Main contents

☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog
ラベル Nature の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Nature の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018年4月20日金曜日

サンゴに未来はあるか?3

前回の記事からまたしばらく時間が経ったのと、グレートバリアリーフのサンゴ礁が白化現象に伴い壊滅的な被害にあっているという記事・論文を見たのとを受けて、またアップデートしておきます。
サンゴに未来はあるか?2
サンゴに未来はあるか?

今回目に留まったのはNatureに掲載された以下のもの。
Great Barrier Reef saw huge losses from 2016 heatwave
Nature NEWS (18 APRIL 2018)


Global warming transforms coral reef assemblages
Terry P. Hughes et al.
Nature (2018), doi:10.1038/s41586-018-0041-2

ちなみに、同じ作者が筆頭著者でグレートバリアリーフのサンゴ礁の被害について立て続けに論文書いています。
Global warming and recurrent mass bleaching of corals
Terry P. hughes et al.
Nature 543, 373–377 (16 March 2017)

Spatial and temporal patterns of mass bleaching of corals in the Anthropocene
Terry P. Hughes et al.
Science 359, 80–83 (05 Jan 2018)

これまで全球的な規模の白化現象は1998年と2002年に起きており、2015年と2016年には2年続けて起きたことでこれほど大きな被害になったのだと思われます。
白化現象を免れたサンゴの範囲は1998年は45%、2002年は42%でしたが、2016年はたったの9%であったことも分かっています。

グレートバリアリーフ、今年の白化現象は「過去最大規模」
CNN news (2016.11.30)

白化の要因を解析したところ、漁業圧や水質ではなく、水温、特に水温が通常より高い状態が何日間か続くことが重要であることが見出されました。エルニーニョが極端に高水温の海水をもたらしたためと考えられます。
被害の分布を見ると、より熱帯寄り(北側)のサイトほど白化の被害が大きいことが分かります。

大規模白化でサンゴ被覆が失われた程度(Nature NEWS


生物やその複合体である生態系には本来擾乱に対する適応の作用が備わっています。そのため、一度壊滅的な被害を被っても回復し、むしろ新たに形成された生態系には全体として耐性が身につく可能性が指摘されています。
しかしながら、少なくとも1998年と2002年の大規模白化によって2016年の大規模白化現象が緩和されるといったことは起きなかったことが今回明らかになりました。

今回の白化の直後と半年後に行われた航空観測・潜水調査によれば、今回被害を大きく受けていたのはテーブル状やツノ状の、比較的早く成長する、かつ複雑な構造を作り小型生物に住処・隠れ家を提供するタイプの造礁サンゴであることも分かりました。それらが白化後死滅し、変わってより成長の遅い、より簡素な形のサンゴ(ハマサンゴなど?)へと置き換わりつつあることも分かりました。

「サンゴが異なるサンゴに変わるのだからサンゴ礁生態系としては維持されているではないか」と思う人もいるかもしれません。
サンゴが置き変わることで三次元的な構造が変化すれば、当然生物多様性にも変化が生じます。特に小型生物がいなくなれば多様性は減じることになるでしょう。

暑すぎてサンゴの多様性が減るという事例は、完新世よりも温暖だった最終間氷期(約12万年前)のサンゴの多様性を調べた研究からも見てとれます。
Equatorial decline of reef corals during the last Pleistocene interglacial
Wolfgang Kiessling, Carl Simpson, Brian Beck, Heike Mewis, and John M. Pandolfi
PNAS 109 (26 December 2012)
当時は自然状態(人間活動なし)で温暖な状態が実現していましたが、赤道域があまりにサンゴにとって暑く、多様性が減じていたことが指摘されています。

また石灰化速度が低下すれば、礁形成速度も低下しますので、より侵食(生物・化学・物理)を被り礁そのものの存在が危ぶまれます(新しく作られるものと失われるもののバランスが崩れる)。
特にサンゴ礁は嵐による波などから沿岸部を守る役割も負っています。今後礁の侵食量が大きくなれば、沿岸域がより海水準上昇や高波などの被害に晒されやすくなることになります。

これまで、温暖化に伴う白化や、海洋酸性化によってサンゴ礁そのものが消滅して藻場やソフトコーラル群集に置き換わるといった可能性も指摘されていました。
ただ、私自身の考えとしては、中にはそうした劇的な変化を被る場所もあるかもしれないけれど、サンゴの中でも環境耐性が大きいものは将来生き残れる可能性が高いので、サンゴ礁としての機能は残る可能性は十分にあります。
また現在サンゴは北上(南半球では南下)中で、より生育に適した場へを求めて広がりつつあります(ただし、温帯域のサンゴは礁を形成するほどの石灰化速度がないことに注意)。まさに過去に起きたような、熱帯域のサンゴは多様性が減じて、中緯度域は増加するという、最終間氷期に起きた事象が見られつつあるという状況にあります。
人間もまた耐性が大きいサンゴを移植するなど、環境に手を加えていくことになるかと思います。
もちろんここで言いたいのは、単にサンゴ礁が残るということで、産業革命以前の生物の豊かなサンゴ礁に戻るということではないです。また温暖化の結果、海水準も上昇しており、石灰化速度が十分でなければ一部のサンゴ礁は水没する可能性もあります。

今後、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を減らさない限り、エルニーニョに伴う熱波の発生頻度は上昇すると予想されており、海洋酸性化も確実に進行するため、サンゴ礁はますます環境からのストレスに晒されることになります。
論文の著者へのインタビューの中では、「サンゴ礁のレジームシフトは我々の想像よりも早く進んでいて、もう取り返しのつかないところまで来ている」とも言われています。

世界最大の生物が作る構造物であるグレートバリアリーフの未来は決して明るいものではありません。
その中で、少しでもグレートバリアリーフを未来に残せるように私たちにできる最善策は、温室効果ガスの排出削減に向けて取り組みをいっそう強化することに他なりません。

2016年2月8日月曜日

氷期の大気中CO2濃度、生物生産、鉄の関わり(Costa et al., Jaccord et al., 2016, Nature)

No iron fertilization in the equatorial Pacific Ocean during the last ice age
K. M. Costa, J. F. McManus, R. F. Anderson, H. Ren, D. M. Sigman, G. Winckler, M. Q. Fleisher, F. Marcantonio & A. C. Ravelo
Nature 529, 519–522 (28 January 2016)

Covariation of deep Southern Ocean oxygenation and atmospheric CO2 through the last ice age
Samuel L. Jaccard, Eric D. Galbraith, Alfredo Martínez-García & Robert F. Anderson
Nature (2016) doi:10.1038/nature16514

より。
ともに氷期における大気中CO2濃度低下の謎について堆積物中の古気候指標から考察した論文。
JOIDES Resolution@インド洋南西部の甲板より。視線の先にJaccordらが得た堆積物の採取地が


2015年5月10日日曜日

最終氷期における南北の熱シーソー(WAIS Divide Project Members, 2015, Nature)

Precise interpolar phasing of abrupt climate change during the last ice age
WAIS Divide Project Members
Nature 520, 661–665 (30 April 2015)
より。

西南極氷床から得られたアイスコア(WDC)のδ18O・CH4分析結果をグリーンランド氷床アイスコアの記録と比較することで、氷期における南北半球の温暖・寒冷期の位相とメカニズムを考察。

2015年2月13日金曜日

最終退氷期における海からのCO2放出(Martinez-Boti et al., 2015, Nature)

Boron isotope evidence for oceanic carbon dioxide leakage during the last deglaciation
M. A. Martinez-Boti, G. Marino, G. L. Foster, P. Ziveri, M. J. HenehanJ. W. B. Rae, P. G. Mortyn, D. Vance
Nature 518, 219–222 (12 February 2015).

とその解説記事
Geochemistry: When carbon escaped from the sea
Katherine A. Allen
Nature 518, 176–177 (12 February 2015).

より。
Gavin L. Fosterらの最新の研究成果。過去10年程度の有孔虫δ11Bに関する仕事の集大成とも言える論文。

2014年10月31日金曜日

これまででもっとも細かい大気CO2濃度記録:最終退氷期(Marcott et al., 2014, Nature)

Centennial-scale changes in the global carbon cycle during the last deglaciation
Shaun A. Marcott, Thomas K. Bauska, Christo Buizert, Eric J. Steig, Julia L. Rosen, Kurt M. Cuffey, T. J. Fudge, Jeffery P. Severinghaus, Jinho Ahn, Michael L. Kalk, Joseph R. McConnell, Todd Sowers, Kendrick C. Taylor, James W. C. White & Edward J. Brook
Nature 514, 616–619 (30 October 2014)

より。
西南極氷床から得られたアイスコア(WDC)の、これまでで最も高い解像度の最終退氷期(20-10ka)における大気CO2濃度変動記録を報告。

2014年7月11日金曜日

北大西洋にもたらされる鉄の起源(Conway & John, 2014, Nature)

Quantification of dissolved iron sources to the North Atlantic Ocean
Tim M. Conway & Seth G. John
Nature 511, 212–215 (10 JULY 2014).

とその解説記事
Fingerprints of a trace nutrient
Joseph A. Resing & Pamela M. Barrett
Nature 511, 164–165 (10 JULY 2014).
より。

単に「鉄」というと、まさか海水中に豊富にあるとは思わないかもしれない。

2014年1月25日土曜日

新着論文(Nature#7484)

Nature
Volume 505 Number 7484 pp453-580 (23 January 2014)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Climate change spawns bigger waves
気候変化がより大きな波を生み出す
Geophys. Res. Lett. http://doi.org/q2c (2014)
将来の気候変化のモデルシミュレーション結果から風の変化を抽出した研究から、特に南半球で風が強化される結果、チリやBaja半島において10年に一度起きる高波の頻度が2〜3倍になることが示された。特に沿岸域では海水準上昇が高波の被害をさらに高めると予想されている。

Strong storms shift landwards
強い嵐が陸側にシフトする
Environ. Res. Lett. 9, 014008 (2014)
1977-2010年にかけて東アジア地域で得られた嵐の記録から、ここ数十年間の間に、嵐の活動がより陸側へとシフトしており、より強い嵐へと繋がっていることが分かった。ただし、北部(中国・韓国・日本)では強い嵐が有為に増加していることが分かったが、南部(ベトナム・台湾など)では有為な変化は確認されなかった。大気循環の変化によって西赤道太平洋の温暖化が嵐の発達する地域をより北西へと押し上げている可能性が指摘されている。

SEVEN DAYS
今回は省略

NEWS IN FOCUS
Polar drilling problems revealed
極の掘削の問題が明らかに
Quirin Schiermeier
南極の氷底湖Ellsworth湖を掘削する計画が直面する問題について。

Rock’s power to mop up carbon revisited
炭素を掃討する石の力が再検討された
Daniel Cressey
かんらん岩は風化を通して大気中のCO2を炭酸イオンに変換することが知られている。その化学反応を利用して気候変化を打ち消す目的で、大気中のCO2を減らす試み(地球工学)がなされている。しかしながら、まだ分からないことも多い。

Yellowstone grizzlies face losing protected status
イエローストーン・グリズリーが保護対象の地位を失いつつある
Lauren Morello
グリズリーが絶滅危惧種のリストから除外することを推奨するパネルに対して環境保護主義者たちが抗議している。

Sea drilling project launches
海洋掘削計画が始まる
Jane Qiu
国際深海掘削計画によって、世界の地質学的に重要な海の一つである南シナ海の謎が解き明かされようとしている。

COMMENT
Ecology: Protect the deep sea
生態系:深海を保護する
Edward B. Barbierらは商業によって脅かされている深海生態系を保護するためのガバナンスと基金の必要性を訴えている。

CORRESPONDENCE
Peer review: Payback time for referee refusal
Dan Graur

Land management: Resolving soil pollution in China
Ruishan Chen & Chao Ye

Land management: Weighing up reuse of Soviet croplands
Johannes Kamp

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
NEWS & VIEWS
Ecology: Good dirt with good friends
生態学:良い友人と良い土
Mark A. Bradford
Averill et al.の解説記事。
全球の森林を対象にしたデータの解析から、樹木の根に付く有益な真菌の種類によって、土壌中に蓄えられる炭素の量が決まることが明らかに。

Solar system: Evaporating asteroid
太陽系:小惑星を蒸発させる
Humberto Campins & Christine M. Comfort
Küppers et al.の解説記事。
セレスは水をふんだんに含むと考えられている。ハーシェル宇宙望遠鏡を用いた観測から、セレスの地表から水蒸気が漏れ出していることが分かった。

Climate science: A resolution of the Antarctic paradox
気候科学:南極のパラドクスの解決
John King
Li et al.の解説記事。
近年極域は極端で急速な環境変化を経験しているが、特に南極の冬期の海氷量がわずかに増加しつつあることが話題を呼んでいる。その原因が大西洋の熱帯域と北部地域の長期的な温暖化にある可能性が示唆された。

LETTERS
A millisecond pulsar in a stellar triple system
三重星系におけるミリ秒パルサー
S. M. Ransom et al.

Localized sources of water vapour on the dwarf planet (1) Ceres
準惑星(1)ケレス表面にある局在化した水蒸気発生源
Michael Küppers et al.
準惑星(1)ケレスの地表には含水鉱物が発見されており、この準惑星の内部はケイ酸塩のコアと氷のマントルに分化していると考えられている。ケレス周囲における水蒸気が初めて検出された。彗星と同様の「昇華」か、「氷火山」が原因かもしれない。
>Nature ハイライト
小惑星ケレス表面の水蒸気

Impacts of the north and tropical Atlantic Ocean on the Antarctic Peninsula and sea ice
北大西洋と赤道大西洋が南極半島と海氷に与える影響
Xichen Li, David M. Holland, Edwin P. Gerber & Changhyun Yoo
南極半島は世界で最も早い温暖化を経験している。その結果、南極周辺の海氷にも影響が生じているが、単に減少しているのではなく、その位置が再編されており、結果的にわずかに増加している。赤道太平洋の気候変動の影響は良く知られているが、大西洋の影響はこれまで評価されてこなかった。
 大西洋数十年規模振動(Atlantic Multidecadal Oscillation; AMO)の影響が海氷の分布の変化と南極半島の温暖化に寄与していることが観測とモデルから示された。
>Nature ハイライト
南極の気候に対する大西洋の影響

Mycorrhiza-mediated competition between plants and decomposers drives soil carbon storage
菌根が仲介する植物と分解者の間の競合が土壌炭素の保存を駆動する
Colin Averill, Benjamin L. Turner & Adrien C. Finzi
土壌中では、温度・降水・粘土量・一次生産量などよりも、菌根類生態系のタイプが炭素の保持力により強い影響を持っていることが明らかに。エリコイド型の方が、アーバスキュラー型に比べて単位窒素あたりの炭素量が70%多いことが示唆された。
>Nature ハイライト
土壌炭素量のカギを握る菌根菌

CORRIGENDUM
Corrigendum: Deglacial pulses of deep-ocean silicate into the subtropical North Atlantic Ocean
A. N. Meckler, D. M. Sigman, K. A. Gibson, R. François, A. Martínez-García, S. L. Jaccard, U. Röhl, L. C. Peterson, R. Tiedemann & G. H. Haug
堆積物コアの年代モデルに間違いがあった模様。結果には影響せず。

2014年1月16日木曜日

新着論文(Nature#7483)

Nature
Volume 505 Number 7483 pp261-448 (16 January 2014)

About the cover
鳥類のV字編隊飛行
>Natureハイライト
Cover Story: 飛行計画:編隊飛行する鳥では、翼の羽ばたきの位相を正確に調節することが空気力学的利益を最大にする

EDITORIALS
Cool heads needed
頭を冷やすことが必要
世界を大寒波が襲っているが、気象と気候の違いはあまりに簡単に忘れがちである。
[以下は抜粋]
On some level, most people understand the difference between climate and weather. Climate is the context: the accumulation of temperatures and precipitation trends that vary depending on location and season. Weather is what we experience, and extremes are part of the package. 
ある程度、大半の人は気候と気象の違いを理解している。気候は文脈であり、場所や季節によって異なる気温や降水の傾向の蓄積である。気象は我々が日々経験するものであり、異常気象はその中の一部である。

Despite such assessments, however, people continually confound weather and climate in the heat — or cold — of the moment. Confusion seems unavoidable.
しかしながら、そうした客観的評価にも関わらず、人はつかの間の暑さや寒さの中で気象と気候の違いを繰り返し混同している。混乱はある意味避けがたいものかもしれない。

At first blush, the global-warming ‘hiatus’ runs counter to the warming projected by climate models…Ultimately, the hiatus has provided an opportunity to better understand both the climate system and climate models. One lesson is that the climate, like day-to-day weather, has its ups and downs. Another is that the average global temperature — although a useful indicator — is not the only measure of how the climate changes.
一見、地球温暖化の’ハイエタス(一時中断)’は気候モデルが予測する温暖化に相反するように思われる。(中略)究極的には、ハイエタスはよりよく気候システムと気候モデルを理解する機会を与えてくれる。一つの教訓は気候は日々の気象と同じく、上り下がりするということ。もう一つの教訓は平均的な地球の温度だけが(とても便利な指標だけれど)気候変化の計り方の唯一の手段ではないということである。

V is for vortex
Vは渦のため
とある絶滅危惧種の鳥が、何故渡り鳥がVの形をしたお馴染みの隊列で渡りをするのかを学ぶ助けとなる。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Starfish eyes see the light
ヒトデの目は光を見ている
Proc. R. Soc. B 281, 20133011 (2014)
>ナショナルジオグラフィック ニュース
ヒトデの目は見えていた!

Trilobites ventured beyond the ocean
三葉虫は海を超えて冒険した
Geology http://doi.org/qnq (2013)
5億4千万年前のカンブリア爆発のころの干潟の堆積物から、当時三葉虫が水面から出て干潟を這いずり回っていた可能性を示唆する証拠が得られた。この発見は陸上生物が淡水ではなく、海水に棲む生物から進化したという説を裏付けている。

Past warmth drives glacial melting
過去の温かさが氷河の融解を招く
Cryosphere 8, 59–71 (2014)
これからの温暖化の程度に関わらず、今後数十年間は世界の氷河の融解は続くことが氷河モデルから示唆された。つまり20世紀に起きた気候変化が遅れを持って氷河に影響するということである。筆者らは、氷河の厚さが薄くなったり、後退したりすることによって、将来の温暖化に対しては鈍感になる可能性があると示唆している。

Marine bacteria shed tiny sacs
海洋バクテリアは小さな嚢を落とす
Science 343, 183–186 (2014)
海洋で最も豊富にいる光合成バクテリアは海の中で毎日自らの身体の一部を海へと落としており、その量は塵も積もって全球の炭素循環に影響するほどになっていることがProchlorococcusの室内飼育実験と大西洋における野外採取から示唆された。1日あたり104トン以上と推定されている。
>関連した記事(Science#6167 “Perspectives”)
Bacterial Vesicles in the Ocean
海の中のバクテリアの小包
David Scanlan
Biller et al.の解説記事。
植物プランクトンが放出する小包が海洋の炭素循環・ウイルスの防御・遺伝子輸送において重要な役割を負っている可能性がある。
>話題の論文
Bacterial Vesicles in Marine Ecosystems
海洋生態系におけるバクテリア小包
Steven J. Biller, Florence Schubotz, Sara E. Roggensack, Anne W. Thompson, Roger E. Summons, and Sallie W. Chisholm
海に豊富に棲息するシアノバクテリア(Prochlorococcus)は海洋炭素循環にも寄与するほどの小包膜(membrane vesicles)を海水に放出している。

Sea-level swings get more extreme
海水準のスイングがより極端に
Geophys. Res. Lett. http://doi. org/qtd (2014)
おそらく夏がより暑く、冬がより寒くなっている(季節差が大きくなっている)ことが原因で、メキシコ湾沿岸部における海水準の季節的な上下動が1990年代以降大きくなっていることが1900年以降の海水準の観測から示された。
>話題の論文
Rapid changes in the seasonal sea level cycle along the US Gulf coast from the late 20th century
Thomas Wahl, Francisco M. Calafat, Mark E. Luther

Landslide triggered earthquakes
地滑りが地震を誘発する
GSA Today 24, 4–9 (2014)
大地震が地滑りを誘発することは頻繁に起きているが、2013年4月にアメリカの銅鉱山で生じた地滑りの後には、逆に小規模の地震(M2.5)が誘発されていたことが明らかに。

SEVEN DAYS
※今回は省略

NEWS IN FOCUS
Comet craft ready to wake
隕石の宇宙船が起きようとしている
>関連した記事(Science#6166 “A Look Ahead for 2014”)
Rosetta Springs to Action
ロゼッタが行動を開始
Elizabeth Gibney
ヨーロッパ宇宙局が2004年に打ち上げたロゼッタはチュリュモフ・ゲラシメンコ隕石(Churyumov–Gerasimenko)に向けて太陽系を飛行している。8月から観測がスタートし、2015年中頃にはPhilaeと名付けられた地上探査機を送り込む予定。隕石は太陽系形成初期の記録を残していると思われ、水や生命のもととなった物質などの探査が行われる。

Researchers question rescued polar expedition
救出された極域の航海に対して研究者らが疑問を抱いている
Alexandra Witze
先日南極で救出劇を招いた研究航海に対して、オーストラリアの南極部門は承認していないと言っている。

Kepler clue to supernova puzzle
超新星爆発のパズルにケプラー宇宙望遠鏡がヒントを与える
Ron Cowen

FEATURES
Climate change: The case of the missing heat
気候変化:失われた熱の事件
Jeff Tollefson
謎めいた’地球温暖化のハイエタス’が16年目に突入し、科学者らは説明を求めて証拠をまとめている。

Astrophysics: The heart of darkness
天体物理学:暗さの中心
すべての巨大銀河の中心に存在する超巨大ブラックホールは謎に満ちている。しかし、天文学者らはついにその姿を明らかにしようとしている。

COMMENT
Development: Time to leave GDP behind
発展:GDPを忘れる時が来た
「国内総生産(GDP)は国家の成功を計る間違った手段であり、それぞれの国家は新たな判断基準を受け入れるべく行動すべきである。」とRobert Costanzaらは主張する。

CORRESPONDENCE
Polar rescue: science was not well served
極域の救出:科学はあまり役に立っていなかった
Nick Gales

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
NEWS & VIEWS
Earth science: River incision revisited
地球科学:河川下刻を再考する
Roman A. DiBiase
Finnegan et al.の解説記事。
河川による基盤岩浸食のデータをまとめた研究から、結果が観測の時間スケールに依存しており、段丘などの下刻地形が気候とテクトニクスの変化を忠実に記録しているかどうかに疑問が投げかけられている。

Bird flight: Fly with a little flap from your friends
鳥の飛行:仲間の羽ばたきに助けられながら飛ぶ
Florian T. Muijres & Michael H. Dickinson
Portugal et al.の解説記事。
V字の隊列を作って飛ぶホオアカトキ(bald ibises)の飛行の空中での観察から、この鳥は仲間との相対的な位置調節と羽ばたき動作の同調によって、エネルギーを節約しているという仮説に一致する飛行の仕方をしていることが明らかになった。

Astrophysics: Black hole found orbiting a fast rotator
天体物理学:高速回転する星を周回するブラックホール
M. Virginia McSwain
Casares et al.の解説記事。

LETTERS
A Be-type star with a black-hole companion
ブラックホール伴星を持つBe型星
J. Casares, I. Negueruela, M. Ribó, I. Ribas, J. M. Paredes, A. Herrero & S. Simón-Díaz
>Natureハイライト
Be型星に見つかったブラックホール伴星

A signature of transience in bedrock river incision rates over timescales of 104–107 years
104–107 年の時間スケールでの基盤岩に対する河川の下刻速度の移ろいやすい特徴
Noah J. Finnegan, Rina Schumer & Seth Finnegan
これまで河川が基盤岩を下刻する速度は岩盤の隆起や浸食に対する気候フォーシングの強度を反映していると考えられてきた。しかしながら、14地点の155個の測定結果からは、下刻速度は測定間隔(measurement interval)に依存していることが示されている。
>Natureハイライト
河川下刻についての事実と仮定

Amazon River carbon dioxide outgassing fuelled by wetlands
湿地によって促進されるアマゾン川の二酸化炭素排出
Gwenaël Abril, Jean-Michel Martinez, L. Felipe Artigas, Patricia Moreira-Turcq, Marc F. Benedetti, Luciana Vidal, Tarik Meziane, Jung-Hyun Kim, Marcelo C. Bernardes, Nicolas Savoye, Jonathan Deborde, Edivaldo Lima Souza, Patrick Albéric, Marcelo F. Landim de Souza & Fabio Roland
 河川から放出される二酸化炭素の量は従来考えられてきたよりも多く、陸域の生態系が固定する炭素量に匹敵する可能性が示唆されている。世界の浸水地の4分の3は一時的な湿地からなるが、そのCO2排出全体に占める寄与はよく分かっていない。
 アマゾン川における観測から、中部の氾濫原では、湿地が大量のCO2を河川水へ’供給’し、その炭素が大気へと移るまでに数10-100km輸送される可能性があることが示唆。この結果は陸水からのCO2放出のかなりの部分を一時的な氾濫源が担っている可能性を示しており、全球の炭素収支を考える上で、一時的な浸水域や植生のある浸水域をより考慮すべきことを示している。
>Natureハイライト
アマゾン湿地帯は気体二酸化炭素の放出源である

Upwash exploitation and downwash avoidance by flap phasing in ibis formation flight
トキの編隊飛行における、羽ばたきの同調による上昇気流の利用と下降気流の回避
Steven J. Portugal, Tatjana Y. Hubel, Johannes Fritz, Stefanie Heese, Daniela Trobe, Bernhard Voelkl, Stephen Hailes, Alan M. Wilson & James R. Usherwood

2014年1月9日木曜日

新着論文(Nature#7482)

Nature
Volume 505 Number 7482 pp131-254 (9 January 2014)

About the cover
オーストラリア南部やニュージーランドの200-500m深に棲息するゾウギンザメ(elephant shark; Callorhinchus milii)のゲノムが解読された。シーラカンスを含む、全脊椎動物の中でもっとも遅く進化をしていることが分かった。
>Nature ハイライト
ゆったり進化する生きもの:進化速度が最も遅い脊椎動物ゾウギンザメのゲノム塩基配列

WORLD VIEW
This was no Antarctic pleasure cruise
ちっとも楽しい南極航海ではなかった
極域調査船が南極の海氷に閉ざされて動けなくなり救出された事件ののちも、Chris Turneyは極域航海の科学的異議を擁護している。
>ナショナルジオグラフィック ニュース
南極海のロシア船救出劇、5つの教訓

RESEARCH HIGHLIGHTS
Comets hint at cosmic encounter
宇宙での遭遇について隕石がヒントを与える
Mon. Not. R. Astron. Soc. 437, 2686–2701 (2014)
原始星(Fomalhaut A)は惑星を有し、さらにそれを取り巻く、非常に明るい隕石の帯を持つことが知られている。その中にさらに2番目の帯が見つかった。おそらく2つの星が接近した際にその円盤同士が衝突することで形成されたのだと思われる。

Radar signals sinkhole to come
シンクホールからのレーダーシグナルが検出
Geology http://doi.org/qnr (2013)
ルイジアナ州において2012年に空いた直径11mのシンクホール(陥落孔)形成の前後で、周辺の地表が26cmにわたって穴に向かって動いていたことが偶然行われていたレーダー観測から捉えられた。現象が起きる前に予測が可能になるかもしれない。

SEVEN DAYS
China joins ivory-crushing campaign
中国が象牙破壊キャンペーンに参加
密猟された象牙などの密輸に関する国際的撲滅キャンペーンの一環で、中国政府は6トン以上の象牙を破壊し、世界に対して関心をアピールした。
>より詳細な記事(NATURE NEWS BLOG)
China crushes tonnes of seized ivory
Daniel Cressey
>ナショナルジオグラフィック ニュース
中国政府が象牙6トンを破壊

Asteroid ahoy!
おおい、隕石!
1/1の深夜に大西洋上で隕石が空中分解したことがアリゾナのCatalina Sky Surveyによって捉えられた。直径2-3mで、地球の大気圏で燃え尽きた。

Cold comfort
冷たい安らぎ
昨年末から南極の氷に閉ざされ立ち往生していたロシアの船Akademik Shokalskiyに乗船していた科学者・ジャーナリスト・観光客が1/2に救出された。

Fossil felony
化石の重罪
化石の小売業者John Richard Rolaterが中国とモンゴルからアメリカへと不正に化石を輸入したとして起訴された。

NEWS IN FOCUS
Many eyes on Earth
地球に向けた多くの目
Declan Butler
従来の大型人工衛星に変わる、小型の観測衛星群が地球の表層のリアルタイムの画像取得の未来を変えるかもしれない。今後数年内に24基のSkySatsが打ち上げられる予定となっている。
SkySat衛星 - 日本スペースイメージング

CORRESPONDENCE
Environment: Himalayas already have hazard network
環境:ヒマラヤは既に災害ネットッワークを有している
Yadav Uprety, Ram P. Chaudhary & Nakul Chettri
ヒマラヤ地域のモニタリングシステムは既に敷かれているが、それが効果を発揮するにはより多くの国際協力が必要とされている。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Research
ARTICLES
Elephant shark genome provides unique insights into gnathostome evolution <OPEN>
ゾウギンザメのゲノムは顎口類の進化を理解する上でユニークな知見を与える
Byrappa Venkatesh et al.
ゾウギンザメの全ゲノム解読から、かれらがこれまで知られている脊椎動物の中でもっとも遅く進化してきたこと、骨形成に決定的に重要な遺伝子が欠如していること、比類ない免疫システムを有することなどが明らかに。

LETTERS
The rarity of dust in metal-poor galaxies
金属に不足する銀河の塵の珍しさ
David B. Fisher et al.
銀河I Zw 18の観測から、銀河ヒミコ(赤方変位6.6:ビッグバンのわずか8億4000万年後)の塵の質量は太陽質量の約50,000倍であり、従来考えられていた数値の100分の1以下である可能性が示唆。

Primitive layered gabbros from fast-spreading lower oceanic crust
高速で拡大する下部海洋地殻由来の初生層状ハンレイ岩
Kathryn M. Gillis et al.
IODP Exp. 345において採取された、高速拡大海嶺の下部地殻由来のはんれい岩の構造とその成因について。
>Nature ハイライト
高速拡大海嶺における地殻形成

2014年1月2日木曜日

新着論文(Nature#7481)

Nature
Volume 505 Number 7481 pp7-126 (2 January 2014)

About the cover
SEA CHANGE
海の変化
深海サンゴの一種、ゴールドサンゴ(gold coral; Kulamanamana haumeaae)の寿命は数千年にも及び、それらの骨格には過去の海洋表層の一次生産の記録が残されている(マリンスノーとして深海に沈み、それらが深海サンゴの餌になっているため)。近年、北太平洋の亜熱帯循環においては栄養塩濃度が低下しているにもかかわらず、一次生産は増加しており、その原因として窒素固定をするプランクトンコミュニティーの組成が変化したことが挙げられている。Sherwoodほかは深海サンゴ骨格のδ15N記録から、150年前にそうした変化が既に起きていたことを示した。
>Nature ハイライト
海の変容:ハワイの黄金サンゴは小氷期以降の北太平洋での窒素急増を記録している

SEVEN DAYS
Star surveyor
星の調査員
ヨーロッパ宇宙局の星の位置や距離をこれまでにない精度で観測する計画Gaiaが12/19にフランス領ギアナからロケットを打ち上げた。
>より詳細な記事(Nature news blog)
Star-mapping mission lifts off
Elizabeth Gibney

NEWS IN FOCUS
Triple-threat method sparks hope for fusion
「3つの脅威」法が核融合に対する期待を高める
W Wayt Gibbs
核融合成功の秘訣は、「レーザー」「磁場」「締め付け」である。

Water risk as world warms
世界が温暖化することによる水のリスク
Quirin Schiermeier
総括的な国際リスク評価が初めてなされ、水の不足が世界最大の関心事であることが示された。

What to expect in 2014
2014年に何を期待すべきか
Richard Van Noorden
SPACE PROBES
宇宙探査機
 ヨーロッパ宇宙局の探査機Rosttaは11月に隕石Churyumov–Gerasimenkoに世界で初めて着陸する予定。
 火星には9月にインド初の火星周回衛星とNASAのMAVENが到達する予定。
 またNASAの火星探査機キュリオシティーはその最終目的地である標高5.5kmのAeolis山に到着し、そこでかつての水の痕跡を探す。
 さらに地球の大気中CO2濃度を観測する人工衛星(OCO)も打ち上げが期待されている。
>関連した記事(Science#6159 "News & Analysis")
Orbiting MAVEN Mission Set to Trace a Planet's History in Thin Martian Air
薄い火星の大気で惑星の過去を辿るためのMAVEN軌道ミッションが始まる
Yudhijit Bhattacharjee
今月末、NASAが火星に送ろうとしている探査機(MAVEN)は火星の大気を観測することにより、注意深く火星の数十億年間の歴史を紐解くことを目標としている。
>関連した記事(Science#6152 "News & Analysis")
India Aims a Probe at Mars—And at Earthly Prestige
インドは火星に探査機を送ろうとしている−地球の威信をかけて
Pallava Bagla
インドは来月、火星の大気中のメタン(生命存在の兆候となる)を探るための探査衛星を打ち上げる予定となっている。

RENEWABLE REVOLUTION
再生可能エネルギーの革命
半導体であるペロブスカイトは光エネルギーを電気に変換することが可能で、発電効率は15%を超え、安く作れる、大きな期待が寄せられる太陽電池である。今年は20%を超え、さらに鉛を使用しないものも創り出されるかも?

A BETTER CLIMATE
より良い気候
 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の作業部会2と3の報告書が11月までに出そろう。それらは気候変化のコスト、適応・緩和戦略を報告するものである。
 カナダのサスカチュワンにあるBoundary Dam石炭火力発電所では巨大な炭素捕獲貯留計画が世界で初めて4月から始動する予定となっている。
>関連した記事(GLOBAL CCS INSTITUTE)
カナダ総領事Jamshed Merchant氏:カナダでの経験は「CO2回収」の有効性を示している

MAKING WAVES
波を作る
宇宙背景放射に関するデータの公表。

COMMENT
Resources: Track flows to manage technology-metal supply
資源:産業金属の供給を管理するために流通を追跡する
「リサイクルではデジタル・グリーン産業で使われる貴金属類の需要を満たすことはできない」とAndrew Bloodworthは言う。より全体的なアプローチが必要とされている。

CORRESPONDENCE
Floods: Storm-surge impact depends on setting
洪水:高潮の影響はセッティングによる
Thomas Spencer, Susan M. Brooks & Iris Möller
2012年12月5-6日にかけて生じた北海の高潮は60年前の1953年の高潮(2,000人の死者を出した)よりも大きかった。しかし、予報や堤防、早期警報システムの向上もあり、被害はそれほど大きくはなかった。高潮の大きさは地域により様々で、それには地形や潮汐などが複雑に関与している。海水準上昇の危機にさらされる地域の避難計画や早期警報システムにイギリスの例から学んだ教訓が生かされるべきである。
>関連した論文(Nature#7478 SPECIALS:COASTAL REGIONS "REVIEWS")
Coastal flooding by tropical cyclones and sea-level rise
熱帯低気圧と海水準上昇による沿岸部の氾濫
Jonathan D. Woodruff, Jennifer L. Irish & Suzana J. Camargo
気候変化が台風の上陸にどのような影響を与えるかはよく分かっていない。しかしそれとは関係なしに、加速する海水準上昇は熱帯低気圧による沿岸部の氾濫を増加させると思われる。沿岸部の社会は急速な変化と共存しなければならない。人類による地盤沈下の軽減などを通して、適応戦略を取る必要がある。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
NEWS & VIEWS
Extrasolar planets: Cloudy with a chance of dustballs
系外惑星:曇り時々ダストボール
Julianne Moses
Knutson et al.とKreidberg et al.の解説記事。
中程度の大きさの2つの太陽系外惑星について、親星の前面を通過する際に観測された透過スペクトルは平らで特徴のないものだった。これらの惑星の大気の性質に関する知見が得られた。
>Nature ハイライト
2つの惑星の物語
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
系外惑星GJ 1214bの厚い雲

Archaic humans: Four makes a party
旧人類:4種類に増えてさらに賑やか
Ewan Birney & Jonathan K. Pritchard
Prüfer et al.の解説記事。
旧人類と現生人類のゲノム比較に、初めてのネアンデルタール人の質の高いゲノム塩基配列が加えられたことで、遺伝子流動・集団構造や適応についての手がかりが得られた。またこれまで知られていなかった旧人類集団の存在が示唆。

Climate science: Clouds of uncertainty
気候科学:不確実さの雲
Hideo Shiogama & Tomoo Ogura
Sherwood et al.の解説記事。
気候モデルを用いた大気の対流混合と低層雲の評価から、二酸化炭素濃度の上昇に応答して、地球の気候がこれまで考えられていたよりも温暖となる可能性が示唆された。
[以下は抜粋]
...despite technical advances and the considerable efforts of climate scientists, the range of climate sensitivities estimated by the Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC) using computer models has not narrowed since 1990, and remains at roughly 1.5–4.5 °C.

The researchers came up with three crucial findings. First, they observed that differences in mixing strength explained about half of the spread of climate sensitivities estimated by the models. Second, they found that changes in mixing strength depend on the mixing strength in simulations of the current climate, which was used as the initial value in the experiments. And third, they conclude that estimates of current mixing strength based on observations imply a climate sensitivity of more than 3 °C, which is in the upper half of the IPCC’s range of estimates.

>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
海上の雲が減ると温暖化が進む?

ARTICLES
Spread in model climate sensitivity traced to atmospheric convective mixing
大気の対流混合に起因するモデル間でばらつく気候感度
Steven C. Sherwood, Sandrine Bony & Jean-Louis Dufresne
 大気中のCO2濃度上昇に対して地球がどれほど温暖化するか(気候感度)の推定の不確実性は大きい。過去数十年間にわたって研究がなされてきたものの、その見積もりには依然として約1.5~5°Cのばらつきがあり、将来の気候の正確な予測を妨げている。
 モデル間で予測結果が食い違うことの原因の半分は、熱帯域の対流圏における下層と中層の対流混合の強さにあることが示された。その結果、予測される気候感度は3〜5℃の間にあると制約される。この気候感度は、現在受け入れられている下限値の1.5°Cよりかなり高いため、将来の温暖化が比較的厳しくなることを意味している。
>Nature ハイライト
気候モデルの不確実性を引き起こす大気混合

The complete genome sequence of a Neanderthal from the Altai Mountains
アルタイ山脈から発掘されたネアンデルタール人の完全なゲノム塩基配列
Kay Prüfer et al.
シベリアから発掘された女性のネアンデルタール人の完全なゲノム解読がなされた。彼女の両親は異母あるいは異父の兄弟姉妹レベルの血縁関係にあり、近親者同士の交配が一般的であったことが明らかに。またネアンデルタール人、デニソワ人および初期現生人類の間で遺伝子流動が何度か起こったことが明らかに。さらに未知の旧人類集団からデニソワ人への遺伝子流動が起こっていた可能性も示された。

LETTERS
Strong neutrino cooling by cycles of electron capture and β- decay in neutron star crusts
中性子星の地殻における電子捕獲とβ-崩壊のサイクルによる強いニュートリノ冷却
H. Schatz et al.

A featureless transmission spectrum for the Neptune-mass exoplanet GJ 436b
海王星質量の系外惑星GJ 436bの特徴のない透過スペクトル
Heather A. Knutson, Björn Benneke, Drake Deming & Derek Homeier

Clouds in the atmosphere of the super-Earth exoplanet GJ 1214b
スーパーアース系外惑星GJ 1214bの大気中にある雲
Laura Kreidberg et al.

Increasing subtropical North Pacific Ocean nitrogen fixation since the Little Ice Age
小氷期以降増加する亜熱帯北太平洋の窒素固定
Owen A. Sherwood, Thomas P. Guilderson, Fabian C. Batista, John T. Schiff & Matthew D. McCarthy
 海洋表層水への栄養塩供給量は減少傾向にあるものの、亜熱帯北太平洋の一次生産は増加しているという、謎めいたことが起きている。それに伴うプランクトンコミュニティーの変化が気候そのものの変動が原因か、地球温暖化が原因かはよく分かっていない。
 ハワイ周辺の400mの海底から得られた深海サンゴ骨格中のアミノ酸のδ15N分析(窒素の供給源を反映する)から、過去4,000年間の一次生産を復元。近年というよりは小氷期(AD1850年)以降のより長い傾向で、150年間に2‰減少していた。この大きさは更新世-完新世境界における変化と同程度だが、その変化率は桁違いで早い。質量収支計算から、窒素固定が17-27%増加していることが示唆。

Upper Palaeolithic Siberian genome reveals dual ancestry of Native Americans
旧石器時代後葉のシベリア人のゲノムがアメリカ先住民の2つの祖先を明らかにする
Maanasa Raghavan et al.
シベリアの南部から得られた24-17kaのネアンデルタール人のゲノム解読から、当時の人々の遺伝子が西ヨーロッパ人やアメリカ先住民とは似ているが、東アジア人とは似ていないことが示された。アメリカ先住民の起源に関する新知見が得られた。
>Nature ハイライト
ネアンデルタール人女性のゲノム塩基配列
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
米先住民の遺伝子、一部は欧州から

2013年12月19日木曜日

新着論文(Nature#7480)

Nature
Volume 504 Number 7480 pp331-476 (19 December 2013)

EDITORIALS
Sink or swim?
のるかそるか?
 土地利用変化が温暖化に与える影響を推定するには、そのモニタリング法の再考が必要である。例えばロシアの土地利用変化はソ連崩壊まではほとんどデータが公開されておらず、今も不明なものが多いが、近年の推定値は従来の推定値から大幅に異なっている。ロシアをはじめとする東ヨーロッパの土地は陸域の炭素吸収源として大きな働きを負っていると考えられているものの、データの不確実性が大きい。
 ソ連崩壊後放棄された農地は炭素の重要な吸収源として寄与している。しかし、一方で世界の食料需要は増す一方であり、農地の復活が議論されている。ただし、農地が再度耕されると炭素が二酸化炭素として大気へと放出され、温暖化に寄与すると考えられる。
[以下は抜粋]
A matter so central to predicting the rate of global warming deserves more attention. But existing remote-sensing technology offers relatively coarse observations of land cover and land-use change, which means that assessments are often little more than good guesses.

RESEARCH HIGHLIGHTS
Galactic clouds swathed in fog
霧に包まれる銀河の雲
Astrophys. J. 779, 42; 43; 44; 45; 46 (2013)
星が生まれる場である分子雲では、水素の霧が雲と相互作用をしていることが観測から明らかに。

Volcanic lightning made in the lab
実験室で作られた噴火雷
Geology http://doi.org/qfz (2013)
ドイツの研究者らは室内で火山噴火を模した噴出装置を作成し、火山噴火に伴う雷を再現することに成功した。噴火時の電荷を帯びた粒子とジェットとが雷の原因であると推測され、細かい粒子が多いほど雷がより多く発生したという。

SEVEN DAYS
※今回は省略

NEWS IN FOCUS
Seabed scars raise questions over carbon-storage plan
海底の傷が炭素貯留計画に疑問を投げかける
Richard Monastersky
北海油田の有望なCO2貯留リザーバーにて予期せぬ割れ目が発見され、リークの経路になる可能性が浮上している。

EU fishing vote foments anger
ヨーロッパの漁業に関する投票が怒りを煽る
Daniel Cressey
深海漁業を禁止できなければ、脆弱な生態系が危機にさらされるだろう、と研究者らは言う。

Quandary over Soviet croplands
ソビエトの耕作地をめぐる迷い
Quirin Schiermeier
研究者らは東ヨーロッパの放棄された土地を再度耕すか、それとも炭素吸収源として残すかを熟考している。

365 days: 2013 in review
365日間:2013年のレビュー

WAVERING ATMOSPHERE
変動する大気
水銀条約を除き、今年はほとんど環境に関する重要な条約は採択されなかった。5月には大気中のCO2濃度は400ppmに達した。温暖化の寄与率はよく分からないが、台風ハイエンは記録的な風速で破滅的な被害をもたらした。ここ15年間の地球温暖化の停滞は深海による熱吸収の可能性が指摘され、再び温暖化に転じることが予測された。
[以下は抜粋]
It was no surprise when the Intergovernmental Panel on Climate Change warned in its latest report, published in September, that climate change “unprecedented over decades to millennia” is altering natural environments in ways that could affect billions of people.

THE FINAL FRONTIER
最後のフロンティア
惑星ハンター・ケプラー宇宙望遠鏡は5月にその役割を終えるまでに3,500もの太陽系外の惑星を特定した。火星の地上探査機キュリオシティーは4.5kmを踏破した。12月には中国が月に探査機を送り込み、史上3カ国目となった。NASAのボイジャーは太陽系を脱し、星間空間へと旅立った。

OPENING UP SCIENCE
科学を開けたものに
アメリカ政府は政府によって助成を受けている研究の成果は1年以内にすべてオープンアクセス化するように取り決めた。イギリスもただちにオープンアクセス化するように決めた。

IDENTITY PUZZLES
パズルを特定する
古代のDNA分析が可能になったことにより、人類の進化史も大きく揺さぶられている。

FEATURE
365 days: Nature's 10
365日間:Natureが選んだ10人
>Natureハイライト
この1年を語る10の物語

Michel Mayor
彼の研究チームが発見した系外惑星Kepler-78bはこれまでに見つかったなかでもっとも地球に似た惑星である。

Naderev Saño
ワルシャワにおける国連の気候変動枠組み会議の場で、世界の注目を集めたフィリピンの外交官。奇しくも会議中に母国フィリピンが超巨大台風ハイエンに襲われた。
[以下は抜粋]
The pace of international progress on global warming has been glacial. Despite more than two decades of negotiations, atmospheric carbon dioxide levels have continued to rise; in May, the daily average concentration topped 400 parts per million for the first time in Hawaii, where the longest-running record is kept.

Looking back, Saño is not sure what impact his speech had, but he argues that Typhoon Haiyan helped to put the international spotlight squarely on the climate issue.

Having done graduate work on climate and disaster response himself, he knows that scientists shy away from attributing any single weather event to global warming. But there is general agreement that warming oceans will fuel more energetic storms, he says, and extreme storms resonate in a way that scientific charts cannot.

Viktor Grokhovsky
今世紀最大の隕石衝突であったチェリヤビンスクの隕石を回収したロシアの学者。

Henry Snaith
ペロブスカイトを利用した太陽電池を開発した若干35歳のオクスフォード大の天才。

Ones to watch in 2014
2014年に注目すべき人たち
Chris Field
気候変化に関する政府間パネルの次の報告書の副議長。

Koppillil Radhakrishnan
インド初となる火星探査ミッションの責任者。

COMMENT
Conservation: The Endangered Species Act at 40
保全:絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律の制定から40年
アメリカ合衆国が1973年に制定した法律が「40年」という記念の年を迎えた。4人の専門家がこれまでの歩みと今後必要な変更をレビュー。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
NEWS & VIEWS
Earth science: Erosion by cooling
地球科学:冷却による浸食
David Lundbek Egholm
Herman et al.の解説記事。
 地質学的過去の大陸の浸食を推定することは難しく、どのようにプレートテクトニクス・気候・地形が相互作用しているのかはよく分からないことが多い。600万年前に地球は寒冷化し始め、260万年前に始まる第四紀には極に氷床が形成され始めた。第四紀には海底に溜まる堆積物量が飛躍的に増加したことが知られているものの、推定法に偏りがないかといった批判がなされている。
 岩石の閉塞温度(closure temperature)を利用することで、全球の浸食速度の推定がなされた。その結果は、地球が寒冷化するとともに浸食速度が加速していたことを示していた。特に過去200万年間の中緯度域(30〜50º)の変化が著しく、おそらく氷河作用が原因と考えられている。ただし彼らの推定法は活発なテクトニクス的隆起と早い浸食が起きる地域にのみ適用できる方法であるため、長く議論されている「浸食を支配するするのは気候であるかテクトニクスであるか」という問題については決着はつかないままである。彼らの結果は「気候が浸食を支配する」という説明を裏付けている。

Space physics: A fast lane in the magnetosphere
宇宙物理学:磁気圏の追い越し車線
Mary K. Hudson
Thorne et al.の解説記事。
衛星観測とモデリングから、磁気圏での電子の加速に関する新知見が得られた。

LETTERS
Rapid local acceleration of relativistic radiation-belt electrons by magnetospheric chorus
磁気圏コーラスによる相対論的な放射線帯電子の急速な局所的加速
R. M. Thorne et al.
>Natureハイライト
磁気嵐の局所機構

Worldwide acceleration of mountain erosion under a cooling climate
寒冷化する気候のもとでの山脈の浸食の全球的な加速
Frédéric Herman, Diane Seward, Pierre G. Valla, Andrew Carter, Barry Kohn, Sean D. Willett & Todd A. Ehlers
 新生代の浸食速度の推定は堆積速度に大きく依存しており、テクトニクス的プロセスと気候とがそれぞれどの程度浸食に影響したかは不確かなままである。
 岩石の熱履歴を利用し、大陸の浸食速度の推定。600万年前に山脈の浸食速度が増加し、その後200万年前に急速に増加したことが示された。浸食速度は全緯度で増加しており、特に山岳部で顕著に増加していた。従って、新生代の浸食速度の増大は全球の寒冷化が原因であることが示唆。
>Natureハイライト
寒冷化した気候が山を動かす

2013年12月12日木曜日

新着論文(Nature#7479)

Nature
Volume 504 Number 7479 pp187-324 (12 December 2013)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Bees are better for strawberries
ハチはイチゴにとっても良い
Proc. R. Soc. B http://doi.org/ qcg (2013)
ハチによる受粉は実のなりを良くするだけでなく、イチゴに関しては味も良くするらしい。自身による受粉をしたイチゴと風やハチによる受粉をしたイチゴとを比較したところ、後者の方が重く、赤く、寿命が長く、より望ましい糖分/酸比をもった実がなることが分かった。ホルモンに影響することが原因と考えられている。

Melting ice spurs wild weather
氷の融解が野性的な天気を加速する
Nature Clim. Change http://doi.org/qds (2013)
中国の気象学者らは、気象記録と最近の北極海の海氷や雪の記録とを比較したところ、北極の海氷後退に伴い、大気循環パターンに変化が見られることを見つけた。例えば、ジェット気流がより北側にシフトしていることなど。こうした変化が2012年のアメリカで見られたような、北半球中緯度域の夏の異常気象の原因になっていると示唆している。
>話題の論文
Extreme summer weather in northern mid-latitudes linked to a vanishing cryosphere
消えつつある雪氷圏と関連した北半球中緯度の極端な夏の気象
Qiuhong Tang, Xuejun Zhang & Jennifer A. Francis
 過去10年間には前例のない夏の気象イベントの発生数が異常に多かった。同時に北極圏の海氷も急速に後退しているが、その因果関係については不確かなままである。
 人工衛星による北極圏の雪と海氷の被覆度の観測記録と、大気循環の逆解析記録から、それらの間に相互作用があることが確認された。特に海氷の影響が、消失の範囲は雪の2分の1であるにもかかわらず大きいことも分かった。ジェット気流がより北方に位置していることが、気象配置の固定の期間を長くし、極端な気象現象の発生確率を高めていると推定されている。
>Nature姉妹紙 ハイライト
高緯度域の雪と氷の減少が中緯度域の熱波と結び付いている

Trio of distant quasars found
遠くにある3つ子のクエーサーが見つかった
Astrophys. J. 779, 24 (2013)
ヨーロッパのVIKING望遠鏡による調査から、活発な銀河の中心部にある3つのクエーサーが確認された。太陽質量の10億倍の質量を持ったブラックホールが中心にあると推定されており、ビッグバンからの宇宙の進化を知る手助けになるかもしれないという。
※クエーサーは宇宙誕生後10億年も経たないうちにでき始め、宇宙が20億~30億歳の頃に最も形成された天体。

Satellite improves storm forecasts
人工衛星が嵐の予測を改善する
J. Geophys. Res. Atm. 118, 11558–11576 (2013)
ハリケーンの予測には通常気象衛星によるリアルタイムのデータは使用されないが、フロリダ州立大の研究グループらはSuomi NPP衛星による気温と湿度のデータを利用したところ、サンディーをはじめとする2012年の4つのハリケーンの軌跡と強度の予測精度が増したことが示された。

Ancient reptiles stuck to the air
古代の爬虫類は空中に留まっていた
Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. http://doi.org/qcf (2013)
翼竜(プテロサウルスなど)は6,500万年前に絶滅したが、かつての海や湖で堆積した化石記録から、彼らはほとんどの時間を水の上では過ごしていなかったことが示された。恐竜の骨の密度や骨格の形状などをもとに彼らが水に浮かぶことができたかどうか(floating- pterosaur hypothesis)をシミュレーションしたところ、あまりに不格好な状態でしか浮かべなかったことが分かった。従って、あまりに多くの時間を水面で過ごすと危険が増したであろうことを示唆している。

Gas production contaminates water
ガス生産が水を汚染する
Environ. Sci. Technol. 47, 11849−11857 (2013)
ペンシルベニア州西部の石油・ガス生産所では、そこで発生した汚染水は浄化施設で処理されたのちに河川に流されている。しかしMarcellusシェールガス施設の浄化後の水を分析したところ、塩化物や臭化物と言った物質は浄化前よりも濃度が増していることが確認された。さらに処理施設周辺の堆積物中のラジウム放射能はバックグラウンドの200倍の高さで、規制値を上回っていた。排水が放出されるところに放射性物質が蓄積していることを示しており、さらなる汚染を防ぐための措置が必要とされている。

SEVEN DAYS
Palm-oil pledge
パーム油の誓約
シンガポールに籍を置く世界最大の農業企業Wilmar Internationalは森林破壊を伴うパーム油の生産または買い付けを今後一切行わないことを宣言した。

Saturn’s six-sided storm
土星の六角形の嵐
土星の北極に、1辺3万kmの六角形の巨大なジェット気流のパターンが発生し、NASAによる高解像度の動画が公開された。時速320kmの強烈な風が吹く姿がカッシーニによって撮影された。
>You Tube(動画)
Saturn's Unique Hexagon in Full View
Planetary hole
惑星の穴
NASAの惑星科学部門の予算の再編によって、太陽系部門は2015年まで予算の申請をできないことになり、苦しんでいる。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
NASA funding shuffle alarms planetary scientists
Alexandra Witze

NEWS IN FOCUS
Fungus threatens top banana
真菌類がバナナを脅かす
Declan Butler
アフリカや中東で重要作物に破壊的な病気が進行するにつれ、ラテンアメリカの産業にも危機が迫っている。

Florida forecasts sinkhole burden
フロリダが陥落孔の負担を予測する
Alexandra Witze
炭酸塩の基盤の地下水による浸食などが原因で起きる、陥落孔(sinkhole)のハザードマップ作成に予測モデルが使えるかもしれない。

Food fuelled with fungi
真菌類によって助けられる食料
Nicola Jones
微生物の力を借りて作物をより強くする試みに対して、生態学者が評価を高めつつある。

India faces uphill battle on biodiversity
インドは生物多様性に関するやっかいな問題に直面している
T V Padma
生物種が豊かな山の保護を制限するようなインド政府の決定が、環境保護運動家を怒らせている。

Life possible in the early Universe
初期宇宙でも可能だった生命
Zeeya Merali
最初の星を周回する惑星もまた生命存在は可能だったかもしれないことが理論計算から明らかに。ビッグバンからわずか1,500万年後でも液体の水は存在した可能性があるという。

FEATURES
Earth science: Under the volcano
地球科学:火山の下で
Alexandra Witze
地球物理学者らはマントルプリュームの証拠を求めて全球を探しまわっている。それはメガ噴火の原因と推定されているものである。

CORRESPONDENCE
Marine infrastructure: NSF fleet vital for ocean science
海洋インフラ:海洋科学にとって必要不可欠なアメリカ科学財団の船団
Peter B. Ortner

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
NEWS & VIEWS
Extrasolar planets: Inner edge of the habitable zone
系外惑星:生命存在可能領域の内側の端
James F. Kasting & Chester E. Harman
Leconte et al.の解説記事。
太陽に似た星で、生命存在可能領域内に岩石惑星を有しているものの割合は、以前に推定されていたよりも少ない可能性が、三次元の気候モデルから示唆されている。

Astrophysics: Tracking our neighbours' past
宇宙物理学:我々の隣人の過去を辿る
Alan McConnachie
アンドロメダ銀河や天の川銀河周辺にある矮小銀河の集団動作は、理論に疑問を投げかけてきた。はるかな過去の銀河群間の相互作用が、こうした矮小銀河に影響を残しているのかもしれない。

REVIEW
An archaeal origin of eukaryotes supports only two primary domains of life
真核生物が古細菌起源であることは生物の基本的なドメインが2つだけだとする説を裏付ける
Tom A. Williams, Peter G. Foster, Cymon J. Cox & T. Martin Embley
これまで生命の樹は古細菌・真核生物・バクテリアの3つから成ると考えられ支持されてきたが、「真核生物は古細菌由来である」という証拠が蓄積するにつれて、「古細菌とバクテリア」という2つの界からなる生命の樹の猫像が生まれつつある。

LETTERS
Baryons in the relativistic jets of the stellar-mass black-hole candidate 4U 1630-47
恒星質量のブラックホール候補天体4U 1630-47の相対論的ジェットにおけるバリオン物質
María Díaz Trigo, James C. A. Miller-Jones, Simone Migliari, Jess W. Broderick & Tasso Tzioumis
ブラックホールの候補の一つ、X線連星系4U 1630-47から高速噴出されるジェットの放射とともに現れる、イオン化した原子のドップラーシフトの観測から、ジェットが光速の3分の2の速度で起きており、ジェットの中にはバリオンが含まれていることが示唆されている。

Increased insolation threshold for runaway greenhouse processes on Earth-like planets
地球上惑星における暴走温暖化過程の増加した日射閾値
Jérémy Leconte, Francois Forget, Benjamin Charnay, Robin Wordsworth & Alizée Pottier
3次元の気候モデルから、惑星から海がなくなるには、従来考えられていたよりも高い日射状態で、完全蒸発(complete vaporization)または蒸発散逸(evaporative escape)が必要となる可能性が示唆。大気の安定化作用が原因と思われる。
>Nature ハイライト
「暴走温室効果」が起こるのはもっと先のようだ

2013年12月5日木曜日

新着論文(Nature#7478)

Nature
Volume 504 Number 7478 pp7-182 (5 December 2013)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Clues to extinction in lava gases
溶岩のガスの中に見つかった絶滅のヒント
Geology http://doi.org/p7s (2013)
2億5300万年前のペルム紀末の絶滅イベントはシベリアにおける巨大な火山噴火を伴っていたことが知られている。しかしその因果関係についてはまだはっきりと分かっていない。シベリアの溶岩の中のガスの分析結果とモデルシミュレーションを組み合わせることで、CO2やSO2といった酸性ガスが強烈な酸性雨を降らせ、さらにクロロメタンがオゾン層を破壊したことが絶滅に寄与した可能性が示唆。

Sharks never forget home
サメは故郷を決して忘れない
Mol. Ecol. http://doi.org/p78 (2013)
1995年から2012年にかけてバハマで行われたレモンザメ(lemon sharks; Negaprion brevirostris)のDNAの分析から、1993-1998年の間に生まれたメスのサメが出産のために生まれた地へ戻っていたことが分かった。サメでそうした里帰りの例が示されたのは初だという。ある特定の出産地があるらしく、そうした地域は漁業禁止区域に設定するなど、保全に向けた努力が必要となる。

SEVEN DAYS
Death of a comet
隕石の死
アイソン彗星は11/28に太陽の近くをかすめた際に分解し、その塵の雲だけを残して消え去ったと思われる。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Remnants suggest comet ISON still going
Alexandra Witze

On track to Mars
火星への道の途上
インドによる火星探査機(Mangalyaan)が地球の軌道を脱した。300日間かけて火星に到達し、成功すればインド初の惑星横断探査機となる。

X-ray vision
X線の目
ヨーロッパ宇宙局の次のミッションの中心はX線宇宙望遠鏡となることが11/28に公表された。ブラックホールや星間ガスの観測に用いられる。その後、2034年までの次の巨大ミッションは重力波の宇宙観測になると予定されている。
>より詳細な記事(Nature NEWS BLOG)
X-ray observatory confirmed as ESA’s next big mission
Elizabeth Gibney

China Moon rover
中国の月探査機
中国が初の月の地上探査機の打ち上げを行った。探査機を搭載したロケット(Chang’e 3)は中国南西部のXichang衛星打ち上げセンターより12/2に打ち上がった。

NEWS IN FOCUS
Hominin DNA baffles experts
ヒトのDNAが専門家を悩ませる
Ewen Callaway
ヒトの祖先のこれまでで最も古いDNAシーケンス分析から、謎めいた集団へのリンクが示唆。

FEATURES
North America's broken heart
北アメリカの壊れた心臓
Jessica Marshall
10億年前の隆起によって、北米大陸の中央部は割られかけた。その原因の解明がまもなくなされるかもしれない。

COMMENT
Lunar conspiracies
月の陰謀
「現在の月の形成理論はあまりに宇宙で起きた偶然に頼りすぎている」とRobin Canupは言う。彼女はより良いモデルと火星の探査ミッションの必要性を主張する。

CORRESPONDENCE
Take more care over glacier facts
氷河の事実にもっと細かい注意を
Alex S. Gardner
2010年にはIPCCが氷河ゲート事件(glaciergate)を起こしたが、気候変化が氷河に与える影響の評価には大きな誤差が伴うことをよりよく理解しなければならない。

Recycle waste for nourishing soils
土壌を豊かにするためにゴミをリサイクルせよ
Johannes Lehmann

FUTURES
Planetary defences
地球防御
S. R. Algernon

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
SPECIALS "COASTAL REGIONS"
特集:沿岸域

INTRODUCTION
Coastal regions
沿岸域
Juliane Mossinger, Michael White & Patrick Goymer
 沿岸部には多くの人が住んでおり、人々は沿岸部の生態系サービスからあらゆる恩恵を受けている。近年の地球温暖化とそれに伴う海水準上昇、さらにはダム建設や地下水の過剰揚水などが沿岸部の経済・生態系を脅かしている。
 この特集では沿岸研究に関する現在の科学的課題を浮き彫りにし、より良く沿岸部の脆弱性を理解する必要があることを強調する。

REVIEWS
North Atlantic warming and the retreat of Greenland's outlet glaciers
北大西洋の温暖化とグリーンランドの溢流氷河の後退
Fiammetta Straneo & Patrick Heimbach
 過去20年間の間にグリーンランド氷床の質量損失は4倍に増加し、全球の海水準上昇の4分の1に寄与していると考えられている。海水準よりも低いところの氷の融解がグリーンランドの溢流氷河の後退を招いていると考えられているものの、物理的プロセスの理解は不足している。1950年以降、「大気循環の変化」「海洋の数十年規模変動」「表層水の熱容量の長期的増加」のすべてが北大西洋の温暖化に寄与しており、氷河の融解を促進していると考えられる。

Coastal flooding by tropical cyclones and sea-level rise
熱帯低気圧と海水準上昇による沿岸部の氾濫
Jonathan D. Woodruff, Jennifer L. Irish & Suzana J. Camargo
気候変化が台風の上陸にどのような影響を与えるかはよく分かっていない。しかしそれとは関係なしに、加速する海水準上昇は熱帯低気圧による沿岸部の氾濫を増加させると思われる。沿岸部の社会は急速な変化と共存しなければならない。人類による地盤沈下の軽減などを通して、適応戦略を取る必要がある。

Tidal wetland stability in the face of human impacts and sea-level rise
人類影響と海水準上昇の下の干潟の安定性
Matthew L. Kirwan & J. Patrick Megonigal
人間は湿地の生態系サービスに影響を与え、またそれに依存して暮らしている。沿岸部の湿地は海水準上昇に脆弱であると長く考えられてきたものの、近年植物の成長や地形変化などによってある程度の耐性がある可能性も示唆されている。気候変化・栄養塩流入・堆積物供給・地盤沈下などの様々な要因が影響し、そのフィードバックには人間活動が大きく関与している。

The changing carbon cycle of the coastal ocean
沿岸部の海の変化しつつある炭素循環
James E. Bauer, Wei-Jun Cai, Peter A. Raymond, Thomas S. Bianchi, Charles S. Hopkinson & Pierre A. G. Regnier
沿岸部は全球のダイナミックに変動する炭素循環の重要な構成要素の一つである。しかし、その多様な炭素の吸収源・放出源としての振る舞いと複雑な相互作用とはあまりよく理解されていない。近年、産業革命以降の沿岸部は炭素の”吸収源”として寄与している証拠が得られつつある。将来の沿岸部の炭素循環には依然として人間活動の影響が大きいと思われる。

Offshore fresh groundwater reserves as a global phenomenon
全球的な現象としての沖の淡水地下水貯蔵庫
Vincent E.A. Post, Jacobus Groen, Henk Kooi, Mark Person, Shemin Ge & W. Mike Edmunds
大陸棚の地下には低塩分の地下水が大量にあることが知られているが、陸水の海への流入だけでは単純に説明が出来ない。大陸棚水文学の研究は堆積学・海洋地球化学を代表とする他の学術領域の発展にも寄与すると思われる。

PERSPECTIVES
Ecosystem-based coastal defence in the face of global change
全球の変化の運命の下での生態系に基づいた沿岸防護
Stijn Temmerman, Patrick Meire, Tjeerd J. Bouma, Peter M. J. Herman, Tom Ysebaert & Huib J. De Vriend
多くの沿岸域で、これまでに行われてきたような海岸堤防の建設などが持続不可能になりつつある。生態系を利用した海岸の氾濫からの保護がより持続的で、低コストで、生態的に優しい手段であることを示す。さらにそれは全球的なスケールで採用することが可能なものでもある。

Green and golden seaweed tides on the rise
緑と金の海藻の打ち上げが増加傾向に
Victor Smetacek & Adriana Zingone
世界の至る所で海草類の大量の打ち上げが増加していることが報告されている。それらの腐敗は沿岸部を窒息させ、観光・漁業にも悪影響を及ぼす。沿岸部の富栄養化が原因であることは疑いもないが、個々のイベントの原因は複雑であり、その軽減に向けた研究が必要とされている。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
Planetary science: Shadows cast on Moon's origin
惑星科学:月の起源に投げかけられる影
Tim Elliott & Sarah T. Stewart
新たな観測とモデルシミュレーションの出現によって、月の形成理論に次々と課題が投げかけられている。地球化学的・初期動力学的視点から2人の専門家が現在の知識をレビューする。
>Natureハイライト
月をリメークする:現在の月形成理論は不十分であることが分かり、新しいモデルが求められている

Astrophysics: Magnetic fields in γ-ray bursts
天文学:γ線バースト中の磁場
Maxim Lyutikov
Mundell et al.の解説記事。

LETTERS
Highly polarized light from stable ordered magnetic fields in GRB 120308A
GRB 120308Aの安定で秩序立った磁場からの大きく偏光した光
C. G. Mundell, D. Kopač, D. M. Arnold, I. A. Steele, A. Gomboc, S. Kobayashi, R. M. Harrison, R. J. Smith, C. Guidorzi, F. J. Virgili, A. Melandri & J. Japelj
>Natureハイライト
γ線バースターからの最初の光

Olivine in an unexpected location on Vesta’s surface
ヴェスタの表面のある場所にある予期せぬかんらん岩
E. Ammannito, M. C. De Sanctis, E. Palomba, A. Longobardo, D. W. Mittlefehldt, H. Y. McSween, S. Marchi, M. T. Capria, F. Capaccioni, A. Frigeri, C. M. Pieters, O. Ruesch, F. Tosi, F. Zambon, F. Carraro, S. Fonte, H. Hiesinger, G. Magni, L. A. McFadden, C. A. Raymond, C. T. Russell & J. M. Sunshine
小惑星ヴェスタの南極にはマントル起源のかんらん岩が存在することが期待されていたが、NASAのDawn探査機のデータはそれとは反対に、北極の亜表層にかんらん岩が存在することを示している。
>Natureハイライト
ベスタの意外な場所で発見されたカンラン石

Late-twentieth-century emergence of the El Niño propagation asymmetry and future projections
エルニーニョの伝播の非対称性の20世紀末の出現と将来予測
Agus Santoso, Shayne McGregor, Fei-Fei Jin, Wenju Cai, Matthew H. England, Soon-Il An, Michael J. McPhaden & Eric Guilyardi
エルニーニョ・南方振動(ENSO)は全球の気候にも影響を与える数年スケールの内部振動である。その現象の東西伝播はあるときは西向き、あるときは東向きであり、その伝播の非対称性の原因はこれまでのところ解明されていない。
 赤道太平洋上の西向きの海流が弱い時に伝播の非対称性が生じやすいことが明らかに。それは温暖化した気候の際に起こると予測されているものである。モデルのアンサンブル・シミュレーションから、将来温暖化した世界では東向きの伝播が2倍になることが示唆。伝播非対称性のより頻繁な出現は、地球の気候温暖化の証拠となるかもしれない。
>Natureハイライト
太平洋赤道海流とエルニーニョ/ラニーニャの非対称性

Foundering of lower island-arc crust as an explanation for the origin of the continental Moho
大陸モホ面の起源を説明する島弧下部地殻の沈下
Oliver Jagoutz & Mark D. Behn

2013年11月28日木曜日

新着論文(Nature#7477)

Nature
Volume 503 Number 7477 pp437-562 (28 November 2013)

EDITORIALS
Nailing fingerprints in the stars
星の中の証拠を突き止める
最新鋭の宇宙望遠鏡によるスペクトル・データが急増していることを補うためにも、室内実験が強く必要とされている。

WORLD VIEW
Football fever could be a dose of dengue
サッカー熱はデング熱かもしれない
「来年のブラジルワールドカップを観戦するファンは、大変で、治療ができない熱帯病に侵される可能性がある」とSimon Hayは警告する。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Crusty alga uncovers sea-ice loss
固い藻類が海氷の消失を明らかにする
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/p6g (2013)
木の年輪のように、北極海の藻類は過去の気候記録を保存している。Clathromorphum compactumの年輪の厚さとMg/Ca(温度や光量に関係していると考えられる)から得られた646年間にわたる過去の温度記録から、最近のカナダ北極圏の海氷量は過去150年間で劇的に減少し、646年で最低の値となっていることが示された。現在、人工衛星によって海氷のモニタリングが行われているが、それはたかだか1970年代までしか遡れない。この大発見は、北極海の海氷の復元に新たな道を切り開くものとなると期待される。
>話題の論文
Arctic sea-ice decline archived by multicentury annual-resolution record from crustose coralline algal proxy
Jochen Halfar, Walter H. Adey, Andreas Kronz, Steffen Hetzinger, Evan Edinger, and William W. Fitzhugh

Dung reveals goats’ last days
糞がヤギの最後の日を明らかに
Quat. Res. http://doi.org/p6b (2013)
スペインのバレアレス諸島に生息していた山ヤギは人類が5,000年前にこの島に到達してすぐに姿を消した。研究者の中にはそれが人類による狩りのせいだと考えるものもいたが、ヤギの化石化した糞の中の植物のDNA分析から、当時ヤギが低木の一種(Buxus balearica)に依存しており、その低木が4,000-5,000年前の乾燥化によって急速に減少していたことが示された。したがって、気候の変化がヤギの絶滅の原因だったと考えられる。

Mother frogs arm their tadpoles
母ガエルが子供を武装化する
Ecology http://doi.org/p59 (2013)
毒を持った生物の中には食料からその毒を創り出すものが多く知られているが、イチゴドクガエル(strawberry poison frog; Oophaga pumilio)は、無精卵を子に食べさせることで、アルカロイド系の物質を供給していることが明らかに。親はアルカロイドを蟻やダニなどから得ているらしい。他の種のカエルの無精卵で育てられた子ガエルは化学的な防御力が不足することも分かった。

Anatomy of an ice shelf’s demise
棚氷の消失の解剖学
Geophys. Res. Lett. http://doi. org/p6c (2013)
2012年3月の南極ラーセンB棚氷の急激な崩壊は数千の小さな氷河湖からの排水の急激な増加が原因だった可能性がある。南極半島には3,000個ほどの液体の水を擁する小さな湖があったが、崩壊の数日前に急速に姿を消した。モデルシミュレーションから、ある一つの湖の排水によって生じた割れ目が連鎖反応によって次々と他の湖の排水を促したことが再現された。

SEVEN DAYS
UN climate talks
国連の気候の話
11/23の国連気候サミットにて森林の保全に関するランドマーク的な同意が得られた。貧困国の気候変化の支出を助けるための’損失とダメージ’メカニズムも新たに創り出された。2015年のパリでの新たな気候条約のサインに向けた進展はほとんどなかったが、各国は2015年の始めには公約を公表することに同意している。
>より詳細な記事(NATURE NEWS BLOG)
UN climate talks conclude with a whimper, and a new forest policy
Jeff Tollefson

Science ship boost
科学調査船の後援
アメリカ科学財団は今後5年間にわたって、掘削船ジョイデス・レゾリューション号に対する2億5千万ドルの助成を獲得した。さらに国際パートナーシップによって8,750万ドルが得られる予定。
>より詳細な記事(NATURE NEWS BLOG)
US ocean drilling ship gets a new lease on life
Alexandra Witze

Eruption raises Japanese island
噴火が日本の島を生み出す
海底火山の噴火によって、日本の1,000km南の太平洋に新たな島ができた。日本列島を含む環太平洋造山帯は火山活動が非常に活発で、以前にも日本の近くに小さな島が出現したことがある(波で浸食されてしまった)。ちょっと前にはパキスタンの沖にも泥火山による島が出現した。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
小笠原諸島、西之島沖に“新島”

Solar sensor launch
太陽センサーの打ち上げ
Total Solar Irradiance Calibration Transfer Experiment (TCTE)が11/19にNASAによって打ち上げられた。太陽が気候に与える影響などを評価する。10年以上にわたって似たミッションを続けてきたSolar Radiation and Climate Experimentの仕事を引き継ぐ。

Swarm takes flight
群れが打ち上がる
ヨーロッパ宇宙局が地球の磁場観測を行うための3つの衛星を11/22に打ち上げた。これまでにない精度で磁場の時空間変動が観測される。
>より詳細な記事(Nature NEWS BLOG)
ESA’s Swarm mission launches successfully
Quirin Schiermeier
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Mission to map Earth's magnetic field readies for take-off
Quirin Schiermeier

NEWS IN FOCUS
China aims for the Moon
中国が月を目指す
Alexandra Witze
中国による月の探査機の打ち上げ計画について。

China battles army of invaders
中国が外来種の軍隊と戦う
Jane Qiu

Nations fight back on ivory
国家が象牙を守る
Daniel Cressey
象牙の押収数が過去最大となったことを受け、政治家たちはアフリカの象の密猟への対処を始めた。

CORRESPONDENCE
Mitigate damage risk from bush fires
野火からのリスクを軽減せよ
Katharine Haynes, Deanne Bird & John McAneney

OBITUARY
George Herbig (1920–2013)
Bo Reipurth
若い星のパイオニア的研究を行った天文学者の哀悼

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
NEWS & VIEWS
Ecology: A leak in the loop
生態学:ループのほころび
Katharine N. Suding
Yelenik & D’Antonioの解説記事。
外来種のイネ科植物の侵入を受けている森林地帯では、正・負のフィードバックの性質がシフトすることが分かった。自然の生態系を管理することの複雑さが浮き彫りに。

Planetary science: A chunk of ancient Mars
惑星科学:古代火星のひとかけら
Harry Y. McSween
Humayun et al.の解説記事。
便宜上、NWA 7533という名が与えられた北西アフリカで見つかった隕石の解析から、これが火星のレゴリス(土壌)の初の試料であることが明らかに。これまで見つかった中で最古の、火成岩地殻に由来するものとなった。

Astrophysics: Exception tests the rules
宇宙物理学:例外が規則を検証する
K. D. Kuntz
Liu et al.の解説記事。
間欠的に明るくなるX線源の詳細な観測から、その放射が、以前に考えられていたように中程度の質量を持ったブラックホールへの質量降着からエネルギーを得ている可能性が低いことが示された。

LETTERS
Puzzling accretion onto a black hole in the ultraluminous X-ray source M 101 ULX-1
超高輝度X線源M 101 ULX-1におけるブラックホールへの不可解な降着
Ji-Feng Liu, Joel N. Bregman, Yu Bai, Stephen Justham & Paul Crowther
>Natureハイライト
降着がエネルギーを供給する超高輝度X線源

Origin and age of the earliest Martian crust from meteorite NWA 7533
NWA 7533隕石から明らかになる火星の最も初期の地殻の起源と年代
M. Humayun, A. Nemchin, B. Zanda, R. H. Hewins, M. Grange, A. Kennedy, J.-P. Lorand, C. Göpel, C. Fieni, S. Pont & D. Deldicque
NWA 7533隕石は火星のレゴリス起源である可能性がある。もしそうなら、火星ではその歴史の最初の1億年間に地殻が形成されたことになる。
>Natureハイライト
火星高地から来たことの「石のように硬い」証拠

Self-reinforcing impacts of plant invasions change over time
植物侵入の自己増強的な影響は時とともに変化する
Stephanie G. Yelenik & Carla M. D’Antonio
>Natureハイライト
侵入種の交代

2013年11月24日日曜日

新着論文(Nature#7476)

Nature
Volume 503 Number 7476 pp311-432 (21 November 2013)

EDITORIALS
Climate negotiations soldier on

気候交渉が困難に持ちこたえる
ワルシャワにおいて行われている国連の気候変化に関する会議の中で、各国は排出削減に対して様々な態度を示している。日本は削減の約束を取り下げ、オーストラリアは自国の炭素税を無効にしようとしている。
[以下は抜粋]
Japan’s announcement was not entirely surprising, given the shutdown of its nuclear industry following the 2011 tsunami and the resulting nuclear disaster at Fukushima. At times it has been a struggle to keep the lights on. Regardless of the course that Japan ultimately takes with regard to nuclear power, however, the country cannot simply abdicate from its climate responsibilities. Whereas Japan had previously committed to reduce emissions to 25% below 1990 levels by 2020, its new commitment would allow emissions to rise by 3.1%. An analysis by an international team of scientists that produces the Climate Action Tracker suggests that Japan could still reduce emissions by at least 17% below 1990 levels if it simply replaced all the missing nuclear power with its current blend of fossil fuels. By this measure, Fukushima is more an excuse than a justification.

Collective action is needed, both to reduce global emissions and to reassure individual countries that their pain will not be in vain.

It should go without saying that an expansion of coal-fired power, regardless of efficiency, will not protect the climate unless coupled with —currently unavailable — technologies that enable carbon to be economically captured and buried.

Each of these cases reflects the serious challenges ahead, but there is also reason for hope. Carbon emissions fell in the United States and Europe again last year, and the rate of growth in China dropped sharply as well. Globally, carbon emissions increased by just 1.1% in 2012 compared with an average annual growth of nearly 3% over the past decade.

The temptation to abandon the effort and drift back into business-as-usual will always be there.

>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
石炭依存と環境保護に揺れるポーランド

The new zoo
新たな動物園
異議は続いているものの、新たな生物名の国際的な表記法が歓迎されようとしている。

Space spectacular
宇宙の壮大さ
Nature誌はめったに映画のレビューをしないが、それにしてもGravity(ゼロ・グラビティー)は本当に素晴らしい。

WORLD VIEW
Thrill of space exploration is a universal constant
宇宙探査のスリルはユニバーサルな定数だ
映画Gravity(ゼロ・グラビティー)の中でSandra Bullockは普通の女性を演じているが、Colin Macilwainに「いかに科学と発見が依然として知的好奇心に満ちたものであるか」を思い出させる。
※Colin Macilwainは国際科学政策に関するコラムをNature誌に定期的に掲載している。

RESEARCH HIGHLIGHTS
Nutrient threat of seafood farms
魚介類牧場の栄養塩の脅威
Environ. Res. Lett. 8, 044026 (2013)
国連の世界の栽培漁業に関するデータの解析から、窒素やリンといった栄養塩類が沿岸部の栽培漁業から流出する量が見積もられた。ほとんどの栄養塩類は河川から流入しているが、近年栽培漁業からの栄養塩流出が増えているという。

Teeth nibble away at invasion theory
歯が侵入理論を少しずつ齧る
J. Arch. Sci. http://doi.org/p4j (2013)
5世紀のヨーロッパにおいてはアングロサクソン族が土着の人々を排したと考えられてきたが、古代人の歯の同位体分析によって彼らが何を食べていたかを明らかにした研究が、その侵入理論を脅かしている。その研究によれば、アングロサクソン族は次第に土地に馴染んでいったことが示唆される。

Fish babies bigger in toxic waters
魚の子供は毒された水の中では大きくなる
Ecol. Lett. http://doi.org/p5h (2013)
グッピーなどを含む9種の魚を対象にした実験から、硫黄の湧き水が魚の受精率には直接的には影響していないが、その代わりにより大きく、より少ない子孫を生むことに繋がっていることが示された。身体が大きいほど毒を体外に排出しやすいことが原因と考えられる。

SEVEN DAYS
Fukushima fuel
フクシマの燃料
東京電力は福島第一原発の燃料棒の取り出しを開始した。施設は地震では直接的にはダメージを受けなかったものの、落下物によって燃料棒を施設内に恒久的に保管することが不可能になったためである。

MAVEN launch
MAVENの打ち上げ
NASAの火星軌道周回衛星MAVENが11/18にケープ・カナベルから打ち上げられた。
>関連した記事(Nature#7475 “NEWS IN FOCUS”)
Mars mission set for launch
火星のミッションが打ち上げ準備に
Alexandra Witze
NASAのMAVEN探査機は火星にはもうほとんどない大気の謎を解き明かすことを目的としている。
>関連した記事(Science#6159 "News & Analysis")
Orbiting MAVEN Mission Set to Trace a Planet's History in Thin Martian Air
薄い火星の大気で惑星の過去を辿るためのMAVEN軌道ミッションが始まる
Yudhijit Bhattacharjee
今月末、NASAが火星に送ろうとしている探査機(MAVEN)は火星の大気を観測することにより、注意深く火星の数十億年間の歴史を紐解くことを目標としている。

Japan emissions
日本の排出
日本は温室効果ガスの排出に関する約束事を引き下げることを11/15に公表した。2020年までに1990年比で25%の削減を目標としていたが、新たな約束では2005年比で3.8%減としており、1990年の排出量よりも3.1%高い値となっている。
>関連した記事(Nature#7475 “Nature NEWS”)
Warsaw talks to thrash out UN climate roadmap
ワルシャワでの会合は国連の気候ロードマップを徹底的に議論する
Jeff Tollefson
排出削減のコストが2015年のパリ条約への道の引火点となるだろう。

Biofuel rules
バイオ燃料のルール
アメリカ合衆国環境保護庁は、現在の基準を満たすには技術的困難があるとして、バイオ燃料の使用に対する需要を減らすことを提案した。アメリカの公共輸送に占めるバイオ燃料の比率を2014年に9.2%にするという目標となった(2013年に9.74%と見込んでいた)。

Acidic waters
酸性的な水
’the Ocean in a High-CO2 World’によるシンポジウムの報告書によると、海洋は前例のない速度で酸性化しており、それは人間にも悲惨な結果を与えると考えられている。将来多くの生物種が海に棲みにくくなると警告している。さらに海洋はCO2吸収能を次第に失い、気候変化を緩和する能力を失っていく。さらに、沿岸部の貝類の収穫量は減少し、サンゴ礁は失われるだろうと付け加えている。
>より詳細な記事(Nature News Blog)
Ocean acidification could trigger economic devastation
海洋酸性化が経済破綻の引き金となるかもしれない
Daniel Cressey

Heat tracking
熱の追跡
世界気象機関が11/13に公表した報告書によると、1850年以来行われている全球の気候記録の中で、今年は7番目に暖かかった年になる道筋を辿っているらしい。
>より詳細な記事(Nature News Blog)
WMO: 2013 among the ten warmest years on record
Quirin Schiermeier
世界気象機関の報告書によると、今年の1〜9月の平均地表気温は、1961-1990年のそれよりも0.48℃高かった。このまま変な気温とならなければ、2013年の年平均地表気温は2001-2010年平均と同程度になる見込みであり、観測史上最も暑い10年間となる。またCO2換算した温室効果ガスの量、海水準上昇速度はともに観測史上もっとも高い値となっている。
[以下は抜粋]
Despite the slow-down in the rise of the average global temperature in recent years, nothing suggests that global warming might not continue, the WMO warns. The atmospheric concentration of heat-trapping greenhouse gases, which in 2012 reached a record high carbon dioxide equivalent of 476 parts per million, is expected to reach a new record high in 2013 and will likely climb further in the forthcoming years, says the report.

The global sea level, which currently rises by around 3 millimetres per year, has also reached a new record high.

>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
温室効果ガス、2012年は過去最高値

NEWS IN FOCUS
Budget crunch hits Keeling’s curves
予算の危機がキーリング曲線にぶち当たる
Jeff Tollefson
研究者らは、予算削減の状況下で、これまでで最も長い大気中の二酸化炭素濃度の観測と比較的最近始まった酸素濃度の観測を継続しようと苦心している。
[以下は抜粋]
The complement to the Keeling curve is Ralph Keeling’s atmospheric-oxygen record, which NOAA does not replicate. Keeling has documented a decrease in oxygen levels that is due to fossil-fuel combustion, which uses up oxygen and releases CO2. By accounting for both CO2 and oxygen levels in the atmosphere, scientists have calculated that oceans and plants each absorb roughly one-quarter of humanity’s CO2 emissions, leaving half to build up in the atmosphere.

Fences divide lion conservationists
フェンスがライオンの保全者を二分する
Traci Watson
囲い込みは保護になるという人もいれば、脅威になると主張する人もいる。

Haiyan prompts risk research
ハイエンがリスク研究を誘発する
Sarah Zhang
ハイエン(Hyan; 台風30号)による甚大な被害に対して、地質学者・技術者・社会学者は町の再建が始まる前に、現地入りする準備ができている。

Astronomers call for X-ray polarimeter
天文学者はX線旋光計を必要としている
Eugenie Samuel Reich
パルサーやブラックホールから放出される光の方向を観測するためのNASAの観測計画が始まる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
NEWS & VIEWS
Extrasolar planets: An infernal Earth
太陽系外惑星:地獄の地球
Drake Deming
Pepe et al.とHoward et al.の解説記事。
太陽に似た星の半径のわずか2倍のところを周回する地球と同程度のサイズの系外惑星Kepler-78bは地獄の環境である。しかし、その存在が観測されたことは、生命存在可能な惑星の発見と特定への前触れとなるかもしれない。
>関連した記事(Science# “News of the Week”)
Most Earth-Like Exoplanet Yet
これまででもっとも地球に似た系外惑星
これまでにケプラー宇宙望遠鏡が発見してきた系外惑星は、地球とはほど遠い巨大ガス惑星などがほとんどであったが、最近発見されたKepler-78bはこれまでで最もサイズと組成が地球に類似している。地上望遠鏡からさらにKepler-78bについて観測を行ったところ、惑星の質量は80%、半径は20%地球よりも大きいことが示された。密度は地球とほぼ同じであり、岩石と鉄から成っていると想像される。ただし、軌道があまりに恒星に近いため、地球の’双子’というよりは、熱い’いとこ’といったところかもしれない。
>Natureハイライト
地球に似ているが、暑過ぎる

Biogeochemistry: Conduits of the carbon cycle
生物地球化学:炭素循環の導線
Bernhard Wehrli
Raymond et al.の解説記事。
全球の河川のCO2排出に関する統括的な解析から、排出量が従来考えられていたよりもかなり大きいことが明らかに。

Climate science: The challenge of hot drought
気候科学:暑い干ばつの課題
Jonathan T. Overpeck
過去1,000年間の北米大陸における干ばつの変動は、広い範囲の干ばつが数年間継続することは稀であることを示している。そうした気候状態に対処する能力について考える必要性に迫られている。
>話題の論文
Pan-continental droughts in North America over the last millennium
Benjamin I. Cook, Jason E. Smerdon, Richard Seager, Edward R. Cook

ARTICLES
Global carbon dioxide emissions from inland waters
陸水からの全球の二酸化炭素排出
Peter A. Raymond, Jens Hartmann, Ronny Lauerwald, Sebastian Sobek, Cory McDonald, Mark Hoover, David Butman, Robert Striegl, Emilio Mayorga, Christoph Humborg, Pirkko Kortelainen, Hans Dürr, Michel Meybeck, Philippe Ciais & Peter Guth
 全球の炭素循環のうち、地表水から大気へのCO2の輸送は重要な役割を担っている。しかし、水の表面積とガス輸送速度の見積もりの推定に枠組みが存在しないこと、データベースの不足などが原因で、推定はこれまで難しかった。
 小川や河川からのCO2の排出量が年間1.8PgC、湖などの滞留している水からの排出量が年間0.32PgCと推定される。合計年間2.1PgCという数値はこれまでの推定値よりもはるかに高い。排出にはホットスポットが存在し、地表面積のわずか20%で70%の排出が生じている。地域ごとの排出のメカニズムについては分からないことが依然多く、今後の研究が待たれる。
>Natureハイライト
陸水からの二酸化炭素輸送

LETTERS
An Earth-sized planet with an Earth-like density
地球様の密度を持った地球サイズの惑星
Francesco Pepe et al.

A rocky composition for an Earth-sized exoplanet
地球サイズの系外惑星の岩石的な組成
Andrew W. Howard et al.