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☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語English) 7、日記(日本語English) おまけTwilog

2013年7月9日火曜日

新着論文(JC, DSR2)

Journal of Climate
Southern Ocean Sector Centennial Climate Variability and Recent Decadal Trends
Mojib Latif, Torge Martin, and Wonsun Park
近年の南大洋における温暖化があまり顕著にみられないのは、百年スケールの長期的な気候変動が原因と思われる。Kiel大の気候モデルを用いた研究から、おそらくWeddel海の深層水形成過程が大きな役割を負っていると推定される。20世紀・21世紀の気候変化を復元・予測する上で南大洋の百年スケールの自然変動を正しく理解する必要がある。

Temperature change on the Antarctic Peninsula linked to the tropical Pacific
Qinghua Ding and Eric J. Steig
>関連した記事(Nature Climate Change; June 2013 "Research Highlights")
Tropical connections
熱帯域とのつながり
過去50年間、南極半島は世界で最も早く温暖化してきた。その原因としては南極を周回する偏西風が人為的に強化されたことが考えられている。特に南半球の秋には海氷量が著しく後退していることが分かった。南極半島における1979-2009年における気温の観測記録と熱帯域のSST記録とを比較したところ、大気循環を介して海水温偏差が南極気温に影響していることが示された。

Linearity of Climate Response to Increases in Black Carbon Aerosols
Salil Mahajan, Katherine J. Evans, and James J. Hack
モデルを用いてブラック・カーボンが直接的に・間接的に放射強制力に与える影響を評価。BCが増加するほど正の放射強制力が見られる。BCの増加とともに全球平均降水量が低下することが示された。またBCの南北半球の不均質性が赤道を通過する熱輸送量を変化させ、ITCZが北上することが示された。

Influence of the Southern Annular Mode on projected weakening of the Atlantic Meridional Overturning Circulation
Peter T. Spooner, Helen L. Johnson, and Tim J. Woollings
モデル間のばらつきは大きいものの、ほとんどの大循環モデルがAMOCが温暖化とともに弱化することを予想している。またそれとともにSouthern Annular Mode (SAM)が増加することが予想されており、AMOCとの関連性が指摘されている。将来のSAMの強化が、エクマン輸送や南極周辺の湧昇の変化を通じて、今後100年間に予想されるAMOCの弱化を3分の1ほど減少させるように寄与すると思われる。ただし、モデルが気候変化の影響を過小評価している可能性は否めない。

Deep Sea Research Part II
Iron fertilization and the structure of planktonic communities in high nutrient regions of the Southern Ocean
Bernard Quéguiner
南大洋における人口の鉄散布実験および自然変動によるプランクトン・コミュニティーの変化とその変動要因をレビュー。支配的な珪藻は2種に大別できる。
 春〜夏の成長期にはグループ1の、早く成長・広く分布する珪藻種が優先し、効果的にシリカポンプを機能させ、表層水のケイ酸を消費している。しかし有機物は微生物によって混合層内でリサイクルされており、鉛直輸送は小さい。
 一方のグループ2はケイ酸塩の殻がしっかりしており、補食(grazing)にも強い。連続して成長するものの、その速度は遅いという特徴がある。秋に栄養塩や光の供給が制限された時に優先し、年間の生物ポンプの大部分を担う。

Modern Tasman Sea surface reservoir ages from deep-sea black corals
Aimée F. Komugabe , Stewart J. Fallon , Ronald E. Thresher , Stephen M. Eggins
タスマン海のNorfolk Ridgeで得られた深海サンゴblack coralのΔ14CとU同位体測定。リザーバー年代を求めたところ、AD1790-1900にかけてほぼ一定値(~330年)を示すのに対し、その後急激に減少することが示された。これはGBR近傍で得られている他の記録とも整合的で、この期間に海洋循環が劇的に変化したことを物語っている。

The geochemistry of deep-sea coral skeletons: A review of vital effects and applications for palaeoceanography
Laura F. Robinson , Jess F Adkins , Norbert Frank , C Alexander , Nancy Prouty , E. Brendan Roark , Tina van de Flierdt
深海サンゴは広く分布し、U/Thで正確な年代決定も可能であるため、優秀な深層水のアーカイブである。過去の深海を探るツールとしての深海サンゴの地球化学分析の最先端をレビュー。温度復元にはMg/LiとClumped isotope、炭素循環復元にはδ11BとΔ14C、深層循環にはNdとΔ14C、栄養塩循環にはδ15N、P/Ca。Ba/Caが有用であることが分かっている。

Temporal and spatial distributions of cold-water corals in the Drake Passage: Insights from the last 35,000 years
Andrew R. Margolin , Laura F. Robinson , Andrea Burke , Rhian G. Waller , Kathryn M. Scanlon , Mark L. Roberts , Maureen E. Auro , Tina van de Flierdt
造礁サンゴは熱帯の浅い海から南大洋の深い海まで広く分布しており、それぞれの種の環境変化に対する耐性は様々である。気候変化に対する耐性を調べる上では成長速度の変化がいい指標になると思われる。Drake海峡から得られた過去10万年を超す様々な種(Desmophyllum dianthus, Gardineria antarctica, Balanophyllia malouinensis, Caryophyllia spp., Flabellum spp.)の深海サンゴの分布を用いて古環境の変化を推定。それぞれの種の時空間変動は、表層の生物生産・酸素濃度・炭酸塩飽和度などを反映していると思われる。