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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年11月8日木曜日

新着論文(Nature#7423)

Nature
Volume 491 Number 7423 pp159-294 (8 November 2012)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Power from the ear
耳から得る電力
Nature Biotechnol. http://dx.doi. org/10.1038/nbt.2394 (2012)
内耳の電気ポテンシャルを利用する発電機が開発された。もともと音を電気信号に変換する器官を利用している。ブタで実験したところ、5時間で1ナノWの電力(小さなラジオ・トランスミッターを動かすには十分らしい)を得ることができた。耳が聞こえない人の治療に役立つ可能性があるという。

The rapid melt of Greenland
グリーンランドの早い融解
Geophys. Res. Lett. http://dx.doi. org/10.1029/2012GL053611 (2012)
NASAのJPLによる3つの衛星観測データを用いた分析から今年の夏のグリーンランド氷床の融解は全体の98.6%において起き、前回同様の規模で融けたのは1889年というほど稀なものであった。融解の原因は氷床の端から(稀な)暖かい空気が内陸までもたらされたことと考えられている。

First flying fish fossil found
最初の飛ぶ魚が見つかった
Proc. R. Soc. B http://dx.doi. org/10.1098/rspb.2012.2261 (2012)
中国南西部の200-250Maの地層(三畳紀)から発見された化石のPotanichthys xingyiensisは初めて空中を飛んだ魚と考えられている。大きさはおよそ15センチで、胸びれ(pectoral fins)を主翼に、腹びれ(pelvic fins)を副翼に使って飛行していたらしい。また大きく非対称な尾びれが空中に飛び出すことを可能にしたらしい。P/T境界後の新たな生物界で獲物から逃げるための適応だったと考えられるが、P/T境界における95%の海洋生物の絶滅後、従来考えられていたよりも早く生物界の回復が起きていた可能性もあると指摘されている。
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Litter bugs leave Arctic legacy
ゴミが北極に伝説を残す
Mar. Pollut. Bull. http:// dx.doi.org/10.1016/j. marpolbul.2012.09.018 (2012)
北極海の海底に存在するゴミの量が増えつつある。ほとんどはプラスチック製品であり、そのゴミの周りにイソギンチャクやカイメンが付着しコロニーを形成している。海氷の後退によって北大西洋海流によって運ばれるゴミが北極海にまで到達しているのが原因と考えられる。次第に蓄積しつつあるという。

SEVEN DAYS
Climate services
気候サービス
世界気象機関(WMO)は’Global Framework for Climate Services’を始めることに同意した。気候が作物生産や災害予測などに与える影響などの情報を管理する予定。

Food emissions
食品からの排出
Consultative Group on International Agricultural Research (CGIAR)による研究によると、人間による食料システム(肥料・食品保管・パッケージングなど)は全温室効果ガス排出のうちの3分の1を負っているらしい。気候変動緩和には農業管理が中心的な役割を負っていると考えられている。

No Mars methane
火星にメタンがない
NASAのCuriosityを操作する研究チームは火星にメタンが検出されたなかったと報告した。メタンは隕石衝突や地質学的な化学反応(?)の結果としても生じるが、それが存在すればバクテリア生命存在の証拠となると期待されていた。

GERMANY’S SOLAR SURGE
ドイツの太陽発電の広がり
補助金が3分の1に削減されたにもかかわらず、ドイツにおける太陽発電ブームは止むことを知らない。既に30GWを超えており(総発電量は80GW)、世界第2位の太陽発電国であるイタリアの2倍もの発電量である。しかし一方で電気料金が値上がっているという問題も。

NEWS IN FOCUS
Hopes linger for Mars methane
火星のメタンの存在に対する希望がなかなか消えない
Eric Hand
地球からの観測では火星の大気に45ppmのメタンが存在する報告がなされていたが、Curiocityの送ってきたデータには少なくとも4ppb以下のメタンしかない(おそらくゼロ)ことが報告されている。メタンは生物の痕跡とも考えられるため、一部の科学者は落胆している。ヨーロッパもまた2016年に火星に探査機を送り込むことを予定しているが、メタン以外の気体の分析に期待が寄せられている。

FEATURES
Melting in the Andes: Goodbye glaciers
アンデスの融解:さようなら、氷河
Barbara Fraser
研究者達は後退しつつある山岳氷河が下流に住む何百万人もの人々の水利用にどういった影響を与えるかを決定するためにしのぎを削っている。

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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Meet our closest neighbour
我々に最も近い隣人に会う
Artie P. Hatzes
地球と同程度の質量を持ち、最も太陽系に近い恒星(αセンタウリB)を周回する系外惑星の発見は、技術と興奮の結果である。

Bacterial power cords
バクテリアの電力コード
Gemma Reguera
海底堆積物表層における地球化学反応はより深部の化学反応と結合している。バクテリアによる数センチのフィラメントが電気コードとして表層と深層の代謝を繋いでいるらしい。

Cosmic explosions in the young Universe
若い宇宙における星の爆発
Stephen J. Smartt
ビックバンから15億年後の宇宙で起きていた2つの超新星爆発の発見は、若い宇宙ではそれが普遍的であったことを示唆している。

ARTICLES
An Earth-mass planet orbiting α Centauri B
αセンタウリBの周りを周回する地球質量の惑星
Xavier Dumusque et al.
太陽系から最も近い恒星であるαセンタウリBの周りを周回する地球と同程度の質量を持つ惑星(ただし生命存在可能領域からは外れている)は恒星から0.04AUの距離を3.236日で1周している。(1AUは太陽と地球間の距離に相当)

Filamentous bacteria transport electrons over centimetre distances
センチメートルの距離にわたってフィラメント状のバクテリアが電子を輸送する
Christian Pfeffer et al.
海底堆積物表層の酸化反応は堆積物深部の無酸素環境下における硫黄酸化反応と結合している可能性がある。フィラメント状のバクテリアが電子を輸送する電気コードの役割を果たしているらしい。こうした生きた電気コードの存在は自然における相互作用の新たな次元を切り開くとともに、科学技術への応用につながる可能性がある。

LETTERS
Superluminous supernovae at redshifts of 2.05 and 3.90
2.05と3.90の赤方変移における非常に明るい超新星爆発
Jeff Cooke et al.
2.05と3.90の赤方変移(光が地球に届くまでの間に宇宙空間自体が伸びて波長が引き伸ばされるため生じる)における非常に明るい超新星爆発が発見された。これは赤方変移の検出限界を超えている。ビックバン後にできた初めての星の死であると考えられる。

Greenland ice-sheet contribution to sea-level rise buffered by meltwater storage in firn
万年雪内部の融水の貯蔵によって緩衝される、グリーンランド氷床融解が海水準上昇に与える寄与
J. Harper, N. Humphrey, W. T. Pfeffer, J. Brown & X. Fettweis
近年グリーンランド氷床は融解する傾向にあるが、融水は必ずしも海へと直接流出しているわけではなく、万年雪の隙間にトラップされていることが分かった。その量は322-1289Gtと推定されているが、今後数十年間はこの隙間を埋めるのに融水が必要であるため、グリーンランド氷床の融解速度は遅められると推測される。しかしながら、隙間が埋まった後は氷が回復するのには時間がかかるかもしれない。

Mechanisms for oscillatory true polar wander
揺れ動く真の極移動のメカニズム
J. R. Creveling, J. X. Mitrovica, N.-H. Chan, K. Latychev & I. Matsuyama
長期間にわたって実現した楕円さの超過分と破壊されたリソスフェアにおける弾性的な応力とが組み合わさって地球の自転軸が安定化したことが、過去数十億年間の地球史における真の極移動の説明として考えられる。