南太平洋タヒチには過去に水没したサンゴ礁が海底に存在する。
これらは地質学的に最終退氷期(最終融氷期)と呼ばれる時期に、10,000年という比較的短期間に140mという規模の海水準の上昇が起こり(主に北半球の氷床の融解が原因)、サンゴが次第に上昇してゆく海水準に追いつけずに水没してしまったという歴史を物語っている。
氷床融解の説明は今回は省略するとして、どのように過去の海水準を復元するかについて少しだけ紹介したい。
サンゴ礁は極めて生物多様性が高い海域の1つであるが、サンゴをはじめとする石灰の骨格を形成する生物が多く存在する(石灰化生物)。
それらにはサンゴ、大型底棲有孔虫、石灰藻、そして微生物の類などが含まれる。
そしてそのような生物は死後埋没し、化石として保存される。
(僕らのような地質学者はそれを掘り起こし、過去に思いを馳せる)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
タヒチの周りにサンゴ礁ができる。ちょっと寒いけどおだやかな日常
海水面が上昇し始める(えっ?急に何??)
あるサンゴが死んじゃう(原因は海水準変動か環境変動か淘汰か寿命か)
海水面はじりじりと上昇し続ける(時には早く、時にはゆっくり)
次のサンゴは前のサンゴの上に乗っかり、せっせと石灰化を行い海水面に近づこうとする(自分が好む水深まで。えっ?まだ上がるの??)
しかしやがてそのサンゴも死んじゃう(海水面早く上昇し過ぎ、次の世代へバトンタッチ)
、というのが何回か繰り返される
サンゴにはこの深さはもうダメ。代わりに深い水深でも生きられる種が繁栄する
いつしかサンゴの姿は消え、過去のサンゴ礁は地下に保存される
そして現代人によってサンゴ礁掘削のボーリングコアによってぶち抜かれる(笑)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
先ほど挙げた、微生物の類いは「microbialite」という真っ黒な不気味な石灰岩を作るが、これらは石灰化生物の隙間を埋める形でびっしりと存在している。
どうやら石灰化生物の死滅後、埋没した後にできるらしい。
これは放射性炭素年代測定から、隣接するサンゴよりも400-1000年程古い年代が得られることからも明らかだ。
また隙間を埋めることでサンゴ礁の安定化にも寄与しているらしい。
2005年にIODP(国際深海掘削計画)の一環でタヒチにおいてサンゴ礁掘削が行われたが、こうしたmicrobialiteが存在したことが、コアの回収率の良さにも現れている。
タヒチは過去の海水準を復元するのに適した海域に存在する南太平洋の火山島である。
1つ目の理由は
「沈降速度が極めて遅いため、沈降の影響の補正がそれほど必要でないこと」
2つ目の理由は
「過去に巨大氷床の存在した地域から離れた地域のため、氷床解放による地殻変動の影響を受けないこと」
が考えられる。
ではサンゴ礁を掘削し、得られた石灰化生物からいかに海水準を推定するか。
重要なのは「年代」と「石灰化生物の生息水深」及び「採取された試料の海水面からの深度」の3つである。
「採取された試料の海水面からの深度」と「年代」が分かると、その時代のおおまかな海水面の位置が分かる。
例えば現在の海水面から100mの深さにある試料が15,000年前のものと分かると、15,000年前の海水準は現在よりおおよそ100m低い位置にあったことになる。
しかし実際には石灰化生物はちょうど海水面(水深0)に棲息しているわけではなく、ある程度のばらつきをもって0-40m程度の水深に棲息している。
実際にはあらゆる種の石灰化生物について膨大な量の年代測定を行い、力技で過去の海水準を復元する。
このとき極めて浅い水深に棲息することが分かっている石灰化生物の化石が試料に含まれている(或いはサンゴ等に付着している)と、高精度に海水面の位置を推定することができる。
タヒチの場合、それは
Pocillopora(ハナヤイシサンゴ)やMontipora(コモンサンゴ)というサンゴ (0-10m)
(確かにスノーケリングでよく見る種かも)
やvermetid gastropod(ムカデガイ)という巻貝の一種らしい(0-5m)
インドネシアでの海水準変動復元にはマングローブの根が海水面の指標として使われたのだとか。確かに海水準変動復元にはうってつけかも。
「過去の海水準変動と気候の関わり」は現在の指導教官の主要テーマだけど、最近改めて面白い研究対象だと感じている。
そんな僕はタヒチのサンゴ礁掘削試料の中に含まれているサンゴの一種を使って、過去の環境情報(特に海水温、塩分、pH)を引き出すという研究を修士でしていました(現在も進行中です)。
これらは地質学的に最終退氷期(最終融氷期)と呼ばれる時期に、10,000年という比較的短期間に140mという規模の海水準の上昇が起こり(主に北半球の氷床の融解が原因)、サンゴが次第に上昇してゆく海水準に追いつけずに水没してしまったという歴史を物語っている。
氷床融解の説明は今回は省略するとして、どのように過去の海水準を復元するかについて少しだけ紹介したい。
サンゴ礁は極めて生物多様性が高い海域の1つであるが、サンゴをはじめとする石灰の骨格を形成する生物が多く存在する(石灰化生物)。
それらにはサンゴ、大型底棲有孔虫、石灰藻、そして微生物の類などが含まれる。
そしてそのような生物は死後埋没し、化石として保存される。
(僕らのような地質学者はそれを掘り起こし、過去に思いを馳せる)
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タヒチの周りにサンゴ礁ができる。ちょっと寒いけどおだやかな日常
海水面が上昇し始める(えっ?急に何??)
あるサンゴが死んじゃう(原因は海水準変動か環境変動か淘汰か寿命か)
海水面はじりじりと上昇し続ける(時には早く、時にはゆっくり)
次のサンゴは前のサンゴの上に乗っかり、せっせと石灰化を行い海水面に近づこうとする(自分が好む水深まで。えっ?まだ上がるの??)
しかしやがてそのサンゴも死んじゃう(海水面早く上昇し過ぎ、次の世代へバトンタッチ)
、というのが何回か繰り返される
サンゴにはこの深さはもうダメ。代わりに深い水深でも生きられる種が繁栄する
いつしかサンゴの姿は消え、過去のサンゴ礁は地下に保存される
そして現代人によってサンゴ礁掘削のボーリングコアによってぶち抜かれる(笑)
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先ほど挙げた、微生物の類いは「microbialite」という真っ黒な不気味な石灰岩を作るが、これらは石灰化生物の隙間を埋める形でびっしりと存在している。
どうやら石灰化生物の死滅後、埋没した後にできるらしい。
これは放射性炭素年代測定から、隣接するサンゴよりも400-1000年程古い年代が得られることからも明らかだ。
また隙間を埋めることでサンゴ礁の安定化にも寄与しているらしい。
2005年にIODP(国際深海掘削計画)の一環でタヒチにおいてサンゴ礁掘削が行われたが、こうしたmicrobialiteが存在したことが、コアの回収率の良さにも現れている。
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タヒチは過去の海水準を復元するのに適した海域に存在する南太平洋の火山島である。
1つ目の理由は
「沈降速度が極めて遅いため、沈降の影響の補正がそれほど必要でないこと」
2つ目の理由は
「過去に巨大氷床の存在した地域から離れた地域のため、氷床解放による地殻変動の影響を受けないこと」
が考えられる。
ではサンゴ礁を掘削し、得られた石灰化生物からいかに海水準を推定するか。
重要なのは「年代」と「石灰化生物の生息水深」及び「採取された試料の海水面からの深度」の3つである。
「採取された試料の海水面からの深度」と「年代」が分かると、その時代のおおまかな海水面の位置が分かる。
例えば現在の海水面から100mの深さにある試料が15,000年前のものと分かると、15,000年前の海水準は現在よりおおよそ100m低い位置にあったことになる。
しかし実際には石灰化生物はちょうど海水面(水深0)に棲息しているわけではなく、ある程度のばらつきをもって0-40m程度の水深に棲息している。
そこで予め生息水深の分かっている石灰化生物を用いることで、海水面の位置を推定することになる。
このとき極めて浅い水深に棲息することが分かっている石灰化生物の化石が試料に含まれている(或いはサンゴ等に付着している)と、高精度に海水面の位置を推定することができる。
タヒチの場合、それは
Pocillopora(ハナヤイシサンゴ)やMontipora(コモンサンゴ)というサンゴ (0-10m)
(確かにスノーケリングでよく見る種かも)
やvermetid gastropod(ムカデガイ)という巻貝の一種らしい(0-5m)
インドネシアでの海水準変動復元にはマングローブの根が海水面の指標として使われたのだとか。確かに海水準変動復元にはうってつけかも。
「過去の海水準変動と気候の関わり」は現在の指導教官の主要テーマだけど、最近改めて面白い研究対象だと感じている。
そんな僕はタヒチのサンゴ礁掘削試料の中に含まれているサンゴの一種を使って、過去の環境情報(特に海水温、塩分、pH)を引き出すという研究を修士でしていました(現在も進行中です)。