては地球と月の岩石の同位体は類似しており、仮説における大問題として存在していた。従来よりも大きな天体を衝突させると、地球と月の組成を上手く再現できるような月形成円盤ことが分かった。そうした仮説の下では、太陽との軌道共鳴を通して地球-月システムが角運動量を減少させることが必要になる。

Body-Wave Imaging of Earth’s Mantle Discontinuities from Ambient Seismic Noise
雑微動を用いた地球のマントル不連続帯の実体波による画像化
P. Poli, M. Campillo, H. Pedersen, and LAPNET Working Group
”雑微動の相関解析(Ambient Seismic Noise Correlation)”がリソスフェアの画像化に広く使用されているが、同様の手法を用いてより深い地球内部の画像化を行った。マントルの変移層の不連続帯(410km、660km深)においてP波のnoise correlationが観測された。つまり地震波なしにマントルの変移層を高解像度で画像化することができることが分かった。また410km深のマントル境界は660km深のマントル境界よりも3倍厚いことが明らかになった。

Flows of Research Manuscripts Among Scientific Journals Reveal Hidden Submission Patterns
科学雑誌間の研究原稿の流れが隠れた投稿のパターンを明らかにする
V. Calcagno, E. Demoinet, K. Gollner, L. Guidi, D. Ruths, and C. de Mazancourt
923の生物科学関連の科学雑誌における2006年から2008年にかけての論文の出版までの道筋を調査したところ、一度リジェクトされ、再度別の科学雑誌に出版された雑誌ほど引用されやすいことが分かった。また異なる雑誌コミュニティー間の場合だと出版後の引用は少ないことも分かった。

A Global Pattern of Thermal Adaptation in Marine Phytoplankton
海洋植物プランクトンの温度に対する適応の全球的なパターン
Mridul K. Thomas, Colin T. Kremer, Christopher A. Klausmeier, and Elena Litchman
海水温上昇は植物プランクトンによる生物生産性や種組成を大きく変え、さらには生物地球化学循環にまで影響すると考えられる。将来予測は現在の温度変動が植物プランクトンにどのような影響を与えているかの理解に大きく依存する。それぞれの緯度ごとに棲息する植物プランクトンの最適な温度を求めたところ、進化的な適応の結果として分布が決まっていることが示された。また将来のさらなる温暖化によって極側にニッチが移動することが分かった。しかし熱帯種については進化的な応答ができなければ、その多様性が減少することが分かった。