井田 茂
NHK BOOKS (2003年4月) ¥1,070-
スーパーアース〜地球外生命体はいるのか〜
井田 茂
PHPサイエンス・ワールド新書 (2011年6月) ¥800-
今回は2つの書籍をまとめてレビューしたい。
著者は東工大教授の井田 茂氏。著書が多いので一般の人にもよく知られた名前だろう。
東工大-東大GCOE「地球から地球たちへ-生命を宿す惑星の総合科学-」のリーダーという点でもあまりに有名だ。
系外惑星の歴史は古いが、その存在の証明は意外にも「1995年」と極めて最近である。
ソラリス、アバター、スターウォーズ、インデペンデンスデイ、ビジター、宇宙戦争、地球が静止した日、メン・イン・ブラック、トランスフォーマーなど、系外惑星の知的生命体を描いた映画は枚挙にいとまがないが、多くの人々の好奇心・想像力を刺激する分野でもある。
地球科学という分野においても、井田さんのように系外惑星の形成の仕方を研究する人もいれば、比較惑星学といって、他の惑星の知識をフィードバックさせることで地球のより深い理解へとつなげる学問も存在する。
自身に馴染みのある例を挙げさせてもらうと、「地球温暖化が進んだ先に金星のような灼熱環境が待っている」などといった具合だ。
系外惑星を見つめることは、地球を見直すことにも繋がる。
「異形の惑星」は、想像以上に専門的で、ある程度の背景がある人にはお勧めできるが、一般向け読書用という感じではない。
概略としては系外惑星の発見から観測の進展の歴史の紹介、発見されたホット・ジュピター(太陽近傍を周回する巨大ガス惑星)やエキセントリック・プラネット(離心率が極めて大きい惑星)の理論的枠組み、各国の一流の研究者の仮説の検証など。
僕自身は’標準モデル’については学部時代にも何度か授業で聴いたことがあったので、それとは違う惑星形成モデルがあるということが非常に興味深かった。
しかもこの標準モデルは京都大学の研究グループの脈々と受け継がれる流れを受け継いでいるらしい(’京都モデル’。ちなみに井田氏の経歴は京大物理→東大地球物理)。
「スーパーアース」は、中高生〜一般向けという感じで、広く系外惑星の紹介や、それを可能にしている技術の紹介、系外惑星における生命存在確率の考察など、
軽い読み物としてもオススメできる。
ただし、時折専門的でもあるので、他の教科書などを参照しながら読むとより深い理解へと繋がるかもしれない。
系外惑星のニュースはNature・Scienceでも頻繁に取り上げられる。それだけ多くの人の興味を惹くということなのだろう。
Scienceの2013年5月13日号には系外惑星の特集が組まれた。ここには系外惑星に関するこれまでに発見された奇怪な惑星や、それを探査するための手法が紹介されているので、是非ご参照いただきたい(※ただしアクセス権必要)。
最近の系外惑星に関連した論文・ニュースを挙げると(この形式はまるでNAVERまとめw)、
Data Dispute Revives Exoplanet Claim
データに関する論争が系外惑星存在の主張を再び蘇らせた
Yudhijit Bhattacharjee
Science (27 July 2012) "News & Analysis"
生命が存在する可能性がある系外惑星として初めて発見された’Gliese 581g’を発見した研究チームは、確かにこの星は存在すると結論づけた。
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ダイヤでできた星も!
ダイヤモンドでできた惑星を発見
Andrew Fazekas
National Geographic News (October 12, 2012)
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Nature 494, 452–454 (28 February 2013)
ケプラー宇宙望遠鏡がこれまでで最も小さな系外惑星を発見した。それは水星ほどの大きさで、太陽に似た恒星の周りを公転している。
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今後、Kepler-62fという惑星をめぐるニュースが増えそう。
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Kepler Snags Super-Earth-Size Planet Squarely in a Habitable Zone
ケプラーが生命存在可能帯に存在する超地球サイズの惑星をはっきりと捉えた
Richard A. Kerr
Science (19 April 2013) "News & Analysis"
Kepler Snags Super-Earth-Size Planet Squarely in a Habitable Zone
ケプラーが生命存在可能帯に存在する超地球サイズの惑星をはっきりと捉えた
Richard A. Kerr
Science (19 April 2013) "News & Analysis"
ケプラー宇宙望遠鏡を使って系外惑星を探っている研究チームが、ついに地球の1.41倍のサイズの岩石型惑星を発見した。そこには栄養があり、暖かい大気があり、湖があり、小川があるかもしれない。しかしまだ想像の段階に過ぎず、そうでない可能性もある。系外惑星探査ではサイズや惑星の年齢は推定できるが、大気組成まではまだ分からないからである。ハビタブルゾーンの中にあったとしても、地球と同じような大気組成で、さらに二酸化炭素による温室効果が適度に機能している必要がある。Kepler-62fは「系外惑星探査の聖杯(Holy Grail of exoplanetology)」になるかもしれないと期待が高まっている。
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しかし、装置の不具合から、ケプラー宇宙望遠鏡はもう活躍できなさそう…
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Kepler’s Closing Act?
ケプラー閉鎖の行動?
それでも系外惑星の多くはケプラー望遠鏡によって発見され、宇宙望遠鏡のポテンシャルを十二分に発揮し、アピールできたのではないか、と。
今後は地上の望遠鏡と、今後打ち上げられる予定の、「NASA(Googleが出資)のTESS」や「ESAのCheops」が活躍するのだろうか。
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Next Up for NASA: Exoplanets And Neutron Stars
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Small Satellite, Big Mission
小さい人工衛星だが大きなミッション
Science (26 October 2012) "News of the Week"しかし、装置の不具合から、ケプラー宇宙望遠鏡はもう活躍できなさそう…
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Kepler’s Closing Act?
ケプラー閉鎖の行動?
Science (24 May 2013) "News of the Week"
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これまで数多くの系外惑星探査などの実績を上げてきたケプラー宇宙望遠鏡の、姿勢を維持するための車輪装置に不具合が生じた(去年にも3つあるうちの1つが故障していた)。現在セーフモードに入っているものの、計画自体終了する可能性もある。計画は去年本来の3.5年の任期を終え、さらに3.5年の延長が予定されていた。
>より詳細な記事
Malfunction Could Mark the End of NASA's Kepler Mission
Yudhijit Bhattacharjee
>より詳細な記事
Malfunction Could Mark the End of NASA's Kepler Mission
Yudhijit Bhattacharjee
それでも系外惑星の多くはケプラー望遠鏡によって発見され、宇宙望遠鏡のポテンシャルを十二分に発揮し、アピールできたのではないか、と。
今後は地上の望遠鏡と、今後打ち上げられる予定の、「NASA(Googleが出資)のTESS」や「ESAのCheops」が活躍するのだろうか。
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Next Up for NASA: Exoplanets And Neutron Stars
NASAの次の一手:系外惑星と中性子星
Science (12 April 2013) "News of the Week"
NASAは2017年の打ち上げを目指す次のミッションとして「系外惑星を探査する人工衛星(Transiting Exoplanet Survey Satellite; TESS)」と「中性子星の発するX線を観測するための国際宇宙ステーションに備え付けられる機器(Neutron Star Interior Composition Explorer; NICER)」の2つを採用すると4/5に公表した。
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Small Satellite, Big Mission
小さい人工衛星だが大きなミッション
ヨーロッパ宇宙局(European Space Agency; ESA)は2017年にCharacterizing Exoplanets Satellite (Cheops)を打ち上げる予定。未だ見つかっていない系外惑星の探査というよりは、既に知られている系外惑星の詳細な観測を行うことを目的としている。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今後もあっと驚く数々の発見が僕らの好奇心をくすぐってくれることだろう。
以下は本の中からピックアップした気になった文言集。
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異形の惑星〜系外惑星形成理論から〜
われわれが見上げる夜空の星の多くに惑星がめぐり、さまざまな生命も育まれている - この宇宙はなんと豊穣なのだろう。(pp. 13)
連星ができる確率は半分以上で、孤立した恒星(+円盤)ができる場合より多いと考えられている。(pp. 55)
太陽のように、一つの恒星を周回する惑星が少ないというのは非常に不思議です。連星の周りにも惑星の存在が確認されているみたいです。
木星があると、外側からやってくる彗星を系の外にはじき飛ばすことが多いので、そのことによって太陽系の内側領域に入り込む彗星が減り、その結果、彗星が地球型惑星に衝突する確率が減っているというのだ。(pp. 77)
ジョージ・ウェザリルによる理論的な予想。
1995年は大きな大きなターニング・ポイントとなった。「なぜ、太陽系にしか惑星は存在しないのか?なぜ、人類は孤独なのか?」を考えはじめなければならないと迫られた次の瞬間には、「なぜ、銀河系はかくも百花繚乱の惑星たちに満ちあふれているのか?」に答えることを迫られることになったのだ。(pp. 81)
1995年、数多くの第一線の惑星ハンターが「敗北宣言」をし、地球はかなり稀にしか生まれない孤独な星であるという機運が高まりつつあった。そうした中、誰も注目していなかったスイスのチームによって系外惑星第一号(ペガサス座51番星 51peg g)が発見された。
系外惑星の発見によって、謎が次々と提示され、その謎にチャレンジする喜びが僕たちに与えられた。しかもその謎は、未知の世界への探検、第二の地球探し、地球外生命体、生命誕生の謎といった、われわれの存在の根源的な謎に直結するものなので、チャレンジする喜びはひとしおだ。(pp. 86)
もう一つ重要なことは、太陽系は太陽質量の100分の1という円盤からはじまったと考えてもいいかもしれないが、ほかの惑星系は太陽質量の10分の1というような重い円盤からはじまったものもあるだろうし、太陽質量の1000分の1というような軽い円盤からはじまったものもあるだろうということだ。(pp. 94)
逆に言えば、すべての惑星の形成には円盤が必要で、惑星のバリエーションはその後の過程の違いによって生まれるというのが、筆者の考えと言って差し支えないと思います。
出発する円盤の質量が異なれば巨大ガス惑星形成可能領域は変わりえて、そのことによって系外惑星の多様性が生じうる。(中略)巨大ガス惑星は生まれた場所から動いてしまう可能性もある。(中略)こういったところを意識せず、漠然と太陽系での巨大惑星と同様のものをほかの惑星系にも想像してしまったところが、惑星探しが長い期間成功しなかった原因のひとつだろう。太陽系とはまったく違う惑星系の現実を突きつけられないかぎり、考えられないというのは仕方のないことだが。(pp. 119)
地球が月という大きな衛星を獲得したことは生命居住可能性ということで大きな意味をもつ。(pp. 121)
月が存在することで歳差運動(自転軸のこま振り運動)が安定化し、大規模に自転軸が傾くことを妨げているそうです。それがあると地表の季節変化が極端になるため、生命誕生にとっても不都合となります。月はジャイアント・インパクトで生まれたと考えられていますが、系外惑星で同じように大きな惑星ができる確率はそれほど低くないと見積もられているそうです。
惑星が3つ以上あると、その惑星系は必ずいつか不安定になって軌道が入り乱れ、時間的に大きく変動してしまう、といったら多くの人は驚くだろう。しかし、今のところ、それは真実だと科学者の間では思われている。(中略)太陽系は永遠に安定性を保つことはできないと考えられている。(pp. 155)
ただし、太陽が主系列段階にいる間には不安定化は起きないだろうとも推定されています。安定化する絶妙な位置関係に惑星が並んでいるようです。
それに対して地球では46億年の歴史のなかで、自転軸の大変動はほとんどなかったと考えられている。実は、地球が安定した自転軸をもっているのは、地球だけが自身に対してその質量の約100分の1という巨大な衛星、月をしたがえているからだ。(pp. 222)
水星・火星・金星といった巨大岩石型惑星の自転軸は過去に大きく変動したと考えられているそうです。
太陽系地球型惑星では、地球だけが大きな衛星を持っていて自転・軌道共鳴から逃れたのだ。(pp. 224)
宇宙の化学進化とともに惑星がつくられるようになり、生命も生まれるようになったと考えられる。惑星系や生命の存在確率は宇宙誕生以来、徐々に上がってきているはずだ。(pp. 246)
科学を追求する者には集合的意識、共同知といった感覚がある。科学という方法論は、手順をふむのが大変な反面、その手順に従っていけば、人類すべてが共通の認識のもとに世界を理解できるように組み立てられた方法論だ。同時代の科学者だけでなく、過去の偉大な科学者とも知を共有できる。もちろん同時代で研究分野がお互いに近い科学者同士ほど、より強い共有感をもつことができる。(pp. 261)
海外の大学の場合、定年退職制度がないので、過去に名を馳せた科学者が未だに現役だったりもします。
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スーパーアース〜地球外生命体はいるのか〜
これだけ研究者人口が増え、論文が量産されると、系外惑星形成研究が細分化され、分業制になって、全体が見えにくくなってしまうのではないかという危機感もあるからだ。(pp. 41)
これは僕らの分野(古気候・古海洋学)にも言えることで、扱うプロキシに特化してしまう傾向があると言っていいと思います。研究対象は同じ地球システムなのですが。
スイス・チームは、2008年にHD40307のまわりに地球質量の4.2、6.9、9.2倍の三つの惑星、2009年にはグリーゼ581の第4惑星として、なんと地球質量の1.9倍の惑星を発見した。ここまで来ると、「スーパー・アース(super-Earths)」というよりも、地球類似惑星「アース(Earths)」と呼んだほうがいいかもしれない。(pp. 61)
太陽型恒星が地球型惑星をもつ確率は40〜60%よりもずっと高い、つまりほとんどの太陽型恒星が地球型惑星をもつ、ということになる。まさに地球型惑星はこの銀河系に偏在しているのだ。(pp. 70)
容易でなくとも、地球科学・惑星科学の手法を拡張し、地球における豊富な知識を、スーパーアースやアースたちへと展開していく必要がある。このような、「地球から地球たちへ」の方向も必要だが、多様なスーパーアースたちやアースたちのなかでこの地球を俯瞰的に位置づける、「地球たちから地球へ」の視点も獲得することができれば、それは、この地球の深い理解へとつながるはずだ。(pp. 163)
GCOEのスローガンもいつしか逆になったりしてw
今後もあっと驚く数々の発見が僕らの好奇心をくすぐってくれることだろう。
以下は本の中からピックアップした気になった文言集。
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異形の惑星〜系外惑星形成理論から〜
われわれが見上げる夜空の星の多くに惑星がめぐり、さまざまな生命も育まれている - この宇宙はなんと豊穣なのだろう。(pp. 13)
連星ができる確率は半分以上で、孤立した恒星(+円盤)ができる場合より多いと考えられている。(pp. 55)
太陽のように、一つの恒星を周回する惑星が少ないというのは非常に不思議です。連星の周りにも惑星の存在が確認されているみたいです。
木星があると、外側からやってくる彗星を系の外にはじき飛ばすことが多いので、そのことによって太陽系の内側領域に入り込む彗星が減り、その結果、彗星が地球型惑星に衝突する確率が減っているというのだ。(pp. 77)
ジョージ・ウェザリルによる理論的な予想。
1995年は大きな大きなターニング・ポイントとなった。「なぜ、太陽系にしか惑星は存在しないのか?なぜ、人類は孤独なのか?」を考えはじめなければならないと迫られた次の瞬間には、「なぜ、銀河系はかくも百花繚乱の惑星たちに満ちあふれているのか?」に答えることを迫られることになったのだ。(pp. 81)
1995年、数多くの第一線の惑星ハンターが「敗北宣言」をし、地球はかなり稀にしか生まれない孤独な星であるという機運が高まりつつあった。そうした中、誰も注目していなかったスイスのチームによって系外惑星第一号(ペガサス座51番星 51peg g)が発見された。
系外惑星の発見によって、謎が次々と提示され、その謎にチャレンジする喜びが僕たちに与えられた。しかもその謎は、未知の世界への探検、第二の地球探し、地球外生命体、生命誕生の謎といった、われわれの存在の根源的な謎に直結するものなので、チャレンジする喜びはひとしおだ。(pp. 86)
もう一つ重要なことは、太陽系は太陽質量の100分の1という円盤からはじまったと考えてもいいかもしれないが、ほかの惑星系は太陽質量の10分の1というような重い円盤からはじまったものもあるだろうし、太陽質量の1000分の1というような軽い円盤からはじまったものもあるだろうということだ。(pp. 94)
逆に言えば、すべての惑星の形成には円盤が必要で、惑星のバリエーションはその後の過程の違いによって生まれるというのが、筆者の考えと言って差し支えないと思います。
出発する円盤の質量が異なれば巨大ガス惑星形成可能領域は変わりえて、そのことによって系外惑星の多様性が生じうる。(中略)巨大ガス惑星は生まれた場所から動いてしまう可能性もある。(中略)こういったところを意識せず、漠然と太陽系での巨大惑星と同様のものをほかの惑星系にも想像してしまったところが、惑星探しが長い期間成功しなかった原因のひとつだろう。太陽系とはまったく違う惑星系の現実を突きつけられないかぎり、考えられないというのは仕方のないことだが。(pp. 119)
地球が月という大きな衛星を獲得したことは生命居住可能性ということで大きな意味をもつ。(pp. 121)
月が存在することで歳差運動(自転軸のこま振り運動)が安定化し、大規模に自転軸が傾くことを妨げているそうです。それがあると地表の季節変化が極端になるため、生命誕生にとっても不都合となります。月はジャイアント・インパクトで生まれたと考えられていますが、系外惑星で同じように大きな惑星ができる確率はそれほど低くないと見積もられているそうです。
惑星が3つ以上あると、その惑星系は必ずいつか不安定になって軌道が入り乱れ、時間的に大きく変動してしまう、といったら多くの人は驚くだろう。しかし、今のところ、それは真実だと科学者の間では思われている。(中略)太陽系は永遠に安定性を保つことはできないと考えられている。(pp. 155)
ただし、太陽が主系列段階にいる間には不安定化は起きないだろうとも推定されています。安定化する絶妙な位置関係に惑星が並んでいるようです。
それに対して地球では46億年の歴史のなかで、自転軸の大変動はほとんどなかったと考えられている。実は、地球が安定した自転軸をもっているのは、地球だけが自身に対してその質量の約100分の1という巨大な衛星、月をしたがえているからだ。(pp. 222)
水星・火星・金星といった巨大岩石型惑星の自転軸は過去に大きく変動したと考えられているそうです。
太陽系地球型惑星では、地球だけが大きな衛星を持っていて自転・軌道共鳴から逃れたのだ。(pp. 224)
宇宙の化学進化とともに惑星がつくられるようになり、生命も生まれるようになったと考えられる。惑星系や生命の存在確率は宇宙誕生以来、徐々に上がってきているはずだ。(pp. 246)
科学を追求する者には集合的意識、共同知といった感覚がある。科学という方法論は、手順をふむのが大変な反面、その手順に従っていけば、人類すべてが共通の認識のもとに世界を理解できるように組み立てられた方法論だ。同時代の科学者だけでなく、過去の偉大な科学者とも知を共有できる。もちろん同時代で研究分野がお互いに近い科学者同士ほど、より強い共有感をもつことができる。(pp. 261)
海外の大学の場合、定年退職制度がないので、過去に名を馳せた科学者が未だに現役だったりもします。
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スーパーアース〜地球外生命体はいるのか〜
これだけ研究者人口が増え、論文が量産されると、系外惑星形成研究が細分化され、分業制になって、全体が見えにくくなってしまうのではないかという危機感もあるからだ。(pp. 41)
これは僕らの分野(古気候・古海洋学)にも言えることで、扱うプロキシに特化してしまう傾向があると言っていいと思います。研究対象は同じ地球システムなのですが。
スイス・チームは、2008年にHD40307のまわりに地球質量の4.2、6.9、9.2倍の三つの惑星、2009年にはグリーゼ581の第4惑星として、なんと地球質量の1.9倍の惑星を発見した。ここまで来ると、「スーパー・アース(super-Earths)」というよりも、地球類似惑星「アース(Earths)」と呼んだほうがいいかもしれない。(pp. 61)
太陽型恒星が地球型惑星をもつ確率は40〜60%よりもずっと高い、つまりほとんどの太陽型恒星が地球型惑星をもつ、ということになる。まさに地球型惑星はこの銀河系に偏在しているのだ。(pp. 70)
容易でなくとも、地球科学・惑星科学の手法を拡張し、地球における豊富な知識を、スーパーアースやアースたちへと展開していく必要がある。このような、「地球から地球たちへ」の方向も必要だが、多様なスーパーアースたちやアースたちのなかでこの地球を俯瞰的に位置づける、「地球たちから地球へ」の視点も獲得することができれば、それは、この地球の深い理解へとつながるはずだ。(pp. 163)
GCOEのスローガンもいつしか逆になったりしてw