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2015年6月2日火曜日

シンポジウムメモ(日本地球惑星科学連合大会 2015.5.24-28)

去年は特例的にパシフィコ横浜での開催だったが、今年は幕張メッセに戻った。

次第に規模が大きくなっているらしく、隣のアパホテルの会議室も利用しての開催だった。

私自身は石灰化のセッションで招待講演があり、他には古海洋・南大洋のセッションを中心に回った。以下はそのメモ。

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「Biocalcification and the Geochemistry of Proxies -Field ecology, Laboratory culture and Paleo」
▶︎氏家由利香さん@高知大
G. ruberには6種ほどが確認されている。土佐湾には4種が確認されている。
(G. sacclierは少なく2種ほど。少ない理由はまだよく分かっていない。)
過去2年間ほどの毎月のサンプリングから季節性を見たところ、種の割合が周期的に変化することが分かった。その理由はおそらく黒潮の流路の変動に伴う栄養塩・温度の変動だと思われる。

▶︎石谷佳之さん@AORI
サンゴ礁に生息する底性有孔虫カルカリナ(Calcarina)の殻の突起が光透過器官としてどのように機能しているか。電子線後方散乱解析法(EBSD)を用いて光の方向性を調べたところ、レジン比で50倍もの光が殻内部に集まっていることが分かった。
こういった採光機能はクモヒトデや植物でも確認されている。

▶︎大野良和さん@琉球大学
蛍光染色で底性有孔虫(Amphisorus kudakajimensis)の細胞内のpHを可視化(共焦点顕微鏡)。
小胞内pHは9以上、液胞内pHは6以下と細胞内で大きな変化が見られる。

▶︎Jelle Bijmaさん@AWI
無機的に沈殿させたカルサイトと生物が作るカルサイトとでは微量元素の取り込みが全く異なっている。ゆえに大きな生体効果が働いていることが分かる。
多くの古気候プロキシが作成されているものの、メカニズムについてはブラックボックスであることが多く、一つの環境因子(水温・塩分・pHなど)で記述するのは難しいことが多い。

▶︎Nehrke Gernotさん@AWI
ラマン分光でカサガイ(Patella caerule)の殻を分析。部位によってアラゴナイト・カルサイトでできている。LA-ICPMSで計るとMgはアラゴナイトにはほとんど入っていないことが分かる。
イタリアのCO2湧出域においてはカサガイの殻のアラゴナイト/カルサイトの比率が変化している。アラゴナイトがカルサイトに比べて熱力学的には溶解しやすいと分かっているものの、むしろカサガイの殻ではカルサイトの比率が減っている。

▶︎駒越太郎さん@北海道大学
沖ノ鳥島で採取されたシャコガイの微細分析。若い部分は成長速度が大きいので、半日くらいの解像度で測定可能。
Ba/Caと成長阻害線が台風の指標になりそう。

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「福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態」
▶︎青山道夫さん@福島大学
福島第一原発から放出された(今も放出が継続している)Csの太平洋の分布について。
単なる壊変やスカベンジングでは説明できないほど海洋表層のCs濃度の低下が遅く、インプットがないと説明できない。
すでに放出されたもののうち80%は海洋内部に沈み込んでおり、400m深のモード水となっている。30年後には北西太平洋に再度湧き上がると思われる。
水塊の移動速度は東北沖だと7 km/dayだが、太平洋中央部では3 km/dayとやや遅い。

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「ユニオンセッション」
▶︎佐野有司さん@AORI
ナノシムスを利用したシャコガイのSr/Ca分析について。
石垣島で飼育されたシャコガイの殻を微細分析したところ、Sr/Caは水温ではなく日射との対応が良いことが分かった(水温とは2ヶ月の位相差がある)。
成長速度の大きい昼に対応しているため、日射が褐虫藻の光合成を介して石灰化に関わるCa2+ ATPaseを駆動しているものと予想される。

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「南大洋・南極氷床が駆動する全球気候・生態系変動」
▶︎川村賢二さん@極地研
アイスコアの火山灰を利用した年代同期は、
(1)地域的な気候変動を明らかにする
(2)年代モデルの確度を確認する
上で重要。
海水に溶けやすい希ガス(KrやXeなど)の濃度は全球の平均的な海水温の指標になる(特に中層〜深層を代表)。

▶︎小林英貴さん@AORI
氷期の炭素リザーバー問題について。
AABWが強化していたことがプロキシから指摘されている。これはモデルで再現できるようになってきた。しかし、一方でAABWの形成が強いと、南大洋の深層水が若くなり、プロキシと合わなくなる。
一般にモデルでは南大洋の対流・混合をうまく再現できていないため、モデル依存の可能性も。

▶︎阿部彩子さん@AORI
プロキシからは氷期のNADWは弱かったことが分かっているが、ほとんどのモデルが強いNADWを再現している。
プロキシと整合するのは強いAABWの沈み込みの再現。
最近掘削された西南極氷床のアイスコアの分析結果も、AABWが重要であることを示唆している。
北大西洋への淡水流入(ハインリッヒ・イベント)がNADW形成を弱め、AMOCに影響するというのは間違い?

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「東アジア‐北西太平洋域高解像度古気候観測網」
▶︎味岡拓さん@産総研
湖の堆積物コア中のGDGTの分析。シクロペンタンやメチル基の数が異なるGDGTを利用したインデックスを利用することで温度・pHの復元が可能。
気温・降水が化学風化(アルカリ度・リン)に影響し、湖内の生物生産に影響しているためと思われる。

▶︎山本正伸さん@北海道大学
TEX86温度計のメカニズムの検証のため、太平洋の低緯度〜高緯度の深度別海水サンプルを分析。
一般に水塊の水温を反映すると言われているものの、必ずしも現場の水温に合っていない。
「スカベンジングの速度」や「GDGTを生成するアーキアそのものの変化」が重要である可能性。

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「古気候・古海洋変動」
▶︎佐野雅規さん@地球研
屋久島で採取された複数のスギのδ18Oから過去2,000年間の相対湿度・降水量を復元。
いわゆるホッケースティック状の変化曲線が得られ、中世温暖期は乾燥、小氷期は湿潤状態だった。20世紀以降、乾燥化が続いている。
おそらく梅雨前線の緯度方向の移動で説明できるが、降水現象は気温にも影響されるため、低緯度の影響もあると思われる。

▶︎加三千宣さん@愛媛大
苫小牧沖の堆積物コア中のクロロフィルの分析。マイワシの変動ともよく合っており、PDOが原因と思われる。
近年栄養塩が低下傾向にあり、温暖化の影響が指摘されているが、数100年スケールの大きな変動の一部を見ているにすぎない可能性も。