Nature
Volume 499 Number 7459 pp379-514 (25 July 2013)
RESEARCH HIGHLIGHTS
Sea birds scent home
海鳥は故郷を嗅ぎ分ける
J. Exp. Biol. 216, 2798–2805 (2013)
ミズナギドリ(shearwaters; Calonectris borealis)の嗅覚と磁気を感じる器官を封じた実験から、巣から800km離れたところで放たれても、匂いによって巣へと帰ることができることが示された。磁場よりは匂いを感じ取っているらしい。
Stellar ice hints at planet birth
星の氷が惑星誕生にヒントを与える
Science http://dx.doi. org/10.1126/science.1239560 (2013)
原始惑星円盤で形成される一酸化炭素の氷は、ガス円盤のどこで惑星が形成されるのかを探る手がかりになるかもしれない。
>話題の論文
Imaging of the CO Snow Line in a Solar Nebula Analog
Chunhua Qi, Karin I. Öberg, David J. Wilner, Paola d'Alessio, Edwin Bergin, Sean M. Andrews, Geoffrey A. Blake, Michiel R. Hogerheijde, Ewine F. van Dishoeck
Ice-free Arctic predicted
氷のない北極が予想された
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://dx.doi.org/10.1073/ pnas.1219716110 (2013)
地球温暖化によって北極海の海氷が急速に後退している。30の気候モデルが予想している北極海の夏の海氷量を評価したところ、中程度の排出シナリオ(RCP4.5)の下では2060年には2012年比で50%低下することが予想された。さらに多くの排出シナリオ(RCP8.5)では2050年代には消失する(100万km2以下)と予想された。
>話題の論文
Reducing spread in climate model projections of a September ice-free Arctic
Jiping Liu, Mirong Song, Radley M. Horton, and Yongyun Hu
SEVEN DAYS
Carbon tax scrapped
炭素税がゴミ箱に
オーストラリアは炭素税を失くし、代わりに排出取引システムに移行することが決定した。2014年7月には1トンあたりの排出にかかる税金は23米ドルから6米ドルまで下がることになる。それによって平均的な家族は年間に350米ドルを節約することになる。
Tar drip drops
タールの雫が落ちる
69年待った後、アイルランドの科学者達はピッチドロップをビデオ撮影することに成功した。同様の実験がオーストラリアのクイーンズランドで1927年から始まっていたものの、2000年に雫が落ちたときは撮影に失敗していた。次に落ちるのは2013年の終わり頃と予想されている。
>より詳細な記事
World's slowest-moving drop caught on camera at last
Richard Johnston
Marine-reserve veto
海洋保護が拒否
南極に設けられることが提案されていた2つの巨大海洋保護区(ロス海と東南極沿岸)がロシアの反対によって妨げられた。
>より詳細な記事
Shock as Antarctic protection plans scuppered
Daniel Cressey
China tremors
中国の地震
甘粛省にて7/21にM5.9とM5.6の地震が発生した。数なくとも89人が死亡しているという。
Cosmic gas guzzler
宇宙のガスをがつがつ食べるもの
地球質量の数倍の巨大ガス雲が、天の川銀河の中心にあるブラックホールの近傍で死の螺旋を描き始めたことがチリに設置されたヨーロッパの望遠鏡による観測から示された。
>より詳細な記事
Giant black hole stretches gas cloud to the limit
Devin Powell
GM crops dropped
遺伝子組み換え作物がボツに
巨大バイオ化学メーカーのモンサントが新たな遺伝子組み換え作物をヨーロッパで栽培するための認可申請を取り下げた。EUでは通常の作物を強化する方針に切り替えたらしい。
>より詳細な記事
Monsanto drops bid to have GM crops approved in Europe
Daniel Cressey
NEWS IN FOCUS
Monsanto drops GM in Europe
モンサントがヨーロッパでの遺伝子組換えを止める
Daniel Cressey
認可プロセスの失速を受けて、同地域は遺伝子組換えから撤退する。
China’s cordgrass plan is ‘overkill’
中国のコードグラス計画は’過剰殺戮’
Jane Qiu
「上海の護岸堤防は湿地の生態系をダメにする」と専門家は言う。
※コードグラス…スパルティナ属の数種の多年生イネ科植物
COMMENT
Climate science: Vast costs of Arctic change
気候科学:北極圏の変化の莫大なコスト
「北極圏の永久凍土の融解によって放出されるメタンは将来への悪影響をもたらす」と、Gail Whiteman、Chris Hope、Peter Wadhamsは言う。
CORRESPONDENCE
Future food: Politics plague seed banks
未来の食料:政治がシードバンクを悩ませる
Dave Wood
Future food: Use local knowledge
未来の食料:地域の知識を使え
Selena Ahmed & Anna Herforth
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RESEARCH
NEWS & VIEWS
Astrophysics: How to catch a galactic wind
天文物理学:どのようにして銀河の風を捉えるか
Mark Westmoquette
Bolatto et al.の解説記事。
ALMA宇宙望遠鏡の観測から近くのスターバースト銀河から吹き出す風の低温分子相の特性が明らかに。
ARTICLES
Insights into the phylogeny and coding potential of microbial dark matter
微生物のダークマターの系統発生学とコード能力に対する知見
Christian Rinke et al.
単細胞ゲノミクス(single-cell genomics)の新技術によって、これまで培養できなかったアーキアやバクテリアの予想もしていなかった代謝構造が明らかに。生命を3つに分けている境界に疑問を投げかけている。また新たな2つのスーパー系統(superphyla)の創設を提案。
>関連した記事(Science#6143 "News of the Week")
Shedding Light on Microbial ‘Dark Matter’
微生物の’ダークマター’に光を当てる
10年ほど前、環境中の試料に対してDNA分析(メタゲノム解析)を行ったところ、非常に多くの微生物が発見された。しかし多くが実験室で飼育できないことから、記載できておらず、生命の樹における位置づけもよく分かっていない。
Department of Energy Joint Genome InstituteのTanja Woykeらは個々の細胞からDNAを抽出することに成功し、200種の新種の微生物を記載した。
LETTERS
Suppression of star formation in the galaxy NGC 253 by a starburst-driven molecular wind
スターバーストによって引き起こされる分子風による銀河NGC 253にける星形成の抑制
Alberto D. Bolatto, Steven R. Warren, Adam K. Leroy, Fabian Walter, Sylvain Veilleux, Eve C. Ostriker, Jürgen Ott, Martin Zwaan, David B. Fisher, Axel Weiss, Erik Rosolowsky & Jacqueline Hodge
Solving the Martian meteorite age conundrum using micro-baddeleyite and launch-generated zircon
マイクロ・バッデレイ石と放出中に生じたジルコンを用いて火星隕石年代問題を解決する
D. E. Moser, K. R. Chamberlain, K. T. Tait, A. K. Schmitt, J. R. Darling, I. R. Barker & B. C. Hyde
火星の代表的な隕石(NWA 5298)の年代決定と火星地殻の進化に関して。
North Atlantic Ocean control on surface heat flux on multidecadal timescales
数十年規模の時間スケールの地表の熱フラックス対する北大西洋のコントロール
Sergey K. Gulev, Mojib Latif, Noel Keenlyside, Wonsun Park & Klaus Peter Koltermann
海洋のSST観測が極めて最近に限られていることから、北大西洋における数十年規模SST変動のメカニズムはよく分かっていない。大気-海洋の熱フラックスの観測記録から、10年を超えるような長い時間スケールでは海洋が大気の変動を駆動していることが示された。短い時間スケールでは関係性が逆転し、Bjerknesの説を支持する結果が得られた。
High frequency of functional extinctions in ecological networks
生態系ネットワークにおける機能消失の高い頻度
Torbjörn Säterberg, Stefan Sellman & Bo Ebenman
モデルシミュレーションから、生物の個体数のどれほどの減少が生態系機能の消失(ecological functional extinction)に繋がるかが評価された。
Great ape genetic diversity and population history
ヒト科の遺伝的多様性と個体数の歴史
Javier Prado-Martinez et al.
ヒト以外のヒト科のサルを対象にしたゲノム解析から、遺伝的多様性や進化史に関する新たな知見が得られた。さらにヒトとの比較も可能に。