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2014年7月31日木曜日

『サンゴとサンゴ礁のはなし』(本川達雄、2008年、中公新書)

サンゴとサンゴ礁のはなし〜南の海のふしぎな生態系
本川 達雄
中公新書、2008年(¥840-)

著者は東大 理学部 生物学科卒の本川 達雄 氏。
本書が扱う内容はかなり専門的でありながら、語り口が軽妙なためにとても馴染みやすい。
僕のようなダイバーかつサンゴ礁を研究対象地としている研究者の卵にとっても新しい情報が多いし、一般の方の「サンゴとは、サンゴ礁とは何ぞや?」という疑問にも広く答えてくれる仕様となっている。


サンゴ礁には実に様々な生態系が存在している。
その礎をなすのがサンゴと褐虫藻の見事な共生関係
両者が肩を組むことで、栄養の流れが生じ、活発な石灰化と有機物生産が営まれている。

そしてサンゴが生産する粘液と複雑な建造物が、小さな甲殻類・魚類・軟体動物などの食料と住処を提供し、それを補食するさらに大きな生物を支える。

サンゴそのものに巣食う生物も多い。小さな貝やゴカイの類がそれだ。しかしながら、細かく見てみると、それらは寄生というよりはむしろ共生関係の上で成り立っており、骨格を削られ、穴を穿たれているサンゴもまた恩恵を被っているのだから面白い。

他にも褐虫藻をめぐる謎、サンゴ礁に生息する魚の特徴や多様さの謎、サンゴ礁研究の歴史など、様々なサンゴ礁をめぐる”はなし”が散りばめられており飽きることがない。

地形学的・地質学的な側面のサンゴ礁のはなしも大変興味深い。
進化論で知られるチャールズ・ダーウィンは実はサンゴ礁研究でも大きな貢献をしている。
サンゴの骨格は嵐や生物による侵食によって絶えず破壊されており、正味でサンゴ礁の形成に寄与している分は実は少ないなど、目から鱗であった。
生息するサンゴ種(ハマサンゴ・ミドリイシサンゴ・キクメイシなど)から、その場の海洋環境が推定できることも、改めて再認識させられた。

本書の最後には、サンゴ礁の危機や保全の取り組みについて簡単に述べられている。

サンゴ礁が温暖化ストレスが招く白化現象をはじめとする、種々の環境ストレスにさらされており、その分布が急速に減少していることは、拙ブログの至る所で触れているのでここでは深く掘り下げない。

サンゴの白化というと、サンゴが死滅した状態を想像されるかもしれないが、実のところ”一時的にサンゴが褐虫藻を放出した状態”というのが正しい。
海域によっては季節的な白化を経験するところもあり、またサンゴは活発に褐虫藻を入れ替え飼育する個体数を調整している。
サンゴの白化後、復活することもある。白化が長期にわたって継続すればサンゴは死に至る。
むろんサンゴの白化現象自体は近年増加傾向にあるので、由々しき事態である。

海洋酸性化に関する危機感の喚起がほとんどないということだけ、不満を覚えた。
海洋酸性化のサンゴ礁への影響については以下の記事を参照されたい。
▶︎ 海洋酸性化の現状(レビュー)
▶︎ 海洋酸性化とサンゴ礁生態系への影響
▶︎ 海洋酸性化の現状(海洋化学の視点から)