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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語、English) 7、日記(日本語、English) おまけ、Twilog

2018年12月31日月曜日

2018年総まとめ

毎年恒例の1年の総まとめ。

今年は科研費・若手研究が当たったこともあり、海外にも多く行けた良い年だった。
記憶も曖昧なので、カレンダーを見返しながら各月毎の出来事をまとめてみたい。

行った海外の都市は
トロンヘイム(ノルウェー)
リビングストン(ザンビア)
ボストン(アメリカ)

国内の都市は
柏・名古屋・幕張・札幌・那覇
こう考えると国内の行き先はあまりバリエーションが無かった。移動距離は半端ないけど(北海道〜沖縄)。

・1月
帰省はせず、一人年越し(今年と同じw)
中旬は関東出張、それ以外はひたすらNeptuneでd11B測定

・2月
はじめに名大で加速器ユーザーの成果報告会。
後半は関東出張

・3月
コアスクールコア解析基礎コースで初めてのチューターを務める
後半は関東出張。送別会やサッカーの対外試合にも顔を出す。

・4月
ひたすらNeptuneとTritonでd11Bと87/86Sr測定
後半は関東出張

・5月
ひたすら実験
JpGUでの招待講演(ビノスガイの話)、後半は関東出張

・6月
ひたすら実験、後半はノルウェー・トロンヘイムでRADIOCARBONの国際学会(W杯開催中)、帰国後関東出張

・7月
ひたすら実験
北大低温研で温室世界に関するシンポジウムに参加
その後直でアフリカはザンビア・リビングストンで開催されたIODP第361次航海のポストクルーズミーティングに参加。

・8月
前半は関東出張
そのままボストンで開催されたGoldschmidtに参加
後半はひたすら実験

・9月
前半は関東出張
そのまま沖縄・琉球大学で開催された地化学会年会に参加
その後瀬底実験施設の見学
後半はひたすら実験

・10月
前半は関東出張
後半は実験と合間にプロポーザル執筆

・11月
ほぼ1ヶ月関東出張。バイオミネラリゼーションと石灰化シンポジウム@AORIと地球環境史学会@東北大学に参加

・12月
ひたすら実験

2018年は出張と実験をひたすら交互に繰り返した年だった。学振のメインのプロジェクトも順調に進み、うまく学振PDの3年目にまとめに入れそうな手応えを感じている。
来年はドイツに2〜3ヶ月行くことになりそうで、年末には白鳳丸の世界一周航海で2ヶ月ほど空ける予定。来年行く都市としては
ウィーン(オーストリア)※国際学会
スプリット(クロアチア)※国際学会
マインツ(ドイツ)※実験
ダブリン(アイルランド)※国際学会
ブレマーハーフェン(ドイツ)※実験
バルパライソ(チリ)※航海
プンタ・アレーナス(チリ)※航海
ケープタウン(南アフリカ)※航海
幕張(JpGU招待講演)
本郷(地化学会年会)
つくば(地球環境史学会)

しっかりと海外でも得るものを得て(サンプル・技術・コネ)、国内でもしっかりと実験に明け暮れたい。
次年度で学振も終わってしまうので、また次の行き先も模索しなければならない。不安定ではあるものの、楽しみな一年。

2018年12月19日水曜日

来年の予定(3大陸6カ国)

今年のまとめの日記も書きたいと思っているけれど、先に来年の予定をまとめてみたい。
来年は学振PDの最終年度ということで、いまやっているメインのプロジェクト(IODP Exp.361)の浮遊性有孔虫ホウ素同位体分析もできれば完了させたいと思っている。
ただし、一部の試料は現状高知コア研での分析は難しい(さらなる微量化の技術開発なしには)ので、LDEO(かAWI)に持ち込むことになるかもしれない。

ちょうど今日、共同研究者から一報があり、科研費の二国間交流事業でドイツのマインツ大学にゆく三年間若手研究者を派遣できることに。ドイツ側のカウンターパートであるマインツ大学のSchone教授は貝の年輪年代学・地球化学分析で世界に名の知れた専門家で、日本でJSPSの特別研究員をやっていたこともある。
このプロジェクトでは私も若手研究者のメンバーに加わっており、幸運にもゆく3年間のどこかの期間でマインツ大学に技術研修に行く権利を得た。
特に年輪年代学の解析に用いるソフトウェアの習熟、貝殻の地球化学分析、論文執筆などにこの制度を利用したいと考えている。

早くも来年3月から派遣がスタートするということで、さっそく私に白羽の矢が立っているが、色々考えるとすでに来年の予定はぎっしり詰まっており、どうしようか悩ましい。
現在決まっているものだけでも

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・1月
AORIで実験→大槌調査

・2月
ブルーアースサイエンステック2019でのIODPの成果報告→AORIで実験

・3月
KCCコアスクールのチューター

・4月
EGU@オーストリア(※往復航空券手配済み)

・5月
JpGU@幕張

・6月
年輪年代学国際学会@クロアチア

・7月
AWI@ドイツで1ヶ月実験→(Palsea・)INQUA国際学会@アイルランド

・8月

・9月
地化学会@本郷

・10月

・11月〜翌1月
地球環境史学会@つくば
白鳳丸世界一周航海(バルパライソ〜プンタアレナス〜ケープタウン)

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いま考えているのは3月後半と8月あたりにそれぞれ2週間、1ヶ月ほどマインツ大学に行くこと。
7月にはちょうど同じくドイツのAWI(ブレーメン近郊)に1ヶ月滞在し、その後アイルランドの学会に参加し、帰国するつもりであった。
航空券はまだ手配していないのでまだ調整が効くので、アイルランド後、或いはアイルランドをキャンセルして、そのままマインツに移って1ヶ月ほど滞在するのもありかもしれない。
ちょうど8月というと、日本の酷暑を避けられるというメリットがある(マインツのベストシーズンとも!)。
最高気温はたかだか25度ということなので、日本に比べればはるかに快適だろう。
もう一つのメリットは、高知コア研でのホウ素同位体分析に関して。過去二年間のデータを見ると夏に顕著に実験室のホウ素ブランクが上がっている。
夏の南風がホウ素に富んだ空気をもたらしているのか、エアコンが原因なのか、まだ判明していないものの、微量を扱う分析にとってブランクの問題は死活問題である。
貴重な試料を無駄にしたくないということもあり、この時期の分析は避けたほうが賢明かもしれない(ブランクを減らす努力を色々考えなければならないけど)。

あまり海外に行き過ぎても学振PDとしてのメインの研究テーマが滞ってしまい本末転倒なので、そのほかの期間はしっかりと有孔虫を拾って、潰して、分析しなければ。
AWI滞在用に別の堆積物コアからも有孔虫を改めて拾わなければならないし、やることいっぱい。

白鳳丸の航海でも新たな堆積物コアが手に入る予定なので、こちらは有孔虫のホウ素同位体・放射性炭素・ネオジム同位体を中心にゆく数年かけて分析を進めて行く予定。
航海が終わると学振PDが終わり、ついに無職になるが、次のキャリアに繋がるように、色々と模索してゆきたいところ。
アメリカのとある研究機関のポスドクに無事通れば、2019年春から2年間はアメリカに行く予定なので、マインツには残念ながら行けないだろう(科研費の制度を確認する必要があるが)。
国内のポストが得られ、かつ自由度が高ければマインツにも行く機会が得られるかもしれない。さてどうなるか。

2018年9月7日金曜日

将来の温暖化のアナログになる地質時代の温暖期

Palaeoclimate constraints on the impact of 2 °C anthropogenic warming and beyond
Hubertus Fischer et al.
Nature Geoscience 11, 474–485 (2018).

将来の地球温暖化(人為的気候変化)のアナログになりそうな、比較的最近の過去の温暖期に関するレビュー。

以下の期間に焦点をあてている。

1)完新世温度最適期(Holocene Thermal Maximum, HTM)
11〜5 ka(ka は1,000年前)
現在よりも<1℃ 温暖(とくに北半球高緯度に顕著)
CO2濃度:250〜260 ppm
海水準:現在と同程度

2)最終間氷期(Last Interglacial Period, LIG)
129〜119 ka
現在よりも約0.8℃温暖(海面表層水温SSTは0.5℃温暖、とくに北半球高緯度に顕著)
CO2濃度:280 ppm
海水準:現在よりも6〜9 m高かった

3)酸素同位体ステージ11.3(Marine Isotope Stage 11.3, MIS11.3)
410〜400 ka
CO2濃度:280 ppm
海水準:現在よりも6〜9 m高かった

4)中期鮮新世温暖期(Mid-Pliocene Warm Period, MPWP)
3.3〜3.0 Ma(Maは1,000,000年前)
現在よりも1〜3℃ 温暖
CO2濃度:300〜450 ppm
海水準:現在よりも6 m以上高かった


2018年8月23日木曜日

保存容器に起因するコンタミ

久しぶりの投稿です。

自分の過失というか無知としか言えないのですが、実は保存容器に起因するコンタミが自分の分析に大きく影響する可能性について気づかないままに一年近く実験をやってしまっていました。

具体的に何をしているかというと、
 ▷海底堆積物中の有孔虫の殻(カルサイト、CaCO3)のMg/Ca比(温度指標)やAl/Ca比(汚れの指標)、
 ▷ホウ素(B)の含有量チェック(のちのホウ素同位体分析のため)
を行うためのQ-ICPMSを用いた定量分析です。

実験を始めた当初、Alのカウント数が非常に高く(50,000 cps近く)、「アルミニウムは機械の部品にでも使われているんだろう」と考えた結果見過ごしてしまい、まさか溶液の保存に用いる容器に起因するものとは全く気付かず。
あとになってAlのカウントが低いデータが存在する(例えば、当日調整した酸など)ことに気づき、原因を調べたところ、容器が汚染源であることが分かりました。
場合によってはサンプル中の含有量をはるかに凌ぐ量の元素が容器から汚染されているケースも。ちなみに使っていたのはNalgeneのPP製保存容器です。
Alの含有量は有孔虫殻の洗浄度合い、特に粘土鉱物の除去の程度を知る上で重要であり、特に50,000 cps付近にその判断基準があります。

似たような事例はBやMgにも出ており、幸いにして「取得データをすべて破棄」といった事態にはなっていないものの、今後より良いデータを取得し、測定精度を上げるためにも、こうしたコンタミを徹底的に排除する必要があると感じました。

もちろん各企業が容器の綺麗さを宣伝するために他者製品と比較して、容器中の含有元素データを公表している場合もあります(例えば、ThermoのHDPEボトル(pdf)、AgilentによるSeastar社製保存容器の比較)。
しかしながら我々のラボでは必ずしもどの容器がどの分析に適さないのか、についてコンセンサスがありませんでした。
そこで一般的に使用している保存容器について調べてみることにしました。
最も高価なPFA製のNalgeneボトル(1本2万円近く!)がおそらくもっとも綺麗だろうという予想を立てつつ、より安くて綺麗なものがあれば、という期待も込めて実験を行いました。

以下にプラスチック製保存容器を酸で予備洗浄する前後の変化や、各種酸(硝酸・塩酸・フッ酸)を入れた状態で1週間ほど放置した際に保存容器から溶出する各元素について測定した結果について示します。
全元素を測定していますが、今回は上でも述べた3元素だけ。

2018年5月31日木曜日

グレートバリアリーフの形成史(Webster et al., 2018, Ngeo)

Response of the Great Barrier Reef to sea-level and environmental changes over the past 30,000 years
Jody M. Webster, Juan Carlos Braga, Marc Humblet, Donald C. Potts, Yasufumi Iryu, Yusuke Yokoyama, Kazuhiko Fujita, Raphael Bourillot, Tezer M. Esat, Stewart Fallon, William G. Thompson, Alexander L. Thomas, Hironobu Kan, Helen V. McGregor, Gustavo Hinestrosa, Stephen P. Obrochta & Bryan C. Lougheed
Nature Geosciencevolume 11, 426–432 (2018)
より。

IODP第325次航海のグレートバリアリーフ(GBR)の海底掘削から、30ka以降のサンゴ礁形成史を復元。

参考までに、昔書いた、サンゴ礁掘削と環境復元に関する拙ブログ記事はこちら
>タヒチの埋没サンゴ礁から過去の海水準変動を復元する

以前東北大の井龍先生らが中心となってタヒチのサンゴ礁でIODPによる掘削が行われたが(Deschamps et al., 2012, Nature)、その時は15kaまでしか遡れず(厳密には2つ前の退氷期の化石も見つかっているが;Thomas et al., 2009, Science)、最終氷期(~20ka)頃の化石サンゴを回収することは叶わなかった。
今回GBRで行われた掘削では、最終氷期や、それよりも前の時代の試料についても回収することができ、世界最大のサンゴ礁の形成史についての貴重な知見が得られた。
今回は東京大学大気海洋研究所の横山先生(私の学生時代の指導教官)らが中心となって掘削が行われた。日本からも多くのサンゴ礁研究者が関与している、大きな国際プロジェクトである。

海底地形図を眺めると、テラス状の構造が段階的に見られ、そこからもサンゴ礁の形成は段階的に起きた、すなわち成長の停止時期を伴いながら成長が起きていたことが想像できる。それが今回掘削を行い回収された化石サンゴの年代をウラン系列を用いて正確に特定することで、より正確な時空間変動が明らかとなった。

最終氷期のサンゴは世界的に見てもそれほど多く回収できておらず、当時熱帯域が寒すぎてそもそもサンゴが生育していなかったことが可能性として挙げられるが、それよりも原因になっているのは最終氷期の化石サンゴが130 m近い海底或いは地下に埋没していることが挙げられる。掘削船を用いた大掛かりな調査が必要なのは、こうしたことが背景にある。

化石サンゴの年代測定から明らかになった海水準変動曲線については、横山先生が主著者として現在論文を執筆中であり、本論文ではどういった環境要因がサンゴ礁の形成に重要だったかを中心に考察している。

1)海水準低下期(27 - 22 ka)
海水準は現在よりも -65mの位置から、-125mの位置まで海水準が低下した。
それよりも前の時代に形成されたサンゴ礁は地上に露出し、露出したサンゴは死滅した。一方、海側に向かって成長するサンゴが存在したことから、サンゴ礁は海側へと成長を続け、サンゴ全てがすべて死滅するような事態ではなかった。

2)海水準最低下期(~21 ka:最終氷期極相:LGM)
海水準は-125mの位置まで低下していた。
当時の水温はSr/Ca古水温計の推定から現在よりも4度低かったとも言われている(Felis et al., 2014, Nature communications)。低水温状態でもサンゴが成長できることの現れである。

3)海水準上昇期(21 - 10 ka:最終退氷期)
海水準が現在よりも -55mの位置まで上昇した。海水準は急激な上昇イベント(例えば14.6kaのMWP-1Aなど)を伴いながら、段階的に上昇した。
タヒチではMWP-1Aにおける300年間に20 mという急激な海水準上昇によって一部のサンゴ礁が溺れたが、GBRでは追いつくことができていたらしい。
ただし、別のタイミングでサンゴ礁が溺れるイベントがいくつか見つかった(海底地形にも見られる複数のテラス状の地形)。
こうした溺死によるサンゴ礁の成長停止・低下を伴いながらも、サンゴ礁は陸側へと成長し続けた。こうした水平方向の移動速度がそれなりに大きいことは、従来考えられていたよりも礁全体としては環境変動に対して耐性が大きいことの現れとも言える。
この時、陸の一部が水没することにより、砕屑物の供給量も急増した。砕屑物の流入は水の濁度を増加させ、サンゴの光合成を阻害する要因である(ただし、一部のサンゴは栄養を摂れるかも?)。光合成量の低下はサンゴの石灰化量の低下に繋がり、サンゴ礁の成長速度を低下させる。そのため、海水準上昇に伴う陸域砕屑物の流入量もまたサンゴ礁の成長に大きく寄与したものと思われる。
タヒチの例でも報告があるように(Blanchon et al., 2014, Scientific Reports)、陸からの砕屑物がトラップされるような地形(礁原など?)が発達することが、その後のサンゴ礁の成長に大きく寄与するようである。

最終的に、海水準上昇が終わりに近づいた9ka頃に現在の堡礁(バリアリーフ)システムが形成されたと考えられており、それまでは裾礁(フリンジングリーフ)システムとして大陸の縁辺にへばりつくような構造であったらしい。

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実は私自身も、前回のタヒチにおけるIODP航海同様(Kubota et al., 2014, Scientific Reports)、このIODP航海に関与している。
具体的にはニオウミドリイシサンゴ(Isopora spp.)の骨格中のホウ素同位体分析を通じて、最終氷期以降の海水のpH・pCO2を復元し、海水炭酸系の変化がサンゴ礁の成長にどのように寄与したかを明らかにしたいと考えている(逆に、サンゴ礁の成長によって海水炭酸系が大きく変化していた可能性もある)。
一般に古気候研究にはハマサンゴ(Porites spp.)の骨格が重宝されるが、GBRの掘削からはほとんど得られていない。ニオウミドリイシについても、ハマサンゴ同様に塊状の構造を持つことから、古気候復元に用いることができる。まずは室内水槽実験を通じて骨格のホウ素同位体と海水炭酸系との関係をしっかりと把握し、過去の復元に応用したいと考えている。