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2020年10月23日金曜日

ドレーク海峡の深海サンゴが明らかにした最終氷期以降の南大洋の深層循環の姿(Li et al., 2020, Sci.Adv.)

Rapid shifts in circulation and biogeochemistry of the Southern Ocean during deglacial carbon cycle events

Tao Li, Laura F. Robinson, Tianyu Chen, Xingchen T. Wang, Andrea Burke, James W. B. Rae, Albertine Pegrum-Haram, Timothy D. J. Knowles, Gaojun Li, Jun Chen, Hong Chin Ng, Maria Prokopenko, George H. Rowland, Ana Samperiz, Joseph A. Stewart, John Southon, Peter T. Spooner

Science Advances  16 Oct 2020: Vol. 6, no. 42, eabb380


南大洋ドレーク海峡で採取された深海サンゴのδ11B・Δ14C・δ15N分析から、最終退氷期の海洋炭素循環を復元。

氷期-間氷期スケールの大気中CO2濃度変動(この論文では最終退氷期に焦点)と海洋炭素循環との関係が議論の中心。

※この話題はこのブログでもよく取り上げているので科学的背景は割愛。


共著者に名を連ねる、A. Burke博士とL.F. Robinson博士が2012年のサイエンスで、同深海サンゴのU/Th分析・14C分析から最終退氷期の深層循環・炭素循環について議論しているが、この論文も同じくドレーク海峡の深海サンゴの分析の結果を報じている。


主要なプロキシは

・14C(海水の古さ)

・δ11B(海水pHプロキシ ※今回は測定しておらず、先行研究からの引用)

・δ15N(海洋表層の栄養塩利用効率のプロキシ ※今回は測定しておらず、先行研究からの引用)


14C分析のサンプル数が3倍程度になったのが特徴らしい。

δ15Nの分析結果は、Wang et al., 2017, PNASですでに報告済みだが、当時はすべての試料についてのU/Th分析がなされていなかった。結果的に一部の試料の年代は、他のU/Th年代・14C年代の両方が得られた試料を参考にして、14C年代からU/Th年代を推定していたらしい(reconnaissance time scale)。


すべての試料に対してU/Th年代によって高精度の年代軸が得られた結果、南極アイスコアとの対比もより楽になった。


SAMWやAAIWに相当する深度のサンゴから復元された海水の14C年代は、LGM時点で大気よりも1400年古かった。

一方、UCDWに相当する深度のサンゴから復元された海水の14C年代は、LGM時点で大気よりも2100年古かった(完新世は1200年古かった)。


最終退氷期を通じて、海水の古さが緩まっており、氷期に深層水に炭素が蓄えられていたことが大気中CO2濃度の低下の一要因であったという説と整合的。


同じ深海サンゴのδ11BはLGMに海水pHが低下しており、より多くの溶存炭素が深層水に存在したことと整合的。

また、δ15Nは海洋表層におけるより効率的な栄養塩利用(つまり生物一次生産)が存在し、より多くの炭素が表層から深層へ輸送(生物ポンプ)されていたことを示しており、上記の説と整合的。


最終退氷期には、深層水の14C年代の若返りとともに、海水pHがより増加(溶存炭素が失われた)していた。

湧昇の強化によって炭素・栄養塩に富んだ深層水が湧き上がったが、栄養塩利用効率は次第に低下していた(おそらく鉄肥沃の緩和→生物ポンプ低下)。

深層へと炭素を戻す働き(生物ポンプ)よりも、大気へと散逸する効果が打ち勝った結果、大気中のCO2濃度が増加した。


残念ながら、最終退氷期でもっとも大きな大気中CO2濃度上昇のあったHS1(18.0-16.3 ka)は深海サンゴの記録がほとんどカバーできておらず、変動もほとんどないように見える。


最終退氷期には、いくつかの急上昇イベントを伴いながら、大気のCO2濃度が約80 ppm増加した。

以下に、際立った4つの時代の古気候学的特徴と、南大洋の記録との関係を述べる。


・14.6 ka、11.7 kaの大気CO2急上昇イベント

北半球高緯度は温暖化し、AMOCは強まっていた(氷期に停滞していたNADWの形成再開)。

南半球の偏西風は北上し、湧昇域が増加した。

湧昇によって多くの栄養塩が表層にもたらされた結果、外部輸送(生物ポンプ)もさかんだったが、表層の生物一次生産は非効率的だった。

南大洋の中層水のpHは非常に低かった。


・16.3 ka、12.8 kaの大気CO2急上昇イベント

北半球高緯度は寒冷化し、AMOCは弱まっていた(NADWの形成停滞)

南半球の偏西風は南下

1,700m深いの海水の14C濃度は大気の14C濃度に近づき、完新世よりも若返っていた(非常に大気に近い値に)。

南大洋で混合層が深まり、より深い対流が起きていたため?

2020年8月3日月曜日

氷期に南大西洋に入ってきた太平洋起源の深層水?(Yu et al., 2020, Ngeo)

J. Yu, L. Menviel, Z. D. Jin, R. F. Anderson, Z. Jian, A. M. Piotrowski, X. Ma, E. J. Rohling, F. Zhang, G. Marino & J. F. McManus
Nature Geoscience (2020)より。

大西洋の異なる深度から得られた、海底堆積物コア中の底生有孔虫のB/Ca分析から氷期の大西洋の水塊構造と炭素循環(大気中CO2濃度への影響)を議論。

2018年9月7日金曜日

将来の温暖化のアナログになる地質時代の温暖期

Palaeoclimate constraints on the impact of 2 °C anthropogenic warming and beyond
Hubertus Fischer et al.
Nature Geoscience 11, 474–485 (2018).

将来の地球温暖化(人為的気候変化)のアナログになりそうな、比較的最近の過去の温暖期に関するレビュー。

以下の期間に焦点をあてている。

1)完新世温度最適期(Holocene Thermal Maximum, HTM)
11〜5 ka(ka は1,000年前)
現在よりも<1℃ 温暖(とくに北半球高緯度に顕著)
CO2濃度:250〜260 ppm
海水準:現在と同程度

2)最終間氷期(Last Interglacial Period, LIG)
129〜119 ka
現在よりも約0.8℃温暖(海面表層水温SSTは0.5℃温暖、とくに北半球高緯度に顕著)
CO2濃度:280 ppm
海水準:現在よりも6〜9 m高かった

3)酸素同位体ステージ11.3(Marine Isotope Stage 11.3, MIS11.3)
410〜400 ka
CO2濃度:280 ppm
海水準:現在よりも6〜9 m高かった

4)中期鮮新世温暖期(Mid-Pliocene Warm Period, MPWP)
3.3〜3.0 Ma(Maは1,000,000年前)
現在よりも1〜3℃ 温暖
CO2濃度:300〜450 ppm
海水準:現在よりも6 m以上高かった


2018年5月31日木曜日

グレートバリアリーフの形成史(Webster et al., 2018, Ngeo)

Response of the Great Barrier Reef to sea-level and environmental changes over the past 30,000 years
Jody M. Webster, Juan Carlos Braga, Marc Humblet, Donald C. Potts, Yasufumi Iryu, Yusuke Yokoyama, Kazuhiko Fujita, Raphael Bourillot, Tezer M. Esat, Stewart Fallon, William G. Thompson, Alexander L. Thomas, Hironobu Kan, Helen V. McGregor, Gustavo Hinestrosa, Stephen P. Obrochta & Bryan C. Lougheed
Nature Geosciencevolume 11, 426–432 (2018)
より。

IODP第325次航海のグレートバリアリーフ(GBR)の海底掘削から、30ka以降のサンゴ礁形成史を復元。

参考までに、昔書いた、サンゴ礁掘削と環境復元に関する拙ブログ記事はこちら
タヒチの埋没サンゴ礁から過去の海水準変動を復元する

以前東北大の井龍先生らが中心となってタヒチのサンゴ礁でIODPによる掘削が行われたが(Deschamps et al., 2012, Nature)、その時は15kaまでしか遡れず(厳密には2つ前の退氷期の化石も見つかっているが;Thomas et al., 2009, Science)、最終氷期(~20ka)頃の化石サンゴを回収することは叶わなかった。
今回GBRで行われた掘削では、最終氷期や、それよりも前の時代の試料についても回収することができ、世界最大のサンゴ礁の形成史についての貴重な知見が得られた。
今回は東京大学大気海洋研究所の横山先生(私の学生時代の指導教官)らが中心となって掘削が行われた。日本からも多くのサンゴ礁研究者が関与している、大きな国際プロジェクトである。

海底地形図を眺めると、テラス状の構造が段階的に見られ、そこからもサンゴ礁の形成は段階的に起きた、すなわち成長の停止時期を伴いながら成長が起きていたことが想像できる。それが今回掘削を行い回収された化石サンゴの年代をウラン系列を用いて正確に特定することで、より正確な時空間変動が明らかとなった。

最終氷期のサンゴは世界的に見てもそれほど多く回収できておらず、当時熱帯域が寒すぎてそもそもサンゴが生育していなかったことが可能性として挙げられるが、それよりも原因になっているのは最終氷期の化石サンゴが130 m近い海底或いは地下に埋没していることが挙げられる。掘削船を用いた大掛かりな調査が必要なのは、こうしたことが背景にある。

化石サンゴの年代測定から明らかになった海水準変動曲線については、横山先生が主著者として現在論文を執筆中であり、本論文ではどういった環境要因がサンゴ礁の形成に重要だったかを中心に考察している。

1)海水準低下期(27 - 22 ka)
海水準は現在よりも -65mの位置から、-125mの位置まで海水準が低下した。
それよりも前の時代に形成されたサンゴ礁は地上に露出し、露出したサンゴは死滅した。一方、海側に向かって成長するサンゴが存在したことから、サンゴ礁は海側へと成長を続け、サンゴ全てがすべて死滅するような事態ではなかった。

2)海水準最低下期(~21 ka:最終氷期極相:LGM)
海水準は-125mの位置まで低下していた。
当時の水温はSr/Ca古水温計の推定から現在よりも4度低かったとも言われている(Felis et al., 2014, Nature communications)。低水温状態でもサンゴが成長できることの現れである。

3)海水準上昇期(21 - 10 ka:最終退氷期)
海水準が現在よりも -55mの位置まで上昇した。海水準は急激な上昇イベント(例えば14.6kaのMWP-1Aなど)を伴いながら、段階的に上昇した。
タヒチではMWP-1Aにおける300年間に20 mという急激な海水準上昇によって一部のサンゴ礁が溺れたが、GBRでは追いつくことができていたらしい。
ただし、別のタイミングでサンゴ礁が溺れるイベントがいくつか見つかった(海底地形にも見られる複数のテラス状の地形)。
こうした溺死によるサンゴ礁の成長停止・低下を伴いながらも、サンゴ礁は陸側へと成長し続けた。こうした水平方向の移動速度がそれなりに大きいことは、従来考えられていたよりも礁全体としては環境変動に対して耐性が大きいことの現れとも言える。
この時、陸の一部が水没することにより、砕屑物の供給量も急増した。砕屑物の流入は水の濁度を増加させ、サンゴの光合成を阻害する要因である(ただし、一部のサンゴは栄養を摂れるかも?)。光合成量の低下はサンゴの石灰化量の低下に繋がり、サンゴ礁の成長速度を低下させる。そのため、海水準上昇に伴う陸域砕屑物の流入量もまたサンゴ礁の成長に大きく寄与したものと思われる。
タヒチの例でも報告があるように(Blanchon et al., 2014, Scientific Reports)、陸からの砕屑物がトラップされるような地形(礁原など?)が発達することが、その後のサンゴ礁の成長に大きく寄与するようである。

最終的に、海水準上昇が終わりに近づいた9ka頃に現在の堡礁(バリアリーフ)システムが形成されたと考えられており、それまでは裾礁(フリンジングリーフ)システムとして大陸の縁辺にへばりつくような構造であったらしい。

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実は私自身も、前回のタヒチにおけるIODP航海同様(Kubota et al., 2014, Scientific Reports)、このIODP航海に関与している。
具体的にはニオウミドリイシサンゴ(Isopora spp.)の骨格中のホウ素同位体分析を通じて、最終氷期以降の海水のpH・pCO2を復元し、海水炭酸系の変化がサンゴ礁の成長にどのように寄与したかを明らかにしたいと考えている(逆に、サンゴ礁の成長によって海水炭酸系が大きく変化していた可能性もある)。
一般に古気候研究にはハマサンゴ(Porites spp.)の骨格が重宝されるが、GBRの掘削からはほとんど得られていない。ニオウミドリイシについても、ハマサンゴ同様に塊状の構造を持つことから、古気候復元に用いることができる。まずは室内水槽実験を通じて骨格のホウ素同位体と海水炭酸系との関係をしっかりと把握し、過去の復元に応用したいと考えている。

2017年1月20日金曜日

最終間氷期の全球平均水温のコンパイル(Hoffman et al., 2017, Science)

Regional and global sea-surface temperatures during the last interglaciation
Jeremy S. Hoffman, Peter U. Clark, Andrew C. Parnell, Feng He
Science 355, 276–279 (20 Jan 2017)
より。

最近、論文概説が形骸化していたので、急ぎまとめる次第。

海底堆積物コアの復元水温記録のコンパイルから、地域ごと(低緯度・低緯度以外、など)の温度を誤差を含めて評価し、現在と対比。


2016年10月4日火曜日

二枚貝の軟体部・殻への重金属の蓄積(Schöne & Krause Jr., 2016, GPC)

Retrospective environmental biomonitoring – Mussel Watch expanded
Bernd R. Schöne, Richard A. Krause Jr.
Global and Planetary Change 144, 228–251 (2016)
より。

二枚貝の軟体部・殻の微量元素・有機物分析を利用した環境汚染研究のレビュー。
これまで軟体部や殻の全岩分析が利用されてきたが、殻断面の成長方向に沿った分析が重要であることを強調。また、動物としての生理をよりよく理解することが殻の化学組成の理解に必須であることを指摘。

以下は個人的に重要だと思った項目についての各章ごとのメモ(手抜きした論文概説)。

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2. 成長線

・蝶番部に見られる凹凸構造は、貝殻の開閉の際に捻れることを防いでいる。

・殻は外層と内層に分かれる。外層と内層は見た目で判断できるが、結晶構造・有機物量・化学的にも異なっている。
殻が閉じると嫌気呼吸となり、酸性の代謝物が内層を溶かしている

・殻皮は貝をウイルス感染や溶解から守っている。さらに外敵へのカムフラージュの役割もある。

・殻の石灰化が起きる部位は海水からは隔離されている。石灰化の際、
Ca2+ + HCO3- = CaCO3 + H+
の反応によって石灰化部位が酸性的になるが、脱炭酸酵素(Carbonic unhydrase; CA)の働きで代謝産物のCO2がHCO3-に変換されるなどして過剰に酸性にならないように抑えられている
受動的なイオンチャネルによるイオン輸送だけでは石灰化に必要なイオンを補えないため、Ca2+ATPaseに代表される酵素が働いていると考えられる。
また様々な有機物(キチン・たんぱく質・脂質・ムコ多糖・グルコサミン)が石灰化に関与している
自然界では不安定な、アラゴナイトやバテライトといった結晶系の炭酸塩を貝は分泌している。
有機物以外にも各種微量元素が輸送され、殻に取り込まれている。以下の取り込みが考えられる。
(1)結晶表面への吸着(2)有機物に取り込まれている(3)結晶内でCa2+を置換(4)炭酸塩以外の結晶に取り込まれている

エキソサイトーシス(exocytosis)によって、小胞を通じて体内の異物を体外に除去する機能がある。毒物の蓄積・除去に重要な役割を負っていると考えられる。

・殻の形成周期は種ごとに様々ある。潮間帯の種は生息環境が浸水してる間により成長するため、小潮の潮位差が小さい時によく伸びる。逆に大潮では干出の時間が長くなり成長しにくくなる。

・年成長線にはS・Sr・Mg、有機物の濃集・欠乏が見られることがある。さらに微細結晶構造もより原始的になる。


3. 二枚貝の生理と生態

・ムール貝に比べ、カキは重金属を蓄積しやすい

・イシガイ科を例に挙げると、亜鉛はどの個体も同程度の濃度に保たれている一方で、カドミウムはサイトごとに異なる(水塊を反映する)。元素ごとに生物にとって必須/不要かがあるので、恒常性(ホメオスタシス)が強く表れる場合とそうでない場合がある。

金属またはその他汚染物質が組織から除去される速度(生物学的半減期)は種ごとに異なる。そういった特性を把握することが、殻の地球科学分析の結果の解釈にも重要(時間解像度の平均化の問題など)。

・外的要因(塩分・酸素濃度・水温)によっても元素の取り込みが変わることがある。
例えば低塩分ほどカドミウムやクロムの取り込みが多くなる一方、亜鉛にはそうした傾向が見られていない。その理由は貝の生理に関係したものや堆積物中の無機化学プロセス(元素の動態・反応性が変化する)に関係したものまで、様々ある。

・同じ二枚貝でも種によって微量金属元素の取り込み方は異なる。例えば、取り込んだ水銀の排出速度も種ごとに異なる。おそらく金属の取り込みのメカニズムに多様性があることが原因。貝殻へと除去する過程もあるかもしれない。


4. 重金属汚染

・軟体部に比べ、殻は保存が容易で環境中の微量元素を反映しやすいという利点がある一方、必ずしもすべての種の殻に環境の微量元素濃度が反映されるわけではない

・微量元素の濃度は年齢、微細構造でも異なる可能性があり、全岩分析(whole shell, bulk)によって標本間の比較を行う際などには解釈に注意が必要である。殻は常に同じ速度で形成されるわけではなく、ある時期のある時間に形成されるため、バイアスがかかっていることに注意が必要。

・遺跡から発掘された貝を利用して現在と過去の金属汚染を議論したい場合、埋没後の続生作用も考慮すべきである。

貝殻への微量元素の取り込みは殻の部位ごとに異なる。すなわち、成長速度が大きく影響していると思われる。生息密度は殻の形状に影響するので、重要な因子であると思われる。

・殻の鉛の経年変動を使った研究は、ガソリン利用の開始など人為起源の鉛汚染をうまく捉えている。コントロールサイトの設定、複数個体の分析などが必要。


5. 続生作用

・生物の死後あるいは存命中に殻の微量元素濃度が続生作用を被ることがある(ある元素の濃度が増加/減少する)。アラゴナイトのカルサイト化や間隙水からの二次カルサイトの沈殿などがある。
ラマン分光やSEM、XRDを使ってもともとの構造が保存されていることを確かめることが重要。

2016年2月25日木曜日

過去の風の変動を復元する(Jacobel et al., 2016, Ncom)

Large deglacial shifts of the Pacific Intertropical Convergence Zone
A.W. Jacobel, J.F. McManus, R.F. Anderson & G. Winckler
Nature Communications 7:10449, DOI: 10.1038/ncomms10449 (2016)
より。

赤道太平洋から得られた堆積物コアからダスト量を復元し、1つ前の退氷期のハインリッヒ・イベント(HS11)における熱帯収束帯の変動を議論。

2016年2月8日月曜日

氷期の大気中CO2濃度、生物生産、鉄の関わり(Costa et al., Jaccord et al., 2016, Nature)

No iron fertilization in the equatorial Pacific Ocean during the last ice age
K. M. Costa, J. F. McManus, R. F. Anderson, H. Ren, D. M. Sigman, G. Winckler, M. Q. Fleisher, F. Marcantonio & A. C. Ravelo
Nature 529, 519–522 (28 January 2016)

Covariation of deep Southern Ocean oxygenation and atmospheric CO2 through the last ice age
Samuel L. Jaccard, Eric D. Galbraith, Alfredo Martínez-García & Robert F. Anderson
Nature (2016) doi:10.1038/nature16514

より。
ともに氷期における大気中CO2濃度低下の謎について堆積物中の古気候指標から考察した論文。
JOIDES Resolution@インド洋南西部の甲板より。視線の先にJaccordらが得た堆積物の採取地が


2015年8月19日水曜日

100年後の放射性炭素年代測定(Graven, 2015, PNAS)

Impact of fossil fuel emissions on atmospheric radiocarbon and various applications of radiocarbon over this century
Heather D. Graven
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 112, 9542–9545 (2015)

久しぶりに自由な時間ができたので、面白そうな新着論文をピックアップして紹介。

2015年7月10日金曜日

過去の温暖期の海水準(Dutton et al., 2015, Science)

Sea-level rise due to polar ice-sheet mass loss during past warm periods
A. Dutton, A. E. Carlson, A. J. Long, G. A. Milne, P. U. Clark, R. DeConto, B. P. Horton, S. Rahmstorf, M. E. Raymo
Science 349, DOI: 10.1126/science.aaa4019 (10 July 2015)

Scienceに掲載された過去の温暖期の海水準と氷床量に関するレビュー。特にPliocene・MIS11・MIS5e・Holocene thermal optimumに着目。

2015年5月10日日曜日

最終氷期における南北の熱シーソー(WAIS Divide Project Members, 2015, Nature)

Precise interpolar phasing of abrupt climate change during the last ice age
WAIS Divide Project Members
Nature 520, 661–665 (30 April 2015)
より。

西南極氷床から得られたアイスコア(WDC)のδ18O・CH4分析結果をグリーンランド氷床アイスコアの記録と比較することで、氷期における南北半球の温暖・寒冷期の位相とメカニズムを考察。

2015年4月11日土曜日

ペルム-三畳紀境界の大量絶滅は海洋酸性化が直接の原因?(Clarkson et al., 2015, Science)

Ocean acidification and the Permo-Triassic mass extinction
M. O. Clarkson, S. A. Kasemann, R. A. Wood, T. M. Lenton, S. J. Daines, S. Richoz, F. Ohnemueller, A. Meixner, S. W. Poulton, E. T. Tipper
Science 348, 229–232 (10 April 2015). 

とその解説記事
Acid oceans cited in Earth's worst die-off
Eric Hand
Science 348, 165–166 (10 April 2015).
より。

アラブ首長国連邦(UAE)の炭酸塩質堆積岩中の石灰化生物の殻のδ13C・δ11Bの測定と炭素循環モデルから、地球史上最大の絶滅が起きたペルム-三畳紀境界(P/T境界)の炭素循環を考察。

2015年3月1日日曜日

東赤道太平洋域のサンゴ礁・生物侵食・セメント(Manzello et al., 2008, PNAS)

Poorly cemented coral reefs of the eastern tropical Pacific: Possible insights into reef development in a high-CO2 world
Derek P. Manzello, Joan A. Kleypas, David A. Budd, C. Mark Eakin, Peter W. Glynn, and Chris Langdon
PNAS 105, 10450–10455 (2008).

前回の記事(以下のリンク)に引き続き、東赤道太平洋のサンゴ礁と海洋酸性化に関するもの。
ガラパゴス諸島のサンゴ礁・生物侵食・海洋酸性化(Manzello et al., in press, GRL)

前回のものと同じく、フロリダ大学のManzello氏が主著者。
この論文の中では、東赤道太平洋の海水炭酸系の気候値と、サンゴの生物侵食の度合いサンゴ礁基盤のセメントの程度との関係が議論されている。

研究対象地は3つ。パナマ湾・Chiriqui(チリキ)湾・ガラパゴス諸島
炭酸系の気候値がそれぞれ異なること、湧昇の強弱が季節により変化し、それに伴い炭酸系の値が変化するという違いがあることから着目している。

2015年2月13日金曜日

最終退氷期における海からのCO2放出(Martinez-Boti et al., 2015, Nature)

Boron isotope evidence for oceanic carbon dioxide leakage during the last deglaciation
M. A. Martinez-Boti, G. Marino, G. L. Foster, P. Ziveri, M. J. HenehanJ. W. B. Rae, P. G. Mortyn, D. Vance
Nature 518, 219–222 (12 February 2015).

とその解説記事
Geochemistry: When carbon escaped from the sea
Katherine A. Allen
Nature 518, 176–177 (12 February 2015).

より。
Gavin L. Fosterらの最新の研究成果。過去10年程度の有孔虫δ11Bに関する仕事の集大成とも言える論文。

2014年12月20日土曜日

前の間氷期に確認された大西洋子午面循環の急激な変化〜温暖化のアナログ?(Hayes et al., 2014, Science)

A stagnation event in the deep South Atlantic during the last interglacial period
Christopher T. Hayes, Alfredo Martínez-García, Adam P. Hasenfratz, Samuel L. Jaccard, David A. Hodell, Daniel M. Sigman, Gerald H. Haug, Robert F. Anderson
Science 346, 1514-1517 (19 December 2014).
より。

南大洋で採取された堆積物コア(ODP Site 1094、53.2°S、2807m)の分析から、最終間氷期(MIS5e)の大西洋子午面循環(AMOC)の変動を議論。

2014年12月18日木曜日

ガラパゴス諸島のサンゴ礁・生物侵食・海洋酸性化(Manzello et al., in press, GRL)

Galápagos Coral Reef Persistence after ENSO Warming Across an Acidification Gradient
Derek P. Manzello, Ian C. Enochs, Andrew Bruckner, Philip G. Renaud, Graham Kolodziej, David A. Budd, Renée Carlton andPeter W. Glynn
GRL, in press
より。
ガラパゴス諸島で採取されたハマサンゴの骨格分析から、サンゴ礁の生物侵食・礁形成と海水の温度・pH・栄養塩濃度との関係について考察。

2014年10月31日金曜日

これまででもっとも細かい大気CO2濃度記録:最終退氷期(Marcott et al., 2014, Nature)

Centennial-scale changes in the global carbon cycle during the last deglaciation
Shaun A. Marcott, Thomas K. Bauska, Christo Buizert, Eric J. Steig, Julia L. Rosen, Kurt M. Cuffey, T. J. Fudge, Jeffery P. Severinghaus, Jinho Ahn, Michael L. Kalk, Joseph R. McConnell, Todd Sowers, Kendrick C. Taylor, James W. C. White & Edward J. Brook
Nature 514, 616–619 (30 October 2014)

より。
西南極氷床から得られたアイスコア(WDC)の、これまでで最も高い解像度の最終退氷期(20-10ka)における大気CO2濃度変動記録を報告。

2014年10月23日木曜日

氷期の赤道大西洋のCO2放出は今よりも大きかった?(Foster & Sexton, 2014, Geology)

Enhanced carbon dioxide outgassing from the eastern equatorial Atlantic during the last glacial
G.L. Foster and P.F. Sexton
Geology doi: 10.1130/G35806.1 (October 7, 2014)

より。
ちなみにGeologyだけどオープンアクセス。

ホウ素同位体(δ11B)-pH-pCO2プロキシを用いた赤道大西洋の最終氷期以降の海洋表層pCO2復元に関する論文。

2014年10月15日水曜日

海底の引っ搔き傷から氷期の北米氷床から流出した氷山がどう流れるかを推定(Hill & Condron, 2014, Ngeo)

Subtropical iceberg scours and meltwater routing in the deglacial western North Atlantic
Jenna C. Hill & Alan Condron
Nature Geoscience, AOP (2014)

個人的に非常に面白く、そして大変重要だと感じた論文。

氷期や最終退氷期における北米大陸氷床からの氷山流出とその融水放出(ハインリッヒ・イベント、8.2 kaイベントなど)が大西洋子午面循環だけでなく、全球の気候に大きな影響を与えたことが世界中の様々な記録から示唆されている(中国・インドネシア・ブラジルの鍾乳石、北半球中・高緯度の堆積物コアなど)。

ただし、これまでの知見からは(そして僕の抱いていたイメージからは)、氷山流出の範囲というものは亜寒帯循環に捕われた形で終結しており、あまり南方までは運ばれることはなかったというのが通説であった。

2014年10月8日水曜日

Intcal13の前バージョンからの変更点

考古学・古気候学・古海洋学・炭素循環研究などで大変重要な放射性炭素年代測定。

放射性炭素年代を暦年代に較正する必要性については前回の記事「Intcalのお話」で述べました。

今回は最近公表された(といっても去年だけど)、Intcal13較正曲線の前バージョンからのアップデートについてまとめておきます。

参考にしているのは以下の論文
IntCal13 and Marine13 Radiocarbon Age Calibration Curves 0–50,000 Years cal BP
Paula J Reimer
Radiocarbon 55, 1869-1887 (2013).