Science
VOL 338, ISSUE 6106, PAGES 429-568 (26 OCTOBER 2012)
Editors' Choice
Blowing in the Solar Wind
太陽風でたなびく
Astrophys. J. 759, L19 (2012).
Voyagerは1977年の打ち上げ以降、宇宙の深部へと進んでいるが、2007年に太陽風の影響が最も最低の値を示す空間を横断した(太陽系の端)。その6ヶ月前にTermination shockと呼ばれる、星間物質によって太陽風の速度が激減する境界を通過していた。しかし2011-2012年にVoyagerから送られてきたプラズマのデータはTermination shock通過直後と同程度の値を示し、再度太陽風の影響が増加したことを示している。
The Core from Above
上空からの核
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109, 10.1073/ pnas.1207346109 (2012).
地球のコアは固体の内核と液体の外核でできており、それにより地磁気が発生していると考えられている。逆に地磁気の変動を観測することで核の状態を知ることができる。さらに重力場の変動からも核の状態を知ることができるが、人工衛星で重力を観測する際には海水や河川などの流体の変動を補正しなければならない。Mandeaほかはアフリカ地下深部を中心とした変動を観測し、コア・マントル境界の密度の不均質性や相互作用によって説明が可能だとしている。
News of the Week
Fisheries Data Restricted to Protect Trade Secrets
貿易の秘密を保護するために漁業のデータを制限
NOAAは個々の漁船に観察者を乗船させて「どの魚を」「どれほど」「どの海域で」「どのような漁具を用いて」捕獲したかのデータを収集していたが、そうして集積されたデータの公のアクセスを制限する措置を取ろうとしている。
Doubling Biodiversity Aid
生物多様性への援助が2倍に
A 10-Year Ban for GM Field Trials?
10年間の遺伝子組み換え作物の試験栽培の禁止?
インドの科学有識者パネルは、遺伝子組み換え食品・作物(昆虫に強い綿の栽培など)の試験栽培に対する10年間の禁止期間を設けることを要請した。10年間かけて監視機関の設立や健康・環境影響の評価を行うことを目的としている。この提案自体はまだ完全に可決されたわけではなく、いまなお熱い議論を呼んでいる。ワクチンの専門家であり、バイオテクノロジー局の秘書のMaharaj Kishan Bhanは「気候変動と人口増加に対して食料生産を維持するためにも遺伝子組み換えを推進する必要がある」と言う。
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Rogue Geoengineering Experiment
Rogueの地球工学実験
British Columbia・Haida Gwaii(カナダ西部)の311km沖にて改造した漁船を用いて海洋表層に鉄を散布する地球工学の実験が一般企業によって国際的なコンセンサスがないまま実行されたことが、環境汚染や違法ゴミ投棄などの違法行為に相当するのではないかとして議論を呼んでいる。鉄散布の前後の衛星観測データから植物プランクトンの増殖量の変化を観察するというシンプルな実験であったらしい。渦による輸送により、散布海域から1,000kmも離れたところまでその影響は及ぶと考えられる。
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Sharper, Sharper, and Sharper Still
さらに鮮明に、さらに鮮明に、まださらに鮮明に
Voyerger 2が1986年に天王星を撮影したときの画像はそれをいくら画像処理してもその特徴がよく分からなかった。しかし今では技術と観測機器の性能が向上したおかげで天王星の姿が鮮明に分かるようになってきた。例えば天王星の雲には縞状の構造があり、また北極には地球の夏に見られるような積乱雲状の雲があることが分かった。
Small Satellite, Big Mission
小さい人工衛星だが大きなミッション
ヨーロッパ宇宙局は2017年にCharacterizing Exoplanets Satellite (Cheops)を打ち上げる予定。未だ見つかっていない系外惑星の探査というよりは、既に知られている系外惑星の詳細な観測を行うことを目的としている。
French Opinion on GM Study
遺伝子組み換え研究に対するフランスの意見
「遺伝子組み換えトウモロコシでマウスが死亡した」実験に関して、フランスの評議会(ANSES)は実験の手法・統計・解釈の点で問題があったと結論づけた。
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News & Analysis
Prison Terms for L'Aquila Experts Shock Scientists
L'Aquilaの専門家に対する禁固刑が科学者に衝撃を与える
Edwin Cartlidge
2009年にL'Aquilaを襲った地震で犠牲者と大きな被害が出たことについて、事前に「安全宣言」を出した地震学の専門家7名に対して6年の刑期が求められている。
Questions About Japanese Researcher Go Back Years
日本の研究者(森口氏)に関する疑問を何年も遡る
Jennifer Couzin-Frankel and Dennis Normile
嘘のハーバードの肩書きの下でなされた革新的な幹細胞の実験が、研究のエンタープライズ(冒険心?)に関する疑問を浮上させている。
News Focus
Food Labeling Issue Tops State Ballot Questions
食品のラベリング問題が州の投票者の質問のトップに
Meghna Sachdev
カリフォルニア州の議題番号37(200の遺伝子組み換え食物にラベリングをすることを要求する)は一般市民に対し遺伝子組み換え食品に対する間違ったメッセージを送ることになると科学者は言う。遺伝子組み換えという言葉が他の商品とは’違う’という印象を消費者に植え付け、購買意欲を削ぐ可能性があるという懸念である。
Letters
A Curiosity Moment for Tropical Biology?
熱帯の生物学に対する興味深い瞬間?
Charles H. Cannon
キュリオシティーが火星に降り立ったことには驚いたが、一方で我々は熱帯雨林の調査にそれほど多額の資金を投入したことがあるだろうか?今こそ惑星探査で培った技術を地上の観測に応用するときである。
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Perspectives
The Risks of Overfishing
過剰漁獲のリスク
Ellen K. Pikitch
現在世界中で行われている漁業が個々の魚だけでなく、海洋生態系全体にまで影響を及ぼしている。
Measuring Solar Magnetism
太陽の磁場を測定する
Alfred G. de Wijn
太陽の大気の磁場を正確に測定するにはどうすれば良いのだろう?
Did Australopiths Climb Trees?
アウストラロピテクスは木に登っていたか?
Susan Larson
若者のアウストラロピテクスの肩の骨は現存する猿のそれと類似しており、木登りが2足歩行をしていた人類の祖先にとっても重要であったことを示唆している。
Fishing for Answers off Fukushima
福島沖の漁業に対する答え
Ken O. Buesseler
福島沖の魚の放射性物質のレベルは変動が大きく、また事故後上昇したままである。それは放射の原因となる物質の流入が継続していることを示している。
>BBC NEWSの記事はこちら
>Scienctific Americanの記事はこちら
>The Guardianの記事はこちら
>ウッズホール海洋研究所のプレスリリースはこちら
Research Article
Detecting Causality in Complex Ecosystems
複雑な生態系から因果関係を検出する
George Sugihara, Robert May, Hao Ye, Chih-hao Hsieh, Ethan Deyle, Michael Fogarty, and Stephan Munch
非線形系の空間復元に基づいた新しい手法は、相関と因果関係を区別することができる。
Reports
Feathered Non-Avian Dinosaurs from North America Provide Insight into Wing Origins
北米から発掘された飛べない恐竜の羽が翼の起源に対する知見を与える
Darla K. Zelenitsky, François Therrien, Gregory M. Erickson, Christopher L. DeBuhr, Yoshitsugu Kobayashi, David A. Eberth, and Frank Hadfield
羽の生えた獣脚類の恐竜化石は、動物の羽の機能進化に関する知見を得るための魅力的な研究対象の一つである。カナダのAlbertaの上部白亜紀の地層から発掘されたダチョウ恐竜(オルニトミムス; ornithomimosaurs)の化石は糸状の羽が生涯において身体を覆っていたこと、羽状の構造が大人の前脚に見られることを示している。つまり前脚の羽は生殖行動に用いられていたことを物語っている。
Australopithecus afarensis Scapular Ontogeny, Function, and the Role of Climbing in Human Evolution
アウストラロピテクス・アファレンシスの肩甲骨の発生、機能、人類進化における木登りの役割
David J. Green and Zeresenay Alemseged
霊長類の歩行に関する適応を研究する上で肩甲骨の形態が役に立つが、それらの化石記録が得られることは稀である。エチオピアから発掘された子供のアウストラロピテクス・アファレンシスの肩甲骨の化石は、ぶら下がり行動をする猿の特徴と類似しており、木登り行動を行っていたことを示唆している。
Status and Solutions for the World’s Unassessed Fisheries
世界の評価されていない漁業の状況と解決策
Christopher Costello, Daniel Ovando, Ray Hilborn, Steven D. Gaines, Olivier Deschenes, and Sarah E. Lester
先進国のよく監視されている漁業は持続可能な漁業へと向かいつつあるが、残りの80%はほとんど監視されておらず評価がなされていない。「小型の評価されていない漁業」は「大型のよく評価されている漁業」に比べて悪い状態にあり、また大型・小型の魚の資源量は低下し続けていることが分かった。正しい管理を行うことで資源量や漁獲量が改善することが示唆される。