Main contents

☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog
ラベル GRL の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル GRL の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2014年12月18日木曜日

ガラパゴス諸島のサンゴ礁・生物侵食・海洋酸性化(Manzello et al., in press, GRL)

Galápagos Coral Reef Persistence after ENSO Warming Across an Acidification Gradient
Derek P. Manzello, Ian C. Enochs, Andrew Bruckner, Philip G. Renaud, Graham Kolodziej, David A. Budd, Renée Carlton andPeter W. Glynn
GRL, in press
より。
ガラパゴス諸島で採取されたハマサンゴの骨格分析から、サンゴ礁の生物侵食・礁形成と海水の温度・pH・栄養塩濃度との関係について考察。

2014年9月16日火曜日

新着論文(G3, GRL, JGR, PO)

G3
Provenance of the late quaternary sediments in the Andaman Sea: Implications for monsoon variability and ocean circulation
Neeraj Awasthi, Jyotiranjan S. Ray, Ashutosh K. Singh, Shraddha T. Band, Vinai K. Rai
アンダマン海から得られた堆積物コア中のSr・Nd同位体記録から、過去80kaの陸上風化と(河川・海流による)砕屑物運搬プロセスを考察。

The dynamics of global change at the Paleocene-Eocene thermal maximum: A data-model comparison
Timothy J. Bralower, Katrin J. Meissner, Kaitlin Alexander, Deborah J. Thomas 
南大洋で得られた堆積物コア(ODP Site 690: Maud Rise)のPETMの開始時期のデータの再解釈。一連の出来事(表層の温暖化→熱・栄養塩分布の変化→深層水の酸性化→陸上風化の活発化)をEMICsによるモデルの再現と比較することでより確かなシナリオを提示。

GRL
About the role of Westerly Wind Events in the possible development of an El Niño in 2014
Christophe E. Menkes, Matthieu Lengaigne, Jérôme Vialard, Martin Puy, Patrick Marchesiello, Sophie Cravatte, Gildas Cambon
2014年4月までの東赤道太平洋の表層水温アノマリは1997年の強いエルニーニョのそのものに類似していたことから、多くの研究者が2014年に強いエルニーニョが来る可能性を予感していた。しかしながら、7月にはアノマリは平年的な位置へと移動した。海洋モデルから、西風ジェットの発達様式が1997年のものと異なっていることが原因であると示唆される。従って、今年強いエルニーニョが発生する見込みは低くなっている。

JGR-Oceans
Distinguishing meanders of the Kuroshio using machine learning
David A. Plotkin, Jonathan Weare, Dorian S. Abbot
黒潮大蛇行のメカニズムやその特徴付けはあまり良くなされていない。再解析データを異なる手法を用いて解析することで、(1)黒潮がバイ・モーダルであること、(2)黒潮反流との相関性が高いこと、(3)平均的な位置よりはむしろ流路の変動性によって良く特徴付けられることなどが分かった。

Paleoceanography
Simulating Pliocene warmth and a permanent El Niño-like state: the role of cloud albedo
N. J. Burls, A. V. Fedorov
鮮新世(Pliocene; 4-5Ma)には赤道太平洋東西の温度差が小さく(1-2℃)、よりエルニーニョ的であった証拠が多く見つかっている。その後の全球的な寒冷化とともに西には暖水域、東には冷水域が形成されたと考えられているものの、その理論体型はまだ作られていない。雲のアルベドを変化させる気候シミュレーションから、多くの間接指標を統合的に説明できる結果が得られた。雲のアルベドの南北方向の傾きの現象が原因?

2014年8月11日月曜日

新着論文(Coral Reefs, GRL)

Coral Reefs
Multiple driving factors explain spatial and temporal variability in coral calcification rates on the Bermuda platform
A. Venti, A. Andersson, C. Langdon
サンゴの石灰化速度を規定する要因についてはよく分かっていない。バミューダで得られたハマサンゴ(Porites astreoides)とノウサンゴ(Diploria strigosa)の石灰化速度について評価を行ったところ、炭酸塩飽和度に非常に敏感であることが分かったが、現実には光もまた同じ位相で変動しているため、光が支配的な要因ではないかと推測される。見た目上の相関によって、「サンゴの石灰化は飽和度の低下に対してかなり敏感である」という間違った結論に導かれている可能性がある。また、季節変動に関しては温度もまた半分程度の要因になっていることが示唆された。

Historic impact of watershed change and sedimentation to reefs along west-central Guam
Nancy G. Prouty, Curt D. Storlazzi, Amanda L. McCutcheon, John W. Jenson
グアム西部から得られたハマサンゴの骨格成長速度・石灰化速度・ルミネッセンス・Ba/Ca分析から、過去100年間の土壌流入量とサンゴの成長を議論。戦後の活発な土地開発の結果、サンゴ礁への土壌流入が急激に増加した。

GRL
Reconstruction of Pacific Ocean bottom water salinity during the Last Glacial Maximum
Tania Lado Insua, Arthur J. Spivack, Dennis Graham, Steven D'Hondt, Kathryn Moran
太平洋で得られた海洋底堆積物コア中の間隙水Clイオン濃度測定から、最終氷期の深層水の塩分を推定。現在よりも4%濃度が増しており、海水準の低下による全球的な塩分上昇よりも高い値が太平洋の南北で普遍的に得られた。

Enhanced acidification of global coral reefs driven by regional biogeochemical feedbacks
Tyler Cyronak, Kai G. Schulz, Isaac R. Santos, Bradley D. Eyre
沿岸域では海洋酸性化にともなうpCO2の上昇とpHの低下は、短期間の変動(日周期・季節変動など)や様々な生物地球化学的な作用によって影響される。世界各地のサンゴ礁における平均的なpCO2の上昇速度は、外洋域のそれに比べて3.5倍早いことが分かった。人間活動に伴う栄養塩・有機物の流入量の増加が原因と考えられる。

2014年7月14日月曜日

新着論文(G3・GRL・JGR-o・GBC・CP)

G3
Sea level and climate forcing of the Sr isotope composition of late Miocene Mediterranean marine basins
T. F. Schildgen, D. Cosentino, G. Frijia, F. Castorina, F. Ö. Dudas, A. Iadanza, G. Sampalmieri, P. Cipollari, A. Caruso, S. A. Bowring, M. R. Strecker
中新世(Miocene)の地中海の閉鎖環境を堆積物コア中のカキや有孔虫の87/86Srから復元。全球の平均的な値からかなり低い値をとる時期(Messinian Salinity Crisisなど)は、海水準が低下していたか、テクトニクスの変動時期と一致していることが分かった。特に地中海に流れ込む河川水の影響が大きいと考えられている。

Deciphering bottom current velocity and paleoclimate signals from contourite deposits in the Gulf of Cádiz during the last 140 kyr: An inorganic geochemical approach
André Bahr, Francisco J. Jiménez-Espejo, Nada Kolasinac, Patrick Grunert, F. Javier Hernández-Molina, Ursula Röhl, Antje H.L. Voelker, Carlota Escutia, Dorrik A.V. Stow, David Hodell, Carlos A. Alvarez-Zarikian
IODP第339次航海で得られたジブラルタル海峡沖の堆積物コアから過去530万年間の底層流および古環境を復元。Zr/Al比が底層流の半定量的な指標になることを提案(ジルコンが比較的重い鉱物に濃集しているため)。有機物に多く含まれるBr(Bromine)はコアの対比にうまく使えることも分かった。MIS6–1にかけての高解像度の記録は、ターミネーション時やハインリッヒイベント時に急激な変動を示していた。

GRL
Distribution and vegetation reconstruction of the deserts of northern China during the mid-Holocene
Qin Li, Haibin Wu, Zhengtang Guo, Yanyan Yu, Junyi Ge, Jianyu Wu, Deai Zhao, Aizhi Sun
およそ6,000年前の中国北部の砂漠は、夏のモンスーンの強化に伴い、縮小していたことが風成堆積物の解析から示唆。

Attributing the increase in Northern Hemisphere hot summers since the late 20th century
Youichi Kamae, Hideo Shiogama, Masahiro Watanabe, Masahide Kimoto
GCMによるモデルシミュレーションから、北半球における異常な夏の暑さが近年増加していることの原因を推定。半分ほどは数十年規模の気候変動が原因であることが示唆された。また人為起源の放射強制も寄与しており、今後数十年間に発生頻度は増加することが予測された。

Seasonal radiocarbon and oxygen isotopes in a Galapagos coral: Calibration with climate indices
Ellen R.M. Druffel, Sheila M. Griffin, Danielle Glynn, Robert B. Dunbar, Dave Muciarone, J. Robert Toggweiler
ガラパゴス諸島で得られたコモンシコロサンゴ(Pavona clavus)の1939–1954年にかけての季節変動レベルのΔ14C・δ18O記録を報告。既に年スケール・数年スケールの良いENSO指標になることが知られていたが、季節変動レベルでも逆相関の関係が見られた。Δ14Cに2ヶ月のラグを考慮するともっとも良い相関となることも分かった(物理メカニズムは依然として不明)。PDOに伴い赤道において湧昇する水の混合比が変化したことも分かった(北 v.s. 南)。

Evidence for long-term memory in sea level
Sönke Dangendorf, Diego Rybski, Christoph Mudersbach, Alfred Müller, Edgar Kaufmann, Eduardo Zorita, Jürgen Jensen
海水準変動には温度と塩分の効果による成分(steric component)が含まれるため、ある地域では数十年の周期で変動することが知られている。100年ほどの歴史がある世界60点の検潮所の記録から評価を行ったところ、数十年の変動成分に加えて、長期トレンドが確認された。長期トレンドは氷河や氷帽の後退の観測から期待される海水準上昇量とも整合的であった。

Upper atmosphere cooling over the past 33 years
Y. Ogawa, T. Motoba, S. C. Buchert, I. Häggström, S. Nozawa
ノルウェー北部のトロムソにおける過去33年間の高層大気の観測から、地球大気下層の温室効果ガス濃度の増加から期待される、大気上層の寒冷化トレンドが確認された。GCMによる予測とも整合的であり、観測から定量的に確証したのは世界初?

JGR-Oceans
Dense shelf water production in the Adélie Depression, East Antarctica, 2004-2012: Impact of the Mertz Glacier calving
Maité Lacarra, Marie-Noëlle Houssais, Christophe Herbaut, Emmanuelle Sultan, Mickael Beauverger
東南極Mertz氷河のポリニヤにおける2004–2012年の観測記録から海氷生成・高密度水形成・氷山分離などのメカニズムを推定。

Twentieth century sea surface temperature and salinity variations at Timor inferred from paired coral δ18O and Sr/Ca measurements
Sri Yudawati Cahyarini, Miriam Pfeiffer, Intan Suci Nurhati, Edvin Aldrian, Wolf-Christian Dullo, Steffen Hetzinger
ティモール島で得られたハマサンゴのδ18O・Sr/Ca分析から、1914–2004年にかけてのSSTとSSSを復元。ENSOよりもインド洋ダイポール(IOD)の影響が顕著に見られた。

GBC
Decadal (1994–2008) change in the carbon isotope ratio in the eastern South Pacific Ocean
Young Ho Ko, Kitack Lee, Paul D. Quay, Richard A. Feely
化石燃料燃焼由来の炭素も土地利用変化由来の炭素も等しく軽いδ13Cをもつため、人為起源の海水DIC増加の良い指標になることが知られている。東太平洋を南北に横断する測線(110°W)に沿って、1994年から2008年にかけての水塊のδ13C_DICの変化を報告。亜寒帯で大きく、熱帯域で小さい変化が見られた。50%以上の人為起源CO2はAAIWによって取り込まれ、北へと輸送されていることが分かった。AAIWによる取り込み速度が2008年には低下しており、南大洋のCO2吸収力が低下している可能性が示唆。

Climate of the Past
Persistent decadal-scale rainfall variability in the tropical South Pacific Convergence Zone through the past six centuries
C. R. Maupin, J. W. Partin, C.-C. Shen, T. M. Quinn, K. Lin, F. W. Taylor, J. L. Banner, K. Thirumalai, and D. J. Sinclair
ソロモン諸島で得られた鍾乳石のδ18Oから過去600年間のSPCZ(South Pacific Convergence Zone:南太平洋収束帯)変動に伴う降水量の変動を復元。太平洋数十年規模変動(PDV)に関連した数十年スケールの大きな変動が確認された。

2014年5月6日火曜日

新着論文(GRLほか)

G3
Rhizon sampler alteration of deep ocean sediment interstitial water samples, as indicated by chloride concentration and oxygen and hydrogen isotopes
Madeline D. Miller, Jess F. Adkins, David A. Hodell
堆積物中の間隙水を採取するための方法を比較。新たなRhizons方式は従来法に比べて[Cl]とδ18Oともにバイアスがかかっていることを指摘。

GRL
To what extent can interannual CO2 variability constrain carbon cycle sensitivity to climate change in CMIP5 Earth System Models?
Jun Wang, Ning Zeng, Yimin Liu, Qing Bao
陸上炭素が大気中CO2濃度変動に与える役割に着目してCMIP5のモデル結果を解析したところ、正のフィードバックによって熱帯域の温暖化がCO2のさらなる放出へと繋がっていることが示唆。ただしモデルは観測よりもフィードバックプロセスを過大評価する傾向があることが確認された。

Climate variability features of the last interglacial in the East Antarctic EPICA Dome C ice core
K. Pol, V. Masson-Delmotte, O. Cattani, M. Debret, S. Falourd, J. Jouzel, A. Landais, B. Minster, M. Mudelsee, M. Schulz, B. Stenni
間氷期には千年スケールの気候変動があることが完新世においては広く知られているが、それより以前の間氷期には高解像度の記録が乏しいことからよく分かっていない。南極Dome Cアイスコアから得られた気温指標(δD)から、MIS5において短周期の変動が確認された。特にMIS11において確認されていたように、他の間氷期でも氷河化(glacial inception)に向かう以前には特に大きな変動が見られた。またMIS5の変動は完新世のそれよりも振幅が大きく、温暖な状態で東南極氷床が大きく変動していた可能性が示唆される。

JGR-Oceans
Relationships between total alkalinity in surface water and sea surface dynamic height in the Pacific Ocean
Yusuke Takatani, Kazutaka Enyo, Yosuke Iida, Atsushi Kojima, Toshiya Nakano, Daisuke Sasano, Naohiro Kosugi, Takashi Midorikawa, Toru Suzuki, Masao Ishii
海洋表層水のアルカリ度は温度と塩分で近似できることが知られるが、北太平洋においてはその限りではない。塩分と海面高度(sea surface dynamic height)で経験的に近似できることを提案。

Trends in Southern Hemisphere wind-driven circulation in CMIP5 models over the 21st century: Ozone recovery versus greenhouse forcing
Guojian Wang, Wenju Cai, Ariaan Purich
近年南極オゾン層の現象が南半球の大気・海洋循環を変化させていることが知られているが、今後オゾン層が回復し、温室効果が増強する中で循環場がどのように変化するかはよく分かっていない。CMIP5によるRCP4.5と8.5に基づいた予測結果を解析したところ、特にRCP8.5に基づいた2050年以降の未来においては循環場が大きく変化することが示唆された。

2013年12月17日火曜日

新着論文(PNAS, GRL)

PNAS
10 December 2013; Vol. 110, No. 50
Articles
Anthropogenic emissions of methane in the United States
Scot M. Miller, Steven C. Wofsy, Anna M. Michalak, Eric A. Kort, Arlyn E. Andrews, Sebastien C. Biraud, Edward J. Dlugokencky, Janusz Eluszkiewicz, Marc L. Fischer, Greet Janssens-Maenhout, Ben R. Miller, John B. Miller, Stephen A. Montzka, Thomas Nehrkorn, and Colm Sweeney

Atmospheric deposition of methanol over the Atlantic Ocean
Mingxi Yang, Philip D. Nightingale, Rachael Beale, Peter S. Liss, Byron Blomquist, and Christopher Fairall

GRL
Systematic ENSO-driven nutrient variability recorded by central equatorial Pacific corals
Michèle LaVigne, Intan S. Nurhati, Kim M. Cobb, Helen V. McGregor, Daniel Sinclair, Robert M. Sherrell
Christmas・Fanning島から得られたハマサンゴP/Caを用いて過去20年間のENSO変動(栄養塩変動)を復元。97/98エルニーニョの際には40%の低下が確認された。サンゴだけでなく他の植物プランクトンも栄養塩を取り込むため、イベントの記録には多少の時間的差異が生じる。

Hysteresis between coral reef calcification and the seawater aragonite saturation state
Ashly McMahon, Isaac R. Santos, Tyler Cyronak, Bradley D. Eyre
多くの海洋酸性化のサンゴ礁への影響評価はアラゴナイト飽和度と生態系全体の石灰化量の間に線形関係を仮定している。しかし、GBRのサンゴ礁においては両者の間にヒステレシスが見られることが確認された。

The influence of recent Antarctic ice sheet retreat on simulated sea ice area trends
N. C. Swart, J. C. Fyfe 
近年融解する南極氷床が南大洋をより低塩分にしている。モデルシミュレーションから、淡水フラックスが海氷の変化にあまり影響していない可能性が示唆。

The role of CO2 variability and exposure time for biological impacts of ocean acidification
Emily C. Shaw, Philip L. Munday, Ben I. McNeil 
現在の海洋酸性化の生態系影響評価には炭酸系の自然変化(日・月変化など)の期間や規模は考慮されていない。これまでのサンゴ礁に棲息する魚を対象にした酸性化実験の結果から、室内実験で確認されているような負の影響が見えるには、現在の暴露時間(exposure time)は不十分である可能性が示唆。CO2変動の期間や規模をしっかりと考慮する必要がある。

Modeling evidence that ozone depletion has impacted extreme precipitation in the austral summer
S. M. Kang, L. M. Polvani, J. C. Fyfe, S.‒W. Son, M. Sigmond, G. J. P. Correa
>関連した記事(Ngeo#Sep2013 "Research Highlights")
Ozone-induced extremes
オゾンが招く異常
過去数十年間に南半球の嵐や降水バンドが南へとシフトしているが、それは南極のオゾン層と深く関係していることがモデルシミュレーションから明らかに。1970年代以降、南半球の亜熱帯域の大雨の頻度と強度が増加していることが示された。一方で中緯度のそうした現象は減っているらしい。

Paleogeographic controls on the onset of the Antarctic circumpolar current
Daniel J. Hill, Alan M. Haywood, Paul J. Valdes, Jane E. Francis, Daniel J. Lunt, Bridget S. Wade, Vanessa C. Bowman 
E/O境界の全球の寒冷化には南極周局流が大きな役割を負っていたという説が提唱されている。モデルシミュレーションを用いて、当時の大陸配置的に南半球を取り巻く南極周局流が存在できなかったことが示唆。オーストラリア大陸がより北上し、Tasman海路が開けて初めて南極周局流が形成され始めたと考えられる。

Reversing climate warming by artificial atmospheric carbon-dioxide removal: Can a Holocene-like climate be restored?
Andrew H. MacDougall 
>関連した記事(Science#6163 "Editors' Choice")
Forward into the Past
過去へと進む
大気へのCO2排出が止んでも、それが気候に与える影響はしばらく止むことはない。現実的なCO2大気捕獲の地球工学によって、「気候を完新世の代表的な値に安定化させるにはどれほどの時間を要するか」を気候モデルを用いて評価したところ、産業革命前の気温に戻るのは、もっとも遅くて西暦3000年になることが計算された。さらに氷床量や海水準の回復には気温よりも多くの時間を要することが示された。従って、極端な地球工学を採用し大気中のCO2濃度を元に戻したとしても、少なくとも数百年間はその影響が残ることを示している。

Assessing the potential of calcium-based artificial ocean alkalinization to mitigate rising atmospheric CO2 and ocean acidification
Tatiana Ilyina, Dieter Wolf-Gladrow, Guy Munhoven, Christoph Heinze
石灰岩などを海に撒くことで海をよりアルカリ性にし、海洋酸性化を食い止めるという地球工学が提唱されている。モデルを用いて、そうしたアルカリ化の効果が確かにあり、大気中CO2濃度や海水pHが何もしない場合のレベルへと変化しないことが分かった。大規模に行った場合、産業革命以前の海水pHまで上昇させることが可能で、海によるCO2吸収能力も向上する。一方、小規模にやった場合には場所によっては海洋酸性化を打ち消すことができる。

Energy balance in a warm world without the ocean conveyor belt and sea ice
Aixue Hu, Gerald A. Meehl, Weiqing Han, Jianhua Lu, Warren G. Strand 
最も極端な温暖化シナリオでは、全球の平均温度は10度上昇し、北極の海氷は消滅し、海のコンベアベルトも崩壊すると思われる。そうした際には子午面方向に北向き熱輸送は60%低下することがモデルシミュレーションから示された。

2013年10月28日月曜日

新着論文(AGU・EGU)

G3
Westerly jet–East Asian summer monsoon connection during the holocene
Kana Nagashima, Ryuji Tada, Shin Toyoda 
日本海から得られた堆積物中のダストの化学分析から、完新世の東アジアモンスーンと偏西風の変動を復元。ゴビ砂漠とタクラマカン砂漠起源のダストが千年〜数千年スケールで変動を示している。偏西風の位置の変動が東アジアモンスーンの降水にも影響をしており、中国大陸の南北での対照的な変動を生み出していると思われる。

GRL
Unprecedented recent summer warmth in Arctic Canada
Gifford H. Miller, Scott J. Lehman, Kurt A. Refsnider, John R. Southon, Yafang Zhong 
近年北極海においては海氷・氷河の後退などが報告されているが、それが自然変動の範疇にあるかははっきりとしていない。ツンドラに自生する植物の放射性炭素年代測定から、カナダ北極圏東部においては最近が過去44kaで最も温暖であり、過去5kaの寒冷化の傾向を打ち消していることが示唆された(完新世初期に特に温暖だった)。

Efficient gas exchange between a boreal river and the atmosphere
Jussi Huotari, Sami Haapanala, Jukka Pumpanen, Timo Vesala, Anne Ojala
河川における炭素循環はあまりよく分かっていない。フィンランドにおける30日間に渡る炭酸系の観測から、二酸化炭素に関するガス輸送速度を推定したところ、従来考えられていたよりも高い値が得られ、河川からのCO2フラックスが大きいことが示唆された。

JGR-Oceans
Wave power variability and trends across the North Pacific
Peter D. Bromirski, Daniel R. Cayan, John Helly, Paul Wittmann
1948年以降の北太平洋における波の力(wave power)の変動を議論。ENSO・レジームシフト・PDOなどとの関連性。

New zealand 20th century sea level rise: Resolving the vertical land motion using space geodetic and geological data
Abdelali Fadil, Paul Denys, Robert Tenzer, Hugh R. Grenfell, Pascal Willis
20世紀のニュージーランドの海水準は1.46±0.10 mm/yrで上昇している。潮位計と海水面の衛星観測記録から土地の隆起の影響を評価。海水準上昇には数十年スケールの3つのフェーズが見られることが分かった。

Temporal variability of transformation, formation and subduction rates of upper Southern Ocean waters
Eun Young Kwon
南大洋の表層・中層水の挙動を動力学的・熱力学的に評価し、海洋循環モデルを用いて亜南極モード水(SAMW)の数十年規模のモデリングを行った。冬季に混合層の水が収束し、それに続く春に等密度線に沿って沈み込み、さらに春の表層水の温暖化によって密度的に蓋をされるプロセス(成層化)がSAMWの形成に重要であることが分かった。SAMWは年々変動を示し、主に混合層の深さと関連が大きいことが分かった。また、SAMとは直接的に関係していないものの、エクマン沈降・湧昇プロセスを通じて間接的に関係していると思われる。

Widespread freshening in the seasonal ice zone near 140°E off the Adélie Land Coast, Antarctica, from 1994 to 2012
S. Aoki, Y. Kitade, K. Shimada, K.I. Ohshima, T. Tamura, C.C. Bajish, M. Moteki, S.R. Rintoul
南極沖の140ºE線で行われている1994-2012年の定期観測記録から、近年の表層水から底層水のすべてに淡水化の傾向が見られた。2012年には底層水塊の厚さが異常に薄く、Mertz氷舌(glacier tongue; 氷河末端)の急激な崩壊とそれに伴う海氷形成の減少との関連が示唆される。

Paleoceanography
Influence of seawater exchanges across the Bab-el-Mandab Strait on sedimentation in the Southern Red Sea during the last 60 ka.
Alexandra Bouilloux, Jean-Pierre Valet, Franck Bassinot, Jean-Louis Joron, Fabien Dewilde, Marie-Madeleine Blanc-Valleron, Eva Moreno
紅海の南端で得られた堆積物コアのMS・TOC・浮遊性有孔虫δ13Cなどから、過去60kaの気候変動を復元。氷期-間氷期スケールの変動、D/Oイベント・最終退氷期の海水準上昇に伴う大陸棚の浸水と岩屑物の堆積イベントなどが見られる。

Recovering the true size of an Eocene hyperthermal from the marine sedimentary record
Sandra Kirtland Turner, Andy Ridgwell 
地球システムモデル(cGENIE)を用いて小規模なMECO(Cnn2H3; ~49.2Ma)温暖化イベントの規模・継続期間、炭素インプット速度などを推定。さらに堆積プロセスのモデル化も行い、真の炭素擾乱を推定。ODP1258コアの底性有孔虫δ13Cの-0.95‰のエクスカージョンは大気中CO2のδ13Cの-1.45‰の変化があれば説明できることが示された。従来法の推定から得られる量よりも2/3大きい炭素インプットが必要であると思われる。

GBC
Variability of the Oxygen Minimum Zone in the Tropical North Pacific during the Late 20th Century
Takamitsu Ito, Curtis Deutsch
海洋物理・生物地球化学モデルを用いて1980年代以降の東太平洋熱帯域の酸素極小層(OMZ)の拡大の原因を評価。

Climate of the Past
Holocene climate variability in the winter rainfall zone of South Africa
S. Weldeab, J.-B. W. Stuut, R. R. Schneider, and W. Siebel
アフリカ南東部沖で得られた堆積物コアの浮遊性有孔虫δ18O・δ13C・87/86Sr・εNdを用いて完新世の気候変動を復元。小氷期に最も湿潤な期間があり、南半球の偏西風の北方シフトと関連していると思われる。さらにAgulhas leakageや南極氷床へのダスト量などとの関係性も議論。

Pre-LGM Northern Hemisphere ice sheet topography
J. Kleman, J. Fastook, K. Ebert, J. Nilsson, and R. Caballero
地質調査や数値モデルなどを組み合わせてMIS5bとMIS4の北半球氷床の高度・範囲などを推定。MIS5bから徐々に北半球の氷床が成長し4つほどとなり、MIS4には大規模氷床の数はほぼMIS5b時と同じで、その後LGMに北米氷床は一つに融合したと思われる。

Eurasian Arctic climate over the past millennium as recorded in the Akademii Nauk ice core (Severnaya Zemlya)
T. Opel, D. Fritzsche, and H. Meyer
ロシアのセヴェルナヤ・ゼムリャ諸島において得られたアイスコアのδ18OとNaなどから過去1100年間の気候変動を復元。AD1800頃に最も寒冷であった。20世紀初頭には異常な2つのピークが確認された。δ18Oには小氷期も中世気候変調期の変動も検出されなかったが、他の時期には温暖化・寒冷化イベントなどが確認され、大気循環の変動と関連していると思われる。

Re-evaluation of the age model for North Atlantic Ocean Site 982 – arguments for a return to the original chronology
K. T. Lawrence, I. Bailey, and M. E. Raymo
ODP982の年代モデルの再考。Gauss–Matuyamaクロンの位置には影響はないが、3.2-3.0Maにハイエタスが確認された。

Biogeosciences
Technical Note: Precise quantitative measurements of total dissolved inorganic carbon from small amounts of seawater using a gas chromatographic system
T. Hansen, B. Gardeler, and B. Matthiessen
クロマトグラフィーを用いて海水中の全炭酸を精度良く測ることのできる新手法を開発。

Global atmospheric carbon budget: results from an ensemble of atmospheric CO2 inversions
P. Peylin, R. M. Law, K. R. Gurney, F. Chevallier, A. R. Jacobson, T. Maki, Y. Niwa, P. K. Patra, W. Peters, P. J. Rayner, C. Rödenbeck, I. T. van der Laan-Luijkx, and X. Zhang
大気CO2観測記録から過去20年間の炭素のソース・シンクなどについて議論。

2013年7月29日月曜日

新着論文(AGU, EGU)

G3
Inter-laboratory study for coral Sr/Ca and other element/Ca ratio measurements
Ed C. Hathorne, Alex Gagnon, Thomas Felis, Jess Adkins, Ryuji Asami, Wim Boer, Nicolas Caillon, David Case, Kim M. Cobb, Eric Douville, Peter deMenocal, Anton Eisenhauer, C.-Dieter Garbe-Schönberg, Walter Geibert, Steven Goldstein, Konrad Hughen, Mayuri Inoue, Hodaka Kawahata, Martin Kölling, Florence Le Cornec, Braddock K. Linsley, Helen V. McGregor, Paolo Montagna, Intan S. Nurhati, Terrence M. Quinn, Jacek Raddatz, Hélène Rebaubier, Laura Robinson, Aleksey Sadekov, Rob Sherrell, Dan Sinclair, Alexander W. Tudhope, Gangjian Wei, Henri Wong, Henry C. Wu, Chen-Feng You
サンゴ骨格のSr/Caは良い水温計になることが知られている。21の研究室で同一のサンゴ標準資料(JCp-1)のSr/Ca測定の結果を比較したところ、有意に差が認められ、極端な場合7℃もの差に繋がっていることが示された。推奨される値は8.838 ± 0.089 mmol/molで、95%の信頼区間で1.5℃のSST推定誤差に繋がる。こうした差異を軽減するために研究室間で統一した標準試料の測定を行い、補正をすることが必要である。

GRL
Interannual variations in degree-two Earth's gravity coefficients C2,0, C2,2 and S2,2 reveal large-scale mass transfers of climatic origin
B. Meyssignac, J.M. Lemoine, M. Cheng, A. Cazenave, P. Gégout, P. Maisongrande
数年スケールの気候変動によって、地球上の質量の変化が重力場の変化として人工衛星から捉えられている。1993-2012年の観測記録から、1997/1998年のエルニーニョ時に赤道太平洋の質量が増加、アマゾン川流域の水資源量の低下、コンゴ川流域の水資源量の増加が確認された。

Does the mid-Atlantic United States sea-level acceleration hot spot reflect ocean dynamic variability?
Robert E. Kopp
大西洋中緯度地域に位置するアメリカの検潮所における海水準の記録は1975年以来、同地域が全球平均と比較してもかなり速い上昇を示している。各検潮所の記録を解析し、ローカル・グローバルな記録、長期的・短期的な記録とを分けたところ、AMO、NAO、Gulf Stream North Wall指数などとの相関が見られた。

Advective timescales and pathways of agulhas leakage
Siren Rühs, Jonathan V. Durgadoo, Erik Behrens, Arne Biastoch
近年、Agulhas海流の大西洋への漏れ出し(Agulhas leakage)の量が増加しており、それはAMOCにも影響を及ぼすと考えられている。かなりの量のAgulhas leakageが遠く北大西洋亜熱帯地域にまで影響していることが渦を解像できる海洋循環モデルから示された。時間のラグが10-20年程度と大きいため、20年内にメキシコ湾流への影響が生じると思われる。

JGR-Oceans
Coupled nitrate nitrogen and oxygen isotopes and organic matter remineralization in the Southern and Pacific Oceans
Patrick A. Rafter, Peter J. DiFiore, Daniel M. Sigman
南大洋太平洋セクターの各水塊(SO〜SAMW〜CDW)の硝酸塩のδ15Nとδ18Oの測定結果について。窒素循環、生物活動・分解、海洋循環を理解するのに使えるらしい。

Processes controlling upper-ocean heat content in Drake Passage
Gordon R. Stephenson Jr., Sarah T. Gille, Janet Sprintall
XBTを用いた16年間に及ぶDrake PassageにおけるCTD観測記録について。表層の変則的な熱フラックスは上流域の子午面方向の風によると思われ、それはさらに遡るとENSOやSAMの影響であると思われる。

Air-sea CO2 fluxes in the near-shore and intertidal zones influenced by the California Current
Janet J. Reimer, Rodrigo Vargas, Stephen V. Smith, Ruben Lara-Lara, Gilberto Gaxiola-Castro, J. Martin Hernandez-Ayon, Angel Castro, Martin Escoto-Rodriguez, Juan Martínez-Osuna
Baja Californiaの沖3km以内で測定された2009年の1年間のfCO2の観測記録をもとに大気-海洋のCO2フラックスを推定。年間を通じて3km沖はCO2の放出源となっており、またSSTとも負の相関が見られることから。中間規模の海洋現象(湧昇)が重要であると推定される。また岸から1.6km以内は沖よりも4倍も大きなfCO2が確認された。沿岸部でも岸からの距離によって大きく変動幅・変動要因も異なるため、より詳細に測定を行う必要がある。

Seasonal to interannual variations in the intensity and central position of the surface Kuroshio east of Taiwan
Yi-Chia Hsin, Bo Qiu, Tzu-Ling Chiang, Chau-Ron Wu
1993-2012年の台湾東部における黒潮の強度及び中心位置の変動を人工衛星による高度観測から評価。

Paleoceanography
Dansgaard-Oeschger cycles: Interactions between ocean and sea ice intrinsic to the Nordic Seas
Trond M. Dokken, Kerim H. Nisancioglu, Camille Li, David S. Battisti, Catherine Kissel
DOイベントの原因についてはAMOCとの関係が広く指摘されているものの、まだ完全には分かっていない。Nordic Seaで採取された堆積物記録を用いて海氷量やIRDを復元。従来の知見とは逆に、亜間氷期に淡水流入量の増加が確認され、ローレンタイド氷床というよりはフェノスカンジナビア氷床由来と思われる。暖かい亜表層水と冷たい表層水の密度が生み出す熱塩バランスがDOイベントには重要であった?

GBC
Water column denitrification rates in the oxygen minimum layer of the pacific ocean along 32°S
Il-Nam Kim, Dong-Ha Min, Alison M. Macdonald
南太平洋の23ºSに沿った海洋観測記録から、海洋窒素循環を考察。ペルーに発達する酸素極小層(OMZ)における脱窒に比べると2〜3倍小さい脱窒が確認された。

Exploring global nitrogen and phosphorus flows in urban wastes during the twentieth century
A.L. Morée, A.H.W. Beusen, A.F. Bouwman, W.J. Willems
20世紀以降に人間活動(農業・工業など)によって海洋へもたらされた窒素やリンの量をモデルシミュレーションを用いて評価。

Climate of the Past
Inter-annual tropical Pacific climate variability in an isotope-enabled CGCM: implications for interpreting coral stable oxygen isotope records of ENSO
T. Russon, A. W. Tudhope, G. C. Hegerl, M. Collins, and J. Tindall
同位体を組み込んだGCMを用いて、赤道太平洋の海水δ18O変動とサンゴ骨格δ18O-SST関係を評価。赤道西太平洋のδ18Oswには大きな年々変動が見られるため、サンゴδ18O-SSTのキャリブレーションが必要不可欠である。またδ18O-SST関係は線形ではないため、中央・西赤道太平洋のδ18Oを用いたSSTアノマリの復元では特に大きなエルニーニョ時には過大評価している可能性がある。

A 350 ka record of climate change from Lake El'gygytgyn, Far East Russian Arctic: refining the pattern of climate modes by means of cluster analysis
U. Frank, N. R. Nowaczyk, P. Minyuk, H. Vogel, P. Rosén, and M. Melles
ロシア極東に位置するEl’gygytgyn湖で採取された堆積物コアのMS・TOC・CIA(chemical index of alteration)を用いて過去350kaの環境変動と全球気候変動との関係性を評価。

Influence of dynamic vegetation on climate change and terrestrial carbon storage in the Last Glacial Maximum
R. O'ishi and A. Abe-Ouchi
 植生モデルを組み込んだGCMを用いてLGMの植生フィードバックの大きさを評価。植生フィードバックによってLGMの寒冷化が13.5%強化されたと思われる。特に北半球高緯度のツンドラ地帯の拡大と中緯度の砂漠化によるアルベドの変化が大きい。
 さらに炭素循環モデルとも組み合わせたところ、陸域の炭素保存量がLGMには597PgC(CO2換算で282ppm)減少していたことが示唆される。内訳としては、気温降水量の変化で502PgCの低下、氷床の拡大で388PgCの低下、大陸棚の露出で293PgCの増加らしい。他のモデルに比べると過大評価している可能性があるという。

Importance of precipitation seasonality for the interpretation of Eemian ice core isotope records from Greenland
W. J. van de Berg, M. R. van den Broeke, E. van Meijgaard, and F. Kaspar
グリーンランドアイスコアが記録しているEemianのδ18Oは3‰高く、数度気温が上昇していたことを物語っている。地域的な気候モデルを用いて温度以外の変動要因を評価。気温の変化なしに、降水の季節性の変化だけで凝結温度を2℃変化させうることが示された。

A comparative study of large-scale atmospheric circulation in the context of a future scenario (RCP4.5) and past warmth (mid-Pliocene)
Y. Sun, G. Ramstein, C. Contoux, and T. Zhou
もっとも温暖化のアナログに近い地質時代であるPliocene中期頃の気候と、RCP4.5排出シナリオに基づいて予測された近未来の温暖化とを比較。特にハドレー・ウォーカー循環などの大気循環の変化に着目。ハドレーセルは亜熱帯域で強化され、さらに極側にシフトすること、Pliocene中期頃の気候とも概ね整合的であることが示された。一方ウォーカーセルは食い違いが見られたが、共通するのは西赤道太平洋の上昇流が弱化し、降水量の低下に繋がることである。

2013年7月14日日曜日

新着論文(MPB, PLOSone, GRL)

Marine Pollution Bulletin
Detrimental effects of reduced seawater pH on the early development of the Pacific abalone
Jiaqi Li, Zengjie Jiang, Jihong Zhang, Jian-Wen Qiu, Meirong Du, Dapeng Bian, Jianguang Fang
海洋酸性化がエゾアワビ(Pacific abalone; Haliotis discus hannai)の孵化の時間を長くし、胚の発展を低下させることが示された。また奇形率も大きく増加した。着床率も低下することが示された。全体として、pHが0.3までの低下であれば際立った影響は見られないが、それ以上になると大きな悪影響が生じると思われる。

Climate change impacts on coral reefs: Synergies with local effects, possibilities for acclimation, and management implications
Mebrahtu Ateweberhan, David A. Feary, Shashank Keshavmurthy, Allen Chen, Michael H. Schleyer, Charles R.C. Sheppard
気候変化がサンゴ礁に与える影響は、海洋酸性化や温暖化などが個々に与える影響の評価はなされているものの、それらの相互作用が与える影響としてはほとんど評価されていない。様々な要因(白化・酸性化・病気)の相互作用がサンゴ礁の様々な過程(生存・成長・繁殖・幼生の発達・着床・着床後の発達)に与える影響をレビュー。

PLoS one
Symbiodinium Community Composition in Scleractinian Corals Is Not Affected by Life-Long Exposure to Elevated Carbon Dioxide
Sam H. C. Noonan, Katharina E. Fabricius, Craig Humphrey
海洋酸性化がサンゴ礁に負の影響を与えると考えられているが、サンゴ-褐虫藻の共生関係に与える影響はよく分かっていない。褐虫藻のタイプによって応答が変わるかどうかをパプアニューギニアの火山性酸性化サイトにて調査した。タイプによる変化は特に確認されなかったことから、サンゴが気候変化に順化する可能性は低いと思われる。

Adverse Effects of Ocean Acidification on Early Development of Squid (Doryteuthis pealeii)
Maxwell B. Kaplan, T. Aran Mooney, Daniel C. McCorkle, Anne L. Cohen
海洋酸性化がアラゴナイトでできた甲や平衡石(statolith)をもった頭足類(イカなど)に与える影響はよく分かっていない。生態的にも漁業活動的にも重要なアメリカケンサキイカ(Atlantic longfin squid; Doryteuthis pealeii)の卵を酸性化海水下で孵化させたところ、孵化の時間と外套膜(mantle)の長さにわずかな変化が見られた。また平衡感覚や動きを検出する器官である平衡石の表面積が著しく減少し、異質な形状が確認された。
※ただし、pCO2=2,200μatmというかなり極端な設定での酸性化実験になっています。イカは生物の半数に食べられるor半数を食べているということで、海洋生態系的に非常に重要ということらしいです。

Behavioural disturbances in a temperate fish exposed to sustained high-CO2 levels
Jutfelt F., Bresolin de Souza K., Vuylsteke A. & Sturve J.
酸性化実験から、イトヨ(three-spined stickleback; Gasterosteus aculeatus)の行動(図太さ、探査行動、学習など)に海洋酸性化が影響することが示された。熱帯域の魚だけでなく温帯域の魚にも影響するかも?
※こちらはpCO2=991μatmでの実験。

GRL
Characterizing decadal to centennial variability in the equatorial Pacific during the last millennium
T. R. Ault, C. Deser, M. Newman, J. Emile-Geay
古気候記録とCMIP5の気候モデルを用いた過去1,000年間の赤道太平洋のSST変動とを比較したところ、食い違いが見られた。モデルで組み込まれていないプロセスか、古気候記録に影響する気候以外の要因(nonclimatic proxy processes)のどちらかが原因と考えられる。まだ気候モデルで再現できていない100年スケールの気候変動があることから、モデルを用いた赤道域の将来予測の不確実性はかなり大きいと思われる。

Inter-annual variability in tropospheric nitrous oxide
R. L. Thompson, E. Dlugokencky, F. Chevallier, P. Ciais, G. Dutton, J. W. Elkins, R. L. Langenfelds, R. G. Prinn, R. F. Weiss, Y. Tohjima, P. B. Krummel, P. Fraser, L. P. Steele
対流圏のN2Oは数年規模の変動が見られる。CFC-2やSF6の変動ともよい相関が見られることから、大気循環の影響が大きいと思われる。N2O変動とENSOや降水・土壌湿度・気温などの気候変数との間にも有為な相関が見られることから、気候が重要な変動要因と考えられる(従来成層圏-対流圏輸送の指標と考えられていたらしい)。

Quantifying recent acceleration in sea level unrelated to internal climate variability
F. M. Calafat, D. P. Chambers
ここ20年間、海水準上昇速度は加速しているものの、それが自然の十年規模変動なのか人為起源の変動なのかははっきりとしていない。大気圧・風・気候指数をインプットとして1952-2011年の海水準変動をモデルシミュレーションし、世界の9つの検潮所の記録と比較した。気候内部の変動(internal climate variability)を取り除いたところ、統計的に有為な加速が確認された。また加速が時間とともに増していることも確認された。

2013年7月1日月曜日

新着論文(GRL, JGR, EPSL)

GRL
Strengthening of ocean heat uptake efficiency associated with the recent climate hiatus
Masahiro Watanabe, Youichi Kamae, Masakazu Yoshimori, Akira Oka, Makiko Sato, Masayoshi Ishii, Takashi Mochizuki, Masahide Kimoto
近年温暖化の進行速度は低下している。GCMを用いてそのハイエタスの原因を調べたところ、海洋の熱吸収が原因であることが示された。海洋の熱吸収効率(κ)が低下していることが分かり、それがモデルが地表温度の上昇を高く見積もっていることの原因であることも分かった。じきにハイエタスが終了し、温暖化に向かうと予測される。

When will the summer Arctic be nearly sea ice free?
James E. Overland, Muyin Wang
過去7年間に失われた北極海の海氷の量は1979-2000年平均の49%に相当するもので、数年前になされたモデル予測を凌ぐものである(モデル予測では2070年に夏の海氷が消失するとされていた)。見直された予測からは、2020年以前〜2040年以降と手法ごとに異なる結果が得られている。少なくともCMIP5の予測はあまりに保守的な予測結果となっている。

Shipping contributes to ocean acidification
Ida-Maja Hassellöv, David R. Turner, Axel Lauer, James J. Corbett
船が通ることによる、SOxやNOxを起源とするローカルな海洋酸性化を評価したところ、航行が激しい海域においては、CO2によって引き起こされるのと同じ規模のものが生じる可能性が示唆される。

Recent snowfall anomalies in Dronning Maud Land, East Antarctica, in a historical and future climate perspective
Jan T. M. Lenaerts, Erik van Meijgaard, Michiel R. van den Broeke, Stefan R. M. Ligtenberg, Martin Horwath, Elisabeth Isaksson
東南極への降雪量の増加は海水準上昇を打ち消す働きがある。近年、東南極Dronning Maud Landにおいて降雪量が大きく変化していることが報告されている。大気モデル・アイスコア・重力観測記録から、人国衛星観測が始まった1979年以来、類を見ない変動であることが示された。かなり前の時代には見られるものの、少なくとも過去60年間では起きていないものであるという。モデル予測からは21世紀を通してますます増加すると予想された。

Impact of CO2 fertilization on maximum foliage cover across the globe's warm, arid environments
Randall J. Donohue, Michael L. Roderick, Tim R. McVicar, Graham D. Farquhar
CO2濃度上昇による植物の光合成に対する施肥効果が予想されており、それは人工衛星観測から分かっている緑化の増加と整合的である。ガス交換理論から、2082-2010年の大気中CO2濃度上昇が14%の温暖で乾燥した地域の緑化に繋がったことが示された。人為起源の炭素循環への擾乱と同時並行して施肥が進行していると考えられる。

Rapid ice melting drives Earth's pole to the east
J. L. Chen, C. R. Wilson, J. C. Ries, B. D. Tapley
宇宙からの測地学的な観測から、極の位置が東へと動き始めていることが示されている。GRACEによる観測は、その90%は極の氷床や山岳氷河の融解が海水準上昇を招いていることによって説明できることを示している。従って、極の移動をより精度良く測定することによって、全球スケールの氷の融解と海水準上昇を調べる別のツールができると期待される。

JGR-o
Entrainment-driven modulation of Southern Ocean mixed layer properties and sea ice variability in CMIP5 models
Sally E. Close, Hugues Goosse
RCP4.5シナリオに基づいた将来予測結果(CMIP5)を分析し、南大洋表層の水循環構造に与える影響が評価された。表層への淡水フラックスが上昇することで、成層化が強化されることが予想される。海洋の熱は大気の温暖化と温度躍層下部からの熱供給によって、塩分は温度躍層下部からの対流entrainmentによって支配されると考えられる。海氷の変動には熱供給がもっとも重要であると思われる。

Examining the global record of interannual variability in stratification and marine productivity in the low-latitude and mid-latitude ocean
Apurva C. Dave, M. Susan Lozier
温暖化によって、海洋の成層化が強化されることで下層からの栄養塩供給が抑えられ、海洋一次生産は低下すると予想されている。塩分とクロロフィル濃度の全球観測記録から、亜熱帯域では明瞭な関係は見られず、一方で赤道太平洋では負の相関が確認された。長期的な傾向は表層よりも亜表層の温暖化が早く進行していることを示しており、そのために成層化は逆に減少している。従って、これらの結果から、単に温暖化が成層化を強化するという推察は誤っているということになる。

Variability and trends of ocean acidification in the Southern California Current System: A timeseries from Santa Monica Bay
A. Leinweber, N. Gruber
Santa Monica Bayにおける6年間の2週間ごとの観測記録から、カリフォルニア海流系の南部における海洋酸性化の傾向を評価。上層20mの平均値は亜熱帯循環のpHやΩargの変化とほぼ同程度であるものの、ローカルな湧昇や渦の変動によって、時間変動は5倍は大きいことが示された。不飽和面は平均して130深にあるが、時折30m深まで上昇している。酸性化の進行速度は大気中のCO2濃度上昇速度から期待されるものとほぼ合っている。季節変動を除外した変動の50%はENSOによるものだと考えられる。

EPSL
Recent changes in the flow of the Ross Ice Shelf, West Antarctica
Christina L. Hulbe, Ted A. Scambos, Choon-Ki Lee, Jennifer Bohlander, Terry Haran
Ross棚氷の流動速度と中解像度の画像記録(MODIS)から、過去30年間に広い範囲で速度が減少していること、一部で加速していることが示された。ICESatのレーザー観測記録から氷の厚さを求め、さらにメカニズムを調査したところ、過去1,000年間の自然変動と、近年のフォーシングの両方が組み合わさっていることが示された。

Seasonal Mg/Ca variability of N. pachyderma (s) and G. bulloides: Implications for seawater temperature reconstruction
Lukas Jonkers , Patricia Jiménez-Amat , P. Graham Mortyn , Geert-Jan A. Brummer
北大西洋でなされたセジメント・トラップの記録をもとに、N. pacyderma (s)とG. bulloidesのMg/Ca・δ18Oの季節変動を評価。δ18OはSSTの季節変動によって主に変動していたが、一方でMg/Caは2種間で大きく異なる値を示し、季節変動は明瞭には確認されなかった。Mg/Caの季節性が見られない理由はまだはっきりとは分からないが(生息深度でもない)、何らかの生体効果が働いていると思われる。高緯度域のSST復元は注意する必要がある。

2013年6月23日日曜日

海洋酸性化が最も早く進行するのは実は中層(Resplandy et al., 2013, GRL)

Role of mode and intermediate waters in future ocean acidification: analysis of CMIP5 models
将来の海洋酸性化におけるモード水と中層水の役割:CMIP5モデルの分析から
L. Resplandy, L. Bopp, J. C. Orr, J. P. Dunne
GRL 40, doi:10.1002/grl.50414 (2013)

海洋酸性化は実は水面下で最も進行している。

Hawaiiの定点観測所ALOHAの長期観測記録も物語っているように、表層で生成された有機物が分解される深さ200-500mの中層水での酸性化が顕著に現れている。
Physical and biogeochemical modulation of ocean acidification in the central North Pacific
John E. Dore, Roger Lukas, Daniel W. Sadler, Matthew J. Church, and David M. Karl
PNAS 106, 12235–12240
[論文概説「ハワイ発の海洋酸性化の記録〜ハワイの海で有名なのはビーチだけではない〜」]

Dore et al. (2009)を改変。
表層0-30mよりも235-265mでのpH低下の傾きが大きいことが見てとれる。

右から2番目のデータがpHの低下の速度(つまり酸性化)を表す。表層よりも中層が大きい。

Hawaiiにおける定点観測は北太平洋亜熱帯域のある1点にすぎないが(※それでも継続して測定するのには多大な労力が必要)、より広い範囲でもそうした現象が起きていることをモデルシミュレーションから示したのが本論文である。

本論文で用いられているモデルはCMIP5で用いられている地球システムモデル7つのアンサンブル平均である。
特に将来の排出シナリオ(RCP 2.6・4.5・6.0・8.5)に基づいて、どの海域のどの深度が早く酸性化するかを予想している。

彼らは海をおおまかに4つの水塊に分けている(※下の図を参照)。
STW; Stratified Tropical Waters
熱帯〜亜熱帯の表層0 - 200 m深

MIW; Mode and intermediate Waters
熱帯〜亜熱帯〜亜寒帯の温度躍層下部〜1,000 m深

DW; Deep Waters
南大洋の大部分と、全球の1,000〜3,000 m深

BW; Bottom Waters
全球の>3,000 m深

Resplandy et al. を改変。
太平洋の190ºEに沿った南北断面図。
上から、現在のpHの分布、RCP2.6シナリオの21世紀末のpHの低下、RCP8.5シナリオの21世紀末のpHの低下
図のb)とc)を見て明らかなように、亜熱帯域の200 - 500 m深に大きな酸性化が生じることが見てとれる。

また海洋循環は非常にゆっくりしているため、CDWやBWには酸性化がなかなか生じないことも見てとれる。

「何故中層水が早く酸性化するのか?」

答えは、同じDICが取り込まれたとしても、それが炭酸系の平衡に変化を来した際に、pHの変化として異なる応答をするということである。
例えば、DICの変化に対する水素イオン濃度の感度(∂[H+]/∂DIC)はMIWがSTWの1.5倍と推定されている。

STWとMIWを比較した場合、温度が全く異なる
STWは表層の温かい水(10~30℃)であるが、MIWは非常に冷たい水(~4℃)である。

また、MIWのアルカリ度がSTWよりも低いことも影響している(らしい)。


さらに、それぞれの水塊の表面積(CO2を交換する領域)には大きな開きがある。
例えば、MIWは南大洋のかなりの部分を占め、そこで大量のCO2を取り込み、沈み込む(大気から隔離される)が、DWやBWはほとんど大気と接触しない。
この沈み込みが効果的に働くことが、SAMWやAAIWといった南大洋における沈み込みが全球の海洋による人為起源CO2取り込みの4割を担っていることの説明として報告されている。
エクマン流によって駆動される南大洋における人為起源二酸化炭素輸送
T. Ito, M. Woloszyn & M. Mazloff
Nature 463 (7 January 2010), doi:10.1038/nature08687
[論文概説「南大洋における人為起源CO2吸収(Ito et al., 2010, Nature)」]


彼らの解析では、表層および中層の海洋酸性化を支配するのは主としてCO2の大気から海洋への無機的な溶解であって、生物活動や海洋循環の変化は小さな寄与しかしていないという。
しかし、Dore et al. (2009)では生物活動と海洋循環の変化(特に遠くで沈み込んだ水塊の水平方向の移流による)とされ、食い違っている。

メカニズムの解明については今後さらなる研究が必要と思われるが、重要な示唆としては、より長い時間スケールではこれら生物活動や海洋循環の変化が出てくる可能性があることである。

また、モード水・中層水が低緯度に輸送され、再び表層にもたらされる際に(30-100年後)、酸性化を強める効果があることも決して無視できない。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
※コメントと補足

先日、セミナーでの後輩の論文紹介(Druffel et al., 2002, Oceanography)で、サンゴ骨格に刻まれたボム・ピーク(核実験由来の放射性炭素が海水や石灰化生物の殻に取り込まれ、1970年頃をピークとする高いΔ14Cが観察されること)が、異なる海域において必ずしも同じ形で現れていないことが紹介されていた。
Ellen R.M. Druffel
Oceanography 15, 122–127 (2002)

Druffel (2002)を改変。
太平洋の様々な海域でサンゴ骨格に記録されたボム・ピーク。

特にガラパゴスにおけるボムピークの立ち上がりは遅く、さらにΔ14Cが低いことが図から見てとれる。
おそらくガラパゴスにおいて湧昇する水塊が遠く南大洋のSAMWを起源としていることがこうしたラグや希釈を生む原因となっていると思われる。

Extratropical sources of Equatorial Pacific upwelling in an OGCM
Keith B. Rodgers, Bruno Blanke, Gurvan Madec, Olivier Aumont, Philippe Ciais, Jean-Claude Dutay
GRL 30, dio: 10.1029/2002GL016003 (2003)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

海水炭酸系はわりとよく理解されており、モデルでもうまく再現できているため、観測記録だけでなく、モデルシミュレーション側からのアプローチもよくとられる。

観測ではDIC、TA、pH、pCO2 (fCO2)のうち、2つを測定することで、残り2つは理論計算から推定する場合が多い。しかし、厳密にはそうして計算された値には少なからず不一致が見られる(例えば、pHでも0.02程度の誤差が生じる)。
そのため、モデル計算の方がそうした測定に伴う誤差が影響せず、かつより広い範囲を、高分解能でカバーすることができるという特徴がある。

ただし、特に南大洋周辺や北大西洋の沈み込み帯などの海洋物理がうまくモデル内で再現できていないことを反映して、深層循環がうまく再現できていないことも多い。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

むろん、生物が主に棲息しているのは中層ではなく光の射す表層なので、より短い時間スケールでは、海洋酸性化の生態系の影響という意味においては、やはり表層が重要と言えそうである。(※生涯において中層水で一時を過ごす生物も少なからずいるとは思われるが)

新着論文(GRL, GPC, GBC, EPSL, DSR1, JC)

GRL
A new constraint on global air-sea CO2 fluxes using bottle carbon data
Tristan P. Sasse, Ben I. McNeil, Gab Abramowitz
WOCEとCLIVARが集めた海洋の混合層のボトル海水のpCO2データ17,800点を用いて、各海域の大気海洋間のCO2フラックスを推定。南半球は北半球に比べて5倍ものCO2を吸収していることが分かった。海洋のCO2の吸収量は1.55 ± 0.32 PgC/yrと推定される。

Aragonite Saturation State Dynamics in a Coastal Upwelling Zone
Katherine E. Harris, Michael D. DeGrandpre, Burke Hales
沿岸湧昇域は湧昇する低いΩを持った海水の影響もあわさって、海洋酸性化の影響を特に受ける海域である。Oregon大陸棚に設置された自動観測器によって得られた2007〜20011年にかけてのpH、pCO2データを解析。表層水のΩargは0.66〜3.9まで変動していた。春や秋には生物活動もあわさってΩargは1.0〜4.0と変動。春には淡水流入の影響でΩargはさらに低下した。冬はわりと単純に水塊の混合だけで説明されると思われる。

Recent warming at Summit, Greenland: Global context and implications
Daniel McGrath, William Colgan, Nicolas Bayou, Atsuhiro Muto, Konrad Steffen
グリーンランド頂上部の気温は1982-2011年にかけて年間0.09 ± 0.01 ℃で上昇しており、世界平均の6倍の速度である。平衡線の高度(elevation of the equilibrium line)と乾燥雪線(dry snow line)はそれぞれ44、35 m/yrで上昇した。2025年までに50%の確率で乾燥雪線が水が染み出る地帯(percolation facies)へと変化すると予想される。

Abyssal connections of Antarctic Bottom Water in a Southern Ocean State Estimate
Erik Sebille, Paul Spence, Matthew R. Mazloff, Matthew H. England, Stephen R. Rintoul, Oleg A. Saenko
南極底層水(AABW)は南極周辺の限られた海域で生成されるが、それぞれに異なった温度塩分を持つ。AABWはその後亜熱帯域の海底へと広がってゆくが、それぞれのAABWが31ºSに達する前に合併すると考えられる。その際にAABWの70%は南極を少なくとも一周することから、南極周回流が重要な役割を持っていると思われる。従ってその十年〜百年規模の変動はAABWの輸送に大きく影響すると思われる。

Sensitivity of the oceanic carbon reservoir to tropical surface wind stress variations
N. N. Ridder, K. J. Meissner, M. H. England
熱帯域のウォーカー循環が海洋炭素循環に与える影響をモデルシミュレーションから評価。貿易風を10%、20%、30%増加/弱化させたところ、赤道偏東風が強いときには全球の海洋の炭素吸収量が減少した。逆に貿易風が弱いときには吸収量は増加した。非線形関係には生物ポンプの変化が重要な役割を負っている。

Rapid loss of firn pore space accelerates 21st century Greenland mass loss
J. H. van Angelen, J. T. M. Lenaerts, M. R. van den Broeke, X. Fettweis, E. Meijgaard
南極氷床における近年の質量損失の大半は氷河流出量の増大が担っている。一方でグリーンランド氷床のそれの55%は表面融解が担っていると思われる。しかし表面で融解した水の40%は再び凝結すると考えられている。モデルシミュレーションから、RCP4.5シナリオの下では、21世紀末にはフィルンの間隙が減少することで、再凝結の緩衝作用が減少することが示された。その結果、グリーンランド氷床の融解量が増大し、21世紀末における海水準上昇への寄与は現在の4倍になると推定される(年間1.7 ± 0.5 mm)。

GPC
Has the Northern Hemisphere been warming or cooling during the boreal winter of the last few decades?
Juan C. Jiménez-Muñoz, José A. Sobrino, Cristian Mattar
IPCCの報告書によると北半球の冬の気温は上昇していると言われるが、実際には広い範囲でここ最近の寒冷化が報告されたりもしている。いくつかのデータセットを用いて過去30年間北半球の冬の温度変化を再評価したところ、ほぼ平衡〜弱い温暖化の傾向が見られた。グリーンランドだけは例外的に広範囲で有為な温暖化が確認された。

GBC
Winners and losers: Ecological and biogeochemical changes in a warming ocean
S. Dutkiewicz, J. R. Scott, M. J. Follows
生態系モデルと地球システムモデルを組み合わせて、将来の温暖化が光合成植物プランクトンコミュニティーに与える影響を評価。直接効果(温度変化が代謝に与える影響)と間接効果(微量栄養塩の供給・光環境の変化)のバランスによって決まると思われる。全球平均的には釣り合っているものの、地域的には複雑に両者の強弱が生物生産を制御している。植物プランクトンの中でも勝者と敗者が生まれると思われる。温暖化した世界で何が起きるかの中で最も確実な予測は、植物プランクトンの組成の変化が起きるということである。

EPSL
The “MIS 11 paradox” and ocean circulation: Role of millennial scale events
Natalia Vázquez Riveiros, Claire Waelbroeck, Luke Skinner, Jean-Claude Duplessy, Jerry F. McManus, Evgenia S. Kandiano, Henning A. Bauch
氷期から間氷期へと移行するターミネーション(ⅠとⅤに着目)の際の氷床の最後の挙動を北・南大西洋の堆積物コア中のIRDから復元。ターミネーションⅤ(MIS11への移行期)には最終退氷期のHS1よりも強く・長く続くハインリッヒ・イベントがあり、さらにバイポーラー・シーソーも確認された。大きなハインリッヒ・イベントはより多くの氷床崩壊によって、より長い継続期間はAMOCがより長く停滞していたことが原因と思われる。その後のAMOCのオーバーシュートがMIS11が現在の間氷期よりも温暖であったことの説明になるかもしれない。

Riverine silicon isotope variations in glaciated basaltic terrains: Implications for the Si delivery to the ocean over glacial–interglacial intervals
S. Opfergelt, K.W. Burton, P.A.E. Pogge von Strandmann, S.R. Gislason, A.N. Halliday
海洋一次生産は主に珪藻が担っており、それは河川からのケイ素の供給量によってコントロールされている。河川水のδ30Si測定から、玄武岩の集水域を流れる河川と直接氷河から海へと流れ込む河川とでSiの量とδ30Siの値が異なることが示された。南大洋の堆積物コアのδ30Siを再評価してみたところ、もし氷期-間氷期スケールで海水のδ30Siが変化していたとすると、少なからず影響していたと思われる。δ30Siからより厳密なケイ酸の利用効率の復元を行う際には考慮すべきである。

DSR1
From circumpolar deep water to the glacial meltwater plume on the eastern Amundsen Shelf
Y. Nakayama, M. Schröder, H.H. Hellmer
Pine Island棚氷からの淡水フラックスは1990年代以降増加しており、氷床力学・海水準・周辺の水塊特性に影響している。融解の原因は下から暖かい水(CDW)が谷底を通って貫入していることと考えられている。2010年の航海データをもとに、CDWが貫入する経路・棚氷の融解量・融水のその後を調査した。2010年の融解量は30mと推定され、先行研究の報告値とも整合的である。2000年の記録と比較すると、CDWがより暖かく、より厚くなっており、より貫入が強化されていると思われる。

Journal of Climate
Twentieth-Century Oceanic Carbon Uptake and Storage in CESM1(BGC)
Matthew C. Long, Keith Lindsay, Synte Peacock, J. Keith Moore, Scott C. Doney
地球システムモデル(CESM1)を用いて海洋のCO2フラックスをシミュレーションしたところ、観測との非常に良い対応が確認された。しかし南大洋のものは大きな食い違いが見られ、特に亜南極帯と海氷帯で顕著だった。人為起源CO2の取り込みは南半球における水塊形成に大きく支配されているが、それがモデルでうまく再現できていないことでCantとCFCの大きなバイアスが特に中層水で生まれている。

2013年6月22日土曜日

新着論文(QSR, EPSL, GRL, PO)

◎QSR
North Atlantic forcing of millennial-scale Indo-Australian monsoon dynamics during the Last Glacial period
Rhawn F. Denniston, Karl-Heinz Wyrwoll, Yemane Asmerom, Victor J. Polyak, William F. Humphreys, John Cugley, David Woods, Zachary LaPointe, Julian Peota, Elizabeth Greaves
インド・オーストラリア・モンスーン変動は両半球とローカルな海の両方によって駆動されている。特にハインリッヒ・イベントの際のITCZの南北移動に注目が寄せられている。オーストラリア北部に位置するBall Gown洞窟の鍾乳石から、40-31ka、27-8kaのITCZの挙動を復元。北半球の変動とは逆位相で降水量が変動していた。

A composite pollen-based stratotype for inter-regional evaluation of climatic events in New Zealand over the past 30,000 years (NZ-INTIMATE project)
David J.A. Barrell, Peter C. Almond, Marcus J. Vandergoes, David J. Lowe, Rewi M. Newnham, INTIMATE members
過去30kaのニュージーランドの陸上古環境記録(主に花粉)のレビュー。

Seasonality of UK′37 temperature estimates as inferred from sediment trap data
Antoni Rosell-Melé , Fredrick G. Prahl
アルケノン古水温計がどの季節を反映するかという問題はプロキシの誕生当時から議論されてきた。34カ所のセジメント・トラップ記録から、アルケノンの生産量が極大となる季節は各海域で異なり、緯度や光だけでなく、ローカルな海洋環境が大きく影響していることが分かった。すべてのデータを年平均SSTと比較するとよい相関が見られることから、いくつかの例外を除いては、アルケノン古水温計が使えることが示された。

◎EPSL
Opening the gateways for diatoms primes Earth for Antarctic glaciation    
Katherine E. Egan, Rosalind E.M. Rickaby, Katharine R. Hendry, Alex N. Halliday
始新世・漸新世境界における急激な南極の氷河化はpCO2の減少との関連性が示唆されているものの、そのメカニズムはよく分かっていない。一つの仮説は、珪藻の生物生産が増加したことによって生物ポンプが強化され、炭素が堆積物として固定されたことである。南大洋・大西洋セクターの堆積物コア(ODP1090)のδ30Siを測定したところ、始新世後期からδ30Siが減少し始め、珪藻によるケイ酸利用効率に変化が生じたことが示唆される。また、31.5Maころに中層水のケイ酸濃度は極大を示した。これらの観測事実から、南極周回流の速度上昇(spin-up)が表層・深層循環に影響し、珪藻の増加を招いたものと考えられる。もしかすると南極の氷河化を招くのに必要なpCO2の減少がこのメカニズムで説明できるかもしれない。

Recognition of Early Eocene global carbon isotope excursions using lipids of marine Thaumarchaeota
Petra L. Schoon , Claus Heilmann-Clausen , Bo Pagh Schultz , Appy Sluijs , Jaap S. Sinninghe Damsté , Stefan Schouten
PETMとETM2においては急激な温暖化と海洋底の炭酸塩の溶解が起きており、δ13Cの負のエクスカージョンで特徴付けられる。そうしたδ13Cの変動は炭素循環を制約する上で重要であるが、指標によってその変動幅が異なるという問題がある。北海と北極海から得られた堆積物コア中のGDGT(タウムアーキオータ; Thaumarchaeotaがつくる脂質)のδ13Cを測定した。ETM2の場合、炭酸塩δ13Cに比べて低い値を示したことから、表層水と亜表層水の13Cに欠乏した海水との混合の影響が見られる。PETMの値はそれぞれ一致した。従って、GDGTがDICのδ13Cの制約に使える可能性がある。

◎GRL
North Atlantic circulation and reservoir age changes over the past 41,000 years
Joseph V. Stern, Lorraine E. Lisiecki
北大西洋から得られたさまざまな堆積物コアの底性有孔虫δ18Oを繋いで年代モデルを作成し、それとは別に得られている浮遊性有孔虫Δ14Cを用いて海洋表層のリザーバー年代の過去41kaの推移を推定。現在は400年程度であるが、HS1の初期には1000年を超すほど古くなっており、原因としてはAMOCの変動が考えられる。HS1を招いたと思われる北大西洋高緯度域への淡水注入によって、IRDのピークの直後にリザーバー年代も急激に減少するが、これは淡水が招いた成層化によって気体交換が活発化したことが原因と考えられる。

Nutrient variability in Subantarctic Mode Waters forced by the Southern Annular Mode and ENSO
Jennifer M. Ayers, Peter G. Strutton
WOCE/CLIVARのデータを用いて最近のSAMWの栄養塩濃度変動の要因を評価したところ、Southern Annular Mode (SAM)と子午面循環の強化に伴う風応力カール・アノマリとの良い相関が見られた。子午面循環の強化は高緯度域の栄養塩の湧昇を強化し、エクマン輸送によってより低緯度側に輸送され、より高濃度の栄養塩がSAMWに取り込まれたと考えられる。SAMWの栄養塩変動が最大で5-12%ほど低緯度域の年間export productionを変化させていると考えられる。

The intensity, duration, and severity of low aragonite saturation state events on the California continental shelf
C. Hauri, N. Gruber, A. M. P. McDonnell, M. Vogt
カリフォルニアの大陸棚における海洋酸性化の規模・継続期間などが2050年までにどのように変化するかを、SRES A2シナリオに基づいてモデル予測したところ、1750年と比較して、アラゴナイト不飽和イベントの数と継続期間が4倍になることが予想された。変化量という意味においては来る20-40年間に大きいと思われる。2030年には大陸棚の底層水の不飽和が定常状態になると思われる。大気中CO2濃度が500ppmを超すようなシナリオでは、不飽和は永続的になると思われる。不飽和が石灰化生物に多大な影響を与え、生態系の構造を根本から変えると予想される。

◎Paleoceanography
Southwest Pacific Ocean response to a warming world: using Mg/Ca, Zn/Ca and Mn/Ca in foraminifera to track surface ocean water masses during the last deglaciation
Julene P. Marr, Lionel Carter, Helen C. Bostock, Annette Bolton, Euan Smith
太平洋南西部(ニュージーランド周辺)から得られた堆積物コア中のGlobigerinoides bulloidesGlobigerina ruberのMg/Ca, Zn/Ca, Mn/Ca, Ba/Caを測定。コアトップ試料を用いてプロキシを構築し、さらにそれを用いて最終退氷期における水塊移動を推定。Zn/CaやMn/Caは亜寒帯水塊・亜熱帯水塊を見分ける指標になる可能性がある。またそれぞれの種間でMg/CaとZn/Caが異なる値を示すのは、水塊の鉛直方向の熱構造と栄養塩の成層化を示していると思われる。氷期には6-7℃、SSTが低く、成層化は最小となっていた。成層化が崩壊するのはACRのときであった。

Evidence of silicic acid leakage to the tropical Atlantic via Antarctic intermediate water during marine isotope stage
James D. Griffiths, Stephen Barker, Katharine R. Hendry, David J. R. Thornalley, Tina van de Flierdt, Ian R. Hall, Robert F. Anderson
AAIWやSAMWは南大洋から低緯度域にケイ酸を輸送しているため、低緯度域の珪藻の生物生産をコントロールしていると思われる。赤道大西洋西部で得られた堆積物コアのεNdとδ30Si分析から、MIS4(60-70ka)にSilicic Acid Leakage Hypothesisを示唆する証拠が得られた。北西大西洋や赤道大西洋東部でも珪藻のフラックスが増加していることから、大西洋の広い範囲がSALHを通して氷期の大気CO2濃度の低下に寄与していた可能性がある。

◎Others
Assessing possible consequences of ocean liming on ocean pH, atmospheric CO2 concentration and associated costs
François S. Paquay, Richard E. Zeebe
International Journal of Greenhouse Gas Control 17 (2013) 183–188
地球温暖化と海洋酸性化を抑制するための地球工学の一つとして提案されている、海洋表層水へのアルカリ添加の効果とコストをモデルシミュレーションで評価。1500-5000 PgCを海洋に吸収させる場合、2011年のGDPの0.8-4.6%のコストがかかると推計された。CO2が1トンあたり144米ドル(日本円で15,000円くらい)となる。
※アルカリ度を増すことのメリットは生物への影響を最低限に抑えられること、温暖化だけでなく海洋酸性化も軽減できることにある。ただし、いくらアルカリ度を加えたとしても、産業革命以前の大気中CO2レベルには戻せないらしい。

2013年6月11日火曜日

新着論文(GRL, GBC, JC)

GRL
Tropical coral reef habitat in a geoengineered, high-CO2 world
E. Couce, P. J. Irvine, L. J. Gregorie, A. Ridgwell, E. J. Hendy
太陽放射を制限する(Solar Radiation Management; SRM)ことで地球温暖化を食い止めるという手段が考案されているが、人為起源のCO2放出が止まらない限り海洋酸性化やその他の問題は残ると思われる。モデルシミュレーションを用いてインド・太平洋のサンゴ礁とSST上昇、海洋酸性化との関係を評価したところ、放射強制力が3W/m2を超すと将来大きなサンゴ礁の悪影響が生じること、SRMによって熱帯域が過度に冷却する可能性を考慮すると理想的には1.5W/2程度に抑えることが望ましいことが示された。

Reduced carbon uptake during the 2010 Northern Hemisphere summer from GOSAT
S. Guerlet, S. Basu, A. Butz, M. Krol, P. Hahne, S. Houweling, O. P. Hasekamp, I. Aben
温室効果ガスを観測する人工衛星(Greenhouse Gases Observing Satellite; GOSAT)による観測記録から、2009年〜2010年における北半球の炭素吸収量を推定したところ、2010年の吸収量は2009年に比べて北米とユーラシア大陸でそれぞれ2.4ppm、3.0ppm減少していることが示された。主として夏の熱波が原因と考えられる。地上観測記録とも併せて考察したところ、地上観測だけでは過小評価している可能性があり、人工衛星観測の重要さが浮き彫りになった。

Role of mode and intermediate waters in future ocean acidification: analysis of CMIP5 models
L. Resplandy, L. Bopp, J. C. Orr, J. P. Dunne
海洋酸性化はモード水・中層水で顕著に起きると考えられている。7つの地球システムモデルを用いたシミュレーションから、亜表層水の酸性化は主として大気中のCO2濃度の上昇によって起きており、物理・生物的なフィードバックは全体の10%程度であることが分かった。亜表層水のCO2取り込み量は表層水の5~10倍と推定され、そうしたpHの低い水が輸送されることで湧昇域の表層水のpHに数十年というラグをもって大きく影響すると思われる。

Independent Confirmation of Global Land Warming without the Use of Station Temperatures
Gilbert P. Compo, Prashant D. Sardeshmukh, Jeffrey S. Whitaker, Philip Brohan, Philip D. Jones, Chesley McColl
人為起源の地球温暖化の確実性、気温観測所に関連する様々な不確実性(土地被覆の変化、観測機器の変更、ヒートアイランドなど)によって歪められてしまう。そうした影響が最小限に抑えられていると思われる、気圧計・海水温・海氷量などの物理データのみを使用して再解析を行ったところ、温度の年変動や100年スケールの変化傾向が見られ、地球温暖化が確かに生じていることの厳密性が実証された。

GBC
Atmospheric Δ14C reduction in simulations of Atlantic overturning circulation shutdown
Katsumi Matsumoto, Yusuke Yokoyama
最終退氷期の特にHS1とYDにおけるCO2濃度の上昇と、Δ14C減少のメカニズムは分かっていない。中でもAMOCの弱化のタイミングとの一致から、深層水と大気の炭素交換に影響があったと考えられている。しかし、AMOCが減少することで深層への炭素輸送が抑制され、Δ14Cは逆に’増加’すると思われ、観測事実とは食い違いが見られる。モデルシミュレーションを用いて、大西洋のバイポーラーシーソーによって、南大洋における気体交換の強化によって、観測されているΔ14Cの’減少’が説明できることを示す。南大洋の過程が北大西洋の過程よりも勝っていることが必要と思われる。北大西洋への擾乱が海を介してテレコネクションしたのか、或いは大気を介してテレコネクションしたのかについてはまだ不明瞭なままである。

Humic substances may control dissolved iron distributions in the global ocean: Implications from numerical simulations
Kazuhiro Misumi, Keith Lindsay, J. Keith Moore, Scott C. Doney, Daisuke Tsumune, Yoshikatsu Yoshida
モデルシミュレーションを用いて海水中の、特に深層水中の鉄と結合した配位子(iron-binding ligand)が鉄の物質循環に与える影響を評価。配位子が全球的に不均質に分布していることを考慮することで、観測されている鉄の分布をうまく表現できることが示され、鉄循環において腐植物質(humic substances)が重要であることを物語っている。

Journal of Climate
Projection of global wave climate change towards the end of the 21st century
Semedo, A., R. Weisse, A. Behrens, A. Sterl, L. Bengtsson, and H. Günther
A1B排出シナリオに基づいて将来の風波の変化の予測を行った。21世紀末には波の高さは小さくなるか控えめになると予想され、中緯度帯の年平均波高や最大波高はより極側へとシフトすると思われる。
>関連した論文
Projected changes in wave climate from a multi-model ensemble
複数モデルのアンサンブルによって予想される波気候の変化
Mark A. Hemer, Yalin Fan, Nobuhito Mori, Alvaro Semedo & Xiaolan L. Wang
Nature Climate Change (May 2013)
風波による沿岸部の変化は海水準の影響を打ち消すか、或いはさらに悪化させる可能性を秘めている。しかしながら波の変化はほとんど関心を寄せられていない。気候モデルを用いたアンサンブル・シミュレーションから、全球の波の高さが25.8%低下することが示された。両半球の冬季には波は高くなることが予測され、特に南大洋を起源とするうねりが原因と考えられる。予測の不確実性はモデル内のダウンスケール法によるところが大きい。

Paleoclimate data- model comparison and the role of climate forcings over the past 1500 years
Phipps, S., H. McGregor, J. Gergis, A. Gallant, R. Neukom, S. Stevenson, D. Ackerley, J. Brown, M. Fischer, and T. van Ommen
過去1,500年間の古気候記録とモデルシミュレーション結果との比較検証を行った。産業革命以降は人為起源の放射強制力が卓越していること、火山噴火によるフォーシングは南半球では顕著だが、北半球にはあまり顕著には見られないことが示された。産業革命以前の寒冷化の傾向はプロキシが代表する季節や地理的なバイアスによって、過大評価されている可能性がある。またサンゴδ18Oとモデルシミュレーションの結果から、中部赤道太平洋では温室効果ガス・太陽活動・火山噴火のフォーシングのすべての影響が確認され、ENSOに対する系統的な影響は確認されなかった。しかし、プロキシを解釈する上での「安定状態の仮定」が成り立たないことも示され、古気候記録-モデルシミュレーション結果の比較研究は重要なアプローチであるものの、現在の技術の限界が浮き彫りになり、別の手段を考案する必要があると言える。

Control of decadal and bidecadal climate variability in the tropical Pacific by the off- equatorial South Pacific Ocean
Tatebe, H., Y. Imada, M. Mori, M. Kimoto, and H. Hasumi
モデルシミュレーションを用いて、赤道太平洋のNINO3.4地域の20年周期のSST変動が熱帯域の外の、特に南太平洋の東亜熱帯モード水(Eastern Subtropical Mode Water)の亜表層水の温度偏差によって支配されていることが示された。10年周期の変動は南太平洋の風応力カールによって駆動される波調整(wave adjustment)が原因と思われる。

Antarctic Bottom Water warming and freshening: Contributions to sea level rise, ocean freshwater budgets, and global heat gain
Purkey, S., and G. Johnson
南極底層水(Antarctic Bottom Water; AABW)は南極周辺で沈み込み、世界の深層水を覆う最も冷たく、塩分の高い水塊である。近年AABWの温暖化と低塩分化が報告されており、またその形成速度も低下しており、形成域に対する融氷水の流入が原因と考えられている。そうしたAABWの水塊特性の変化はWeddel海を除くとあらゆる南極周辺の大陸棚で確認されており、南太平洋や南インド洋でも確認されている。低塩分化を招いた淡水不ラックスは73 ± 26 Gt/yrに相当し、大ざっぱに見積もると、近年西南極氷床から失われた淡水量の半分に相当する。また熱としては34 ± 3 TWがAABWに過剰に吸収されており、熱膨張によって海水準を0.37 ± 0.15mm/yr押し上げているものと推定される。

2013年5月25日土曜日

新着論文(GRL, JGR, GBC, Radiocarbon)

GRL
The influence of sea level rise and changes in fringing reef morphology on gradients in alongshore sediment transport
A.E. Grady, L.J. Moore, C.D. Storlazzi, E. Elias, M.A. Reidenbach
海水準上昇とサンゴ礁の悪化がローカルな地形に与える影響をハワイのMolokaiをモデルケースにして評価。岸に沿った方向に広がったサンゴ礁ほど影響を被りやすいことがモデルから示された。

Variability in the width of the tropics and the annular modes
J. Kidston, C. W. Cairns, P. Paga
ハドレーセルの縁と偏西風の関係をGCMで評価。

Can natural variability explain observed Antarctic sea ice trends? New modeling evidence from CMIP5
Lorenzo M. Polvani, Karen L. Smith
近年南極周辺の海氷範囲は’拡大’しており、温暖化によって海氷が融けるという予想に反する。さらに悪いことに、気候モデルは「温室効果ガスの増加と成層圏のオゾンの減少は海氷を後退させる」と予想している。4つのモデルを用いて食い違いの原因を検証。現在見られている南極の海氷の変動は自然変動の範疇にあり、人為起源と結論づけることは難しい。

JGR-Oceans
Integrating satellite observations and modern climate measurements with the recent sedimentary record: An example from Southeast Alaska
Jason A. Addison, Bruce P. Finney, John M. Jaeger, Joseph S. Stoner, Richard D. Norris, Alexandra Hangsterfer
アラスカ南東部のフィヨルドで得られた堆積物コアから過去100年間の環境復元。Br/Cl比がPDOの指標になるらしい。

GBC
Processes affecting greenhouse gas production in experimental boreal reservoirs
Jason J. Venkiteswaran, Sherry L. Schiff, Vincent L. St. Louis, Cory J. D. Matthews, Natalie M. Boudreau, Elizabeth M. Joyce, Kenneth G. Beaty, R. Andrew Bodaly
陸が浸水することでCO2やCH4をはじめとする温室効果ガスを放出する。5年間にわたって行われたFlooded Upland Dynamics Experiment (FLUDEX)の結果について。

Global trends in surface ocean pCO2 from in situ data
A. R. Fay, G.A. McKinley
海洋は人為起源のCO2を吸収するため、間接的に気候変化を緩和している。1981-2010年にかけての全球スケールの海洋表層水のpCO2のトレンドを評価。熱帯・亜熱帯域の表層水pCO2は大気のpCO2上昇にほぼ並行している。赤道大西洋の場合、温暖化によって海洋表層pCO2は大気pCO2よりも早く上昇しており、吸収能力が低下している。高緯度の海はデータが著しく不足しているが、南大洋周辺の海洋表層pCO2は Southern Annular Mode(SAM)などの気候変動によって大きく影響を受けている。

JGR-Atmosphere
A model-based test of accuracy of seawater oxygen isotope ratio record derived from a coral dual proxy method at southeastern Luzon Island, the Philippines
Gang Liu, Keitaro Kojima, Kei Yoshimura, Takashi Okai, Atsushi Suzuki, Taikan Oki, Fernando P. Siringan, Minoru Yoneda, Hodaka Kawahata
フィリピン・ルソン島から得られたハマサンゴのSr/Ca・δ18Oから1979-2001年の海水δ18Oの変動を復元。1次元ボックスモデルからうまく再現することができた。一部見られる季節変動の食い違いは、サンゴの生息場所における混合層の深さや湧昇などが原因と考えられる。

Radiocarbon
Comparison of 14C and U-Th Ages in Corals from IODP #310 Cores Offshore Tahiti
Nicolas Durand, Pierre Deschamps, Edouard Bard, Bruno Hamelin, Gilbert Camoin, Alexander L Thomas, Gideon M Henderson, Yusuke Yokoyama, Hiroyuki Matsuzaki
IODP310のタヒチにおいて得られた化石サンゴからINTCAL較正曲線に多数データを追加(特にMWP-1aが起きた付近の16-14ka)。これまでタヒチの礁嶺において得られた陸上掘削よりもはるかに古いデータが得られた(例えばBard et al., 1998)。
※僕も研究に使っている試料です。

Integration of the Old and New Lake Suigetsu (Japan) Terrestrial Radiocarbon Calibration Data Sets
Richard Andrew Staff, Gordon Schlolaut, Christopher Bronk Ramsey, Fiona Brock, Charlotte L Bryant, Hiroyuki Kitagawa, Johannes van der Plicht, Michael H Marshall, Achim Brauer, Henry F Lamb, Rebecca L Payne, Pavel E Tarasov, Tsuyoshi Haraguchi, Katsuya Gotanda, Hitoshi Yonenobu, Yusuke Yokoyama, Takeshi Nakagawa, Suigetsu 2006 Project Members
水月湖において掘削された年縞堆積物コア(SG06)中の植物片から、INTCAL較正曲線に多数データを追加。ほぼ大気と同等に見なせる550点の放射性炭素のデータが新たに追加された。SG93の243点のデータも加えて、過去52.8kaの808点にわたる、リザーバー効果に影響されない放射性炭素のデータを報告。
>関連する論文
A Complete Terrestrial Radiocarbon Record for 11.2 to 52.8 kyr B.P.
11.2 - 52.8 kyrの間の完全な陸域の放射性炭素の記録

Christopher Bronk Ramsey, Richard A. Staff, Charlotte L. Bryant, Fiona Brock, Hiroyuki Kitagawa, Johannes van der Plicht, Gordon Schlolaut, Michael H. Marshall, Achim Brauer, Henry F. Lamb, Rebecca L. Payne, Pavel E. Tarasov, Tsuyoshi Haraguchi, Katsuya Gotanda, Hitoshi Yonenobu, Yusuke Yokoyama, Ryuji Tada, and Takeshi Nakagawa
Science (19 Oct 2012)
放射性炭素は過去5万年間の地質学試料・考古学試料などに年代を与えるだけでなく、炭素循環におけるトレーサーとしても重要である。しかしながら12.5kaよりも前の大気の14Cを反映する記録はこれまで不足しており、氷期に相当する試料の高精度の年代測定は限られていた。日本の水月湖から得られた年縞堆積物を用いて過去52.8kaから11.2kaの大気の14Cを高精度に復元。これによって放射性炭素年代の測定限界までの総括的な記録が完成することになる。水月湖から得られた時間スケールを用いることで他の陸上の古環境記録との直接対比も可能になり、さらに大気-海洋の海洋の放射性炭素に関する関係性(海洋のローカルなリザーバー年代など)を求めることが可能になる。
>論文概説「湖の堆積物から大気の放射性炭素を復元することの意義

Atmospheric Radiocarbon for the Period 1950–2010
Quan Hua, Mike Barbetti, Andrzej Z Rakowski
木の年輪から得られた、1950-2010年にかけての季節レベルの大気14CO2記録を報告。北半球を3つ、南半球を2つに分けている。

Decadal Changes in Bomb-Produced Radiocarbon in the Pacific Ocean from the 1990s to 2000s
Yuichiro Kumamoto, Akihiko Murata, Takeshi Kawano, Shuichi Watanabe, Masao Fukasawa
1990年代のWOCEの際に広く海洋表層水の核実験由来の14Cが測定された。その後2000年代に再度同じ測線で測定された(CLIVAR)。太平洋の7本の測線の時間変化を報告。亜寒帯・赤道域の鉛直構造には大きな変化は確認されなかった。亜熱帯域では、太平洋の北西部と南部とでは大きな違いがあり、前者はbomb-14C濃度が著しく低下しているのに対し、後者は逆に温度躍層の下部で増加していた(SAMWによる取り込み?)。温度躍層水の気体交換の時間の違いが原因と考えられる。

Simulated Last Glacial Maximum ∆14Catm and the Deep Glacial Ocean Carbon Reservoir
Véronique Mariotti, D Paillard, D M Roche, N Bouttes, L Bopp
氷期の大気中のΔ14Cは420 ± 80 ‰だと報告されている(産業革命以前は0‰)が、’大気上層の生成率’と’炭素循環による分配’がその原因を担っていると考えられている。アイスコア10Beからは磁場変動だけでは200 ± 200 ‰しか説明できないと考えられており、残り220‰が炭素循環によるものと思われる。
 一つの案としては、'南大洋の成層化の強化'だけで「大気中のCO2濃度の低下(~180ppm)」および「δ13Cの変化」を大部分説明できると考えられている。そうした深層水はΔ14Cが非常に低く、それが大気に放出された時に大気Δ14Cを低下させたと考えられている。
 大気上層の14C生成率と14Cリザーバー間の相互作用を考慮し、CLIMBER-2モデルを用いて南大洋の'鉄肥沃(iron fertilization)効果'、'brine'、'生成率'の3つの作用を評価した。brineでかなりの部分を説明することが可能で、さらにモデルで初めてpCO2、δ13C、Δ14Cのすべての変化をうまく再現することができた。
>関連する論文
Impact of brine-induced stratification on the glacial carbon cycle
N. Bouttes, D. Paillard, and D. M. Roche
Clim. Past, 6, 575-589, 2010

Last Glacial Maximum CO2 and δ13C successfully reconciled
N. Bouttes, D. Paillard, D. M. Roche, V. Brovkin, L. Bopp
Geophysical Research Letters DOI: 10.1029/2010GL044499 (2011)

Systematic study of the impact of fresh water fluxes on the glacial carbon cycle
N. Bouttes, D. M. Roche, and D. Paillard
Clim. Past, 8, 589-607, 2012

Impact of oceanic processes on the carbon cycle during the last termination
N. Bouttes, D. Paillard, D. M. Roche, C. Waelbroeck, M. Kageyama, A. Lourantou, E. Michel, and L. Bopp
Clim. Past, 8, 149-170, 2012


2013年5月13日月曜日

新着論文(GRL)

GRL (Geophysical Research Letters)
High emission of carbon dioxide and methane during ice thaw in high latitude lakes
Jan Karlsson, Reiner Giesler, Jenny Persson, Erik Lundin
北極圏の湖沼においては冬期にCO2やメタンが蓄積し、春の雪解けとともに放出される。水深が大きいほどCO2のフラックスは増加し、メタンのフラックスは泥濘に囲まれているほど大きい。

Iron speciation in aerosol dust influences iron bioavailability over glacial-interglacial timescales
A. Spolaor, P. Vallelonga, G. Cozzi, J. Gabrieli, C. Varin, N. Kehrwald, P. Zennaro, C. Boutron, C. Barbante
鉄は生物一次生産に重要であると考えられている。鉄は2つの価数(Fe2+とFe3+)で海水中に存在する。Fe2+はより水によけやすく、海洋植物プランクトンにとって利用しやすい形態である。南極Talos Domeアイスコアから、過去55kaの風成塵起源の鉄の供給量を推定。Fe2+の生成には細粒のダスト上の光学還元(photoreduction)が重要であると考えられる。LGMにはFe2+は7倍に増加していたが、Fe3+は2倍程度であったと考えられる。おそらく生物生産に重要なFe2+が南極周辺の南大洋の一次生産に影響し、大気中CO2濃度の低下にも重要であったと思われる。

Carbonate dissolution rates at the deep ocean floor
Bernard P. Boudreau
堆積物においてCaCO3の溶解と底層水の飽和度との間に線形関係があるかどうかを実験から評価。溶解は飽和深度の下では堆積物中の境界輸送(boundary layer transfer)によって支配されていると考えられる。

Further observations of a decreasing atmospheric CO2 uptake capacity in the Canada Basin (Arctic Ocean) due to sea ice loss
Brent G.T. Else, R.J. Galley, B. Lansard, D.G. Barber, K. Brown, L.A. Miller, A. Mucci, T.N. Papakyriakou, J.-É. Tremblay, S. Rysgaard
2009年の観測から、Canada Basinの南東部における海氷後退がCO2の吸収に寄与するかどうかを評価。海氷は著しい速度で後退しており、驚くことにpCO2が非常に高かった(290-320μatm)。簡単な数値計算から、CO2の吸収能力はわずかに-2.4mmol/m2/dで、原因としては混合層の温暖化が考えられる。今後更なる海氷後退は吸収源としての能力を低下させると考えられる。

Mass loss of Greenland's glaciers and ice caps 2003–2008 revealed from ICESat laser altimetry data
T. Bolch, L. Sandberg Sørensen, S. B. Simonsen, N. Mölg, H. Machguth, P. Rastner, F. Paul
人工衛星によるレーザー高度計(ICESat)の観測記録から、グリーンランド氷床の質量収支を計算。陸上の気候状態に基づいたフィルンの圧縮度や密度を考慮している。2003年10月から2008年3月にかけて、グリーンランドの氷河と氷帽は年間「27.9 ± 10.7 Gt」で質量を失っており、海水準にして年間「0.08 ± 0.03mm」の上昇率に相当する。地球全体で氷河と氷帽の融解が海水準に与える影響のうち1割ほどを占め、極めて大きい数値である。融解はグリーンランドの南東部で大きく、北部で小さい。

Irreversible mass loss of Canadian Arctic Archipelago glaciers
Jan T. M. Lenaerts, Jan H. Angelen, Michiel R. Broeke, Alex S. Gardner, Bert Wouters, Erik Meijgaard
カナダ北極圏群島(Canadian Arctic Archipelago)には地球上で最も多く氷河が存在する。降雪と融水流出で質量収支がバランスしている。現在質量が失われつつあるCAAの氷河に対してモデルシミュレーションから質量収支を予測したところ、RCP4.5のシナリオにおいては、融水の増加に比べて降雪が増加しないことで、すべての温度状態で氷河が失われることが示された。

When will the summer arctic be nearly sea ice free?
James E. Overland, Muyin Wang
近年観測されている急速な北極海の多年氷の後退や2012年9月の1979-2000年比で49%もの減少はこれまでの数値シミュレーションでは全く予測されていないものである。3つの異なるアプローチによる将来予測は早ければ2020年以前、遅ければ2040年以降に夏の海氷が無くなることを示している。気候モデルと観測に基づいたそれぞれの予測のどちらに重きを置くかは難しい問題であるが、少なくともCMIP5のモデルを用いた予測はかなり過小評価をしている。近年の観測記録と専門家の意見がモデルの予測以外にも考慮されるべきである。

High biolability of ancient permafrost carbon upon thaw
Jorien E. Vonk, Paul J. Mann, Sergey Davydov, Anna Davydova, Robert G. M. Spencer, John Schade, William V. Sobczak, Nikita Zimov, Sergei Zimov, Ekaterina Bulygina, Timothy I. Eglinton, Robert M. Holmes
地球温暖化は北極圏の永久凍土を融かし、さらに大量の陸上炭素を不安定化させると考えられている。シベリアのYedoma層には北半球の永久凍土性有機物の4分の1が保存されているが、こうした沿岸部・河川環境の有機物が分解される過程についてはよく分かっていない。年代値が21,000年以上古い溶存有機炭素が小川に流出しており、さらに生物にかなりの割合(~34%)が利用されていることが観測と実験から分かった。北極海に河川を通して流れ込む溶存有機炭素としては、こうした極めて古い溶存有機炭素が最も生物に利用されると考えられる。

2013年3月24日日曜日

新着論文(GRL, PO, JGR, CP, BG)

GRL
Interhemispheric Asymmetry in Transient Global Warming: The Role of Drake Passage
David K. Hutchinson, Matthew H. England, Agus Santoso, Andrew McC. Hogg
気候モデルでは北半球が南半球よりも早く温暖化することが予測されている。非対称性の原因は大陸の分布と北極の海氷の後退と考えられているものの、海流の寄与についてはよく分かっていない。気候モデルでDrake海峡を閉じて将来の温暖化予測を行ったところ、南北半球の熱のコントラストが減少することが分かり、南極周回流(ACC)が南極を熱的に孤立させていることが一部寄与していると考えられる。

Could a future “Grand Solar Minimum” like the Maunder Minimum stop global warming?
Gerald A. Meehl, Julie M. Arblaster, Daniel R. Marsh
将来マウンダー極小期のような太陽活動の弱化(50年間にわたって総日射量が0.25%低下)が起きた際に、将来の温暖化を打ち消すかどうかをモデルを用いて評価。RCP4.5の排出シナリオの場合、日射量の低下が始まる直後に数10分の1℃全球気温が低下することが示された。しかし50年もすると温暖化の効果が打ち勝つことが示され、太陽活動極小は温暖化を遅くはしても止めることはないと予想される。

Sustained retreat of the Pine Island Glacier
J. W. Park, N. Gourmelen, A. Shepherd, S.W. Kim, D.G. Vaughan, D. J. Wingham
衛星観測から南極Pine Island氷河のヒンジ線が1992年〜2011年にかけて「0.95 ± 0.09 km/yr」の速度で後退していることが示された。後退の加速は海にせり出している部分の氷河の底が暖水によって融かされている観測事実と整合的。氷河-海洋システムはまだ平衡状態に達しておらず(まだ融ける?)、現在の海水準変動の最低予測は低く見積もりすぎている可能性がある。

Detection of an observed 135-year ocean temperature change from limited data
William R. Hobbs, Joshua K. Willis
現在の海洋の温暖化は20世紀後半の温暖化の推定値よりも大きく、数百年スケールでの自然変動が起きている可能性が示唆される。CMIP5のモデルを用いて、真の長期的な温暖化傾向を評価したところ、1873年〜1955年にかけて人為起源の温暖化がほぼ確実に起きていることが示された。それは大気上層で「0.1 ± 0.06 W/m2」のエネルギー、海水準に換算すると「0.50 ± 0.20 mm/yr」の熱膨張に相当するものであると推定される。

Recent 121-year variability of western boundary upwelling in the northern South China Sea
Yi Liu, Zicheng Peng, Chuan-Chou Shen, Renjun Zhou, Shaohua Song, Zhengguo Shi, Tegu Chen, Gangjian Wei, Kristine L. DeLong
東アジアの夏モンスーンは十分に強いため、南シナ海や東シナ海での沿岸湧昇を引き起こしている。ハマサンゴ骨格のSr/Caを用いて1876-1996年にかけての南シナ海北部(海南島)のSSTを復元し、湧昇の強弱を推定。1930年を境に寒冷な状態へとシフトし、1960年以降再び温暖な状態に変化した。将来アジアモンスーンが強化されると、湧昇が強化され、海洋酸性化の影響を悪化させることが懸念される。

Distinctive climate signals in reanalysis of global ocean heat content
Magdalena A. Balmaseda, Kevin E. Trenberth, Erland Källén
1958年〜2009年にかけての海水温の観測をもとに、温暖化の傾向と2004年以降の表層水の温暖化の停止(the recent upper-ocean-warming hiatus)の原因を評価。ここ10年間は700mよりも深い部分で温暖化が起きており、風の変化に伴う海洋鉛直構造の変化が原因と考えられる。

The response of atmospheric nitrous oxide to climate variations during the last glacial period
Adrian Schilt, Matthias Baumgartner, Olivier Eicher, Jérôme Chappellaz, Jakob Schwander, Hubertus Fischer, Thomas F. Stocker
大気中のN2O濃度はグリーンランド・アイスコアから復元されているが、それによると最終間氷期から完新世にかけて、N2Oは氷期・間氷期スケール、千年スケールの気候変動とともに変動し、とくにDOイベントの際にはグリーンランドの温暖化に数百年先行して濃度が上昇したことが知られている。上昇は大まかにはハインリッヒ・イベントの時期に対応していることが新たな分析から示された。

Why are some marginal seas sources of atmospheric CO2?
Minhan Dai, Zhimian Cao, Xianghui Guo, Weidong Zhai, Zhiyu Liu, Zhiqiang Yin, Yanping Xu, Jianping Gan, Jianyu Hu, Chuanjun Du
現在海洋沿岸部は栄養塩濃度が高く、一次生産が大きいため、炭素の吸収源(シンク)として働いているが、一方で放出源となっている海域も存在し、謎となっている。東シナ海とカリブ海の縁海を例にとって、Ocean-dominated Margin (OceMar)の概念を紹介。

Global modes of climate variability
O. Viron, J. O. Dickey, M. Ghil
ENSO、アジアモンスーン、NAO、MJOなどは半周期的に繰り返す相互作用する気候システムの重要な側面である。1948〜2011年における、全球に20ほどある気候指数をまとめ、相互の時間的なラグを評価した。

JGR-Oceans
Modeling Antarctic ice shelf responses to future climate changes and impacts on the ocean
Kazuya Kusahara, Hiroyasu Hasumi
南極氷床の底部の融解と海洋への淡水流入が与える影響を数値モデルを用いて評価。棚氷ごとに底部の融解をもたらす熱源は異なり、多くが気温上昇が原因であることが示された。将来の温暖化に対する感度もそれぞれの棚氷ごとに異なることも示された。Bellingshausen SeaやBellingshausen Seaの東部ではCDWが底部を浸食することでより融解するが、一方でRoss SeaやWeddel Seaでは海氷形成が十分に融解の効果を打ち消すことが示された。南極の高密度底層水の形成は温暖化とともに弱化すると考えられる。

Paleoceanography
Isotopically depleted carbon in the mid-depth South Atlantic during the last deglaciation
A. C. Tessin, D. C. Lund
ブラジル沖で採取された堆積物コア中の底性有孔虫殻のδ13Cから、最終退氷期における炭素循環を考察。HS1に大気のδ13Cよりも大きな低下が見られた。大西洋南北の水塊混合だけでは説明できず、南東部から深層水が急速にもたらされた可能性がある。HS1には大西洋の中層水のδ13Cはほぼ均質だが、一方でδ18Oは違いが見られ、一つの水塊では覆われていなかったと推測される。むしろδ13Cは保存量としては振る舞っておらず、別の13Cに枯渇した水塊が混入した可能性を示している。

Climate of the Past
Direct linking of Greenland and Antarctic ice cores at the Toba eruption (74 ka BP)
A. Svensson, M. Bigler, T. Blunier, H. B. Clausen, D. Dahl-Jensen, H. Fischer, S. Fujita, K. Goto-Azuma, S. J. Johnsen, K. Kawamura, S. Kipfstuhl, M. Kohno, F. Parrenin, T. Popp, S. O. Rasmussen, J. Schwander, I. Seierstad, M. Severi, J. P. Steffensen, R. Udisti, R. Uemura, P. Vallelonga, B. M. Vinther, A. Wegner, F. Wilhelms, and M. Winstrup
74kaに起きたToba噴火は過去200万年間で最も大きな火山噴火であると考えられており、MIS4/5境界に近い年代に起きたと考えられている。しかし、グリーンランドと南極氷床コアからはその証拠が得られていない。噴火はグリーンランドの亜間氷期19と20の間に始まったと考えられ、バイポーラー・シーソーを仮定すると、それが南極のAIM19と20に相当すると考えられる。アイスコアの酸性度のピークとして捉えられている可能性がある。

Influence of Last Glacial Maximum boundary conditions on the global water isotope distribution in an atmospheric general circulation model
T. Tharammal, A. Paul, U. Merkel, and D. Noone
大気大循環モデル(IsoCAM)を用いて完新世とLGMの表層気温及び降水のδ18Oを復元。LGMには北半球高緯度の氷床によって高度が変化したことで、北米の気温や降水δ18Oに大きな変化が生じていた。また表層気温は平均して4.1℃低下していたと推定される。

Skill and reliability of climate model ensembles at the Last Glacial Maximum and mid-Holocene
J. C. Hargreaves, J. D. Annan, R. Ohgaito, A. Paul, and A. Abe-Ouchi
Hargreaves et al. (2011)では、PMIP2のモデルがMARGOによるLGMの表層温度復元をよく再現できていることが示された。今回陸の表層を組み込んだ新たな結果をもとにモデルの再現性を評価した。LGMについては大きなスケールではよく再現できていることが示された。一方Mid-Holoceneはあまり一致しないことが示された。プロキシのキャリブレーションに問題がなければ、まだモデルに組み込まれていない未知のフィードバック過程が存在する可能性がある。

Mismatch between the depth habitat of planktonic foraminifera and the calibration depth of SST transfer functions may bias reconstructions
R. J. Telford, C. Li, and M. Kucera
北大西洋表層に生息する浮遊性有孔虫を用いて温度を復元する際に、表層数百メートルの温度構造が変化すると、温度復元のバイアスが生じることを指摘。生息深度を考慮して伝達関数(Transfer function)を用いて温度復元を行うと、「LGMには赤道大西洋のSSTはほとんど変化していなかった」とする従来の研究と違い、「中層水がより冷たかった」ことが示された。LGMの温度復元の見直しは、気候感度推定にも影響する可能性がある。

Biogeosciences
Oxygen and indicators of stress for marine life in multi-model global warming projections
V. Cocco, F. Joos, M. Steinacher, T. L. Frölicher, L. Bopp, J. Dunne, M. Gehlen, C. Heinze, J. Orr, A. Oschlies, B. Schneider, J. Segschneider, and J. Tjiputra
高い排出シナリオに基づいて、将来の海洋表層水の酸素・二酸化炭素濃度、表層温度などの環境変化をモデルで予測した。モデル間で食い違いが見られたが、2100年にはSSTは2〜3℃上昇すると予想され、さらに溶存酸素濃度は2〜4%低下すると予測される。すべてのモデルで、無酸素・低酸素の水塊の範囲はそれほど広がらないと予測された。複数の環境ストレスが生態系に与える影響をより評価する必要がある。

Contrasting responses of DMS and DMSP to ocean acidification in Arctic waters
S. D. Archer, S. A. Kimmance, J. A. Stephens, F. E. Hopkins, R. G. J. Bellerby, K. G. Schulz, J. Piontek, and A. Engel
北極海のような冷たい海では海洋酸性化が早く進行する。海洋酸性化がDMS生産にどのように影響するかを調査するために、酸性化のメソコスモ実験を行った。2100年に到達する可能性のあるpCO2=750μatmではDMS生産が35%低下することが示された。逆にDMSP生産は30%増加した。渦鞭毛藻のバイオマスの変化が原因と考えられる。

Impact of an abrupt cooling event on interglacial methane emissions in northern peatlands
S. Zürcher, R. Spahni, F. Joos, M. Steinacher, and H. Fischer
大気中のメタン濃度は氷期のD/Oイベントや完新世の8.2kaイベントなどの温度の急激な変動とともに大きく変化したことが知られている。それは主に熱帯域や北半球の湿地生態系のメタン放出・吸収が原因と考えられている。全球植生モデルを用いて、全球的な寒冷化が起きる際の北半球の泥炭地からのメタン排出の変化を再現した。例えば8.2kaイベントの際には北半球の泥炭地によるメタン吸収は全体の23%ほどしか説明できないため、低緯度域の他の吸収源の寄与が大きかったことになる。

Global ocean carbon uptake: magnitude, variability and trends
R. Wanninkhof, G. -H. Park, T. Takahashi, C. Sweeney, R. Feely, Y. Nojiri, N. Gruber, S. C. Doney, G. A. McKinley, A. Lenton, C. Le Quéré, C. Heinze, J. Schwinger, H. Graven, and S. Khatiwala
RECCAP計画のもと、数値モデルや観測記録をもとに1990年〜2009年にかけての全球の大気海洋CO2フラックスを推定。「-2.0PgC/yr」という推定値がもっとも良い人為起源のCO2の吸収量であった。短い時間スケールを扱えるような推定法では、近年のCO2吸収速度の低下も再現できていることが示された。

Stable isotope and modelling evidence for CO2 as a driver of glacial–interglacial vegetation shifts in southern Africa
F. J. Bragg, I. C. Prentice, S. P. Harrison, G. Eglinton, P. N. Foster, F. Rommerskirchen, and J. Rullkötter
木ほど高いCO2濃度を好むため、大気中のCO2濃度の変動は木や草原の競合といった、植生変化に繋がると考えられている。南大西洋の堆積物から得られたバイオマーカーのδ13C変動をもとに、LGMの植生変化のモデルシミュレーションを行ったところ、温度・降水だけでは変動を説明できず、CO2濃度の変化がC3/C4植物の分布に決定的であったことが示された。現在の人為起源のCO2排出もまた植生の競合に影響しており、サバンナ地帯ではより木の幹が厚くなる現象(woody thickening)などが確認されている。

2013年2月26日火曜日

新着論文(GBC, GRL, JGR)

◎GBC
Decadal changes in the aragonite and calcite saturation state of the Pacific Ocean
Richard A. Feely, Christopher L. Sabine, Robert H. Byrne, Frank J. Millero, Andrew G. Dickson, Rik Wanninkhof, Akihiko Murata, Lisa A. Miller, Dana Greeley
太平洋全体の最近の炭酸塩飽和度の変化をWOCE、JGOFS、CLIVARなどのデータセットから評価。人為CO2取り込みと海洋循環・生物活動の変化の結果、Ωは年間0.34%の早さで減少しており、Ω=1面の深さも年間1〜2mで上昇している。それらには地域性があり、南太平洋が最も多くの炭素を吸収している。一方北太平洋は10年規模の変動が支配的。このままの早さで酸性化が進行すると太平洋のサンゴ礁をはじめとするあらゆる生態系に悪影響が及ぶと考えられる。
" If CO2 emissions continue as projected over the rest of this century, the resulting changes in the marine carbonate system would mean that many coral reef systems in the Pacific would no longer be able to sustain a sufficiently high rate of calcification to maintain the viability of these ecosystems as a whole, and these changes perhaps could seriously impact the thousands of marine species that depend on them for survival."

Short-term and seasonal pH, pCO2 and saturation state variability in a coral-reef ecosystem
Sarah E. C. Gray, Michael D. DeGrandpre, Chris Langdon, Jorge E. Corredor
サンゴ礁は海洋酸性化に最も脆弱な環境の一つと考えられている。プエルトリコのMedia Luna reefにおいて2007年から2008年にかけて行われた長期的なpHとpCO2のデータを用いてサンゴ礁の炭酸系の自然変動を評価。例えば、pHは7.89 - 8.17まで変動。温度変化が変動の半分ほどを説明。残りはマングローブから運搬される有機物の分解などによる生物活動が担っている。全体としてはサンゴ礁はCO2のソースとして働いている(年間0.73 ± 1.7 mol/m2)。長期間低いΩが持続するとサンゴ礁全体の石灰化量も減少すると考えられる。

◎GRL
High emission of carbon dioxide and methane during ice-thaw in high latitude lakes
Jan Karlsson, Reiner Giesler, Jenny Persson, Erik Lundin
高緯度域の冬の炭素交換を見積もった研究は少ない。北極圏の湖において3年間に渡ってCO2とCH4のフラックスを測定。氷から解放されている期間がフラックスに大きく影響していることが示された。

Natural iron fertilisation by the Eyjafjallajökull volcanic eruption
Eric P. Achterberg, C. Mark Moore, Stephanie A. Henson, Sebastian Steigenberger, Andreas Stohl, Sabine Eckhardt, Lizeth C. Avendano, Michael Cassidy, Debbie Hembury, Jessica K. Klar, Michael I. Lucas, Anna I. Macey, Chris M. Marsay, Thomas J. Ryan-Keogh
2010年のアイスランドのEyjafjallajökull火山の噴火は北大西洋のアイスランド海盆に大量の溶存Feを供給した。採取された火山灰を用いて植物プランクトンの成長とそれに伴う栄養塩利用も強化されることが示された。人工衛星からは顕著に植物プランクトンの成長が増加した傾向は見られなかったものの、海水の栄養塩濃度は例年に比べて減少していた。従って、噴火が周辺海域の生物地球化学に大きな影響をもたらしたと推測される。

◎JGR-atm
Future change of the global monsoon revealed from 19 CMIP5 models
Pang-chi Hsu, Tim Li, Hiroyuki Murakami, Akio Kitoh
CMIP5のモデル19を用いて将来RCP4.5の排出シナリオに沿った温暖化が起きた際のモンスーンの範囲・降水量・強度がどのように変化するかを評価したところ、ほとんどのモデルがモンスーンが強化することを示した。またモンスーンとENSOの関係性もより強化されることが示された。

2013年2月19日火曜日

新着論文(GRL, JGR, PO, CP, BG)

○G3
Investigating δ13C and ∆14C within Mytilus californianus shells as proxies of upwelling intensity
J. E. Ferguson, K. R. Johnson, G. Santos, L. Meyer, A. Tripati
カリフォルニア沿岸部に生息するイガイ(Mytilus californianus)の殻のδ13CとΔ14Cが湧昇の指標になるかを評価。Δ14Cは使えそうだが、δ13Cは代謝起源の炭素が入ってくるため解釈が難しそう。

Early Aptian paleoenvironmental evolution of the Bab Basin at the southern Neo-Tethys margin: Response to global carbon-cycle perturbations across Ocean Anoxic Event 1a
Kazuyuki Yamamoto, Masatoshi Ishibashi, Hideko Takayanagi, Yoshihiro Asahara, Tokiyuki Sato, Hiroshi Nishi, Yasufumi Iryu
カタールのBab Basinから得られたOAE-1aの地層のδ13C・δ18O・87/86Sr測定などからOAEのメカニズムを推定。OAEの開始時にδ13C・δ18Oが低下するのは「火山性のCO2が長期的にもたらされ、温暖化が起きた」とする仮説と整合的。同時に起きた温暖化が風化を促進し、Sr同位体比にも影響した。

○GRL
Variability in the Surface Temperature and Melt Extent of the Greenland Ice Sheet from MODIS
Dorothy K. Hall, Josefino C. Comiso, Nicolo E. DiGirolamo, Christopher A. Shuman, Jason E. Box, Lora S. Koenig
近年のグリーンランド氷床の表面温度と氷床量の変化について。南西部がもっとも融解しており、季節を通じて気温の上昇(~0.55℃/10年)が起きている。2000年以降では2002年と2012年の融解が顕著であった。

Terrestrial effects of possible astrophysical sources of an AD 774-775 increase in 14C production
Brian C. Thomas, Adrian L. Melott, Keith R. Arkenberg, Brock R. Snyder
木の年輪に記録されているAD774-775の14C生成率のスパイクの原因を考察。solar proton events (SPEs)も考えられるかも?

The role of land use change in the recent warming of daily extreme temperatures
Nikolaos Christidis, Peter A. Stott, Gabriele C. Hegerl, Richard A. Betts
モデルを用いて近年の異常な暑さの原因を推定。産業革命以降の土地利用変化(森林が減少し、草原が増加)は’寒冷化’の効果があることが示された。

The gravitationally consistent sea-level fingerprint of future terrestrial ice loss
G. Spada, J. L. Bamber, R. T. W. L. Hurkmans
質量収支のバランスを考えることで、各要因の海水準上昇への寄与率を推定。海水準上昇の予測は地域性が大きい。熱帯域の海水準上昇には氷河・氷帽・氷床の融解が大きく寄与する可能性がある。赤道太平洋は熱膨張が、大西洋は海洋表層循環の変化が大きく影響すると考えられる。

Estimating the effect of Earth elasticity and variable water density on tsunami speeds
Victor C. Tsai, Jean-Paul Ampuero, Hiroo Kanamori, David J. Stevenson
津波の到達時刻の予測には通常浅水近似が用いられるが、2011.3.11の東北沖地震では予測に1%もの誤差が伴っていた。原因としてはモデルで考慮されていない地球の弾性変形が考えられる。そうした効果を津波の速度予測にどのように取り入れるべきかを新たに提案。

Equatorial Upwelling Enhances Nitrogen Fixation in the Atlantic Ocean
Ajit Subramaniam, Claire Mahaffey, William Johns, Natalie Mahowald
これまで栄養に富んだ表層水は窒素固定を抑制すると考えられてきた。東赤道大西洋で湧昇と窒素固定の関係を評価したところ、湧昇時に通常時の2〜7倍もの窒素固定が起きていることが確認された。

Anthropogenic Impact on Agulhas Leakage
Arne Biastoch, Claus W. Böning
近年南半球の風の場が変化したことでAgulhas leakageが増加し、大西洋により塩分の濃い海水が流入していることが示されている。モデルを用いて風の場の変化がもたらす影響を評価したところ、「偏西風が7%増加し、軸が2°極側にシフトすることで、現在の流量(4.5Sv)の3分の1ほどの変化が起きる可能性」が示された。ただしAMOCへの影響は小さいらしい。

Triggering of El Niño Onset Through Trade-wind Induced Charging of the Equatorial Pacific
Bruce T. Anderson, Renellys C. Perez, Alicia Karspeck
観測からENSOのメカニズムを推定。熱容量の増加が北大西洋に海面高度の偏差をもたらし、貿易風に影響するという仮説を提唱。モデルでも整合的な結果が得られた。

○JGR-Oceans
On the response of Southern Hemisphere subpolar 1 gyres to climate change in coupled climate models
Zhaomin Wang
CMIP3と5のモデルを用いて21世紀の南半球の亜寒帯流(subporlar gyre)がどのように変化するかを評価。すべてのモデルで偏西風が強化されることが予想されたが、渦の変化は食い違いが見られた。特に南極周回流地域の渦によって駆動される循環を表現することが難しい。現行のモデルでは再現は難しいかもしれない。

Water Column Iron Dynamics in the Subarctic North Pacific Ocean and the Bering Sea
Ren Uchida, Kenshi Kuma, Aya Omata, Satoko Ishikawa, Nanako Hioki, Hiromichi Ueno, Yutaka Isoda, Keiichiro Sakaoka, Yoshihiko Kamei, Shohgo Takagi
47ºN線に沿って北太平洋のFeの水柱分布を調査。西部の深層で溶存Fe濃度が高く、人為起源の鉄が大気と水平輸送でもたらされた結果と考えられる。ベーリング海では中層水(1.5 - 2.25 km)に濃度の極大が見られ、生物生産で生じた有機物が活発に中層で分解されていることが原因と考えられる。また大陸棚の堆積物からもかなりFeが供給されているかも?

Sea level and heat content changes in the western North Pacific
Jae-Hong Moon, Y. Tony Song
1993-2010年にかけて、西太平洋北部(東シナ海や日本沿岸を含む)の海水準は年間5mmの速度で上昇していることが海面高度観測から分かっている(全球平均の1.5倍)。複数の観測データ(熱・重力・海洋物理など)を組み合わせて、モデルでうまく再現することができた。北東貿易風の強化に伴って熱と水塊の分布が変化していることが過去20年間の変化の原因と考えられる。

Increased CO2 outgassing in February-May 2010 in the tropical Atlantic following the 2009 Pacific El Niño
Nathalie Lefèvre, Guy Caniaux, Serge Janicot, Abdou Karim Gueye
2010年春に赤道大西洋でfCO2の大きな増加が確認された。表層水温が上昇し、ITCZがより北に変化し、降水量の変化に伴い塩分が減少したことが原因と考えられ、2009年の太平洋のエルニーニョ強く影響したと考えられる。またNAOの寄与は小さいが、AMOも大きく寄与していたと考えられる。

○Paleoceanography
Late Quaternary climatic and oceanographic changes in the Northeast Pacific as recorded by dinoflagellate cysts from Guaymas Basin, Gulf of California (Mexico)
Andrea M. Price, Kenneth N. Mertens, Vera Pospelova, Thomas F. Pedersen, Raja S. Ganeshram
カリフォルニア湾から採取された堆積物コア中のdinoflagellate cystから過去30kaの生物生産を復元。YDには暖かい環境を好む種が確認された。

Seasonal patterns of shell flux, δ18O and δ13C of small and large N. pachyderma(s) and G. bulloides in the subpolar North Atlantic
Lukas Jonkers, Steven Heuven, Rainer Zahn, Frank J.C. Peeters
北大西洋のセジメント・トラップから、N. pacydermaG. bulloidesのδ18O・δ13Cの差の原因を考察。深度よりはむしろ成長する季節が大きく影響しているかも。δ13CはDICのδ13C変動とも差が見られるため、温度(代謝)も大きく影響していると考えられる。

○Climate of the Past
Greenland ice sheet contribution to sea level rise during the last interglacial period: a modelling study driven and constrained by ice core data
A. Quiquet, C. Ritz, H. J. Punge, and D. Salas y Mélia
氷床モデルを用いて最終間氷期の温暖期のグリーンランド氷床の応答を調査。グリーンランド氷床はあまり融けておらず、0.7 - 1.5 m程度の寄与であったと考えられる。従って、南極氷床がもっと融解していたということになる。

A new global reconstruction of temperature changes at the Last Glacial Maximum
J. D. Annan and J. C. Hargreaves
MARGOなどを初めとする間接指標に基づいたLGMの全球の表層温度推定と、PMIP2のモデル予測結果とを比較。全球平均気温は「4.0 ± 0.8 ℃」低かったと考えられる。

○Biogeosciences
Glacial-interglacial variability in ocean oxygen and phosphorus in a global biogeochemical model
V Palastanga, C. P. Slomp, and C. Heinze
生物地球化学モデルを用いて、LGMに大陸棚から海へ供給された粒子状有機物が生物地球化学に与えた影響を評価。間氷期と比べて氷期にはリンの埋没量が増加し、深層の酸素濃度は低下する傾向が見られた。ただし酸素濃度の低下は堆積物のリンのサイクルに影響を及ぼすほどのものではなかったと考えられる。