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2014年9月8日月曜日

『サンゴ礁』(高橋達郎, 1988年, 古今書院)

サンゴ礁
高橋達郎
古今書院(1988年)

サンゴ礁研究者ほど熱帯の海を愛する人はいない。

逆に言えば、熱帯の海に魅せられてサンゴ礁を研究対象とする人が多い。

多くの人が知るサンゴ礁とはスノーケリング・スクーバダイビングで訪れる色とりどりの魚・サンゴ・その他生物がきらびやかに舞い踊る地であり、全体の構造を俯瞰する人はあまりいないだろう。
サンゴ礁においては、昼夜・季節の生物のサイクルをはじめとして、潮汐による海水の交換、場合によっては干上がったりと、極めてダイナミックな変動が存在する。

そこで生きるサンゴは当然多様であり、サンゴが支える生物も多様である。
またサンゴそのものが地形を形成することもあり、地形といった観点でも極めて多様である。”多様性”がサンゴ礁の主題である。



琉球列島に代表される裾礁型のサンゴ礁を陸から海に向かって歩いて行くとすると、そこには海草が広がる礁原があり、浅い礁池があり、干潮時には顔を出す礁嶺があり、そして極めて多様なサンゴが見られる礁斜面がある。礁斜面は基本的には断崖絶壁であり、その先は漆黒の深海である。

それも多様なサンゴ礁地形のパターンの一つに過ぎない。

太平洋に点在する環礁は、さながら海にぽっかりと浮かぶ巨大なリング。内側は浅かったり深かったり、見せる色も様々。

では、世界最大の堡礁である、グレートバリアリーフは?
かつてジェームズ・クック率いる船団はあまりの巨大さに堡礁の内側に船が入ったことに気づかなかったほどだとか。GBRは生物が作り出した地形としては世界最大のものである。



本書の内容はサンゴ礁形成プロセスをめぐる、ダーウィンの沈降説・デイビスの海水準変動説の紹介に始まり、サンゴ礁の地理的な分布の傾向と形成史の考察、サンゴの生態、サンゴ礁研究史、研究日誌までと、たいへん幅広い。


著者は地理学・地形学が専門ということもあり、地質学・古気候学が専門の自分とはまた異なる視点からサンゴ礁を見つめている点が大変興味深かった。

最後に、サンゴ礁研究の、科学の意義について少しだけ語られる。


私が目指しているサンゴ礁の研究の意義は、地球表面に生きている一員としての、生きる意味にふれるために、自然をみつめ洞察することであり、人間としての叡智を深めることにあるとおもっている。(pp. 234)

科学もまた生きた人間の業なのである。人間主体の行為なのである。(中略)科学は究極的に個性的でなければならない。(pp. 237-238)


決して長くはないし、「誰もが理解できるような」本なので、特にサンゴ礁の地形学・環境学を学ぶ人には是非一読を勧める。