今年は6月にGoldschmidtが行われたこともあり、規模がやや小さめでの開催となりました。
私は今回、基調講演(招待講演)ということで、海洋酸性化と炭酸塩ホウ素同位体指標のレビューを行わせていただきました。
立ち見が散見されるほど、多くの方々に話を聞いていただけ、大変嬉しく思いました。
これまでTwitterやブログなどを通じて、人為的気候変化の緩和に向けたアクションを求めるよう訴えてきましたが、あまり私の口から直接的に発言することはありませんでした。
今回の講演では、最後に一言だけサンゴの危機的状況と保護策について述べさせてもらいました。
今年の夏は特に暑かったことは記憶に新しいと思いますが、地球温暖化にエルニーニョの影響が上乗せされた結果と考えられます。
近年、サンゴ白化に関するニュースが多くなってきたように感じますが、今年の沖縄におけるサンゴの白化はニュースでも報じられるほど激しいものだったようです。
サンゴは温暖化に対して非常に脆弱で、熱耐性を超えると共生藻を放出して白化してしまうことが知られています。そのままですぐポリプが死ぬわけではありませんが、白化が継続するとやがてエネルギー不足に陥り死に至ります。
温暖化を野放しにしたままだと、今後も白化現象がさらに増えることになることは明白です。さらに悪いことに、海洋酸性化の影響もまたサンゴの石灰化を阻害するレベルにまで達しています。
温暖化による白化と酸性化による石灰化阻害。両者を同時に解決する方法は二酸化炭素排出を大幅に抑えた上で、さらに大気から除去する方策を講じるほかありません。
不確実性は大きいですが、今世紀中ごろ、2050年には日本沿岸からサンゴが消失すると考える研究者もいます。
そうならないためにも、脱炭素社会の実現に向けて、歩みを早める必要があります。
話が多少逸れましたが、今回の学会では初めて企業のランチョンセミナーに参加しました。
質量分析器を扱うサーモ(Thermo)とニュー(Nu)の2つの催しに参加し、それぞれレーザーアブレーションICPMSとMC-ICPMSについての最新の話題を聞かせていただきました。
分析技術の進展は目覚ましいものだな、と感心させられるとともに、Break throughを切望する科学者側からのニーズもまた、技術向上を後押ししているのだということを実感しました。
酸素炭素同位体の測定必要量の微量化、
海水中の超微量元素の測定、
これまで測るのが難しかった同位体を新型ICP-MSで測定、
生物濃集を利用した超微量元素の同位体測定、
など、地化学会ならではの話も多く聞け、たいへん実りある3日間でした。