Geology
☆1 December 2012; Vol. 40, No. 12
Reconstructing Greenland ice sheet runoff using coralline algae
Nicholas A. Kamenos, Trevor B. Hoey, Peter Nienow, Anthony E. Fallick, and Thomas Claverie
グリーンランド氷床には北半球で最大の淡水が蓄えられており、これらがすべて融解すると全球の海水準を~7.4m上昇させると考えられている。しかし長期的なグリーンランド氷床の融解の記録というのは衛星観測の間接的な記録(26年分)や気温変化の記録(48年分)に限られている。赤色石灰藻の骨格に塩分濃度の変化として融解史が記録されている可能性がある。1939-2002年にかけての温度と塩分の変化を復元したところ、1939年以降、大気の温度が上昇しており、それに伴って融解量も増加していることが分かった。
PNAS
☆30 October 2012; Vol. 109, No. 44
Iconic coral reef degraded despite substantial protection
アイコン的なサンゴ礁が保護の苦労もむなしく劣化した
Nancy Knowlton
De’ath et al.の解説記事。
Independent evaluation of conflicting microspherule results from different investigations of the Younger Dryas impact hypothesis
Malcolm A. LeCompte, Albert C. Goodyear, Mark N. Demitroff, Dale Batchelor, Edward K. Vogel, Charles Mooney, Barrett N. Rock, and Alfred W. Seidel
Firestone RB, et al. (2007, PNAS)はヤンガードリアスの始まりに相当する北米やアジア、ヨーロッパなどの堆積物中に天体衝突の証拠として考えられる「ナノダイヤモンド」「aciniform soot(ニキビ状のスス?)」「高温融解ガラス」「マグマ質のマイクロスフェルール」などを発見した。これまで様々な地域においてマイクロスフェルールが確認される場所/されない場所が報告されていたが、ブラインドテストを行ったところ、すべての地域で確かにスフェルールが豊富に存在することが確認された。形態観察及び地球化学的な分析から、成因としては天体衝突起源でも、無機的な生成でも、人為的なものでもなく、陸源物質の急速な融解と急冷によってできたものと考えられる。
The 27–year decline of coral cover on the Great Barrier Reef and its causes
Glenn De’ath, Katharina E. Fabricius, Hugh Sweatman, and Marji Puotinen
1985年から2012年にかけて行われた観測(12ºS〜24ºS)からサンゴの被覆度が28.0%から13.8%へとその半数が失われていることが分かった。その原因としては「台風」「オニヒトデ(crown-of- thorns starfish; Acanthaster planci)による補食」「白化現象」がそれぞれ48%、42%、10%と推定される。比較的元の状態が保存されている北部のサンゴ礁においては白化現象が被覆度減少の原因のほとんどを担っており、回復の可能性がある。オニヒトデの駆除や水質の向上などの手段を取ることでさらなる減少を抑えることが可能かもしれない。しかしながらそうした状況は気候が安定化した状態でしか実現しないだろう。
☆6 November 2012; Vol. 109, No. 45
Maya collapse cycles
マヤ崩壊のサイクル
Marilyn A. Masson
Ocean acidification slows nitrogen fixation and growth in the dominant diazotroph Trichodesmium under low-iron conditions
Dalin Shi, Sven A. Kranz, Ja-Myung Kim, and François M. M. Morel
窒素固定を行うシアノバクテリアの重要種であるTrichodesmiumは酸性化した海水の下では鉄の取り込みが減少する。それは生理学的な応答というよりはむしろ鉄の化学形態の変化に起因すると考えられていた。しかし新たな飼育実験から、鉄の濃度が低い場合、酸性化によってTrichodesmiumの窒素固定量と成長量が減少することが分かった。pCO2の上昇は一部の光合成海洋生物にはプラスに働くが、同時に起きるpH低下によって一次生産が減少する可能性がある。
☆13 November 2012; Vol. 109, No. 46
Indian Ocean warming modulates Pacific climate change
Jing-Jia Luo, Wataru Sasaki, and Yukio Masumoto
21世紀の赤道太平洋の貿易風は弱化するとこれまで考えられてきたが、高精度の観測では逆に強化していることが示された。インド洋が温暖化することで太平洋にどのような影響が出るかをモデルを用いて評価したところ、太平洋西部の貿易風を強化する可能性が示された(ラニーニャ的な状態)。