Main contents

☆主なコンテンツ
1、新着論文 2、論文概説 3、コラム 4、本のレビュー 5、雑記(PC・研究関連)
6、気になった一文集(日本語、English) 7、日記(日本語、English) おまけ、Twilog

2013年12月5日木曜日

新着論文(Nature#7478)

Nature
Volume 504 Number 7478 pp7-182 (5 December 2013)

RESEARCH HIGHLIGHTS
Clues to extinction in lava gases
溶岩のガスの中に見つかった絶滅のヒント
Geology http://doi.org/p7s (2013)
2億5300万年前のペルム紀末の絶滅イベントはシベリアにおける巨大な火山噴火を伴っていたことが知られている。しかしその因果関係についてはまだはっきりと分かっていない。シベリアの溶岩の中のガスの分析結果とモデルシミュレーションを組み合わせることで、CO2やSO2といった酸性ガスが強烈な酸性雨を降らせ、さらにクロロメタンがオゾン層を破壊したことが絶滅に寄与した可能性が示唆。

Sharks never forget home
サメは故郷を決して忘れない
Mol. Ecol. http://doi.org/p78 (2013)
1995年から2012年にかけてバハマで行われたレモンザメ(lemon sharks; Negaprion brevirostris)のDNAの分析から、1993-1998年の間に生まれたメスのサメが出産のために生まれた地へ戻っていたことが分かった。サメでそうした里帰りの例が示されたのは初だという。ある特定の出産地があるらしく、そうした地域は漁業禁止区域に設定するなど、保全に向けた努力が必要となる。

SEVEN DAYS
Death of a comet
隕石の死
アイソン彗星は11/28に太陽の近くをかすめた際に分解し、その塵の雲だけを残して消え去ったと思われる。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Remnants suggest comet ISON still going
Alexandra Witze

On track to Mars
火星への道の途上
インドによる火星探査機(Mangalyaan)が地球の軌道を脱した。300日間かけて火星に到達し、成功すればインド初の惑星横断探査機となる。

X-ray vision
X線の目
ヨーロッパ宇宙局の次のミッションの中心はX線宇宙望遠鏡となることが11/28に公表された。ブラックホールや星間ガスの観測に用いられる。その後、2034年までの次の巨大ミッションは重力波の宇宙観測になると予定されている。
>より詳細な記事(Nature NEWS BLOG)
X-ray observatory confirmed as ESA’s next big mission
Elizabeth Gibney

China Moon rover
中国の月探査機
中国が初の月の地上探査機の打ち上げを行った。探査機を搭載したロケット(Chang’e 3)は中国南西部のXichang衛星打ち上げセンターより12/2に打ち上がった。

NEWS IN FOCUS
Hominin DNA baffles experts
ヒトのDNAが専門家を悩ませる
Ewen Callaway
ヒトの祖先のこれまでで最も古いDNAシーケンス分析から、謎めいた集団へのリンクが示唆。

FEATURES
North America's broken heart
北アメリカの壊れた心臓
Jessica Marshall
10億年前の隆起によって、北米大陸の中央部は割られかけた。その原因の解明がまもなくなされるかもしれない。

COMMENT
Lunar conspiracies
月の陰謀
「現在の月の形成理論はあまりに宇宙で起きた偶然に頼りすぎている」とRobin Canupは言う。彼女はより良いモデルと火星の探査ミッションの必要性を主張する。

CORRESPONDENCE
Take more care over glacier facts
氷河の事実にもっと細かい注意を
Alex S. Gardner
2010年にはIPCCが氷河ゲート事件(glaciergate)を起こしたが、気候変化が氷河に与える影響の評価には大きな誤差が伴うことをよりよく理解しなければならない。

Recycle waste for nourishing soils
土壌を豊かにするためにゴミをリサイクルせよ
Johannes Lehmann

FUTURES
Planetary defences
地球防御
S. R. Algernon

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SPECIALS "COASTAL REGIONS"
特集:沿岸域

INTRODUCTION
Coastal regions
沿岸域
Juliane Mossinger, Michael White & Patrick Goymer
 沿岸部には多くの人が住んでおり、人々は沿岸部の生態系サービスからあらゆる恩恵を受けている。近年の地球温暖化とそれに伴う海水準上昇、さらにはダム建設や地下水の過剰揚水などが沿岸部の経済・生態系を脅かしている。
 この特集では沿岸研究に関する現在の科学的課題を浮き彫りにし、より良く沿岸部の脆弱性を理解する必要があることを強調する。

REVIEWS
North Atlantic warming and the retreat of Greenland's outlet glaciers
北大西洋の温暖化とグリーンランドの溢流氷河の後退
Fiammetta Straneo & Patrick Heimbach
 過去20年間の間にグリーンランド氷床の質量損失は4倍に増加し、全球の海水準上昇の4分の1に寄与していると考えられている。海水準よりも低いところの氷の融解がグリーンランドの溢流氷河の後退を招いていると考えられているものの、物理的プロセスの理解は不足している。1950年以降、「大気循環の変化」「海洋の数十年規模変動」「表層水の熱容量の長期的増加」のすべてが北大西洋の温暖化に寄与しており、氷河の融解を促進していると考えられる。

Coastal flooding by tropical cyclones and sea-level rise
熱帯低気圧と海水準上昇による沿岸部の氾濫
Jonathan D. Woodruff, Jennifer L. Irish & Suzana J. Camargo
気候変化が台風の上陸にどのような影響を与えるかはよく分かっていない。しかしそれとは関係なしに、加速する海水準上昇は熱帯低気圧による沿岸部の氾濫を増加させると思われる。沿岸部の社会は急速な変化と共存しなければならない。人類による地盤沈下の軽減などを通して、適応戦略を取る必要がある。

Tidal wetland stability in the face of human impacts and sea-level rise
人類影響と海水準上昇の下の干潟の安定性
Matthew L. Kirwan & J. Patrick Megonigal
人間は湿地の生態系サービスに影響を与え、またそれに依存して暮らしている。沿岸部の湿地は海水準上昇に脆弱であると長く考えられてきたものの、近年植物の成長や地形変化などによってある程度の耐性がある可能性も示唆されている。気候変化・栄養塩流入・堆積物供給・地盤沈下などの様々な要因が影響し、そのフィードバックには人間活動が大きく関与している。

The changing carbon cycle of the coastal ocean
沿岸部の海の変化しつつある炭素循環
James E. Bauer, Wei-Jun Cai, Peter A. Raymond, Thomas S. Bianchi, Charles S. Hopkinson & Pierre A. G. Regnier
沿岸部は全球のダイナミックに変動する炭素循環の重要な構成要素の一つである。しかし、その多様な炭素の吸収源・放出源としての振る舞いと複雑な相互作用とはあまりよく理解されていない。近年、産業革命以降の沿岸部は炭素の”吸収源”として寄与している証拠が得られつつある。将来の沿岸部の炭素循環には依然として人間活動の影響が大きいと思われる。

Offshore fresh groundwater reserves as a global phenomenon
全球的な現象としての沖の淡水地下水貯蔵庫
Vincent E.A. Post, Jacobus Groen, Henk Kooi, Mark Person, Shemin Ge & W. Mike Edmunds
大陸棚の地下には低塩分の地下水が大量にあることが知られているが、陸水の海への流入だけでは単純に説明が出来ない。大陸棚水文学の研究は堆積学・海洋地球化学を代表とする他の学術領域の発展にも寄与すると思われる。

PERSPECTIVES
Ecosystem-based coastal defence in the face of global change
全球の変化の運命の下での生態系に基づいた沿岸防護
Stijn Temmerman, Patrick Meire, Tjeerd J. Bouma, Peter M. J. Herman, Tom Ysebaert & Huib J. De Vriend
多くの沿岸域で、これまでに行われてきたような海岸堤防の建設などが持続不可能になりつつある。生態系を利用した海岸の氾濫からの保護がより持続的で、低コストで、生態的に優しい手段であることを示す。さらにそれは全球的なスケールで採用することが可能なものでもある。

Green and golden seaweed tides on the rise
緑と金の海藻の打ち上げが増加傾向に
Victor Smetacek & Adriana Zingone
世界の至る所で海草類の大量の打ち上げが増加していることが報告されている。それらの腐敗は沿岸部を窒息させ、観光・漁業にも悪影響を及ぼす。沿岸部の富栄養化が原因であることは疑いもないが、個々のイベントの原因は複雑であり、その軽減に向けた研究が必要とされている。

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RESEARCH
Planetary science: Shadows cast on Moon's origin
惑星科学:月の起源に投げかけられる影
Tim Elliott & Sarah T. Stewart
新たな観測とモデルシミュレーションの出現によって、月の形成理論に次々と課題が投げかけられている。地球化学的・初期動力学的視点から2人の専門家が現在の知識をレビューする。
>Natureハイライト
月をリメークする:現在の月形成理論は不十分であることが分かり、新しいモデルが求められている

Astrophysics: Magnetic fields in γ-ray bursts
天文学:γ線バースト中の磁場
Maxim Lyutikov
Mundell et al.の解説記事。

LETTERS
Highly polarized light from stable ordered magnetic fields in GRB 120308A
GRB 120308Aの安定で秩序立った磁場からの大きく偏光した光
C. G. Mundell, D. Kopač, D. M. Arnold, I. A. Steele, A. Gomboc, S. Kobayashi, R. M. Harrison, R. J. Smith, C. Guidorzi, F. J. Virgili, A. Melandri & J. Japelj
>Natureハイライト
γ線バースターからの最初の光

Olivine in an unexpected location on Vesta’s surface
ヴェスタの表面のある場所にある予期せぬかんらん岩
E. Ammannito, M. C. De Sanctis, E. Palomba, A. Longobardo, D. W. Mittlefehldt, H. Y. McSween, S. Marchi, M. T. Capria, F. Capaccioni, A. Frigeri, C. M. Pieters, O. Ruesch, F. Tosi, F. Zambon, F. Carraro, S. Fonte, H. Hiesinger, G. Magni, L. A. McFadden, C. A. Raymond, C. T. Russell & J. M. Sunshine
小惑星ヴェスタの南極にはマントル起源のかんらん岩が存在することが期待されていたが、NASAのDawn探査機のデータはそれとは反対に、北極の亜表層にかんらん岩が存在することを示している。
>Natureハイライト
ベスタの意外な場所で発見されたカンラン石

Late-twentieth-century emergence of the El Niño propagation asymmetry and future projections
エルニーニョの伝播の非対称性の20世紀末の出現と将来予測
Agus Santoso, Shayne McGregor, Fei-Fei Jin, Wenju Cai, Matthew H. England, Soon-Il An, Michael J. McPhaden & Eric Guilyardi
エルニーニョ・南方振動(ENSO)は全球の気候にも影響を与える数年スケールの内部振動である。その現象の東西伝播はあるときは西向き、あるときは東向きであり、その伝播の非対称性の原因はこれまでのところ解明されていない。
 赤道太平洋上の西向きの海流が弱い時に伝播の非対称性が生じやすいことが明らかに。それは温暖化した気候の際に起こると予測されているものである。モデルのアンサンブル・シミュレーションから、将来温暖化した世界では東向きの伝播が2倍になることが示唆。伝播非対称性のより頻繁な出現は、地球の気候温暖化の証拠となるかもしれない。
>Natureハイライト
太平洋赤道海流とエルニーニョ/ラニーニャの非対称性

Foundering of lower island-arc crust as an explanation for the origin of the continental Moho
大陸モホ面の起源を説明する島弧下部地殻の沈下
Oliver Jagoutz & Mark D. Behn

2013年12月4日水曜日

新着論文(SR, Ncom)

Scientific Reports
☆12 November 2013
特になし

☆19 November 2013
Deep cognitive imaging systems enable estimation of continental-scale fire incidence from climate data
Ritaban Dutta, Jagannath Aryal, Aruneema Das & Jamie B. Kirkpatrick
気候変化の結果、森林火災にも影響が生じると思われる。気候データから森林火災の発生予測の精度を向上できるかどうかを検証。

☆26 November 2013
Ingested plastic transfers hazardous chemicals to fish and induces hepatic stress
Chelsea M. Rochman, Eunha Hoh, Tomofumi Kurobe & Swee J. Teh
>Nature姉妹紙 ハイライト
プラスチック破片由来の化学物質がメダカの健康に及ぼす影響

☆3 December 2013
Iodine isotopes species fingerprinting environmental conditions in surface water along the northeastern Atlantic Ocean
Peng He, Xiaolin Hou, Ala Aldahan, Göran Possnert & Peng Yi


Nature Communications
☆13 November 2013
Morphological and genetic evidence for early Holocene cattle management in northeastern China
Hucai Zhang, Johanna L.A. Paijmans, Fengqin Chang, Xiaohong Wu, Guangjie Chen, Chuzhao Lei, Xiujuan Yang, Zhenyi Wei, Daniel G. Bradley, Ludovic Orlando, Terry O'Connor and Michael Hofreiter
ウシの家畜化は完新世初期の近東と南アジアが起源と考えられてきたが、中国北東部からも新たな証拠が得られた。

Carbon isotope records reveal precise timing of enhanced Southern Ocean upwelling during the last deglaciation
Giuseppe Siani, Elisabeth Michel, Ricardo De Pol-Holz, Tim DeVries, Frank Lamy, Mélanie Carel, Gulay Isguder, Fabien Dewilde and Anna Lourantou
>関連した記事(Nature Geoscience#Dec2013 "Research Highlights")
Southern upwelling
南大洋の湧昇
Nature Commun. 4, 2758 (2013).
氷期の終わりには大気中のCO2濃度が段階的に上昇したことが知られている。南大洋周辺海域で得られた海洋堆積物中の浮遊性・底性有孔虫の放射性炭素の濃度の差は、最終退氷期に差が小さくなっている、つまり深層と表層とがよりよく混合していたことを示唆しており、湧昇が強まっていたことを物語っている。従って、氷期に深海底に蓄えられた炭素が大気へと移動したことが大気CO2濃度の上昇に大きく寄与したことを物語っている。

☆20 November 2013
特になし

☆27 November 2013
Pink marine sediments reveal rapid ice melt and Arctic meltwater discharge during Dansgaard–Oeschger warmings
Tine L. Rasmussen and Erik Thomsen
氷期のD/Oサイクルの亜氷期(stadial)の際にはNordic Seasは海氷に覆われ、大西洋子午面循環は停滞していたと考えられている。Svalbard諸島の北西部から得られた堆積物コアの過去55kaの色・粒度・同位体分析。通常は緑色をしたシルトの堆積物が、融氷があったと思われる亜間氷期(inter-stadial)の際にはピンク色の堆積物(Devonian Red Beds)に取って代わることが分かった。同時にIRDが減少するのは、氷床が後退し、一方で融水は増大した結果と考えられる。

新着論文(PNAS)

PNAS
☆12 November 2013; Vol. 110, No. 46
特になし

☆19 November 2013; Vol. 110, No. 47
特になし

☆26 November 2013; Vol. 110, No. 48
Letters
Oxygen isotope anomaly not present in water vapor from Alert, Canada
Martin F. Miller

Reply to Miller: Concerning the oxygen isotope anomaly observed in water vapor from Alert, Canada, and its stratospheric source
Ying Lin, Robert N. Clayton, Lin Huang, Noboru Nakamura, and James R. Lyons

Commentaries
Local diversity stays about the same, regional diversity increases, and global diversity declines
Chris D. Thomas
Vellend et al.の解説記事。

Reports
Microphysical effects determine macrophysical response for aerosol impacts on deep convective clouds <OPEN>
Jiwen Fan, L. Ruby Leung, Daniel Rosenfeld, Qian Chen, Zhanqing Li, Jinqiang Zhang, and Hongru Yan

Identifying external influences on global precipitation <OPEN>
Kate Marvel and Céline Bonfils

Global meta-analysis reveals no net change in local-scale plant biodiversity over time 
Mark Vellend, Lander Baeten, Isla H. Myers-Smith, Sarah C. Elmendorf, Robin Beauséjour, Carissa D. Brown, Pieter De Frenne, Kris Verheyen, and Sonja Wipf

☆3 December 2013; Vol. 110, No. 49
Commentaries
Forecasting long-term gas production from shale
Luis Cueto-Felgueroso and Ruben Juanes

Reports
Spontaneous abrupt climate change due to an atmospheric blocking–sea-ice–ocean feedback in an unforced climate model simulation
Sybren Drijfhout, Emily Gleeson, Henk A. Dijkstra, and Valerie Livina

Greenland ice sheet motion insensitive to exceptional meltwater forcing
Andrew J. Tedstone, Peter W. Nienow, Andrew J. Sole, Douglas W. F. Mair, Thomas R. Cowton, Ian D. Bartholomew, and Matt A. King

Arctic sea-ice decline archived by multicentury annual-resolution record from crustose coralline algal proxy
Jochen Halfar, Walter H. Adey, Andreas Kronz, Steffen Hetzinger, Evan Edinger, and William W. Fitzhugh
>関連した記事(Nature#7477 "RESEARCH HIGHLIGHTS")
Crusty alga uncovers sea-ice loss
固い藻類が海氷の消失を明らかにする
木の年輪のように、北極海の藻類は過去の気候記録を保存している。Clathromorphum compactumの年輪の厚さとMg/Ca(温度や光量に関係していると考えられる)から得られた646年間にわたる過去の温度記録から、最近のカナダ北極圏の海氷量は過去150年間で劇的に減少し、646年で最低の値となっていることが示された。現在、人工衛星によって海氷のモニタリングが行われているが、それはたかだか1970年代までしか遡れない。この大発見は、北極海の海氷の復元に新たな道を切り開くものとなると期待される。

Deep ocean communities impacted by changing climate over 24 y in the abyssal northeast Pacific Ocean <OPEN>
Kenneth L. Smith, Jr., Henry A. Ruhl, Mati Kahru, Christine L. Huffard, and Alana D. Sherman
深海底の生態系には表層の生物一次生産が重要な役割を負っているが、気候変化が深海にどのような影響を与えるかははっきりとしていない。太平洋北東部の深度4,000mにおける24年間にわたる粒子状有機炭素の供給量のモニタリングから、時折供給量が急激に増大することで、底層の食料が賄われていることが示された。表層の変化が深層にも及んだ結果と考えられ、全球の炭素収支を考える上でも重要な知見となるかもしれない。

2013年12月3日火曜日

新着論文(Ngeo#Dec 2013)

Nature Geoscience
Volume 6 No 12 pp987-1065 (December 2013)

Editorials
Save our sea-level observations
我々の海水準観測を守る
イギリスが提供している平均海水準の観測(Permanent Service for Mean Sea Level)は過去80年間継続して行われている。そうした長期的な記録の価値は筆舌に尽くし難く、またそれらの多様性も維持されなければならない。

The upside of impacts
衝突の良い側面
チェリヤビンスクの火球は小天体や隕石が地球に与える脅威を改めて実感させてくれた。しかし、地球上の生命にとって、隕石衝突は時としてヒーローの役割も果たしていたのである。

In the press
To the Moon with LADEE
LADEEとともに月へ
Emily Lakdawalla
>関連した記事(Response)
NASA 月探査機『LADEE』搭載機器による地球・月間の大容量レーザー通信実験に成功

Research Highlights
Ice loss and ocean life
氷の消失と海洋生命
Glob. Biogeochem. Cycles http://doi.org/p27 (2013)
ここ30年間の間に北極の海氷は急速に縮小しているが、それに伴って海洋のCO2吸収がより活発化している。主にチュクチ海などによる植物プランクトンの一次生産が活発化していることが原因であることがモデルから示された。一方、バレンツ海では温暖化によって逆に海洋から大気へとCO2が放出されており(ヘンリーの法則)、一次生産の効果を打ち消している。将来も炭素吸収は増えると思われるが、物理・化学・生物学的プロセスの理解が不確かであることから、正確な予測は難しいのが現状である。
>話題の論文
Changes in the Arctic Ocean CO2 sink (1996–2007): A regional model analysis
M. Manizza, M. J. Follows, S. Dutkiewicz, D. Menemenlis, C. N. Hill, R. M. Key

Southern upwelling
南大洋の湧昇
Nature Commun. 4, 2758 (2013).
氷期の終わりには大気中のCO2濃度が段階的に上昇したことが知られている。南大洋周辺海域で得られた海洋堆積物中の浮遊性・底性有孔虫の放射性炭素の濃度の差は、最終退氷期に差が小さくなっている、つまり深層と表層とがよりよく混合していたことを示唆しており、湧昇が強まっていたことを物語っている。従って、氷期に深海底に蓄えられた炭素が大気へと移動したことが大気CO2濃度の上昇に大きく寄与したことを物語っている。
>話題の論文
Carbon isotope records reveal precise timing of enhanced Southern Ocean upwelling during the last deglaciation
Giuseppe Siani, Elisabeth Michel, Ricardo De Pol-Holz, Tim DeVries, Frank Lamy, Mélanie Carel, Gulay Isguder, Fabien Dewilde & Anna Lourantou
※僕の投稿論文に非常に深く関係しています。スペインでの国際古海洋学会ではSianiとDe Pol-Holzともこの件について話しました。De Pol-Holz et al., 2010, Ngeoは学界にかなりインパクトを与えた論文なので、その解釈が訂正されたことになり、僕の研究を初めとして多くの研究に影響すると思われます。

Weighing Phobos
フォボスの重さを量る
Icarus http://doi.org/p26 (2013)
火星の衛星フォボスの起源、内部構造、火星との関係性についてはあまりよく分かっていない。2010年のMars Expressによるフライバイの際に得られたデータから、質量と密度を計算したところ、これまで考えられていたよりもはるかに小さいことが示された。おそらく内部はあまり詰まっておらず、多孔質の岩や氷でできていると思われる。火星の重力に捕獲されたものというよりは、火星の近くで集積した不均質な天体であると思われる。

Sunken islands
沈んだ島
Geochem. Geophys. Geosys. http://doi.org/p28 (2013)
ハワイなどの海洋島の形成はマントルから上昇した熱・物質がもたらす火山活動が原因と考えられている。赤道太平洋とインド洋南西部から得られた海洋地殻の地震波反射データによると、海嶺の堆積物の下500-1,000mに平らな面が見られ、おそらく過去に海水準の高さで波の侵食を受けた跡と思われる。海嶺は大きな断層に接していることから、これらの島は火山活動ではなく、テクトニクス的に隆起した島の名残であると思われる。

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Research
News and Views
Mobile magma under Antarctic ice
南極の氷の下の動けるマグマ
John C. Behrendt
Lough et al.の解説記事。
南極では西南極氷床の下に活発な火山が数百万年もの間存在したことが知られている。2010年と2011年の小規模な地震の観測から、氷の下の地殻を移動するマグマが存在することの兆候が確認された。

Evolved magma on Mars
火星で進化したマグマ
Briony Horgan
Wray et al.とCarter & Pouletの解説記事。
火星の表面は玄武岩で覆われており、それはマグマ進化があまりなかったことを物語っている。しかし、火星の古代に形成された地形の鉱物はそれが激しいマグマ活動を経験したことを示唆しており、火山活動が必ずしも稀ではなかったことを示している。

Breaks in trends
傾向のなかの小休止
Felix Pretis & Myles Allen
Estrada et al.の解説記事。
産業革命の全球平均気温の上昇は必ずしも単一でない。統計分析から、そうした温暖化の速度の過去の変化は、経済の停滞からモントリオール議定書の締結といった、人類による影響と直結していることが分かった。
[以下は抜粋]
The impact of this change is small but not negligible: without the reductions in CFC emissions, temperatures today could have been almost 0.1 °C warmer than they actually are.
この変化の影響は小さいが無視できない程度である。もしCFC(フロンガス類)の排出の減少がなければ、今日の温度はおおよそ0.1℃現在の値よりも高くなっていたに違いない。

This simple analysis supports the idea that the reductions in CFC emissions that were enforced by the Montreal Protocol contributed to the warming hiatus of the past 15 years. However, it also suggests that this is unlikely to be the whole story. To fully account for the lack of warming that would have been expected between 1998 and 2012, the reduction in radiative forcing from CFCs would have had to be much stronger.
この単純な分析は「モントリオール議定書によって規制されたCFCの排出量の低下が過去15年間の温暖化のハイエタスの原因である」という考えを支持している。しかしながら、それが全体をうまく説明する可能性が低いことも示している。1998年から2012年の間の温暖化の不足をすべて説明するには、CFCsからの放射強制力の減少がもっと大きくなければならない。

The untidy conclusion is that the explanation of the much-discussed warming hiatus over the past decade and a half is unlikely to be a simple single issue. Various neglected effects that are difficult to capture adequately through deterministic linear trend models — such as stratospheric volcanic aerosols, deep ocean heat uptake, the unusually strong solar minimum and internal climate variability — are all likely to have played a role.
乱雑な結論は「広く議論されている過去15年間の温暖化のハイエタスの原因は一つの単純な問題には帰結できなさそう」ということである。決定論的な線形近似モデルの中では適切に再現することが難しい、様々な無視されている効果(例えば成層圏の火山性エアロゾル、深海の熱吸収、例になく大きい太陽活動極小、内部気候変動など)がすべて役割を負っている可能性が高いためである。

Although Estrada and colleagues’ proposal does not seem to explain the entire hiatus, their findings once again confirm that the warming slow-down does not significantly affect the attribution of most of the warming since about 1960 to human influence.
Estradaほかの提案はハイエタス全体を説明することは難しそうだが、彼らの発見は再度「温暖化の停滞が約1960年以降の温暖化の大部分が人類の影響によるものである」という事実を確たるものにしてくれる。

Deglacial decoupling
退氷期の不一致
Jeffrey P. Severinghaus
Landais et al.の解説記事。
南極の気温と大気中CO2濃度とは氷期には同時に変動していた。南極Dome Cアイスコアの窒素同位体分析から、130kaに始まる1つ前の退氷期の最後の1,500年間にはその一致性がわずかに崩れた稀なケースが発生していたことが明らかに。同時にアジアモンスーンの降水も強まっていたことから、熱赤道がやや北半球よりにシフトしていたと考えられ(陸域の炭素リザーバーの増強と南大洋の湧昇の弱化が期待される)、その究極の原因は北大西洋子午面循環(AMOC)の強化にあると思われる。ただし、一つ前の退氷期には7,000年間にわたるAMOCの抑制など、説明がしにくい現象も生じており、もしかすると地球の離心率が大きくなっていたことが原因かもしれない。

Radical regeneration from isoprene
イソプレンからのラジカルの再生成
Jason D. Surratt
Fuchs et al.の解説記事。
森林が密集した地域からかなりの量のオゾンとエアロゾルの前駆体であるイソプレンが大気へと放出されている。実験的な観測から、イソプレンの酸化反応が大気に自浄能力を付与していることが示された。

Occam's origin of the Moon 
オッカムの月の起源
Linda T. Elkins-Tanton
月の形成は30年もの長きに渡って議論され続けてきた。新たな地球化学分析から、再び惑星科学コミュニティーに疑問が投げかけられている。我々は間違ったプロセスをモデリングしているか、或いはプロセスを間違ってモデリングしているのかもしれない。

Review
Projected response of the Indian Ocean Dipole to greenhouse warming
温室効果温暖化に対するインド洋ダイポールの予想される応答
Wenju Cai, Xiao-Tong Zheng, Evan Weller, Mat Collins, Tim Cowan, Matthieu Lengaigne, Weidong Yu & Toshio Yamagata
インドダイポール現象はアジア・オーストラリアの大部分に影響を与える気候の年々変動である。温暖化によって、インドダイポールの平均場が’正’のモードへとシフトすることがモデルから示されているが、(中心値からの偏差で表現される)正と負のイベントの発生頻度には変化がないことも分かった。
※Wenju Caiは最近Nature・Scienceに年に1本は載せるほどの気鋭の気候モデラー。

Letters
Ancient plutonic processes on Mars inferred from the detection of possible anorthositic terrains
灰長石地形の可能性の検出から推察される火星の古代の深成的過程
J. Carter & F. Poulet
火星の地形には苦鉄質岩石が多いことからこれまで考えられてこなかったが、ケイ質鉱物であるアノーサイト(灰長石)の形成にはマグマ的なプロセスが必要である。Mars Reconnaissance Orbiterによるスペクトル観測はアノーサイトが局所的に分布しており、地球で見られるものと似た深い火山的プロセスが古代にあった可能性を物語っている。

Prolonged magmatic activity on Mars inferred from the detection of felsic rocks
珪長質の岩石の検出から推察される火星の長期的なマグマ活動
James J. Wray, Sarah T. Hansen, Josef Dufek, Gregg A. Swayze, Scott L. Murchie, Frank P. Seelos, John R. Skok, Rossman P. Irwin III & Mark S. Ghiorso
上と同じ。

Biomass preservation in impact melt ejecta
衝突溶融イジェクタの中に保存されたバイオマス
Kieren Torres Howard, Melanie J. Bailey, Deborah Berhanu, Phil A. Bland, Gordon Cressey, Lauren E. Howard, Chris Jeynes, Richard Matthewman, Zita Martins, Mark A. Sephton, Vlad Stolojan & Sasha Verchovsky
衝突イベントの際にクレーターから噴出される物質の温度・圧力は非常に高いため、その中に有機物が残るとは到底考えられていなかった。タスマニア島のダーウィン隕石孔の衝突ガラスの中にバイオマーカーが保存されていることが分かり、隕石衝突によっても有機物が生き残れる可能性を暗示している。
※地球の生命が宇宙起源というパンスペルミア仮説に話が及ぶのでしょうね。

Experimental evidence for efficient hydroxyl radical regeneration in isoprene oxidation
イソプレン酸化下のヒドロキシラジカルの効率的な再生産の実験的証拠
H. Fuchs, A. Hofzumahaus, F. Rohrer, B. Bohn, T. Brauers, H-P. Dorn, R. Häseler, F. Holland, M. Kaminski, X. Li, K. Lu, S. Nehr, R. Tillmann, R. Wegener & A. Wahner
生物が生成する揮発性有機物イソプレンの濃度が高い地域で期待されていたよりもかなり濃度の大きいヒドロキシラジカルが存在することが野外調査から明らかに。イソプレンの酸化実験から、イソプレンの存在下でのラジカルのリサイクルがこうした地域のヒドロキシラジカルの増強に繋がっていることが示された。

The role of fire in Miocene to Pliocene C4 grassland and ecosystem evolution
中新世から鮮新世へのC4草原と生態系進化の中の野火の役割
Sebastian Hoetzel, Lydie Dupont, Enno Schefuß, Florian Rommerskirchen & Gerold Wefer
現在の草原の植物はC4系の光合成経路を利用したものが優先種であり、それはおおよそ800万年前に進化したと考えられている。アフリカ南西部で得られた堆積物コアから、草原の拡大は乾燥化と野火の増加を伴っており、それらはどちらもC4植物を好むものであることが示された。
>Nature姉妹紙 ハイライト
古代の草原の拡大を助長した野火

Seismic detection of an active subglacial magmatic complex in Marie Byrd Land, Antarctica
南極Marie Byrd Landの活発な氷底マグマコンプレックスの地震波検出
Amanda C. Lough, Douglas A. Wiens, C. Grace Barcheck, Sridhar Anandakrishnan, Richard C. Aster, Donald D. Blankenship, Audrey D. Huerta, Andrew Nyblade, Duncan A. Young & Terry J. Wilson
西南極に位置するMarie Byrd Landにはいくつかの火山が存在することが知られているが、その中で現在活発なものはないと考えられている。同地域の地震波の観測から、西南極氷床の下を移動するマグマの存在が明らかになり、氷の流れにも影響していると考えられる。
>Nature姉妹紙 ハイライト
西南極氷床下のマグマ移動

Viscous roots of active seismogenic faults revealed by geologic slip rate variations
P. A. Cowie, C. H. Scholz, G. P. Roberts, J. P. Faure Walker & P. Steer

Ponded melt at the boundary between the lithosphere and asthenosphere
Tatsuya Sakamaki, Akio Suzuki, Eiji Ohtani, Hidenori Terasaki, Satoru Urakawa, Yoshinori Katayama, Ken-ichi Funakoshi, Yanbin Wang, John W. Hernlund & Maxim D. Ballmer

Articles
Shock synthesis of amino acids from impacting cometary and icy planet surface analogues
隕石的、氷的惑星の表面の類似物質によって衝突合成されるアミノ酸
Zita Martins, Mark C. Price, Nir Goldman, Mark A. Sephton & Mark J. Burchell
隕石はアミノ酸の有機的前駆物質を生成する。氷をターゲットにした高速の衝突実験から氷天体の衝突が生命に必要な複雑な有機物を合成する可能性が示された。

Statistically derived contributions of diverse human influences to twentieth-century temperature changes
統計学的に引き出された様々な人類の影響が20世紀の温度変化に与えた寄与
Francisco Estrada, Pierre Perron & Benjamín Martínez-López
最新の統計学的手法を用いて20世紀の地表面気温の変化の原因を考察。一部他の要因の放射強制力も寄与しているが、主として大気中の温室効果ガス濃度で放射強制力の変化とそれに伴う気温変化が説明できることが示された。温暖化の速度が鈍化していた時期においては人間活動が関与していた可能性があり、2度の世界大戦と、世界恐慌、モントリオール議定書の批准がそれにあたると思われる。(農業法とも関連した)メタン排出の変化も1990年代以降の温暖化の鈍化(ハイエタス)と関係しているかもしれない。従って、この結果は、温室効果ガスの削減が短期的な温暖化速度の低下に繋がることを示唆している。
>関連した記事(Nature#7475 "RESERCH HIGHLIGHTS")
Economic link to global warming
地球温暖化に対する経済的な繋がり
地球温暖化の速度の変化と人間活動の重要な出来事との間には密接な繋がりがあるかもしれない。1880年以来の地表平均気温と温室効果ガス濃度の記録から、2度の大戦と世界的な経済恐慌の際に温暖化の速度が鈍化していたことが示された。またモントリオール議定書の発行後、温室効果ガスでもあるフロンガス(CFCs)の排出量が規制された結果、温暖化の速度が鈍化するのを助けた可能性も示唆されている。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Ozone-hole treaty slowed global warming
オゾンホール条約が地球温暖化を遅くした
Hannah Hoag
1987年のモントリオール議定書が発行されなければ、現在の気候は0.1℃より温暖化していた可能性も指摘されている。しかしながら、彼らの発見は相関関係であり、必ずしも因果関係を示していない。さらに、近年の温暖化の鈍化(ハイエタス)も同じメカニズムである可能性は低い。彼らの研究ではエアロゾルや海の熱吸収の影響を考慮していないからである。
>関連した記事(ナショナルジオグラフィック ニュース)
地球温暖化減速、フロン規制の効果か
>Nature姉妹紙 ハイライト
モントリオール議定書は気候温暖化の中断に寄与していた

Probability of US heat waves affected by a subseasonal planetary wave pattern
準季節的な惑星波のパターンによって影響されるアメリカの熱波の確率
Haiyan Teng, Grant Branstator, Hailan Wang, Gerald A. Meehl & Warren M. Washington
北半球中緯度の熱波の発生予測は10日前までに限られている。気候モデルを用いた12,000年間に及ぶシミュレーションから、アメリカの熱波の発生に先立って惑星波に特徴的な兆候が見られることが明らかに。予測が20日前に可能になる可能性がある。
>関連した記事(Nature#7473 "RESEARCH HIGHLIGHTS")
Meandering winds precede heat spells
暑い時期に先立って風が曲がりくねる
NCARの研究者らは、12,000年間の大気循環シミュレーションから、アメリカの熱波の発生の15-20日前に偏西風が曲がりくねっていることを見つけた。このことは、中緯度の大気力学をモニタリングすることによって、より正確に気象現象の長期予測をすることができる可能性があることを意味している。
>より詳細な記事(Nature NEWS)
Air-movement pattern portends US heatwaves
空気の動きのパターンがアメリカの熱波の前触れとなる
Richard A. Lovett
>Nature姉妹紙 ハイライト
米国熱波の予測方法

Two-phase change in CO2, Antarctic temperature and global climate during Termination II
ターミネーションⅡの際のCO2・南極気温・全球気温変化の2つのフェーズ
A. Landais, G. Dreyfus, E. Capron, J. Jouzel, V. Masson-Delmotte, D. M. Roche, F. Prié, N. Caillon, J. Chappellaz, M. Leuenberger, A. Lourantou, F. Parrenin, D. Raynaud & G. Teste
ターミネーションⅡ(1つ前の退氷期)の際には大気中のCO2濃度と同時に全球気温も上昇したことが知られている。南極Dome Cアイスコア中の過去の大気の窒素同位体分析(気温の指標として用いている)から、ターミネーションⅡの1つ目のフェーズではCO2と南極気温とが同時に変動するが、2つ目のフェーズ(130.5-129ka)では異なった変動を示すことが明らかに。2つ目のオゲーズの際には低緯度の水気候の変化がCO2の陸域吸収源を強化していた可能性があり、南大洋からのCO2の放出を打ち消していた可能性がある。
※僕自身の研究とも非常に深く関わる論文です。先日のSiani et al., 2013, Ncomと併せて「退氷期における炭素循環」について解説するのもありですかね。僕の論文がうまく受理されて落ち着いたら…

2013年12月2日月曜日

新着論文(EPSL, GCA, CG, PALAEO3)

Earth and Planetary Science Letters
The Mid-Pliocene sea-level conundrum: Glacial isostasy, eustasy and dynamic topography
A. Rovere , M.E. Raymo , J.X. Mitrovica , P.J. Hearty , M.J. OʼLeary , J.D. Inglis
鮮新世の温暖期の海水準(eustatic sea level)を制約することはまだうまくできていない。モデルを用いて南アフリカ・西オーストラリア・北米南東部の古海水準を推定。変動する地形や氷床アイソスタシー補正(glacial isostatic adjustment)を考慮しているらしい。

Geochimica et Cosmochimica Acta
Both soluble and colloidal iron phases control dissolved iron variability in the tropical North Atlantic Ocean
Jessica N. Fitzsimmons , Edward A. Boyle
ダストや中央海嶺からもたらされる鉄が赤道大西洋の海水の粒子(コロイド)・溶存相にどのようにして分配されるかを調査。

Chemical Geology
Seasonal climate signals (1998–2008) in a modern Soreq Cave stalagmite as revealed by high-resolution geochemical analysis
Ian J. Orland , Yuval Burstyn , Miryam Bar-Matthews , Reinhard Kozdon , Avner Ayalon , Alan Matthews , John W. Valley
イスラエル・Soreq洞窟の鍾乳石のδ18Oや微量元素が高時間解像度の気候復元に使えるかどうかをSIMSとLA-ICPMSを用いて調査。年代モデルは縞とδ18Oの変動で得ており、1990-2008年の記録となっている。滴下水だけでなく、粒子状の物質もまた微量元素(P、Cu、Sr、Na、U)の変動に影響している。また水と溶存物質の起源は2つに大別でき、一つはゆっくりともたらされる地下水、もう一つは比較的早くもたらされる(有機酸やコロイドを多く含む)雨水と考えられる。

Deep-sea limestone block as a source of 14C-depleted dissolved inorganic carbon at the Palau Trench
Tatsuya Tsuboi , Hideki Wada , Toshio Nakamura , Tran Thuy Hang , Hiroyuki Matsuzaki , Naho Otsuji , Kantaro Fujioka , Kazumasa Oguri , Hiroshi Kitazato
パラオ海溝(6,500m深)で得られた炭酸塩ブロック付近の海水の14Cを測定。87/86Srから年代は13-7Maに相当するものと推定されている。そこから炭酸塩ブロックの溶解が起源のDICの量を見積もったところ、底層水の6.7%に相当する量の炭素が溶解していることが分かった。リソクラインよりも深い海域で初めて炭酸塩の溶解が現場で測定された初めての例。

Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
A stalagmite record of abrupt climate change and possible Westerlies-derived atmospheric precipitation during the Penultimate Glacial Maximum in northern China
L. Bruce Railsback , Honglin Xiao , Fuyuan Liang , Pete D. Akers , George A. Brook , William M. Dennis , Thomas E. Lanier , Ming Tan , Hai Cheng , R. Lawrence Edwards
一つ前の氷期の極相期(the Penultimate Glacial Maximum; MIS6)に相当する鍾乳石のδ18O記録から、当時モンスーン性ではない雨が多かった可能性を示唆。偏西風によってもたらされる西からの水蒸気?更新世の氷期の中でもとくに極端な気候であった可能性がある。

Chinese cave records and the East Asia Summer Monsoon
Zhengyu Liu , Xinyu Wen , E.C. Brady , B. Otto-Bliesner , Ge Yu , Huayu Lu , Hai Cheng , Yongjin Wang , Weipeng Zheng , Yihui Ding , R.L. Edwards , Jun Cheng , Wei Liu , Hao Yang
中国南東部の鍾乳石δ18Oから得られた気候記録の解釈は多くの議論を呼んでいる。当初は東アジア夏モンスーンの降水量を反映していると考えられていたが、最近の同位体モデリングからは降水δ18Oと降水量の間には明瞭な関係性は見られていない。
 過去21kaにわたる鍾乳石δ18O記録とモデルを用いて評価。δ18Oは確かにモンスーン性の風の強弱と置き換えることが可能であることを実証。

The Younger Dryas impact hypothesis: a critical review
Annelies van Hoesel , Wim Z. Hoek , Gillian M. Pennock , Martyn R. Drury
ヤンガードリアスの原因が隕石衝突であり、それが北半球の寒冷化・野火の増加・大型動物の絶滅・人口変化に繋がったとする仮説(The Younger Dryas impact hypothesis)を批判的に検証。特にイベントの年代のずれが場合によっては数百年に及ぶことなどを指摘。

A 550 ka record of aeolian activity near North West Cape, Australia: inferences from grain-size distributions and bulk chemistry of SE Indian Ocean deep-sea sediments
Jan-Berend W. Stuut , Felix Temmesfeld , Patrick De Deckker
オーストラリア北西部(インド洋南東部)で得られた堆積物コア中の微量元素(Zr・Fe・Ti・Ca)を用いて過去550kaの風成塵・河川からの元素供給の変動を復元。同緯度(20ºS)のナミビアやチリの記録と違い、氷期に乾燥化、間氷期に湿潤化していた。

Molecular records of continental air temperature and monsoon precipitation variability in East Asia spanning the past 130,000 years
Francien Peterse , Alfredo Martínez-García , Bin Zhou , Christiaan J. Beets , Maarten A. Prins , Hongbo Zheng , Timothy I. Eglinton
中国のMangshanレス平原で得られた古土壌の堆積物中のバクテリアが作る脂質(BrGDGTs; branched glycerol dialkyl glycerol tetraether)を用いて過去130kaの気温と土壌のpHを復元。歳差周期に着目すると降水量の変動が気温の変動に遅れて生じていた。氷期には氷床の発達がおそらく原因となって、日射量変動に対する東アジアモンスーンの応答が変化していた可能性がある。