Volume 503 Number 7475 pp165-306 (14 November 2013)
RESERCH HIGHLIGHTS
Economic link to global warming
地球温暖化に対する経済的な繋がり
Nature Geosci. http://doi.org/p2b (2013)
地球温暖化の速度の変化と人間活動の重要な出来事との間には密接な繋がりがあるかもしれない。1880年以来の地表平均気温と温室効果ガス濃度の記録から、2度の大戦と世界的な経済恐慌の際に温暖化の速度が鈍化していたことが示された。またモントリオール議定書の発行後、温室効果ガスでもあるフロンガス(CFCs)の排出量が規制された結果、温暖化の速度が鈍化するのを助けた可能性も示唆されている。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Ozone-hole treaty slowed global warming
オゾンホール条約が地球温暖化を遅くした
Hannah Hoag
1987年のモントリオール議定書が発行されなければ、現在の気候は0.1℃より温暖化していた可能性も指摘されている。しかしながら、彼らの発見は相関関係であり、必ずしも因果関係を示していない。さらに、近年の温暖化の鈍化(ハイエタス)も同じメカニズムである可能性は低い。彼らの研究ではエアロゾルや海の熱吸収の影響を考慮していないからである。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
地球温暖化減速、フロン規制の効果か
>話題の論文
Statistically derived contributions of diverse human influences to twentieth-century temperature changes
統計学的に引き出された様々な人類の影響が20世紀の温度変化に与えた寄与
Francisco Estrada, Pierre Perron & Benjamín Martínez-López
最新の統計学的手法を用いて20世紀の地表面気温の変化の原因を考察。一部他の要因の放射強制力も寄与しているが、主として大気中の温室効果ガス濃度で放射強制力の変化とそれに伴う気温変化が説明できることが示された。温暖化の速度が鈍化していた時期においては人間活動が関与していた可能性があり、2度の世界大戦と、世界恐慌、モントリオール議定書の批准がそれにあたると思われる。(農業法とも関連した)メタン排出の変化も1990年代以降の温暖化の鈍化(ハイエタス)と関係しているかもしれない。従って、この結果は、温室効果ガスの削減が短期的な温暖化速度の低下に繋がることを示唆している。
Burials indicate Viking sacrifices
埋蔵物はバイキングの生け贄行為を示唆している
J. Archaeol. Sci. 41, 533–540 (2013)
1980年代にノルウェーの島で行われた発掘によって、6つの穴から10人の遺骨が見つかり、その年代はAD550-1030年であることが分かった。その後の調査によって、3つの穴に共通して、頭蓋骨が少なくとも1体は欠損していることが分かった。DNA分析と窒素・炭素同位体分析から、それらは一緒に埋葬されている人と異なる母親を持つこと、より肉を食べていなかったことなどが分かった。おそらく彼らは奴隷で、生け贄として一緒に葬られたのだと想像される。
Injected gas makes Earth rumble
注入されたガスが地球をゴロゴロさせた
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/pxs (2013)
過去数年間にテキサスの石油井において発生した地震(18件はM3.0-4.4の間)は、地下への気体CO2注入が原因である可能性がある。それまで排水の注入が原因と考えられていたが、ガスの注入によって地震が起きた例としては最初の事例になるかもしれない。地震波の解析から震源を特定したところ、掘削井であることが特定され、滑りが断層に沿って起きた可能性があるという。しかし地震を誘発していない掘削井もあることから、地震のきっかけになる場所を予測するためには、依然としてより多くのデータが必要とされている。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Oil recovery may have triggered Texas tremors
石油回収がテキサスの地震を引き起こしたのかもしれない
Jeff Tollefson
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
地中へのCO2隔離で地震が増加?
SEVEN DAYS
※今回は省略
NEWS IN FOCUS
Mars mission set for launch
火星のミッションが打ち上げ準備に
Alexandra Witze
NASAのMAVEN探査機は火星にはもうほとんどない大気の謎を解き明かすことを目的としている。
>関連した記事(Science#6159 "News & Analysis")
Orbiting MAVEN Mission Set to Trace a Planet's History in Thin Martian Air
薄い火星の大気で惑星の過去を辿るためのMAVEN軌道ミッションが始まる
Yudhijit Bhattacharjee
今月末、NASAが火星に送ろうとしている探査機(MAVEN)は火星の大気を観測することにより、注意深く火星の数十億年間の歴史を紐解くことを目標としている。
COMMENT
Global change: Ecology must evolve
全球的な変化:生態系は進化するに違いない
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
NEWS & VIEWS
Solar System: Russian skyfall
太陽系:ロシアの落下物
Natalia Artemieva
Borovička et al.とBrown et al.の解説記事。
最近ロシア上空に突入し、空中分解した20mの隕石は、壮大な空中ショーとなっただけでなく、高速衝突に関する理解を深める上でこの上ないデータを提供してくれた。
>Nature ハイライト
天の崩落:チェリャビンスク火球の軌跡、起源と空中爆発
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ロシアの隕石、空前の規模の爆発
Biodiversity: The ecological deficit
生物多様性:生態学的な欠陥
Andrew Gonzalez
タイのChiew Larnダム建設から25年が経過して、森林に棲息していた小型ほ乳類がほぼ絶滅しかけている。その原因は生息地が断片化したことにあると考えられる。生物多様性消失に遅れ(ラグ)があることの際立った例となっている。
LETTERS
The trajectory, structure and origin of the Chelyabinsk asteroidal impactor
チェリャビンスク天体衝突の軌道、構造、起源
Jiří Borovička, Pavel Spurný, Peter Brown, Paul Wiegert, Pavel Kalenda, David Clark & Lukáš Shrbený
2013年2月15日のチェリャビンスクの隕石衝突のビデオ記録から、その軌道が再現された。小天体86039(19999 NC43)のものにかなり類似していることから、かつては同じ天体であった可能性が示唆される。
※19999 NC43は太陽の周りを回る直径2.2キロほどの小惑星で、数年ごとに1回地球軌道に接近。120万年前に何らかの原因で分裂したと考えられる。
A 500-kiloton airburst over Chelyabinsk and an enhanced hazard from small impactors
チェリャビンスク上空の500キロトン相当の空中破裂と小型衝突体によって促進された災害
P. G. Brown et al.
直径17-20mの隕石の空中分解は、ダイナマイト500キロトンに相当するエネルギーを持っていたと推定される。
※広島型原爆のネネルギーは約15キロトン
Evidence for high salinity of Early Cretaceous sea water from the Chesapeake Bay crater
チェサピーク湾のクレーターから得られた白亜紀初期の海水が高塩分であったことの証拠
Ward E. Sanford, Michael W. Doughten, Tyler B. Coplen, Andrew G. Hunt & Thomas D. Bullen
チェサピーク湾のクレーターで見つかった、地下1,000mの地下水が高塩分であることは、隕石衝突時に蒸発岩が溶解したことや浸透(osmosis)、衝突加熱による蒸発などが原因と考えられてきた。
同位体分析による化学的証拠や物理的観測などから、それが白亜紀初期の北大西洋の海水起源であることが示唆された。塩分は70‰と、現在の2倍の値と推定され、当時この海域がほとんど閉鎖されていた事実と整合的である。大西洋沿岸部の至る所にこうした高塩分地下水が眠っている可能性がある。
>Nature ハイライト
白亜紀海洋の原始海水
The earliest known holometabolous insects
これまで知られている中で最も初期の完全変態型昆虫
André Nel et al.
石炭紀のペンシルベニアンに相当する4体の昆虫と1体の幼生の化石が記載された。
>Nature ハイライト
初期の昆虫群の多様性
Economic link to global warming
地球温暖化に対する経済的な繋がり
Nature Geosci. http://doi.org/p2b (2013)
地球温暖化の速度の変化と人間活動の重要な出来事との間には密接な繋がりがあるかもしれない。1880年以来の地表平均気温と温室効果ガス濃度の記録から、2度の大戦と世界的な経済恐慌の際に温暖化の速度が鈍化していたことが示された。またモントリオール議定書の発行後、温室効果ガスでもあるフロンガス(CFCs)の排出量が規制された結果、温暖化の速度が鈍化するのを助けた可能性も示唆されている。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Ozone-hole treaty slowed global warming
オゾンホール条約が地球温暖化を遅くした
Hannah Hoag
1987年のモントリオール議定書が発行されなければ、現在の気候は0.1℃より温暖化していた可能性も指摘されている。しかしながら、彼らの発見は相関関係であり、必ずしも因果関係を示していない。さらに、近年の温暖化の鈍化(ハイエタス)も同じメカニズムである可能性は低い。彼らの研究ではエアロゾルや海の熱吸収の影響を考慮していないからである。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
地球温暖化減速、フロン規制の効果か
>話題の論文
Statistically derived contributions of diverse human influences to twentieth-century temperature changes
統計学的に引き出された様々な人類の影響が20世紀の温度変化に与えた寄与
Francisco Estrada, Pierre Perron & Benjamín Martínez-López
最新の統計学的手法を用いて20世紀の地表面気温の変化の原因を考察。一部他の要因の放射強制力も寄与しているが、主として大気中の温室効果ガス濃度で放射強制力の変化とそれに伴う気温変化が説明できることが示された。温暖化の速度が鈍化していた時期においては人間活動が関与していた可能性があり、2度の世界大戦と、世界恐慌、モントリオール議定書の批准がそれにあたると思われる。(農業法とも関連した)メタン排出の変化も1990年代以降の温暖化の鈍化(ハイエタス)と関係しているかもしれない。従って、この結果は、温室効果ガスの削減が短期的な温暖化速度の低下に繋がることを示唆している。
Burials indicate Viking sacrifices
埋蔵物はバイキングの生け贄行為を示唆している
J. Archaeol. Sci. 41, 533–540 (2013)
1980年代にノルウェーの島で行われた発掘によって、6つの穴から10人の遺骨が見つかり、その年代はAD550-1030年であることが分かった。その後の調査によって、3つの穴に共通して、頭蓋骨が少なくとも1体は欠損していることが分かった。DNA分析と窒素・炭素同位体分析から、それらは一緒に埋葬されている人と異なる母親を持つこと、より肉を食べていなかったことなどが分かった。おそらく彼らは奴隷で、生け贄として一緒に葬られたのだと想像される。
Injected gas makes Earth rumble
注入されたガスが地球をゴロゴロさせた
Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/pxs (2013)
過去数年間にテキサスの石油井において発生した地震(18件はM3.0-4.4の間)は、地下への気体CO2注入が原因である可能性がある。それまで排水の注入が原因と考えられていたが、ガスの注入によって地震が起きた例としては最初の事例になるかもしれない。地震波の解析から震源を特定したところ、掘削井であることが特定され、滑りが断層に沿って起きた可能性があるという。しかし地震を誘発していない掘削井もあることから、地震のきっかけになる場所を予測するためには、依然としてより多くのデータが必要とされている。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Oil recovery may have triggered Texas tremors
石油回収がテキサスの地震を引き起こしたのかもしれない
Jeff Tollefson
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
地中へのCO2隔離で地震が増加?
SEVEN DAYS
※今回は省略
NEWS IN FOCUS
Mars mission set for launch
火星のミッションが打ち上げ準備に
Alexandra Witze
NASAのMAVEN探査機は火星にはもうほとんどない大気の謎を解き明かすことを目的としている。
>関連した記事(Science#6159 "News & Analysis")
Orbiting MAVEN Mission Set to Trace a Planet's History in Thin Martian Air
薄い火星の大気で惑星の過去を辿るためのMAVEN軌道ミッションが始まる
Yudhijit Bhattacharjee
今月末、NASAが火星に送ろうとしている探査機(MAVEN)は火星の大気を観測することにより、注意深く火星の数十億年間の歴史を紐解くことを目標としている。
COMMENT
Global change: Ecology must evolve
全球的な変化:生態系は進化するに違いない
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
RESEARCH
NEWS & VIEWS
Solar System: Russian skyfall
太陽系:ロシアの落下物
Natalia Artemieva
Borovička et al.とBrown et al.の解説記事。
最近ロシア上空に突入し、空中分解した20mの隕石は、壮大な空中ショーとなっただけでなく、高速衝突に関する理解を深める上でこの上ないデータを提供してくれた。
>Nature ハイライト
天の崩落:チェリャビンスク火球の軌跡、起源と空中爆発
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
ロシアの隕石、空前の規模の爆発
Biodiversity: The ecological deficit
生物多様性:生態学的な欠陥
Andrew Gonzalez
タイのChiew Larnダム建設から25年が経過して、森林に棲息していた小型ほ乳類がほぼ絶滅しかけている。その原因は生息地が断片化したことにあると考えられる。生物多様性消失に遅れ(ラグ)があることの際立った例となっている。
LETTERS
The trajectory, structure and origin of the Chelyabinsk asteroidal impactor
チェリャビンスク天体衝突の軌道、構造、起源
Jiří Borovička, Pavel Spurný, Peter Brown, Paul Wiegert, Pavel Kalenda, David Clark & Lukáš Shrbený
2013年2月15日のチェリャビンスクの隕石衝突のビデオ記録から、その軌道が再現された。小天体86039(19999 NC43)のものにかなり類似していることから、かつては同じ天体であった可能性が示唆される。
※19999 NC43は太陽の周りを回る直径2.2キロほどの小惑星で、数年ごとに1回地球軌道に接近。120万年前に何らかの原因で分裂したと考えられる。
A 500-kiloton airburst over Chelyabinsk and an enhanced hazard from small impactors
チェリャビンスク上空の500キロトン相当の空中破裂と小型衝突体によって促進された災害
P. G. Brown et al.
直径17-20mの隕石の空中分解は、ダイナマイト500キロトンに相当するエネルギーを持っていたと推定される。
※広島型原爆のネネルギーは約15キロトン
Evidence for high salinity of Early Cretaceous sea water from the Chesapeake Bay crater
チェサピーク湾のクレーターから得られた白亜紀初期の海水が高塩分であったことの証拠
Ward E. Sanford, Michael W. Doughten, Tyler B. Coplen, Andrew G. Hunt & Thomas D. Bullen
チェサピーク湾のクレーターで見つかった、地下1,000mの地下水が高塩分であることは、隕石衝突時に蒸発岩が溶解したことや浸透(osmosis)、衝突加熱による蒸発などが原因と考えられてきた。
同位体分析による化学的証拠や物理的観測などから、それが白亜紀初期の北大西洋の海水起源であることが示唆された。塩分は70‰と、現在の2倍の値と推定され、当時この海域がほとんど閉鎖されていた事実と整合的である。大西洋沿岸部の至る所にこうした高塩分地下水が眠っている可能性がある。
>Nature ハイライト
白亜紀海洋の原始海水
The earliest known holometabolous insects
これまで知られている中で最も初期の完全変態型昆虫
André Nel et al.
石炭紀のペンシルベニアンに相当する4体の昆虫と1体の幼生の化石が記載された。
>Nature ハイライト
初期の昆虫群の多様性