Main contents


☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English

2012年11月14日水曜日

新着論文(NCC#Nov2012)

Nature Climate Change
Volume 2 Number 11 (November 2012)

Editorial
Mission emissions
全球的な・国ごとの・地域的な二酸化炭素排出削減の目標を達成するには一致協力した行動が必要である。

Correspondence
Asymmetric effects of economic growth and decline on CO2 emissions
経済成長と二酸化炭素排出削減の非対称な効果
Richard York

China's uncertain CO2 emissions
中国の不確かなCO2排出
Bing Xue & Wanxia Ren

Carbon mismanagement in Brazil
ブラジルにおける炭素の間違った管理
Paulo Roberto Pagliosa, André Scarlate Rovai & Alessandra Larissa Fonseca

Commentary
Carbon emissions trading in China
中国における炭素放出貿易
Alex Y. Lo
構造上の問題はあるものの、中国は自国内における炭素放出のトレーディングシステムを導入する。

Research Highlights
A climate for fire
火事に対する気候
Glob. Biogeochem. Cycles http://doi.org/jgs (2012)
山火事の発生頻度などは気候によって左右されるが、気温や湿度に対する感度はよく分かっていない。山火事によって発生するエアロゾルや温室効果ガスなどは気候にもフィードバックするため、その理解は気候モデルを改善することに繋がる。
>元の論文はこちら
Predictability of biomass burning in response to climate changes
A.-L. Daniau et al.

Global implications for Africa
アフリカに対する全球の示唆
Climatic Change http://doi.org/jgt (2012)
気候変動緩和に向けて様々な政策決定がなされているものの、アフリカにおける気候変動シナリオははっきりしていない。オクスフォード大の研究チームが将来アフリカの気温が1〜4℃上昇した場合に起きうることをモデルで再現したところ、2℃以上の温度上昇で降水が大きく変化することが予想された。

Extreme melt
異常な融解
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/jhb (2012)
NASAの研究グループが3つの衛星観測記録を用いて今年の夏のグリーンランド氷床の融解した地域のマッピングを行った。それによると2012年7月12日に氷床の表面の98.6%で融解が起きており、測候所や気温の記録とも整合的であるという。この規模の融解は中世の気候変調期と1889年以来であるという。

Wind energy tariffs
風力発電の料金
Environ. Resour. Econ. http://doi.org/jgv (2012)
EUは2020年までに再生可能エネルギーを全体の20%に引き上げることを目標としている。発電事業者は再生可能エネルギーの価格が低い場合、市場価格と政府の決定した税金の差額を受け取ることになっている(fixed feed-in tariff; FIT)。モデルを用いてFITの仕組みが北欧の風力発電によって利益が出るか・出ないかが計算された。仕組みだけでは目標を達成できないことが示唆される。

Acidic coasts
酸性化した沿岸
Environ. Sci. Technol. http://doi.org/jgz (2012)
沿岸部では海洋酸性化とともに河川から流入する人為起源の栄養塩が藻類のブルーミングを引き起こし、生産された有機物が低層で分解することで底層水の酸素が消費され、二酸化炭素が放出される。生物地球化学モデルを用いて沿岸部の酸性化を再現したところ、有機物分解によってpHが0.25 - 1.1下がることが示された。この過程は沿岸部の生態系や漁業に大きく影響すると考えられる。
>元の論文はこちら
Eutrophication Induced CO2-Acidification of Subsurface Coastal Waters: Interactive Effects of Temperature, Salinity, and Atmospheric PCO2
William G. Sunda and Wei-Jun Cai

News and Views
Snowfall brightens Antarctic future
降雪が南極の未来を明るく照らす
Charles S. Zender
残雪は気温が上がるとより太陽の光を吸収する。降雪の増加を通して南極平原(Antarctic Plateau)は21世紀を通してこの効果を打ち消すかもしれない。

Lake warming mimics fertilization
湖の温暖化が栄養化を真似る
Monika Winder
栄養塩流入量の管理によってリン酸汚染から復活した湖が多くあるが、温暖化は同じ問題を引き起こす可能性がある。

Mangroves' hidden value
マングローブの隠された価値
Brian C. Murray
マングローブがより人間にとっての利益を生み出す養殖場建設や沿岸部開発などによって危機的な速度で破壊されつつある。マングローブは多様な生態系を支えるだけでなく、水質浄化や大気中の二酸化炭素の固定という意味においても寄与している。そのため、炭素固定能力をうまく排出権取引などに組み込むことで、社会の関心をマングローブの保護に向けることができるかもしれない。沿岸部のマングローブ・塩湿地・海草地などが破壊されることで放出される炭素量は従来考えられてきたよりも多いことが近年の研究によって示され、その量はイギリスや日本が排出する炭素量に匹敵するほどである。

Perspectives
Communication of the role of natural variability in future North American climate
将来の北米気候における自然変動の役割のコミュニケーション
Clara Deser, Reto Knutti, Susan Solomon & Adam S. Phillips
気候モデルが改善するほど、政策決定者の「将来の気候を正確に予想すること」に対する期待は高まる。しかし実際には自然の気候変動が予測の正確性を歪め、適応を難しくする。北米のように予測が難しい地域もあれば、中にはより細かいスケールでも予測が比較的うまくいくような地域も存在する。科学者・政策決定者・一般の人々との間でコミュニケーションをしっかりすることで、地域的な気候変動の予測に寄せる期待が膨らむことを防ぐ必要がある

Marginalization of end-use technologies in energy innovation for climate protection
気候保護に対するエネルギー革命における最終利用技術の軽んじ
Charlie Wilson, Arnulf Grubler, Kelly S. Gallagher & Gregory F. Nemet
気候変動緩和にはエネルギー技術の革命が重要であるが、ほとんどの関心はエネルギーを生み出す技術の革命に向けられるものの、エネルギーの最終利用技術(end-use technology)の革新には向いていない。新たな分析から、効率的な最終利用技術が排出量を削減でき、投資における社会的な利益も大きいことが示された。

Review
Narrowing the climate information usability gap
気候の情報の有用性の溝を埋める
Maria Carmen Lemos, Christine J. Kirchhoff & Vijay Ramprasad

Letters
Inhibition of the positive snow-albedo feedback by precipitation in interior Antarctica
南極内陸部の降水による正の雪-アルベド・フィードバックの阻害
G. Picard, F. Domine, G. Krinner, L. Arnaud & E. Lefebvre
高緯度では雪による太陽放射の反射が気候を大きく決定しているが、南極のような場所では雪を汚すもの(塵やブラックカーボンなど)が少ないため、雪の粒径がアルベドを大きく左右している。南極平原(Antarctic Plateau)全体にわたって、雪の粒の大きさとアルベドの関係性を衛星観測データから研究。気候変動の結果生じる降水量の増加が減少したアルベドを補う効果があることが分かった。したがってアイス-アルベドフィードバックを抑制する効果がある。しかしまだCMIP3とCMIP5ではコンセンサスが得られておらず、南極のアルベドに降水が与える影響をモデルでより細かく再現する必要がある。

Sea surface temperature variability in the southwest tropical Pacific since AD 1649
AD1649以来の赤道南西太平洋の表層海水温変動
Kristine L. DeLong, Terrence M. Quinn, Frederick W. Taylor, Ke Lin & Chuan-Chou Shen
南半球においては海洋の温度測定記録が限られているが、そうした事情のもと長尺サンゴは長期間の温度復元ができるツールとして非常に重要である。ニューカレドニアから得られたハマサンゴのSr/Caから1649年から1999年にかけてのSSTを復元。小氷期には数十年スケールの温度変動が見られたが、太陽活動の11年周期は確認されなかった。太陽活動というよりはむしろ南太平洋の数十年変動(South Pacific Decadal Oscilation)によって影響されている。また1893年以降、SST変動の強度や周期がシフトしていることが確認された。

Interactions between above- and belowground organisms modified in climate change experiments
気候変動実験によって修正される地面の上と下の生物の相互作用
Karen Stevnbak, Christoph Scherber, David J. Gladbach, Claus Beier, Teis N. Mikkelsen & Søren Christensen
気候変動は草食の動物を変化させることによって、地下における生態系にも変化を及ぼすことが予想される。野外において2005年から行われているCO2上昇・温暖化・乾燥化実験によって地上と地下の生態系の繋がりが変化することが分かった。特に地上の昆虫類の変化が地下の原生動物に栄養塩利用を介して与える影響が大きいことが分かった。

Harmful filamentous cyanobacteria favoured by reduced water turnover with lake warming
湖の温暖化によって減少した水の循環を好む有害なフィラメント状のシアノバクテリア
Thomas Posch, Oliver Köster, Michaela M. Salcher & Jakob Pernthaler
気温や湖の表層水温が上昇することで成層化が起こり、底層水の撹拌が阻害されることで底層水の貧酸素状態が実現する。さらに高い水温は有害な藻類の増殖に適している。スイスにある大きな湖においては、リン類の流入量が5倍も改善したものの、有害なシアノバクテリア(Planktothrix rubescens)が過去40年間において主組成となってきたことが分かった。「窒素の流入量が制限されていないこと(N:P比の上昇)がP. rubescensの成長に適していること」、「浮力を持つP. rubescensが海水の成層化によって有光層付近に溜まっていること」、「毒性があることからP. rubescensを補食するものがいないこと」などの要因が増殖の原因として考えられる。

Projected response of an endangered marine turtle population to climate change
危機に瀕しているウミガメの個体数の気候変動に対する予測される応答
Vincent S. Saba, Charles A. Stock, James R. Spotila, Frank V. Paladino & Pilar Santidrián Tomillo
生態及び生物多様性の管理には気候変動が個々の種に対して与える影響を評価することが重要である。オサガメ(leatherback turtle)に関して地球システムモデルなどを組み合わせて将来の温暖化に対する個体数変動を予測。間違って漁獲されることを除くと、温暖化によって卵が孵る確率が低下することによって個体数が10年間で7%の割合で低下することが予測される。ふ化場所の変化や雄雌比の変化などはそれほど大きく寄与しないと考えられる。

Mediterranean seagrass vulnerable to regional climate warming
地域的な気候の温暖化に脆弱な地中海の海草
Gabriel Jordà, Núria Marbà & Carlos M. Duarte
地球温暖化の影響が早く見られている地域の一つである、地中海の沿岸部では豊かな海草類(lush seagrass; Posidonia oceanica)が生態系の根本を支えている。しかし海水温の上昇が海草類の死滅を招いている。中程度の排出シナリオに基づいて将来予測を行ったところ、21世紀中頃にはこの海草類は絶滅することが予想される。温度以外の地域的なストレスを緩和しても海草類を保護するには足りないため、この重要な生態系を保護するためには気候変動を緩和することが最重要であると考えられる。