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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2012年11月19日月曜日

新着論文(GCA, EPSL, DSR1, GPC)

Geochimica et Cosmochimica Acta
Volume 95, Pages 1-286, 15 October 2012
The effect of carbonic anhydrase on the kinetics and equilibrium of the oxygen isotope exchange in the CO2–H2O system: Implications for δ18O vital effects in biogenic carbonates
Joji Uchikawa, Richard E. Zeebe
生物源炭酸塩のδ18Oが無機的な炭酸塩のδ18Oと比較して’軽い’こと(いわゆる生体効果)は「pH model」と「kinetic model」の2つのモデルによって検証されている。炭酸脱水素酵素:carbonic anhydrase (CA)の役割を評価するために、CAの濃度を変化させてcalciteの沈殿実験を行い、δ18Oを測定。CAの濃度は同位体平衡下では影響しない。

Volume 98,  Pages 1-294, 1 December 2012
Boron isotopes in different grain size fractions: Exploring past and present water–rock interactions from two soil profiles (Strengbach, Vosges Mountains)
D. Lemarchand, D. Cividini, M.-P. Turpault, F. Chabaux
フランスの土壌を深度に沿って採取し、δ11Bを測定することで初期熱水変質や土壌生成の程度を評価。土壌によって異なるδ11Bの深度分布が得られ、異なる土壌生成プロセスの結果と考えられる。粒度変化・鉛直拡散・鉱物の溶解と沈殿などがホウ素の土壌中の分布を決定しているらしい。


Earth and Planetary Science Letters
Volumes 355–356,  Pages 1-352, 15 November 2012
Riverine particulate material dissolution as a significant flux of strontium to the oceans
Morgan T. Jones, Christopher R. Pearce, Catherine Jeandel, Sigurður R. Gislason, Eydis S. Eiriksdottir, Vasileios Mavromatis, Eric H. Oelkers
海水中の87Sr/86Srの比は大陸風化(放射性Srの供給源)と海底熱水による変質(非放射性Srの供給源)の割合で決定されると考えられている。最近の研究で大陸風化の効果が3倍もの大きさで影響することが知られてきた。河川によって運搬される粒子状の放射性/非放射性Srが海へとかなりの量のSrを運搬していることが分かった。Srは河川を通じてかなり早く海に供給されており、地質学的な試料中の濃度や同位体の解釈に影響すると考えられる。

A deep Eastern Equatorial Pacific thermocline during the early Pliocene warm period
Heather L. Ford, A. Christina Ravelo, Steven Hovan
Pliocene初期には東赤道太平洋の湧昇域の表層水温は現在よりも高かったことが知られている。しかしこの時の温度躍層の時空間変動はあまり良くわかっていない。50-100m深に生息するGloborotalia tumidaの殻のMg/Caから温度躍層の水温変動を復元。Pliocene初期には約4〜5℃ほど高く、温度躍層は深くなっていたらしい。4.8-4.0Ma頃に急激に温度低下するが、パナマ海峡による制限が関係していると考えられる。その後南東貿易風が強化され、現在のような温度躍層が形成されている。赤道湧昇帯の変動が全球の大気海洋循環に影響し、温暖なPlioceneから寒冷なPleistoceneへと変移したと考えられる。


Deep Sea Research Part I: Oceanographic Research Papers
Volume 67,  Pages 1-132, September 2012
Impact of strong El Niño events (1997/98 and 2009/10) on sinking particle fluxes in the 10°N thermocline ridge area of the northeastern equatorial Pacific
Hyung Jeek Kim, Kiseong Hyeong, Chan Min Yoo, Boo Keun Khim, Kyeong Hong Kim, Ju Won Son, Jong Seong Kug, Jong Yeon Park, Dongseon Kim
1997/98と2009/10の2回のエルニーニョ時に中央赤道太平洋のやや北部(10ºN)における生物生産がどのように変化するかを調査。97/98エルニーニョ時には強化された湧昇によって有機物沈降量が2〜4倍に増加するものの、09/10エルニーニョ時には浮遊性有孔虫の沈降量は大きく増加するものの、有機物沈降量や生物源シリカのフラックスには変化がほとんどなかった。同じエルニーニョでも大気海洋の循環場が異なることが原因と考えられる。


Global and Planetary Change
Volumes 94–95,  Pages 1-110, August–September 2012
Sea-level rises at Heinrich stadials of early Marine Isotope Stage 3: Evidence of terrigenousn-alkane input in the southern South China Sea
Enqing Huang, Jun Tian
南シナ海で得られた堆積物コアを用いてMIS3における気候変動及び海水準変動を復元。ハインリッヒイベント時(HS6、HS5a、HS5)に浮遊性有孔虫δ18Oが大きく増加し(重い値に)、雨のδ18Oの増加(蒸発域と水蒸気輸送の変化?)and/orモンスーン性の降水の低下が考えられる。またアルケノンSSTも低下傾向にあり、特に冬期モンスーンの強化によって北から冷たい表層水がもたらされたことが原因と考えられる。また陸源のn-アルカンの量もハインリッヒイベント時に変化を示し、イベントの前半で増加/後半で減少する。これは海水準が下降/上昇した結果と解釈される。

Changes in depth-transect redox conditions spanning the end-Permian mass extinction and their impact on the marine extinction: Evidence from biomarkers and sulfur isotopes
Kunio Kaiho, Masahiro Oba, Yoshihiko Fukuda, Kosuke Ito, Shun Ariyoshi, Paul Gorjan, Yuqing Riu, Satoshi Takahashi, Zhong-Qiang Chen, Jinnan Tong, Satoshi Yamakita
テチス海の浅海に相当する地層(10、40、100、200m深)からバイオマーカーを抽出し、P/T境界における環境変動及び大量絶滅の原因を考察。酸素濃度が大きく変動し、最初の海洋表層の無酸素ののち70万年後に再度無酸素状態になっていたことが分かった。さらにパンサラッサ海中央部の堆積物の硫黄同位体は貧酸素状態であったことを物語っている。海洋中層・深層水中のH2Sの蓄積とその後の酸化分解に伴う酸素消費が無酸素の原因として考えられ、表層水の無酸素・海洋酸性化が大量絶滅の原因になったと考えられる。