金田章裕
日経プレミアシリーズ
Amazonで色々と地学関係の教科書や書籍を漁っていた時に見かけた本書。ちょうど授業で地形(天井川や土砂災害、埋め立て)のことを扱う機会が増えてきたので、参考にと購入。
本書は人文地理学者の京都大学名誉教授によって書かれたもの。
最初地形学者だと思いこんでいて、途中から古地理図などがでてきてようやく気づいた。
章構成は以下の通り。
第1章 歴史地理学は「空間と時間の学問」
第2章 河川がつくった平野の地形
第3章 堤防を築くと水害が起こる
第4章 海辺・湖辺・山裾は動く
第5章 崖の効用、縁辺の利点
第6章 人がつくった土地
第7章 地名は変わりゆく
第8章 なぜそれはそこにあるのか--立地と環境へのまなざし
第2章で扱われる小扇状地地形など、過去の鉄砲水の履歴が地形に刻まれている話は非常に興味深かった。
第2章の冒頭で「完新世の地質学的位置付けはよく分かっていない」と書かれていたので、古気候学を専門とする私は首を傾げたが。
第3章で堤防で川を寸断なく囲むと、むしろ大水害の危険性が増すという観点は目から鱗だった。確かに適度に水を抜いたり、遊水池を利用するというのが重要に思えた。
第4章の海辺・湖辺が動くという話は、今とむかしの地図の比較から得られているもので、地質・地化的な裏付けがあるわけではないのだが、堆積・侵食の変化や土地の隆起・沈降(地下水の過剰な汲み上げも含む)によって、岸が動くという話も興味深かった。
過去の長野や富山の大水害の例(地震をきっかけに山崩れが起き、川をせき止め、その後崩壊し大洪水)など、全く知らなかったので、よい学びとなった。
第6章の干拓事業や海の埋め立て、団地造成などの話も大変興味深かった。特に大阪湾・東京湾の埋め立ての話や、高潮・津波に対する危険性の話など。
第7章の地名の話。地名はその土地の成り立ちを表す場合が往往にしてあるが、そうでない例の紹介。市町村の合併などによって新たに作られた地名の例など。多摩ニュータウン造成の時に縁起の悪い言葉などが一掃された例など、非常に興味深かった。
ところどころ図表が小さくて何が書いてあるのか不鮮明だったり、いきなり知らない地名が出てくるので、ある程度地理に関する知識がないと、置いてけぼりを食らう感がある。
私もGoogle Mapで調べながら「ここの話をしていたのか」と考えながら読み進めた。