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2015年3月29日日曜日

「川はどうしてできるのか」(藤岡換太郎、2014年、ブルーバックス)

川はどうしてできるのか
〜地形のミステリーツアーにようこそ〜
藤岡換太郎
講談社ブルーバックス(2014年、¥860-)

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本書は海底地形学・堆積学者である藤岡勘太郎氏が書かれた最近の書籍。これまでに山と海に関する書籍を執筆しており、今回は3番目となる「川」がテーマ。



川は実に多様だ。だからこそ人を惹きつける。しかし一方で多様すぎるからこそ科学のテーマとして扱うことは難しい。

川は絶えず姿を変える。だからこそ断片的な記録しか残らない地質学においては特に扱いにくいテーマとなっている。

たった一回の地震と断層活動によって流路が変更になる場合もあれば、より長い時間スケールで生じる大地の隆起・沈降・海水準変動とともにその流速・流路などが変化する場合もあり得る。

人は川から飲用水と産業用水を引き、人命・財産を守るために治水に励んできたため、人為的な河川流路の改変すら珍しいことではない。

川が流れる向きが逆転することもあるし、何もないところから突如湧水が出現することもあれば、まるで山を越えるように流れる川もある。

私自身、地球環境に関心を抱くきっかけは、海ではなく川が最初であった。雨が多く急峻な地形が多い日本では、川はあまりに身近な存在のため、当然と言われれば当然かもしれない。
川には独特の清涼感がある。初春〜夏にかけての旅の目的地にはつい川を選んでしまう。
川は雨の日には激流へとその姿を変える。自然に対する畏敬の念を教えてくれた場所、それが私にとっての川だ。

本書がカバーするのは主に日本の河川に関する話題だが、中国の黄河・揚子江、東南アジアのメコン川、そして海底を流れる川(海底谷・海溝)にまで話は及ぶ。

また最後の章では大陸を流れる河川の遠い過去の姿についても筆者の考えが述べられており大変興味深い。

大陸から海へと至る一連の物質循環の中で、川は大地の侵食と堆積物の運搬を担っており、もっぱらモノを海へと運ぶ役割を担っている。
運ばれたモノは重さ・大きさ・形状に応じて分配され、あるものは上流付近に、またあるものは海底谷にまで運ばれる。川にはモノの大きさを分ける働きがある。
だからこそ、地質学者は堆積層を見ればモノがどのような堆積環境にあったのか(河口からの距離や流速など)について知ることができる。
海底に溜まった堆積物はプレート運動によって地表上をさらに移動し、あるものは付加体として、またあるものは火山が噴き出す溶岩として、再び地表に現れる。
こうしてモノは川とプレートの働きによって地表上を循環しているのである。

この本を通じて、川の見方が大きく変わるかもしれない。
旅先で、地図を眺めながら、その土地の川の成り立ちや変遷に想いを巡らすのは楽しい。そしてその川を利用してきた人々の営みの歴史を知るのもまた興味深い。